「本は脳を育てる」について
(教職員の皆様へ)推薦文受付中です!
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本は脳を育てる ~北大教職員による新入生への推薦図書~ 

この企画は、北大の教職員(※プロフィールは当時のものです)が、学生の皆様に読んでほしい本を選んで、 紹介文を執筆くださっているものです。推薦されている本はすべて北図書館で借りることができますので、 ぜひ気に入った本を読んでみてください。
Food for thought
Faculty members have recommended these books for student, along with their introductory essays.
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  1. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    それでも君はボランティアをするか?! 
    ボランティアという病 / 丸山千夏著. - 宝島社 , 2016     北大ではどこにある?
    ボランティアはいいことだと思っている人、実際にやってみたことはないが関わってみたいという潜在的な魅力を感じている人は少なくないと思われる。しかし、ボランティアが全て手放しで賞賛されるべきものかというとそうでもない。この本は、「ヤバい」ボランティア、あるいはボランティアの「ヤバさ」についていろいろと教えてくれる。内容には賛否両論あるだろうが、「善意」が無条件にもてはやされることに疑問を感じるなら、折角のボランティア参加が心ならずも不本意な結果に終わらないよう一度目を通しておいてもいいと思う。

    登録日 : 2017-08-04     HOT TOPIC!(時事的なもの)

  2. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    東大入試問題から見える「倫理」 
    東大入試 至高の国語「第二問」 / 竹内康浩. - 朝日新聞出版 , 2008     北大ではどこにある?
    過去のある時期、東京大学の入学試験(二次試験)の現代国語の第二問は、200字以内で作文を書かせるという問題だった。この本は、その「第二問」を分析して東大が年度に関わりなく執拗に問おうとしたものを明らかにしていくという著作である。著者の竹内氏によれば、「底流には『死』という大問題があって、死を見ることで『生きること』について考えさせる」(「あとがき」より)というのがこの問題の勘所となっている。これだけ読むと、入試問題から人生訓を牽強付会しているような印象を与えてしまうかもしれないが、この本の真骨頂は、後半に進むに従って「死(と生)」の問題...  [続きを読む]

    登録日 : 2012-11-19     ぜひ読んでみてほしい

  3. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    アメリカに生まれて生きる、とは 
    ボーン・トゥ・ラン : ブルース・スプリングスティーン自伝 / ブルース・スプリングスティーン著 ; 鈴木恵, 加賀山卓朗他訳. - 早川書房 , 2016     北大ではどこにある?
    “ボス”と呼ばれるアメリカのロックンロール・ミュージシャン、ブルース・スプリングスティーンが7年をかけて執筆した自伝である。この本から彼の音楽に対する姿勢を窺えるのは当然だが、それ以上にアメリカ東海岸の労働者階級の家庭にアイルランド系、イタリア系、オランダ系という様々な血脈を受けて生まれ育ったスプリングスティーンが自分の出自を絶えず意識しながら音楽を作り演奏していく姿は、日本人のかなりの部分=日本(ヤマト)民族という出自を普段意識することのない存在には、強い印象を与えるであろう。彼の音楽が好きな人だけでなく、帰属意識(カタカナ言...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-09-05     ぜひ読んでみてほしい

  4. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    英語と格闘した日本人の足跡を辿る 
    日本英学のあけぼの-幕末・明治の英語学- / 惣郷正明. - 創拓社 , 1990     北大ではどこにある?
    20年以上まえに出たこの本を今頃推薦するのは実は大変恥ずかしい。というのは、出版されてから割合すぐに買い求めたのだけれど、最近まで“本棚の肥やし”にしてあって読んでいなかったからである。(言い訳すれば、昔、僕の恩師も「20年前に買った本がまだ読めないんだ」とぼやいていたので、同じようなことは案外あるのかもしれない。)
    「英学」という表題はいかめしいが、要するに日本人が英語と接して以来、どのようにこの言語を勉強しようと工夫なり悪戦苦闘なりを重ねてきたかの歴史が描かれているものであり、具体的な教科書や参考書や辞書、果てはかなり怪しげ...  [続きを読む]

    登録日 : 2012-11-15     名著

  5. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    今読まずにいつ読むか。 
    言論・出版の自由 / ジョン・ミルトン. - 岩波書店 , 2008     北大ではどこにある?
    つい最近、マスメディアに対する権力側の幾つかの横暴とも言える対応が報道された。報道機関やジャーナリストたちはそれなりに危機感を示しているもののいよいよ政治権力が牙をむき始めた、という慄然たる思いがする。大学に身を置く我々にとって大切な、日本国憲法で保障されている学問・良心の自由もいつ危うくなるか分からない。その前に読んでおくべきものとしてこの本を推薦しておく。

    登録日 : 2016-09-24     名著

  6. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    戦後日本の思想的骨格を掴む 
    日本の思想 / 丸山真男著. - 岩波書店 , 1961     北大ではどこにある?
    先日必要があって高校の倫理の用語集を見ていたら、丸山眞男が項目立てされて解説が書かれていたので少しびっくりした。同時にもうそういう時代になったのか(=丸山もそういう存在になったのか)とあらためて感じるものがあった。ということは、かなりの北大生が高校時代におそらくこの『日本の思想』を読んでいると思われるので、今更紹介するまでもないのかもしれないが、まだ読んでいない人のためにここに推薦しておきたい。
     実は、僕自身はこの本を今読んでも率直に言って“程度の低い常識論”にしか読めない。しかし、裏を返せばそれは、今や常識論に思われるほ...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-10-04     基本書

  7. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    哲学を体現した人の生涯 
    ウィトゲンシュタイン : 天才哲学者の思い出 / ノーマン・マルコム著 ; 板坂元訳. - 平凡社 , 1998     北大ではどこにある?
    20世紀以降の哲学に最も影響力のあった哲学者ウィトゲンシュタインに親しく接した著者が、その人柄、哲学に対する姿勢、同時代人との関わりからゼミナールの雰囲気までを生き生きと描いた人物伝である。ウィトゲンシュタインの哲学に関心がなくても、哲学者という人びとが自分の思索にどのような姿勢で臨んでいるかを知る上で一読の価値がある。

    登録日 : 2017-08-07     ぜひ読んでみてほしい

  8. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    研究のための「転ばぬ先の杖」 
    実証的教育研究の技法 : これでできる教育研究 / 西川純著. - 大学教育出版 , 2000     北大ではどこにある?
    この本は著者の学生(大学院生)指導体験から得た知見をもとに書かれた「研究」のための手引き書である。素材の多くは教育学、特に教育現場の実践を想定しており、それらをどのように研究テーマとして成立させ処理していくかについて解説してくれている。副題に「これでできる教育研究」とあるが、実際の教育研究は現場の生身の人間(生徒・学生)を相手にするのだからこの本を読めば全て滞りなく研究ができるというわけではない。そのことは著者自身が最もよく分かっているだろう。それでもこの本を推薦するのは、学生が、壁にぶつかったり悩んだり理解しにくかったりする...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-10-04     学習に最適

  9. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    「東洋」と「西洋」とは何か、あらためて考える。 
    東洋意識 : 夢想と現実のあいだ1887-1953 / 稲賀繁美編著. - ミネルヴァ書房 , 2012     北大ではどこにある?
    学問―特に人文科学―の世界に於ける「東洋-西洋」という枠組み或いは二分法は、実は相当にうさんくさい。そのうさんくささを“学問的に”剔抉したのは言うまでもなくエドワード・サイードの『オリエンタリズム』だったが、そのとらえ方自体が西洋的な学問世界の中で一定の権威になってしまうという戯画的な状況が生まれ、相変わらず「東洋-西洋」という枠組みをめぐる思索は混迷している。今回推薦する本は、編著者の稲賀氏自身が書いているように「『東洋』と呼ばれる―あるいは時代遅れとな...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-02-17     ぜひ読んでみてほしい

  10. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    異文化理解はぼちぼちこのあたりから…。 
    異文化理解の落とし穴 : 中国・日本・アメリカ / 張競. - 岩波書店 , 2011     北大ではどこにある?
    この本は、上海出身中国人で日本に留学し学位を得て日本で教職に就きアメリカで研究生活も送った著者の異文化体験の記録である。読後感としては標題にあるような「異文化理解」というレベルに達しているとは思えないし、ましてやその「落とし穴」を明解にしているとも言い切れない。むしろ表層的な体験と感想が連ねられているというのが率直なところである。しかし、それは裏を返せば、「異文化理解」ということに到達するには誰もがこの段階をくぐらなければならないということを示す一つの基準点になり得ている、ということであり、また、日本に限らず「文化」というもの...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-02-14     基本書

  11. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「田辺元ルネサンス」のために 
    田辺元哲学選I~IV(全4冊) / 田辺元. - 岩波書店 , 2010     北大ではどこにある?
    前にこの「本は脳を育てる」に西田幾多郎の『善の研究』を推薦したことがある。ところが、日本のアカデミックな哲学界では、西田は何かと話題にもなり研究対象にもなるのに、その謂わば批判者であった田辺元については(同じく批判者であった戸坂潤と比べても)圧倒的に研究(あるいは言及)が少なかったし、むしろ色々な意味で批判的に見られすぎたり西田との対比(それもマイナスの)で捉えられすぎたりしてきたように思われる。私事で恐縮だけれども、僕も院生時代に西田哲学と田辺哲学の対立点について研究発表を...  [続きを読む]

    登録日 : 2011-01-04     ぜひ読んでみてほしい

  12. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    やっぱり東京大学は凄い…。 
    アクティブラーニングのデザイン : 東京大学の新しい教養教育 / 永田敬, 林一雅編. - 東京大学出版会 , 2016     北大ではどこにある?
    平成24年8月24日付中央教育審議会答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」に於いて、今後の中等教育・大学教育に積極的にアクティブ・ラーニング型授業を導入するべきであることが打ち出された。この本は、東京大学教養学部で実践されたアクティブラーニングの理念と方略を報告したものである。読者としては、これからアクティブラーニングに取り組もうとする大学教員を想定しているものであるが、学生が読んでも21世紀に求められる能力をどの...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-12-02     学習に最適

  13. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    文章を書くことが苦手な人に安心を与えてくれる本 
    「書くのが苦手」をみきわめる / 渡辺哲司. - 学術出版会 , 2010     北大ではどこにある?
    今学期(2011年度第2学期)から、文章表現が苦手な人を対象にした「一般教育演習」を開講したので、その準備のため過去1年かけて、いわゆる「文章読本」的な本を36冊ほど読んでみた。(実は、こういうことはすでに小説家の斎藤美奈子さんがやっていて、その成果は『文章読本さん江』(筑摩書房)で公にされている。) この本は、その中でも「苦手」という心理がどうして生じているのかを明らかにして、具体的にどのような対策を採ればそれが克服できるのかを書いている点でもっとも参考になったものである。[続きを読む]

    登録日 : 2011-11-14     学習に最適

  14. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    「ボランティア」のあり方を見つめ直すために 
    「ボランティア」の誕生と終焉 : 「贈与のパラドックス」の知識社会学 / 仁平典宏. - 名古屋大学出版会 , 2011     北大ではどこにある?
    学生時代に7年ほどあるボランティア活動に携わっていたことがあるのだが、最初に活動に参加しようとした時、親に言われたのは「自分の頭のハエも追えない奴が偉そうに人助けなんかやるな!」という暴言(!)であった。今考えてもあんまりな言い方だと思うが、そうした意識は程度の差こそあれ日本の社会にある時期流通していたボランティア理解ではなかったかとも思う。この本の帯には「『善意』と『冷笑』の狭間で」と書かれているのだが、このことばはボランティアというものに対して注がれる、あるいは浴びせられる視線の複雑さを見事に言い当てている。そうした複雑さを...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-02-28     ぜひ読んでみてほしい

  15. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    世界はどうしてこうなっているのか。 
    エジプトを植民地化する : 博覧会世界と規律訓練的権力 / ティモシー・ミッチェル著 ; 大塚和夫, 赤堀雅幸訳. - 法政大学出版局 , 2014     北大ではどこにある?
    一見この本とは関係なさそうな話から推薦文を書く。みなさんは、観光旅行に行くとはどのようなことだと思っているだろうか。理由はいろいろあるにせよ、大きな共通点は世界遺産に代表されるような歴史的建造物や名所旧跡を辿ることが目的である、ということだろう。しかし、である。その時、観光旅行する我々は、実は名所旧跡を”見に”行っているのではなく、ガイドブックなどに一定の秩序で並べられた空間の”確認”をしに行っているに過ぎないのである。なぜそう言えるのか、の答えを与えてくれるのが、この本の副題になっている「博覧会世界」である。
    この本は、表...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-01-01     ぜひ読んでみてほしい

  16. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    思索するカントの姿に迫る 
    理性の不安-カント哲学の生成と構造- / 坂部 恵. - 勁草書房 , 2001     北大ではどこにある?
    この推薦文を書いている今日の昼間、書店に行ったら故石川文康先生訳『純粋理性批判(上下)』(筑摩書房)が棚に並んでいるのを見てびっくりした。石川先生は昨年逝去されたし、『純粋理性批判』を翻訳していらっしゃったことも知らなかった。同時に、どうしてこうも日本の哲学研究者(あるいは出版社?)は『純粋理性批判』の翻訳を出したがるのかなぁ、とも思ってしまった。この「本は脳を育てる」に文学研究科の千葉先生が熊野純彦先生の翻訳を推薦していらっしゃるが、それ以外にも多くの翻訳があり、訳書の多さという点では哲学書に限定せずとも『純粋理性批判』、ハイデガー...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-03-09     ぜひ読んでみてほしい

  17. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「哲学」のススメ 
    善の研究 / 西田幾多郎. - 岩波書店 , 1979     北大ではどこにある?
     『善の研究』については、これまで嫌になるくらい論文や研究書があり、僕もかつてその手のものを書いたことがある。それだけいろいろな読み方・解釈が可能だという点では紛れもなく「古典」であるが、同時に何回読んでもすっきりと分かった感じになれないところもある。そういうところから、「西田哲学を理解するためにも実際に参禅をしなければならない」(久松真一)といった言説が出てくるのだろう。
     『善の研究』は、すぐ分かるようでありながら実は分かりにくいし、まさにその「分かる=理解」という営みそのものを問題にしているところがあるので、どこまで行...  [続きを読む]

    登録日 : 2010-08-17     名著

  18. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    死と美意識と 
    太陽と鉄 / 三島由紀夫. - 中央公論新社 , 1987     北大ではどこにある?
    この作品は三島の、精神と肉体の拮抗を軸とした自己認識過程の吐露であるとともに、己の死と向き合おうとする冷徹な美意識の自己表現の書でもある。この本に書かれた思索とその基盤をなす体験の延長線上で三島はあのような「自決」という仕方を選び取ったのであり、その死は三島の、死に対する美意識の自己完結的結晶であったのだ。「国(でも何でもいいが要するに他者)のために自分の生命を投げ出して死ぬ」ということを自分の真剣な問題として考えたいなら、この本は、その内容を肯定するにせよ否定/批判するにせよ、避けて通れない作品であり、今の時代にあらためて読...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-06-20     名著

  19. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    ネット空間で被害者にも加害者にもならないようにするために。 
    ネット炎上の研究 : 誰があおり、どう対処するのか / 田中辰雄, 山口真一著. - 勁草書房 , 2016     北大ではどこにある?
    この本は、インターネット上で発生するいわゆる「炎上」という現象を分析し、その実態と歴史(!)と対応策を分かりやすく述べている。特に最後の「付録 炎上リテラシー教育のひな型」では、高校生を対象として想定し、「炎上」の仕組みとそれに巻き込まれそうになったらどうするべきかを丁寧に説いてくれている。インターネットがこれだけ広範囲に利用されるようになった社会で安全に生活し、かつ自分が加害者にならないためにも読んでおくべき1冊である。

    登録日 : 2017-02-24     HOT TOPIC!(時事的なもの)

  20. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    高校で読まされてウンザリした人に敢えて今勧める 
    舞姫 / 森鴎外. - 筑摩書房 , 1995     北大ではどこにある?
    今回、この「本は脳を育てる」に推薦された本を全部見てみた。(僕は別として)北大の優秀な先生方が思い入れ充分に推薦しておられるのだからそれなりに読む価値があるのだとは思うけれども、なぜか古典と言われる作品が洋の東西を問わず少ない。僕も書いたことがあるから他人のことをあげつらってはいけないのだが、何となく新刊書の紹介のようになっている観がある。古典は高校までの間に読んでいるはずだから、今更勧める必要もないという考え方もあるかもしれないが、古典が古典と言われるほどまで時代を超えて生き続けるのは、人間の成長とともに様々な新しい読み方を...  [続きを読む]

    登録日 : 2010-07-28     名著

  21. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「音楽」に対する屈折した思い 
    ピアニストのノート / ヴァレリー・アファナシエフ. - 講談社 , 2012     北大ではどこにある?
    著者のアファナシエフの演奏を学生時代に聴いたことがある。山田一雄指揮の東京都交響楽団定期演奏会でシューマンの「ピアノ協奏曲」だった。なぜそんな昔のことを覚えているかというと、その時初めて聴いたアファナシエフの演奏が非常に“奇妙”だったからである。「違和感」というのでもない、「斬新」というのでもない、ただ、「こんなふうにシューマンも弾けるんだ」という感覚を抱いたことを今でも覚えている。その後、彼のプロフィールなどを知る機会もあったが、この本を読んでみて昔聴いた演奏とどこか重なり合うような感覚を思い出すことができた。この本は、エッ...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-10-08     ぜひ読んでみてほしい

  22. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    東北大震災以後の日本を世界史的規模で考える 
    3・11以後この絶望の国で : 死者の語りの地平から / 山形孝夫・西谷修. - ぷねうま舎 , 2014     北大ではどこにある?
    この本は、東北大震災で被災した宗教学者の山形孝夫氏と、現代思想のあり方を問い続けてきた哲学者の西谷修氏との対談である。表題を見ると、現代の日本を直接の対象としているようであるが、むしろ対談者のお二人の中心問題は、(制度的)キリスト教世界の成立とそれが世界に何をもたらしたかということにあり、その延長線上で、ある時点から道を踏み外し始めた世界と、「死者の口封じ」の道具と化してしまった宗教への危機感が語られる。東北大震災はその具体的な危機の露呈の現場として考察され、その危機的状況からのどのような救いの道があるかは、山形氏の”つぶやき...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-09-24     ぜひ読んでみてほしい

  23. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    文学という営みを通してみた日本人像とは 
    近代日本人の発想の諸形式 / 伊藤整. - 1981 , 岩波書店     北大ではどこにある?
    標題となっている論文で、著者は、日本人の手によって行われた文学(創作と作品)を「逃避型と破滅型」、「上昇型と下降型」等いくつかの切り口から鋭く考察し、日本に於いてその文学的な風土がどのように形成されたかという問題に取り組んでいる。その過程で一つの鍵となるのは、創作の専門性とそれを体現する”文士”という存在である。そうした観点から見たとき、多くの人が常識的に(?)受け止めている「文豪」漱石と鴎外への批判は苛烈を極める。

    20世紀末から日本哲学(史)の研究が徐々に隆盛の兆しを見せてきたが、哲学研究者とは別の(「異質」と言っても...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-01-11     名著

  24. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    物語はまだ終わらない。 
    水滸後伝 / 陳忱. - 平凡社 , 1966     北大ではどこにある?
    ここに推薦するのは、『水滸後伝』である。『水滸伝』ではない。まずその点を間違えないようにお願いしたい。『水滸伝』=本編を推薦していないのに『水滸後伝』=続編を推薦するのは無茶苦茶だという批判もあることは承知の上である。ましてや僕は、本編は横山光輝の漫画版で読んだ(だけな)ので、この推薦はなおさら無謀である。しかしそれでもなお推薦するには理由がある。一つには、大方の学生諸君は小説であれ漫画版であれ本編を読んでいる人は多いだろうと想像できること、二つには、続編という位置づけながらそれ自体でなかなか想像力に溢れた活劇として面白い、と...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-08-22     ぜひ読んでみてほしい

  25. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    世界に働く根本的な力を考える 
    歴史の終わり(上・下) / フランシス・フクヤマ. - 三笠書房 , 1992     北大ではどこにある?
    個人的に2015年はあまり面白い本にめぐり逢わなかった1年だった。その中では比較的面白かったのがこの本である。1992年に刊行されたこの本を20年以上経って読んでみると、著者が重視するリベラルな民主主義が現在の世界で置かれているアクチュアルな立場をよく見通すことができる。20年以上前に書かれた本ではあるが、そこに含まれる観点は20年そこそこの時間の経過の中では古びてしまうということはなく、今なお国際政治・国際関係を考える上で必要な知見を提供してくれると思う。

    登録日 : 2016-01-01     ぜひ読んでみてほしい

  26. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    留学したい人は必読! 
    バイカルチャルになれる人・なれない人-アメリカで変わる日本人- / 本田正文. - 丸善 , 1999     北大ではどこにある?
    この本は、大きく分けると著者である本田氏がアメリカ留学の中で体験した異文化適応の過程の紹介と、専門とする第二言語習得理論(から見たバイリンガリズム)の概説をバイカルチャルという観点で融合させていこうとしたものである。こう書くとなにやら難しそうな本のようであるが、そのようなことはない。むしろ、本田氏が実際にアメリカで何に苦労しそこからどのような「智慧」を見いだして異文化での生活を成り立たせていったかが、時にユーモアを交えながら成長段階を追って書かれている。

    これから海外留学を目指す人には色々な希望と不安があると思うが、留学...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-01-11     基本書

  27. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    この難しい時代をどう生きるか 
    感情で釣られる人々 : なぜ理性は負け続けるのか / 堀内進之介. - 集英社 , 2016     北大ではどこにある?
    去年から書店の本棚に“反知性主義”ということばを含む表題の本が並ぶようになってきた。国内・国外にわたって難しい問題が山積し、それらに対する処方箋がなかなか見つからない中で人びとのある種のいらだちのようなものが確かに感じられるし、それが時としてこれまでの価値観に対する破れかぶれの破壊衝動のように見える場合もあって、そのようなことばが現代社会の懸念すべき問題として本の表題になることは理解できる。しかし、その一方で、問題のあり方が様々に複雑化・多様化している世界の状況を“反知性主義”という術語で語ろうとするのもある種の“メタ・反知性...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-08-20     HOT TOPIC!(時事的なもの)

  28. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    図書館の達人になる! 
    図書館のプロが教える「調べるコツ」 : 誰でも使えるレファレンス・サービス事例集 / 浅野高史とかながわレファレンス探検隊. - 柏書房 , 2006     北大ではどこにある?
    図書館を、「本を借りる」ところ、「勉強する」ところだと思っている学生はおそらく今では少ないと思うけれども、では、図書館を有効に使えている学生(教員も)がいるかというと、どのように自分たちの勉強やそれ以外の活動に役立つのかまだぼんやりとしたイメージしか抱けない学生も多いと思う。そんなときこの本は役に立つ。図書館が、”お勉強”のためだけの建物ではなくわくわくするような=知的に興奮できる世界だ、ということがわかるだろう。読んだらきっとあなたも図書館に行きたくなる!

    登録日 : 2014-12-04     学習に最適

  29. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「承認」を切り口にして社会を考える 
    承認-社会哲学と社会政策の対話- / 田中拓道. - 法政大学出版局 , 2016     北大ではどこにある?
    「承認」というと堅苦しい響きがあるが、要するに「認めてくれ!」ということである。ではなぜある人びとやある問題が社会の中で認められていないのか、どのようにすればその問題にアプローチできるのか、といったことに気鋭の研究者たちが正面から取り組んだ労作である。その際の基本的視角となっているのは現代ドイツの哲学者アクセル・ホネットの“承認の哲学”と、それに関するナンシー・フレイザーとの論争である。決して易しくはないが、ここからさらに各自の関心に応じて(芋づる式に!)読書の範囲を広げ問題を整理することができるだろう。よく言われる「哲学が何...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-08-12     ぜひ読んでみてほしい

  30. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「辞書にはドラマがある」 
    <辞書屋>列伝-言葉に憑かれた人びと- / 田澤耕. - 中央公論新社 , 2014     北大ではどこにある?
    以前の推薦文に、最近岩波新書(新赤版)がつまらなくなってきた、と書いたが、最近の新書(岩波に限らない)ときたら、もう池上彰、佐藤優、島田裕巳、内田樹ばかり目立つ(少し前ならこれに香山リカも入っていた)。商業的に売れる本を書きたいというのは出版社の本音だろうし、若者の読書離れなどということも言われる中で出版社の新書編集部も大変だろうなぁとは思うが、こうも顔ぶれが変わらないと彼らの熱烈なファンでない限り購買意欲が逆にそがれてしまう。それにしても、この四人はよくも新書の大量執筆ができるもので、その点はうらやましい限りである。

    ...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-06-19     ぜひ読んでみてほしい

  31. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    私もプロレスの味方です。 
    新日本プロレス12人の怪人 / 門馬忠雄. - 文藝春秋社 , 2012     北大ではどこにある?
    この推薦図書の表題を見て目をむいたそこのあなた、附属図書館の蔵書検索欄に「プロレス」と入力してみるとよい。北大附属図書館には、プロレス関連図書が結構色々あるのだ。つい先日出たばかりの三田佐代子『プロレスという生き方』(中公新書ラクレ)も図書館は入れてくれた。ずっとお堅い本ばかり推薦してきていい加減疲れたというのもあるのだが、プロレスというのは最高のエンターテインメント(の一つ)であって、それについて知ることは自分の世界を広げることになると思い推薦することにした...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-06-01     ぜひ読んでみてほしい

  32. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    インタビュー調査に必読の一冊 
    聞きとりの作法 / 小池和男. - 東洋経済新報社 , 2000     北大ではどこにある?
    研究の必要からインタビュー調査をすることになって、そのためのノウハウが書いてある本を数冊読んだが、その中で最も役に立ったのがこの本である。
    内容は著者の小池氏が専門とする経済学の、主として職場の技術移転を例にとって書かれているが、その分インタビューの実際に関する記述が非常に豊富でわかりやすい。また、インタビューデータからどのように読み取りを行ったらいいかの例やインタビューの前後に行っておくべきことなども書かれていて、将来、聞きとり調査が必要となる分野で研究しようと考えている学生にとっては必読の一冊である。

    登録日 : 2014-12-04     基本書

  33. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「思想劇」としての般若心経 
    真釈般若心経 / 宮坂宥洪. - 角川書店 , 2004     北大ではどこにある?
    この本の表題は書き間違いではない。「新釈」ではなく「真釈」、つまり著者は「俺の解釈こそ本物だ!」と宣言しているわけである。もの凄い自信である。仏教学が専門ではない僕には、その「真」の度合いは測れないが、内容は確かに説得力に富む。それはひとえに、サンスクリット原典を文法的に厳密にたどりながら漢訳般若心経の問題点を的確に指摘し「四階の建物の比喩」という説明の枠組みを駆使して読み解いていく著者の態度からもたらされるものである。それだけに「あとがき」に書かれた、従来の般若心経解説書やそれらの執筆者に対する批判は秋霜烈日を極める。著者は...  [続きを読む]

    登録日 : 2015-07-18     基本書

  34. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    大学の「勉強」は大変なのである! 
    「知」の方法論-論文トレーニング- / 岩崎美紀子. - 岩波書店 , 2008     北大ではどこにある?
    この本を推薦するに当たっては苦い思い出から始めたい。高校時代の「倫理・社会」の授業で、「大学に行く目的は何か?」というテーマでグループ・ディスカッションをしたことがあった。僕のグループ5人の中で、「大学へは勉強しに行く」という意見を出したのは僕だけで、他の同級生は全員「大学へは遊びに行く」と答えたのである。グループ代表として結論を報告した同級生の、僕を小馬鹿にしたような目つきはいまだに目に浮かぶ。そんな高校だったから、卒業時、男子生徒20名中現役で大学に進学したのは2名だけだった(僕も浪人組)。

    北大に進学してきた学生諸君の...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-15     学習に最適

  35. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    経済学とは結局何なのか、を考える。 
    戦時下の経済学者 / 牧野邦昭. - 中央公論新社 , 2010     北大ではどこにある?
    この本の表題は『戦時下の経済学者』であり、事実経済学者(の学説)に多くのページを割いている。しかし、この本の主眼とするところは人物伝ではなく、著者自身が「あとがき」で書いているように「経済学はなぜこうなっているのか」という問題意識である。僕なりの読み方で言えば戦時下の総力戦体制の中で個々の経済学者の学説が社会の要請と切り結びながらどうしてその学説のような形を取ることを求められたか、を考えようとするものだと言えるだろう。僕はこの本をノートを取りながら割合丹念に読んだのだが、僕自身の関心はむしろ個々の経済学者あるいは研究機関の時代...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-12     ぜひ読んでみてほしい

  36. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    岩波新書は不滅です! 
    岩波新書の歴史 : 付・総目録1938-2006 / 鹿野政直. - 岩波書店 , 2006     北大ではどこにある?
    前にこの「本は脳を育てる」に岩波新書(青版)の鈴木八司『ナイルに沈む歴史』を推薦した際に、「最近(特に今世紀になってから)、岩波新書(新赤版)がつまらなくなってきた。」と書いたが、そうはいってもやはり岩波新書は「腐っても鯛」-という書き方は失礼かもしれないけれども-である。「岩波文化人」という、一種の鼻持ちならないエリートを作り出したという問題点はあるが、間違いなく日本近代、あるいは昭和以降の「教養」の担い手として大きな存在感を発揮したことは否定しようがない。この鹿野氏の著作は、岩波新書がどのような価値観を時代に対する「教養」...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-08     ぜひ読んでみてほしい

  37. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    よりよい働き方をどう実現するか 
    個人を幸福にしない日本の組織 / 太田肇. - 新潮社 , 2016     北大ではどこにある?
    この本は、標題だけを見るとかつてのカレル・ヴァン・ウォルフレンの『人間を幸福にしない日本というシステム』の二番煎じのように見えてしまうが、内容は組織論あるいは経営制度論の観点から見た日本人の働き方/働かせ方の批判的考察である。これを読むと、企業も学校も芸能界も自治体も町内会も、およそ人が集まって作られる目的集団がいかに機能不全を起こしやすいかがよく分かる。筆者はその点について、かなり大胆な処方箋を提示してくれているが、欲を言えばもう少し突っ込んで対策を書いてくれるとより面白くなったと思う。自分の将来の仕事のあり方として会社勤め...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-03-14     HOT TOPIC!(時事的なもの)

  38. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    日本語教育史研究の金字塔、ついに成る! 
    戦時期における日本語・日本語教育論の諸相-日本言語文化政策論序説- / 田中寛. - ひつじ書房 , 2015     北大ではどこにある?
    長年にわたって、日本語教育史、日本語教育政策の研究に携わってこられた著者の業績の集大成とも言える大著である。副題に「序説」とあるが、決して「序説」ではなく、日本語教育の過去の歴史を批判的に受け止め、これと対決しながら日本語教育のあるべき姿を真摯に問うたその解答と言うべき著作である。今後の日本語教育史研究、日本語教育政策研究は、本書と、これに先行した関正昭『日本語教育史研究序説』(スリーエーネットワーク)を不可欠の必読書として出発しなければならない。まさに今、日本語教育史研究の“新しい”歴史が始まる。本書はその幕開けとなるものと...  [続きを読む]

    登録日 : 2015-07-14     基本書

  39. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    もう一つの日本の理論物理学形成史 
    科学ジャーナリズムの先駆者 評伝 石原純 / 西尾成子. - 岩波書店 , 2011     北大ではどこにある?
    石原純という名前を初めて見たのは、大学時代に西田幾多郎の哲学を勉強していたときであった。西田の弟子であった下村寅太郎の文章中に、日本に於ける相対性理論の紹介者といった形で名前が出ていたのを覚えている。この本では、物理学者、相対性理論の研究者・紹介者という面だけでなく、科学ジャーナリストとしての石原に光を当てて多くのページを割いている。昨今、自然科学研究の世界では研究の確実性やその情報の透明性を揺るがすような事案がいくつか起こった。(勿論、人文社会科学でも同様のことはあったし、今後もあり得る。) このような時代に、科学研究の内実...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-03-12     ぜひ読んでみてほしい

  40. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    とりあえず元気になりたい人に。 
    燃える闘魂 / 稲盛和夫. - 毎日新聞社 , 2013     北大ではどこにある?
    正直に言えばこの本を「本は脳を育てる」に推薦するのは躊躇いがあった。こう書いている今も、図書館のA係長の困り切った表情が目に浮かんでくるようだ。それはそれで分かる。所謂典型的な日本の経営者のビジネス精神論だからだ。ビジネスは研究の対象になるが、精神論(或いは根性論)は研究の対象にはなり得ない。それでもなぜ推薦したかというと、最近の僕の周りの人間は教員も事務職員も学生も元気がない人たちが多いからだ。そういうときには”空元気”でいいから、とにかくテンションが上がる本を読みたい。そういうわけでここに推薦してしまった。

    ちなみに...  [続きを読む]

    登録日 : 2015-07-14     HOT TOPIC!(時事的なもの)

  41. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    サンデルとの対話は成功したのか? 
    日本生まれの「正義論」-サンデル「正義論」に欠けているもの- / 川本兼. - 明石書店 , 2011     北大ではどこにある?
    著者は、サンデルの正義論が結局はアメリカの「力」の論理によるものではないかという疑問を呈するところから始めて、サンデルの正義論に対する対抗思想としての正義論を生み出そうとした。その懸命な思索の成果がこの本である。著者の思想的格闘が成功したかどうかは、読者それぞれが判定されたい。その中で読者自身が自分なりに正義について考えることをきっと始めているだろう。
    ネタバレになるかもしれないが、僕の読後感としては著者は正面からサンデルの思想に切り込もうとしているがところどころで自分に不都合な証拠を-忘れているのか意図的にかは分からないが...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-12-26     学習に最適

  42. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    昭和をまだノスタルジーにするな! 
    昭和時代年表 増補版 / 中村政則. - 岩波書店 , 1986     北大ではどこにある?
    ここ何年かの間に、メディアで「昭和の○○」といったことばを少なからず読んだり聞いたりすることがある。女優の黒木華さんは「昭和顔」と言われているそうだ。昭和32年(=考えてみればちょうど昭和の半分の年)生まれで、経済の高度成長とともに成長し、1988年のバブル最盛期に就職した僕から見ると、「『昭和』をそんなに簡単にノスタルジーにするな!」という怒りにも似た気持ちを禁じ得ない。それは、僕個人にとって昭和がリアルタイムであると言うだけのことではなく、昭和時代に現れ、あるいは作られた様々な問題・課題から我々が未だに解き放たれているとは言えない...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-11     基本書

  43. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    ちょっと残念な、しかし面白い対談 
    対論 言語学が輝いていた時代 / 鈴木孝夫・田中克彦. - 岩波書店 , 2008     北大ではどこにある?
    鈴木孝夫と田中克彦のお二人は、特に日本語に於ける漢字の使用を巡ってそれぞれの著書の中でまったく反対の立場を表明してきた。この本ではそのあたりを巡って激論が交わされるのかと思いきや、お二人とも妙におとなしくなってしまっていて(よく言えば紳士的なのかもしれないが)日頃の舌鋒の鋭さはどこへやら、落としどころをうまく見つけて話が進んでしまっている。これはちょっと読者の期待を裏切りすぎるんじゃないのかなぁ、と思う。日本語教師の僕としては、日本語教育に好意的な鈴木氏と、(今の)日本語教育に批判的な田中氏の論争も期待したのだが、それはタイトルが...  [続きを読む]

    登録日 : 2015-02-04     学習に最適

  44. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    冒険記は面白い! 
    世界の測量-ガウスとフンボルトの物語- / ダニエル・ケールマン. - 三修社 , 2008     北大ではどこにある?
    この本は、近代ドイツの学術史に屹立する偉人、数学者のガウスと博物学者のフンボルトの知的探求の冒険を描いた作品である。第一章と第十四章でガウスとフンボルトは邂逅するが、それ以外の章は一章ごとにそれぞれの探求の人生が描かれる。異世界に新しい知識と発見を求めて踏み込んでいくことが(単純に)偉業だと考えられていた時代を現代の視点から振り返るどのように表せるか、ということが興味深く読み取れるだろう。

    勿論、小説なので虚実取り混ぜられており、ガウスが哲学者カントのところに非ユークリッド幾何学の発見を告げに行く部分などは完全なフィクシ...  [続きを読む]

    登録日 : 2015-08-01     ぜひ読んでみてほしい

  45. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    世界の見方を深めるために 
    現象学という思考-<自明なもの>の知へ- / 田口茂. - 筑摩書房 , 2014     北大ではどこにある?
    一昨年度から「多文化交流科目」という授業を始め、一貫して異文化理解、あるいは異文化交流の問題を扱ってきた。難しいのは、異文化理解に関わる理論と異文化交流の実践を教室の内外でどうつなぐかということであり、このことにずっと悩んできた。今年になってからふと「現象学」の考え方からこの問題にアプローチしてはどうだろうかと思ってこの本を読んでみたら、まさに第四章・第五章を中心として示唆に富む記述が満ちていてありがたい思いがした。こうしたアプローチは、僕の曖昧な記憶では確かクラウス・ヘルトが手をつけ、日本では小川侃先生(元京都大学)が触れて...  [続きを読む]

    登録日 : 2015-09-07     基本書

  46. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    ブームが沈静化した今こそ冷静に読んでみよう 
    これからの「正義」の話をしよう-いまを生き延びるための哲学- / マイケル・サンデル. - 早川書房 , 2010     北大ではどこにある?
    言わずと知れた、「NHK白熱教室」のネタもととなった本である。テレビでのサンデルの講義に独特のスタイルがあったこともあって売れに売れたらしい(僕の持っているのは第78版!)が、こうした本はブームが去った今こそ落ち着いて読んでその内実を判断する必要があるだろう。
    サンデルは、現代世界のアクチュアルな問題を古典から現代までの政治思想と結びつけて論じながら彼なりの(=コミュニタリアンとしての)哲学を開陳していくが、その解決が妥当であるかどうかは読者が今一度批判の目をもって考えるに値するものである。
    今は文庫版も出て読みやすくなってい...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-12-04     基本書

  47. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    理論と実例の両面から分かる異文化間コミュニケーション 
    異文化コミュニケーション : 新・国際人への条件[改訂版] / 古田暁. - 有斐閣 , 1996     北大ではどこにある?
    異文化間コミュニケーションについての解説書・研究書は山ほどあるが、内容がまとまっていてしかも頭に入りやすい本はそう多くはない。この本は、異文化間コミュニケーションの理論的側面に重点を置きながらも様々な実例を組み込んでわかりやすい叙述を心がけている。一章の分量もそれほど多くないので、一日に読む分量を決めてノートを取りながら読めば内容を押さえていくことができるだろう。異文化間コミュニケーションの好適な入門書として薦めたい。

    登録日 : 2015-10-29     学習に最適

  48. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    科学という営みを伝えることの大切さを知る 
    ロウソクの科学 / マイケル・ファラデー. - 岩波書店 , 2010     北大ではどこにある?
    この本は、まさに「古典」という名にふさわしい有名な本だから既に読んでいる人が多いかと思うが、今の学生は(ああ、これもまた「古典」的な説教口調だ!)「古典」をあまり読まないらしいので推薦する意味はそれなりにあるだろうと思う。

    僕が小学生の頃は、雑誌『子供の科学』が毎月発刊されるのが待ち遠しく、またあかね書房から『少年少女最新科学全集』が刊行され、所謂”科学読み物”が一つの隆盛を迎えていた時代であった。その時期にこの『ロウソクの科学』と初めて接したのであるが、小学生が読むには少し手強かった。僕は、日下実男訳の旺文社文庫版(今...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-01-01     名著

  49. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    ことばはどのように情報を伝えるのか? 
    文法と談話の接点-日本語の談話における主題展開機能の研究- / 砂川有里子. - くろしお出版 , 2005     北大ではどこにある?
    この本は、本格的な専門書であるが、丹念に読んでいけばきちんと分かるように書かれた本であり、日本語の働き方について新しい知見を与えてくれるものである。専門的に言えば、談話文法を機能言語学的に考察したものであるが、その内容を噛み砕いて言うならば、日本語の中でどのように情報が情報として現れそれが伝えられていくか、そのメカニズムを明らかにしたものである。将来日本語について研究してみたいと考えている人や、既に談話文法に関心のある人に広く一読を勧めたい。

    登録日 : 2016-03-12     ぜひ読んでみてほしい

  50. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    人の振り見て我が振り直せ 
    カネを積まれても使いたくない日本語 / 内館牧子. - 朝日新聞出版 , 2013     北大ではどこにある?
    最近の出版業界は「脅迫産業」めいてきたところがあり、本の表題にやたらと「知らないと恥をかく~」だの「あなたもきっとだまされる」だの「~のウソ」だの「その○○は恥をかく」だの、これでもかとばかりに読者を不安がらせ(て買わせ)ようとするフレーズを入れるものが多い。こういった表題の本は、おおむね中身はたいしたことがないので買わないことにしているが、ここに挙げた内館氏の本は、その大仰な表題に似合わず、今使われている、あまり適切とは言えないことばづかいを丁寧に拾い上げて論評しており、まさに「人の振り見て我が振り直せ」で、自分の日本語の使...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-07-12     学習に最適

  51. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「研究」ということの神髄に触れる 
    師範学校制度史研究-15年戦争下の教師教育- / 逸見勝亮. - 北海道大学図書刊行会 , 1991     北大ではどこにある?
    この本は、僕の専門分野と関わりがあるので読んだものだが、推薦文としては「良書だから読むべし!」としか言いようがない。実は,僕はこの著者である逸見先生(元教育学部長・現名誉教授)の“ファン”なのである。まだ逸見先生がご在職中にこの本を読んで疑問に思った点があったので、直接教えを請う機会をいただいたのだが、逸見先生のご教示、お人柄、生き方に痺れて、ファンになり今に至っている。その意味ではここに推薦するのが遅すぎたくらいだ。こういう推薦の仕方にきっと先生には眉をひそめられるかもしれないが、そこはお許しいただいて、多くの学生に読んでも...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-15     ぜひ読んでみてほしい

  52. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    現代アラブ文学への扉 
    バイナル・カスライン / ナギーブ・マフフーズ. - 河出書房新社 , 1988     北大ではどこにある?
    『千夜一夜物語』以外でアラブ文学を読んだという人は、おそらくごく少数だろう。現代アラブ文学と聞いてもおそらく作家名もイメージも思い浮かばないと思う。かく述べる僕自身も、自分がエジプトに赴任するまでそれらについては全く知らなかった。ここに挙げる『バイナル・カスライン』とその著者ナギーブ・マフフーズについてもエジプトに行ってから周囲の同僚や学生たちに教えられて知ったのだが、その当時既にこの本を含む「現代アラブ小説全集」は刊行されていた。マフフーズは、アラブ世界初のノーベル文学賞受賞者(1988年)であり、僕がカイロにいたときにはまだ存命し...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-23     名著

  53. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    長編の魅力ここにあり 
    チボー家の人々 / ロジェ・マルタン・デュ・ガール. - 白水社 ,      北大ではどこにある?
    実は僕は長編小説(特に日本の)を読むのは苦手である。登場人物が多くなるので関係を覚えきれない、というより覚えるのが面倒くさいという怠惰な精神のせいなのだが、その結果として山岡荘八『徳川家康』、中里介山『大菩薩峠』、塩野七生『ローマ人の物語』、埴谷雄高『死霊』と、挫折した作品は死屍累々である。その割に西洋文学の長編はなぜか日本文学ほど抵抗なくダンテ『神曲』、デュマ『モンテ・クリスト伯』、そしてこの『チボー家の人々』は結構夢中になって読めた。特に『チボー家の人々』は第一次大戦期のフランスという一種重苦しい時代を描きつつも主人公とな...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-13     名著

  54. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    西田哲学の実践としての西田評伝 
    西田幾多郎 / 大橋良介. - ミネルヴァ書房 , 2013     北大ではどこにある?
    西田哲学の難しさについてはその一端を、以前この「本は脳を育てる」に『善の研究』を推薦したときに書いておいた。この『西田幾多郎』は、現在西田幾多郎研究の世界水準を牽引する著者が、単に「伝記」=時間の流れの中である人物がなしたあれこれのことを書くだけでなく、まさに西田を一つの”出来事”とし、それに西田哲学を実践してみせることによって新たな西田像を明らかにしたものである。西田の伝記はこれまでさまざまなものがあったけれども、西田自身の歴史哲学的思索によって書かれた西田には、これまでのものにはない新鮮な人間像が見られる。「哲学」という特...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-06-22     ぜひ読んでみてほしい

  55. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「教養」は実践するものである。 
    人生を面白くする本物の教養 / 出口治明. - 幻冬舎 , 2015     北大ではどこにある?
    この本の推薦文は、僕の体験したエピソードの紹介を以てこれに替えたいと思う。

    大学時代に読んだ本の中に、イギリス人は初対面の相手にまず政治の話題を振って、相手がその話題についてこられなかったら「こいつは付き合う価値のない奴だ」と見切りをつける、という趣旨のことが書いてあった。いくら何でもそれは決めつけすぎだろうと思ったものの、そのことを忘れて十年ほどが経過し、機会を得てエジプトに赴任することになった。そして、彼の地でイギリス人のカップルと知り合い、ある日彼らの家に夕食に招待された。席についてまずワインで乾杯となったのだが、...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-02     ぜひ読んでみてほしい

  56. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    戦後日本の思想の絡まりを解きほぐす 
    現代日本思想論-歴史意識とイデオロギー- / 安丸良夫. - 岩波書店 , 2004     北大ではどこにある?
    この本は、戦後日本の社会科学(主として政治学と歴史学)の中で誰がどのような議論を展開しそれが誰に受け継がれ誰に批判されその中からどのような議論が新たに形成されてきたかを論じる第一部と、戦後の主に海外の歴史学研究方法論、丸山眞男の思想史研究、そして著者自身の現代社会状況分析からなる第二部とに分かれている。読者の関心に応じて興味を引かれる部分は異なると思うが、特に第一部は戦後の社会科学研究の“思想地図”といった内容になっており、広く日本の戦後政治や思想を学ぶ上での基本的な知識を提供してくれている。これらの方面に関心のある学生に一読...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-07-29     ぜひ読んでみてほしい

  57. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    偶像破壊の果てに聞こえるものは 
    ベートーヴェンとべートホーフェン-神話の終わり- / 石井 宏. - 七つ森書館 , 2013     北大ではどこにある?
    近年(だけの現象ではないのかもしれないが)、歴史上の人物像の見直しや新解釈の本が目白押しである(例えば、エヴァリスト・ガロアやレオナルド・ダ・ヴィンチ)。その中で、この本はベートーヴェンの名前の読み方が実は「べートホーフェン」である、というところから説き起こして、よく知られている(らしい)髪の毛を振り乱した眼光鋭い「ベートーヴェン」の肖像が実像とはずれていることに進み、あとはひたすらこれまで語られてきた「べートーヴェン」像を解体して実像を描き出そうとする。その書きぶりは、副題の「神話の終わり」どころかまさに「偶像破壊」といった勢いであ...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-03-10     ぜひ読んでみてほしい

  58. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    もう一つの「本は脳を育てる」 
    古典力 / 斎藤 孝. - 岩波書店 , 2012     北大ではどこにある?
    以前森鴎外の『舞姫』を推薦した時に、「古典」を読むということについて少しだけ書いたことがある。では「古典」とは何か、と言うことになると答えはそれほど簡単ではない。そのわかりやすい見取り図の一つがこの『古典力』である。これを読むと、読んだことがある本に再会したり、名前は知っていても(案外それで分かった気になって)読んでいない本に出遭ったりするだろう。そこで興味が湧いた本があればためらうことなく手にとって欲しい。なぜそれが「古典」になっているかは、斉藤氏の解説を手がかりに読めば自分なりの理解を獲得することができると思う。
    ちなみ...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-03-08     ぜひ読んでみてほしい

  59. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    新たな歴史哲学を考える原点として 
    歴史における言葉と論理-歴史哲学基礎論- / 神川正彦. - 勁草書房 , 1970-1971     北大ではどこにある?
    この本については、少し過激な(?)推薦文を書きたい。

    先日、某大学(敢えて名は秘す)の日本現代(1950年代以降)哲学の授業のシラバスを見ていたら、そこで取り上げてられているのが大森莊藏、廣松渉、坂部恵であった。しかしこれでは、結局戦前は「京都学派」で、それが戦後になったら“東大”に変わっただけじゃないか、という印象を拭えない。日本の哲学というのは京大と東大の“官学アカデミズム”の中で選手交代をやっていただけだとしたらあまりにも悲しい。ここに推薦する神川正彦は、今はもう哲学専攻の学生でも名前を知らない人が多いかもしれないが、...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-08-13     ぜひ読んでみてほしい

  60. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    日本陸軍の戦争理念に迫る 
    未完のファシズム-「持たざる国」日本の運命- / 片山杜秀. - 新潮社 , 2012     北大ではどこにある?
    アジア・太平洋戦争についてある程度勉強してきた時、頭に浮かんだ疑問というのが、「なぜ日本軍は兵員を無駄死にさせるような戦闘行動や作戦を行ったのか」ということだった。戦争-特に近代戦-にあっては、いかに戦闘手段の損失を少なくしつつ有利に戦況を進めるかということが目標になる。にもかかわらず、日本軍は、例えば「バンザイ突撃」等に見られるような「玉砕」戦を実行し、それらに対して日本軍の狂気じみた精神主義、あるいはまた「戦陣訓」の影響といったことが原因として指摘されてきた。
    この本は、第一次世界大戦以降の日本陸軍内部の戦争指導理念の変...  [続きを読む]

    登録日 : 2013-01-04     ぜひ読んでみてほしい

  61. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    類まれな人間観察の鋭さ 
    君主論 / マキアヴェッリ. - 岩波書店 , 1959     北大ではどこにある?
     マキアヴェッリあるいは『君主論』というと、後世に染みついた「権謀術数を弄する奴」というイメージが浮かぶが、実際の彼はそういうことを中心的な思想として言いたかったわけではない、というのが今日では一般的な理解となっている。この本は時として“政治思想の古典”などと言われるが、そういう読み方を一旦脇に置いて、彼がこの本の中でどのように人間を描き出しているかを読み取っていくと意外に面白い。それも、表だって書かれている様々の君主ではなく、名前すらも分からないような一般人や兵士たちを、国や君主にとってどのような存在と見ていたかに焦点を当て...  [続きを読む]

    登録日 : 2010-09-13     名著

  62. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    理想郷とは? 
    失われた地平線 / ジェイムズ・ヒルトン. - 新潮社 , 1959     北大ではどこにある?
    ジェイムズ・ヒルトンといえば『チップス先生、さようなら』で広く知られているけれども、この『失われた地平線』は、彼のもう一つの代表作とも言える、不思議な雰囲気をたたえたユートピア小説である。第一次大戦後の動揺するインドからヒマラヤを舞台に、英米人の主人公たちが思いがけない事件に巻きこまれて一種の理想郷的世界に紛れ込んでいく。特に、この小説の後半をしめるラマ教寺院の院長とイギリス人外交官の対話、そこから急転する脱出劇は読むものを引きつけて放さない面白さがある。(この小説に出てくる「シャングリラ」ということばは後に“理想郷”を示す代...  [続きを読む]

    登録日 : 2012-05-01     名著

  63. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    誤解の連続は新たな思想を生むか 
    仏教、本当の教え-インド、中国、日本の理解と誤解- / 植木雅俊. - 中央公論新社 , 2011     北大ではどこにある?
    大学で哲学を学んでいた時、先輩から「結局ドイツ観念論哲学というのは、フィヒテとシェリングとヘーゲルがカントをどのように“誤読”したかの歴史だ」と言われて、へえぇ、そんなもんなの、と思ったことがある。この本は、帯に書かれた「壮大な伝言ゲームの果てに。」という一句に惹かれて買ってしまったのだが、読んでみると結構面白かった。その面白さというのは、-著者には申し訳ないけれど-謂わば底意地の悪い面白さで、これまでの翻訳者(=謂わばその学問の世界ではお偉いさん)や、さらには道元や親鸞などの宗祖までもがどのように仏典を誤読してきたかが、宗教...  [続きを読む]

    登録日 : 2012-05-01     ぜひ読んでみてほしい

  64. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    もう一つの「ローマ人の物語」 
    ディスコルシ-「ローマ史」論- / マキアヴェッリ. - 筑摩書房 , 2011     北大ではどこにある?
    「ローマ人の物語」といえば塩野七生さんの著作があまりにも有名であるが、この『ディスコルシ』はマキアヴェッリによるもう一つのローマ史である。マキアヴェッリは、この本を書く時に間違いなく彼が生きていた時代のイタリアの運命を考えながら-その姿勢は『君主論』にもつながる-筆を走らせていた。歴史から何事かを学ぶ、ということがどのようなものか、この本から浮かび上がってくるだろう。

    登録日 : 2012-05-01     名著

  65. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    本は脳を鍛える! 
    クアトロ・ラガッツィ-天正少年使節と世界帝国- / 若桑みどり. - 集英社 , 2003     北大ではどこにある?
    天正少年使節と言えば、高校の日本史や世界史で習った記憶があるだろう。これは、博覧強記の著者が、西欧の図書館や文書館に収蔵されている第一次史料を丹念に読み解いて、天正少年使節をとりまく権力者たちとキリスト教信者たち、そしてキリスト教会内の様々な駆け引きを世界史の大きな変動の中に於いて捉えようとした大著である。
    ただ、表題に惹かれて読んでみたものの羊頭狗肉の感は否めない。550ページにのぼるこの本を230ページくらいまで読まないとそもそも天正少年使節が出てこないし、彼らのヨーロッパでの体験もむしろ彼ら少年使節よりはキリスト教会と教皇庁、...  [続きを読む]

    登録日 : 2012-05-01     

  66. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    論理学の深さを知る 
    現代論理学入門 / 沢田 允茂. - 岩波書店 , 1962     北大ではどこにある?
    今から50年前に出たこの本は、いまなお論理学の名著としての価値を失っていない。もちろん50年の間には論理学にも進歩があって、多値論理、様相論理、量子論理などはこの本では取り扱われていないし、用語や記号の表記も古いところがあるが、それは仕方ないこととしても、論理学を専門的に研究するならともかく、それ以外の幅広い哲学的関心に広く答え得る点でこの本をしのぐ内容のものはいまだにほとんどないと言って良い。こうした優れた本を絶版にしないで出し続けている岩波書店の“営業努力”は賞讃されてしかるべきである。
    この本を紹介する際に、記号の使用を最...  [続きを読む]

    登録日 : 2012-11-19     基本書

  67. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「英学」のもう一つの姿 
    日本における近代倫理の屈折 / 堀孝彦. - 未来社 , 2002     北大ではどこにある?
    さきにこの「本は脳を育てる」に、惣郷正明『日本英学のあけぼの』を推薦した。今度の『日本における近代倫理の屈折』は、惣郷の本にも登場する幕末の英語通詞・堀達之助の子孫である堀孝彦氏が、達之助の営為を通じて「英学」を語学としてのみではなく「人文学」と捉え、その内実が急激な近代化を急ぐ日本の中でいかなる変化を余儀なくされたか-著者のことばで言えば「屈折」を経たか-を明らかにし、現代にまで繋がるその「屈折」の影響を読み取ろうとしたものである。その「屈折」の延長線上には、明治期から現代までの日本の倫理道徳上の様々な問題が関連してくること...  [続きを読む]

    登録日 : 2012-11-19     ぜひ読んでみてほしい

  68. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    インチキを見抜く考え方を学ぶ 
    日本文化論のインチキ / 小谷野敦. - 幻冬舎 , 2010     北大ではどこにある?
    日本文化論というグループに括られる書物はものすごく(と言っていいほど)多くのものが出版されていて、他方、それらに対する批判の書も少なからず出されている。大学で日本文化を専門として学び研究する人間にとってそうした批判に目を通しておくのは当然だが、小谷野氏は、「日本文化論批判は行われているものの、批判のほうはいっこうに広まらないのである」と嘆いており、それがこの本を書いた動機の一部となっている。
    内容は、土居健郎『「甘え」の構造』やベネディクト『菊と刀』以来の日本文化論をめぐる研究状況に対するやや毒舌めいた批判であるが、新書版とい...  [続きを読む]

    登録日 : 2012-11-19     ぜひ読んでみてほしい

  69. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    いつの時代にも共通する「悶々」 
    恋愛論 / スタンダール. - 岩波書店 ,      北大ではどこにある?
    スタンダールの『恋愛論』と言えば、「結晶作用」や「恋愛の四分類」であまりにも有名であるが、これらのことばだけが一人歩きしてしまっている観がなきにしもあらずである。この本は、周知のようにスタンダール自身がある女性との恋愛に悶々としていた経験を下敷きにして、当時のヨーロッパの知識人の12世紀から18世紀にわたる古典的教養を背景として書かれた人間観察の集成と言えるものである。そこに描かれる様々な恋愛事情の「悶々」は、21世紀日本の我々には分かりにくい部分や、今なら御法度になる部分を含んではいるものの恋愛という経験について今なお教えてくれると...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-09-24     名著

  70. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    日本文化に絡まる「思いこみ」を引き剥がす 
    希望の倫理学-日本文化と暴力をめぐって- / 持田季未子. - 平凡社 , 1998     北大ではどこにある?
    「日本文化」は、実は様々な「思いこみ」や、近代に於ける「意味づけ」に絡め取られている。俗耳に入ってくるものの一つとして例えば「日本人は古来から自然を愛する」が挙げられよう。この本は、中世謡曲から始まって近代の帝国主義的イデオロギーまでを分析し、「日本文化」に絡みついている思いこみ、俗説、恣意的な意味付与を引き剥がそうとする試みである。その中から見えてくる「日本文化(と言われるもの)」の根底にはどうしようもない暴力的、閉塞的な性格が顕れてくる。それは単なる“ステレオタイプ”などと言ってすませられるレベルではない、重い倫理的課題を我々...  [続きを読む]

    登録日 : 2012-11-19     ぜひ読んでみてほしい

  71. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    運命の残酷さとは 
    ベルリン、愛の物語 : エメーとジャガー / エーリカ・フィッシャー. - 平凡社 , 1998     北大ではどこにある?
    これは、第二次世界大戦期のベルリンに生きた二人の女性同性愛者の運命の記録である。そして、彼女たちの1人はナチスの軍人の妻であり、もう1人は密かにナチスの目を逃れて暮らすユダヤ人だった。あとは本書を読んでいただく方がここに下手な推薦文を書くよりも遙かにその事実が持つ運命的な過酷さとそのような状況を生み出す戦争の本質を感じ取れると思う。彼女たち2人だけでなく、ナチス政権下のベルリンに潜伏するユダヤ人青年たちがどのようにして生き延びるかをそれこそ命がけで考え抜く場面を読んだときには胸が凍るような息苦しさを覚えたものである。

    この本...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-09-25     ぜひ読んでみてほしい

  72. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    『聖書』成立のドラマに迫る 
    聖書の起源 / 山形孝夫. - 筑摩書房 , 2010     北大ではどこにある?
    山形孝夫氏の本の中では、過去に『砂漠の修道院』をこの「本は脳を育てる」に推薦したことがある。あの本が砂漠の修道院に生きる修道士達の人間ドラマとして読めるとすれば、今回推薦する『聖書の起源』は、『聖書』という信仰の書が現実の一つの書物として成立していく過程に込められた(ナザレのイエスや福音書記者達の活動を含めた)様々な事象の展開としてのドラマと読めるだろう。要となるのは『聖書』を古代オリエント世界の神々との関係-ある意味ではパワーゲームと言い換えても良い-の中で形成されたものと...  [続きを読む]

    登録日 : 2011-01-04     名著

  73. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    家族が「家族」として語られるとき 
    戦略としての家族-近代日本の国民国家形成と女性- / 牟田和恵. - 新曜社 , 1996     北大ではどこにある?
    多くの人にとっては家族というのは気がついたら存在している(という意味で)自然な環境である。この本は、その自然なはずの家族が近代日本のジャーナリズムの中でどのように論じられ、どのようにその論じ方が転換し、どのように教育の中に取り込まれてきたかを考察し、近代日本人の意識の中に「家族」として根付く過程を明らかにしている。今日の夫婦別姓や、性別役割分担の問題、あるいは家族の「絆」ということを考えたい、あるいは、そうしたことに興味がある学生にお薦めしたい本である。

    登録日 : 2014-08-23     学習に最適

  74. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    異文化の底辺で詩人は何を見たか 
    ねむれ巴里 / 金子光晴. - 中央公論新社 , 2005     北大ではどこにある?
    詩人・金子光晴は、昭和初期に妻とともにパリに渡って住み着く。この本は、そのパリ生活の記録であるが、金の工面に困った金子はそれこそ何でもありの阿漕な金稼ぎをして糊口をしのぎ、社会の底辺を這い回るようにして生き抜いていく。同時に、パリという異文化の中で、同じように底辺にうごめく日本人や異国人、そしてフランス人たちの生活を驚くほど鋭い観察眼で活写していく。ここに描かれるパリ(フランス)の姿は、「芸術の都」として近代の日本人エリートが憧れた世界とはほど遠く、様々な葛藤を抱えて死んでいく人間の描写も多い。こうしたことは、昭和初期のパリ特有の...  [続きを読む]

    登録日 : 2013-02-27     名著

  75. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    ワールドカップの原点はここだ! 
    フットボールの原点-サッカー、ラグビーのおもしろさの根源を探る- / 吉田 文久. - 創文企画 , 2014     北大ではどこにある?
    サッカー(フットボール)の起源は諸説あるようで、スポーツにほとんど関心がない推薦者でもイギリス起源かイタリア起源か、くらいのことは知っている。この本は、イギリスの民俗フットボールにその起源を求め、今なお残るそのゲームの現場にいくたびも足を運んで取材とインタビューを重ねた筆者の労作である。ただのスポーツ蘊蓄本と思うなかれ、この本では「民俗フットボール」からサッカーへの変化の歴史が史料に基づいて丹念に追跡され、同時にそのような変化を促したイギリス社会の歴史についても理解を深めることができるものとなっている。サッカーやスポーツだけで...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-03-08     ぜひ読んでみてほしい

  76. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    日本と日本人を見る目の背後にあるもの 
    日本人論・日本論の系譜 / 石澤靖治. - 丸善 , 1997     北大ではどこにある?
    この本は、ルース・ベネディクトの『菊と刀』以後の代表的な日本人論・日本論を取り上げてそれらを関連づけて論じることを通して日本と日本人に対する内外の見方がどのように関連し合ってどう変化してきたかのわかりやすい見取り図を描き出すものである。
    この本の眼目は、所謂広義の「日本(文化)論」と言われるものを「日本論」と「日本人論」に分けてそれぞれが登場してくる歴史的・政治的文脈を明らかにしている点である。これを読むと、結局のところ、“代表的な”(と言われている)「日本人論」や「日本論」は、実は-カレル・ヴァン・ウォルフレンを除くと-基本的...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-03-10     基本書

  77. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「馬鹿ばかしさのまっただ中で犬死しないための方法」とは何か? 
    赤頭巾ちゃん気をつけて / 庄司薫. - 新潮社 , 2012     北大ではどこにある?
    この小説は、一時期多くの読者の心を捉え、近年また出版社を替えて文庫化されるほどに読み継がれてきた名作である。大学紛争(と言ってももう知識としてしか知らない学生ばかりだろうが)で1969年度の東大入試が中止になるという時代背景の中、東京都立日比谷高校3年生の「庄司薫」君の饒舌的で独白的な文体を軸に綴られたこの作品を高校時代に最初に読んだとき、僕は作者が本当に日比谷高校3年生ではないかと思ったほどである。著者の庄司氏と僕はちょうど20歳の年齢差があるが、僕自身―全盛期末期か凋落期かの違いはあれど―都立高校に在籍し卒業した者として主人公の「薫」君...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-15     ぜひ読んでみてほしい

  78. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    東ユーラシア世界に目を開く 
    「シベリアに独立を!」-諸民族の祖国(パトリ)をとりもどす- / 田中 克彦. - 岩波書店 , 2013     北大ではどこにある?
    推薦者の義父は戦後シベリアで抑留生活を送った。そのことについて推薦者には何も語らずに亡くなったが、そこでの苦労は並大抵のことばで語れるものではなかったようである。シベリア、と聞けば推薦者も含めてかなりの日本人は戦後のシベリア抑留のことを、あるいはまた天然ガスパイプラインを、さらには水野晴郎の映画『シベリア超特急』を思い浮かべるかと思うが、この本で描かれるのは、そうしたイメージとは異なる自然豊かなシベリアで独立運動を戦い抜いたポターニンという人物の生涯である。そのまわりには、ドストエフスキーやバクーニンをはじめ、アイヌ語研究で有...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-03-08     ぜひ読んでみてほしい

  79. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    日本語教育に関わりたい人に 
    日本のことばとこころ / 山下秀雄. - 講談社 , 1986     北大ではどこにある?
    日本語教師として30年近く働いてきてまだ人生を回顧するのは早すぎると思うけれども、この仕事を選んだ自分にとって「恩師」と呼べる先生は3人いる。この推薦書の著者である山下秀雄先生もそのお一人で、講習会や研究会で多くのことを教えていただき、海外に教えに行っていたときにもいろいろと心配りをしていただいた。先生は、平成10年9月に交通事故で亡くなられ、その前日の夕刻に僕に宛てて出されたお手紙がこの世での最後の書簡となった。それは今も僕の手元にある。
    本書は、山下先生が、日本語教師としての長年の経験と研究から、外国語としての日本語を見るための...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-07-12     基本書

  80. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    戦前・戦中・戦後を駆け抜けた哲学者の生き方に迫る 
    戦争が遺したもの-鶴見俊輔に戦後世代が聞く- / 鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二. - 新曜社 , 2004     北大ではどこにある?
    後藤新平の孫、鶴見祐輔の子として生まれ、華麗な閨閥の中で一種の拗ね者として幼少期を送った鶴見が、アメリカ留学から戦後市民運動までの自身の生き方と考え方、その過程で関わった様々な人々とのつながりを余すところな語った貴重な証言である。戦争(というより戦場)の実相、市民運動のあり方、知識人と言われる人々の生態など、実体験した者でなければ語れない生々しさがある。一人物の座談的伝記としても、歴史書としても読み応えがあるのでぜひ一読を勧めたい。

    登録日 : 2014-08-23     ぜひ読んでみてほしい

  81. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    読み物として面白い文章読本 
    思考のための文章読本 / 長沼行太郎. - 筑摩書房 , 1998     北大ではどこにある?
    ここ何年か、「一般教育演習(フレッシュマンセミナー)」で日本語文章表現関係の授業を開講しており、その参考とするためにあれこれの文章読本を45冊ほど読んで、今46冊目を読んでいる。率直に言って授業の素材として役に立ったものはほとんどなく、推奨できるものは4、5冊程度である。そして、これらの推奨できる数少ない本も、どう言ってみても結局はハウツー本であり、面白さという点ではほとんど期待できない。その中にあって、長沼氏のこの本は唯一と言っていいほど読み物としての面白さがある文章読本である。この本を通して読者は、文章作成の根本にある「問い」を立てる...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-06-20     学習に最適

  82. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    異文化は実は… 
    異文化はおもしろい / 選書メチエ編集部. - 講談社 , 2001     北大ではどこにある?
    この本は21人の著者たちによるエッセイの集成である。
    『異文化はおもしろい』という表題通り、はじめのうちは確かに「おもしろい」のだが、徐々に「そうなのだろうか?」と考えさせる内容になっていき、最後の「V 異文化が照らす自文化」になると実は異文化と関わるということはそれほどおもしろいばかりでもなくむしろややこしいものであるのだということを痛感させられる。しかし、この本に書いてあることぐらいの基礎的な見識を持たないと異文化と関わっていく(はやりことばで言えば「グローバルに活躍する」)ことなどできないのではないかと考える。この本を足が...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-12-05     基本書

  83. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    哲学書を読み解く技術とは 
    『純粋理性批判』を噛み砕く / 中島義道. - 講談社 , 2010     北大ではどこにある?
    中島義道氏は、いろいろなところで一人っきりで哲学書を読むことの危うさを論じ、ご自身の「哲学塾カント」のホームページでも「哲学書を正確に読み解くには独特の技術が必要で、いい加減なわかり方ほど危険なことはありません。」と書いている。その中島氏がカント『純粋理性批判』の「アンチノミー論」を中心に据えてカントの-そしておそらくは中島氏の考える、「哲学書」の-読み方を実践したのが本書である。
    この本は、難解な哲学書である(と思われている)『純粋理性批判』について意外にわかりやすいことを書いているのだ、というスタンスからカントの行論を追...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-12-04     ぜひ読んでみてほしい

  84. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    巧妙化・複雑化する戦争ビジネスを知る 
    民営化される戦争-21世紀の民族紛争と企業- / 本山美彦. - ナカニシヤ出版 , 2004     北大ではどこにある?
    戦争に関わる企業と聞くと、兵器・武器の製造売買を行う-古いことばで言えば-「死の商人」が思い浮かぶ。それはそれとして現在もあることに変わりはないが、この本を読むと、思いがけないところで思いがけない企業が、国家(この本で主題的に取り上げられるのはアメリカだが)の中枢部と結託して戦争の後方支援活動などに食い込み利益を上げていることが分かる。さらには、こうした企業が、アフリカなどの資源を保有する後進国で資源ビジネスに目を付けてに内戦=民族対立や紛争を煽っている構図までもが明らかにされる。民族紛争の解決と貧困の撲滅は間違いなく21世紀の世...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-04-11     HOT TOPIC!(時事的なもの)

  85. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「近代」は人をいかに突き動かしたか 
    日本近代思想の相貌-近代的「知」を問いただす- / 綱澤満昭. - 晃洋書房 , 2001     北大ではどこにある?
    この本の表題には「日本近代思想」とあるけれども、おなじみの人々、例えば福沢諭吉や内村鑑三、新渡戸稲造、そして西田幾多郎や田邊元や和辻哲郎などはまったく主題化されていない(叙述の一部に僅かながら登場することはあるが)。著者は9人の人物を取り上げ、それらの人々の姿を描き出すことで「近代」という時代を捉え返しさらにそれらの捉え返しが「現代」、あるいは戦後日本に何をもたらし得るか、ということを問題にする。9人の人物は、宮沢賢治と長谷川如是閑を除けば今日のアカデミックな思想史研究では殆ど顧みられることがない人々ではあるが、それだけに日本の「...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-12-12     ぜひ読んでみてほしい

  86. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    留学する前に読んでおこう! 
    魯迅の日本 漱石のイギリスー「留学の世紀」を生きた人びとー / 柴崎信三. - 日本経済新聞社 , 1999     北大ではどこにある?
    国を挙げての「留学」ばやりである。文部科学省もAKB48まで動員して「トビタテ!留学JAPAN」なるキャンペーンまでやっている。北大から海外協定大学に留学する学生も増えているようで結構なことである。(「留学」したことがない僕はちょっと僻んでこの推薦文を書いているのだが)かつては「留学」というのは決定的にエリートへの道筋であった。筆者はその時代に「留学」し(て苦労し)た代表者としての魯迅と漱石を軸にして、「留学」ということが日中それぞれの社会と個人にどのような意味を持ったかを浮かび上がらせようとしている。今と昔で意味合いは違うものの「留学」と...  [続きを読む]

    登録日 : 2015-11-28     基本書

  87. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    日本の未来を考える視点はどこにあるのか 
    日本 / 姜尚中・中島岳志. - 河出書房新社 , 2011     北大ではどこにある?
    著者二人の対談であるこの本は、僕なりの理解でまとめると「国家権力に絡め取られない自分のあり方をどう構築するか」という問題意識で貫かれており、それを、過去の歴史的文脈も振り返りながら徹底して論じようとしたものである。その基盤をなす発想は「パトリ」(故郷、郷土、あるいは根拠地といったもの)であり、熊本出身の在日韓国人二世である姜氏と大阪出身の中島先生がそれぞれの「パトリ」を意識しつつ、国家権力、あるいはその表象としての「東京」を挟撃するといった展開となっている。読者はそれぞれの「パトリ」に応じてこの対談にさまざまな共感や反発を感じ...  [続きを読む]

    登録日 : 2015-01-19     ぜひ読んでみてほしい

  88. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    異質な他者との共存は可能か 
    地球(テラ)へ… (全3巻) / 竹宮惠子. - 中央公論新社 , 1995     北大ではどこにある?
    この作品は日本のSF漫画史上に語り継がれるべき大傑作である。それがこの北海道大学附属図書館に置いてあることについて、北大附属図書館スタッフの見識を僕は高く評価したい。単に傑作漫画を置いているからということではなく、この漫画が突きつけてくるあまりにも重い問いが、今日の我々にとって何よりも考え抜かれ、かつ実践されねばならない問いだからである。
    グローバル化した社会で異文化としての他者と向き合ってそこで、関わりを深めていこうとするか相手を拒絶するかの選択に迫られることは現代では以前よりも遙かに頻繁にかつ容易に起こりえる。この漫画は、...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-12-04     名著

  89. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「まとも」な議論をするために 
    反論の技術-その意義と訓練方法- / 香西秀信. - 明治書院 , 1995     北大ではどこにある?
    この本は実は一時期僕の日本語の授業のタネ本であった。どのようにしたら留学生に、与えた課題とかみ合う文章(議論)を書けるように指導できるのか困っていたときにこの本に出会って、その説得力ある書きぶりと豊富な実例に蒙を啓かれる思いがしたものである。(ただ、正直、この本の助けを借りて行った授業実践に対する留学生の反応は賛否真っ二つであった。)
    書名に「技術」と書いてあるが、所謂ハウツー本の域を超えて「反論する」ということが学問にとっていかに重要な知的営為かを詳しく説いており、読み物としてもおもしろい。この本に書いてある「訓練方法」を...  [続きを読む]

    登録日 : 2015-02-20     学習に最適

  90. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    老いと社会のつながりを考える 
    暴走老人! / 藤原智美. - 文藝春秋 , 2007     北大ではどこにある?
    最近、老人(高齢者)の犯罪がメディアで報道されることが多くなったように思う。老人が犯罪をするからメディアがニュースネタとして飛びつくのか、本当に老人の犯罪が増えているのかは慎重に考える必要があるだろう。しかし、少なくともこれまでの社会の(あるいはメディアの)あり方として、若者の犯罪や不作法には寛容ではなかった一方で老人の犯罪や不作法(特に後者)が大目に見られてきた面はある。このページを読んでいる人の中にも、町中での老人の振る舞いに「年寄りだから何でも許されるってわけじゃねーよ!」と思ったことがある人がそこそこいるに違いない(実は、...  [続きを読む]

    登録日 : 2009-12-03     ぜひ読んでみてほしい

  91. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    信仰をめぐる様々な問題を考えさせる本 
    黒い海の記憶-いま、死者の語りを聞くこと- / 山形孝夫. - 岩波書店 , 2013     北大ではどこにある?
    山形孝夫氏の本をすでに「本は脳を育てる」に2冊推薦したが、この『黒い海の記憶』は東日本大震災による犠牲者の鎮魂を軸として、山形氏自身の留学体験や信仰に触れながら宗教或いは信仰が持つ功罪両面に鋭い考察を加えたものである。盛り込まれた話題が豊富であり、読者はそれぞれの関心に応じて思考を触発されると思う。僕は、若き日の山形氏が留学先で出会った黒人キリスト教会をめぐる体験談と白人によるキリスト教のあり方の考察、そして、死者の祟りの封じ込めのための宗教へと変質した仏教に対する批判に考えさせられるものがあった。
    ただ、残念なのは、これほ...  [続きを読む]

    登録日 : 2015-07-18     ぜひ読んでみてほしい

  92. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    何もそこまで言わなくても… 
    日本の大学に入ると、なぜ人生を間違うのか / 吉田良治. - PHP研究所 , 2015     北大ではどこにある?
    日本の大学で教職に就いている人間から見ると神経を逆なでされるような表題であるが、それなりの面白さと説得力はある本である。著者は、アメリカの大学の「ライフスキル・プログラム」に足場を置いて、国際通用性に乏しいに日本の大学教育を容赦なく批判していく。この著者の議論は、見方によってはアメリカの大学に留学してアメリカかぶれになった人間の一面的な判断ということもできるが、とりあえず日本の大学教育が抱える問題を概観するには便利な書物であるのは間違いない。あとは読んだ人がそれなりにどう考え、実行するかである。

    登録日 : 2015-07-14     HOT TOPIC!(時事的なもの)

  93. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    わくわくするナイル源流への旅の記録 
    ナイルに沈む歴史-ヌビア人と古代遺跡- / 鈴木八司. - 岩波書店 , 1970     北大ではどこにある?
    最近(特に今世紀になってから)、岩波新書(新赤版)がつまらなくなってきた。社会の流れが速くなるのに歩調を合わせすぎているのか、時事的なものが多くなり-それはそれで必要だと思うが-長く手元に置いて何度も繰り返して読みたくなるような内容のものが減っている気がする。ここに推薦する青版の『ナイルに沈む歴史』は、僕が中学生の時にでた本であるが、アスワン・ハイダムの建設によるアブ・シンベル神殿の水没を回避するための国際プロジェクトの一環として著者の鈴木氏が行ったエジプト・ナイル川上流地域の踏破記録である。それまでもハワード・カーターによる...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-02-08     名著

  94. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「分からなさ」を味わい、楽しむ 
    哲学とは何か / ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ. - 河出書房新社 , 1997     北大ではどこにある?
    この推薦文は、「本は脳を育てる」の趣旨には反するが、たまにはこういった推薦もあっていいのではないかと思い、ここに挙げることにした。

    哲学の本を数多く読んできたが、これほど分からない本を読んだことはない。普通は分からなければなんとか分かろうと努力し、それなりに考えながら読むものであるが、この本は読んでも読んでも分からず、そのうちにその「分からなさ」が心地よく思えてきさえする。読んでいる自分が「分からなさ」という感覚に身をゆだね、それを楽しむ境地(?)に至った気分になってくるのである。それは著者両名の巧妙な仕掛けにあり、著者たち...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-01-28     ぜひ読んでみてほしい

  95. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    やっぱり大学の未来は心配だ。 
    Fランク化する大学 / 音真司著. - 小学館 , 2016     北大ではどこにある?
    この本を「本は脳を育てる」に推薦することに対して旧帝国大学である“天下の北海道大学”の真面目な先生や優秀な学生から異論や批判が巻き起こるかもしれない。筆者自身も、この本に書いてあることは100%そのままであるとは思いたくないし、著者がやや大げさに書いている=「話を盛っている」面もあるかもしれないと思っている。しかし、他大学につとめる友人知人の現場の声を聞くと、ここに書いてあることを頭ごなしに否定することもできないと思う。そして、筆者自身が何より恐れるのは、―ここまでひどくないとしても―これらに近似する状況がここ数年の間に静かに北海道...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-08-07     HOT TOPIC!(時事的なもの)

  96. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    西洋哲学の基本の「き」 
    方法序説 / ルネ・デカルト. - 岩波書店 , 1997     北大ではどこにある?
    「われ考える、ゆえにわれあり」や「明晰判明」、あるいは”方法的懐疑”といったことばであまりにも有名な、西洋(近世)哲学の始まりを飾る書である。哲学書というと初めから難しいものと考えて敬遠してしまう向きもあるかもしれない-そのような書物があることを否定はしない-が、この本は、きちんと読んでいけばそれなりに分かるように書かれているものである、同時にまた、西洋近世~近現代の哲学が多くの考えるべき課題をそこからくみ取っていった、西洋の知の基本をなす書物でもある。そのようなものを読んでおくことは、洋の東西を問わず学問を研究しようとするも...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-03-12     基本書

  97. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    多文化社会とは? 
    多文化教育の研究ーひと、ことば、つながりー / 朝倉征夫. - 学文社 , 2003     北大ではどこにある?
    「多文化社会」や「異文化(間)コミュニケーション」というのは今や大学教育に於ける”流行語”と言ってもいいと思うのだが、他でもないこの北大で「多文化交流科目」を担当していると、学生の殆どが(場合によっては教員も)「多文化」あるいは「異文化」ということを”外国人(非日本人)との交流”だと思い込んでいる実情が見られ、そのたびになんとかしなければ、と思ってしまう。

    この本は三部から成るが、第一部の総論を除くと、半分を占める第二部は外国(人)に関する「多文化」状況ではなく、この日本国内に於いて文化的背景を異にする人々に関する考察で...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-03-12     学習に最適

  98. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「倫理」は可能か? 
    支配と服従の倫理学 / 羽入辰郎. - ミネルヴァ書房 , 2009     北大ではどこにある?
    羽入辰郎は、過去、『学問とは何か』で些か刺激的な言説を思想界に投げかけてきた研究者である。本学経済学研究科の橋本努教授が、そのホームページで「羽入-折原論争の展開」を企図され、そこに羽入の著作に対する見解が数多く寄せられたが、残念ながらこの「論争」は、生産的な方向に向かう前に羽入によって『学問とは何か』の中で終結を宣言されてしまった。
    本書は、羽入の講義録を基にまとめられたものであるが、「倫理」をもし「よく生きること」と解釈するなら、「支配と服従の倫理」とい...  [続きを読む]

    登録日 : 2010-01-04     ぜひ読んでみてほしい

  99. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    日本語研究の面白さに触れる 
    ヴァーチャル日本語役割語の謎 / 金水敏. - 岩波書店 , 2003     北大ではどこにある?
    最近は学問研究、あるいは学術研究の対象化のペースが極度に速くなっていて、ついこの間「オネエ言葉」という表現が使われ出したと思ったらもうオネエ言葉の研究書が出ている、といった具合である。この本は、様々な職業・性別・時代等々に応じて現れる固有の(と見える)表現を「役割語」という概念によって分析することで見えてくる日本語の姿を明らかにしたものであるが、古今東西の文学作品からマンガ、はては『スター・ウォーズ』から『ハリー・ポッター』まで題材にしてまさに縦横無尽に切りまくる、読み応えのある一冊となっている。日本語に興味はあるが難しそうで...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-02     ぜひ読んでみてほしい

  100. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    映像芸術の極致! 
    オルフェ(DVD,VHS) / ジャン・コクトー. - アイ・ヴィー・シー ,      北大ではどこにある?
    フランスが生んだ万能の芸術家-その活動は詩、小説、音楽、絵画、舞台演出、映画に及ぶ拡がりを持つ-ジャン・コクトーの、まさに幻想・幻視芸術の粋を極めた作品である。この映画を高校生の時に初めてテレビで見たのだけれども、見終わって恥ずかしげもなく「ジャン・コクトーは天才だ!」と叫んでしまったことを覚えている。その後何回もこの映画を見てきたが、見るたびに上の感想は間違いなかったと感じている。
    物語は、ギリシャ神話のオルフェウスとエウリュディケーの悲劇を下敷きにしているが、コクトーの奔放不羈な想像力によって、生と死、詩人(芸術家)の運...  [続きを読む]

    登録日 : 2010-03-22     名著

  101. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    歴史学者とはどのような人々か 
    昭和史学史ノート-歴史学の発想- / 斉藤孝. - 小学館 , 1984     北大ではどこにある?
    歴史学者が歴史研究を行ったり歴史書を書いたりするときには当然その歴史観が反映される。史学史とはそうした歴史観や歴史記述の態度・意識の歴史である。この本では、具体的な個々の(主に昭和戦前・戦中期の)歴史学者を取り上げて通観することによって昭和の歴史研究がどのようなものであったかを示そうとするものである。歴史に興味のある学生、歴史学者の仕事を覗いてみたい学生、昭和時代を何らかの学問の研究対象としたい学生にお勧めする。

    登録日 : 2016-07-29     ぜひ読んでみてほしい

  102. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    日本語教育と国語教育をめぐる日中の結びつきを知る 
    現代中国の日本語教育史-大学専攻教育と教科書をめぐって- / 田中祐輔. - 国書刊行会 , 2015     北大ではどこにある?
    僕が30年以上前、初めて日本語教育に関わったときに学校から与えられた教科書は東京外国語大学附属日本語学校編『日本語Ⅱ』だった。内容を一目見て驚いたのは、僕自身が小学校の国語教科書で勉強した文章が幾つか教材として課を為していることだった。当時、日本語教育についての知識も技術もろくになかった僕でも「日本人小学生向けの教科書と外国人留学生向けの教科書が同じでいいものか」と疑問に思ったのを覚えている。しかし、実態としては、日本の国語科教科書の文章は、様々な形で外国人向け日本語教科書に取り入れられていたのである。そして、それは日本国内で出版...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-03-15     ぜひ読んでみてほしい

  103. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    あなたの知らないディープな大学図書館 
    変わりゆく大学図書館 / 逸村裕・竹内比呂也. - 勁草書房 , 2005     北大ではどこにある?
    北大図書館を頻繁に利用する人や図書館ウェブサイトをよく見る人の中でどのくらいの人が図書館トップページの一番右にある「附属図書館について」を見ているだろうか。図書館ホームページの中で蔵書検索やお知らせと同じくらい閲覧されていいページはこの「附属図書館について」の中にある様々な情報だと思う。それほど更新頻度が高いわけではないが、図書館がどのように北大の研究・教育活動に貢献しているか、そのために職員の方々がどのような仕事をしていらっしゃるかがよく分かる。時間があるときには是非見てほしい。それと関連して...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-26     ぜひ読んでみてほしい

  104. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    もう今はない旧制高校の青春とは 
    どくとるマンボウ青春記 / 北杜夫. - 新潮社 , 2000     北大ではどこにある?
    僕が大学時代に教えを受けた先生方の半数以上は、旧制高等学校の卒業生だった。旧制高校は、戦後は新制大学(の一部)になり、僕ら新制高校卒業世代は知識としてそういうものがあったという形でしか認識していないのだが、実際に旧制高校生活を送った先生方にはその後の人生のスタイル(というと安っぽく聞こえてしまうが)を決定するような大きな影響力のある教育機関だったらしい。最早体験的に知ることのできない、そうした旧制高校の魅力とそこで学生生活を送った著者自身の内面的な成長過程、そして、思わず笑いを誘う、あるいは人生の意味を真剣に考えさせるエピソードの数...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-15     名著

  105. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    数学界に革命をもたらした「不完全性定理」とは何か 
    ゲーデルは何を証明したか-数学から超数学へ- / E.ナーゲル&J.R.ニューマン. - 白揚社 , 1999     北大ではどこにある?
    この本は、1968年に『数学から超数学へ : ゲーデルの証明』というタイトルで出された本の新装版である(原著は1958年!)。「ゲーデルの不完全性定理」というのを聞いたことがある人は、理数系でなければ必ずしも多くはないかもしれないが、「アインシュタインの相対性理論」や「ハイゼンベルクの不確定性原理」にも比するべき、数学に大転換を迫った原理である。この本は、その決して易しくはない「不完全性定理」をできる限りわかりやすく解きほぐして説明しようとするものであり、理数系の学生のみ...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-06-27     基本書

  106. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    現代哲学の源流をたどる 
    人間知性の探究・情念論 / デイヴィッド・ヒューム. - 晢書房 , 1990     北大ではどこにある?
    現代哲学、あるいは哲学史に於ける「現代」というのがなに/いつを指すのかは色々議論があるであろうけれども、(ニーチェを別にすれば)20世紀以降の西洋哲学のかなりの部分が目指そうとしたことは、ヒュームの哲学を練り直し、彼が問題としてことを問い直して現代に甦らせようとすることだったと言って良い。(例えば、ジョン・デューイはそのことをはっきりと述べている。) ヒュームは、哲学史の教科書的に言えば、懐疑論者でありイギリス経験論の完成者であるなどと言われるが、-そう見ることも可能であるとしても-彼が目指したのは日常的な経験をいかに概念化して人間の...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-23     ぜひ読んでみてほしい

  107. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    さらに一段上の文章表現力のために 
    論理が伝わる世界標準の「書く技術」-「パラグラフ・ライティング」入門- / 倉島保美. - 講談社 , 2012     北大ではどこにある?
    ここに何度か書いたことだが数年前から「一般教育演習(フレッシュマンセミナー)」で文章表現が苦手な学生のための日本語文章表現法の授業を展開してきた。ただ、色々と訳あってこの授業は今年度で終わりにすることにした。そこで、これに替わるものとして、また、“苦手”のレベルを脱した学生がさらに上のレベルの文章表現力を身につけてもらう上で参考にすることができるようにこの本を推薦しておく。この本は、それ自体が主題としている「パラグラフ・ライティング」によって書かれているので、技法と実例を同時に身につけることができる点で優れている。あとは練習あるの...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-07-31     基本書

  108. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    おじさんも、若い人も語学を楽しむために 
    おじさん、語学する / 塩田勉. - 集英社 , 2001     北大ではどこにある?
    あるきっかけからフランス語を勉強することになったおじさんの奮闘記、という形をとって語学を身につけるための秘訣と、それだけでなく異文化との関わり方を気づかせてくれるユニークな本。語学大好きな人にも語学嫌いな人にもお薦めしたい。
    ただ、悲しいかな外国語の先生は日本語はお得意ではないようで、この中にも日本語の間違いが一箇所ある。探してみてほしい。

    登録日 : 2016-12-15     学習に最適

  109. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「男対女」の構図をいかに乗り越えるか 
    男子問題の時代?-錯綜するジェンダーと教育のポリティクス- / 多賀太. - 学文社 , 2016     北大ではどこにある?
    ジェンダー、あるいは男女平等/差別の問題が語られるときにほぼお決まりになっているパターンとして「男は支配する側、女は支配される側」あるいは「男は加害者、女は被害者」という言説がある。日本の社会のかなりの部分でそれは当てはまるのかもしれないが、僕はこの見方には強烈な反発を持っている。それは、“日本語教師”という「女性8割、男性2割」の業界で働いてきた経験から、女性が多数者側になれば「女性は加害者、男性は被害者」という事態も容易に出現することを知っているからである。そのような意味で日本のジェンダー研究はまだ色々なことを考え直さなければ...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-08-15     HOT TOPIC!(時事的なもの)

  110. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    古典と現代をつなぐ読み方を知る 
    社会契約論-ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ- / 重田園江. - 筑摩書房 , 2013     北大ではどこにある?
    高校の世界史や政治経済の授業で「社会契約論」という考え方を知ったときに感じたのは、ルソーにせよロックにせよなぜあの時代の西ヨーロッパの思想家がそういうことをわざわざ考えなければならなかったのか、という強烈な違和感だった。「社会」というものをみんなで作ろう(?)といった感じで最初に約束事をするという発想自体について行けなかったのである。実は今でもその違和感は抜けきらず、“起源”ということをやたらに理屈を付けて解き明かしたがる(そのくせ割合に最後は「神」が出現して一切が片付く)西欧の思想にとことん付き合いきれない思いがある。
    こ...  [続きを読む]

    登録日 : 2016-08-07     ぜひ読んでみてほしい

  111. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    一つの国を知るということ 
    オーストラリアの言語教育政策 / 青木麻衣子. - 東信堂 , 2008     北大ではどこにある?
    オーストラリアという国は、私が小学生の頃(!)は「白豪主義」というキーワードとともに社会科で教えられていた。しかし、その後この国は「白豪主義」から「多文化主義」へと大きな方針転換を遂げることになる。本書は、オーストラリアの言語教育政策に焦点を絞って、上記の方針転換過程でそこに浮かび上がる「国家統合」と「多文化主義」の緊張関係を明らかにした労作である。しかし、ただ言語教育政策の検討だけでなく、(比較)教育研究や地域研究、マイノリティ研究に関してもこの本が提供してくれる知見は多い。広い意味での社会科学研究とは何かを、そしてまた、その方法...  [続きを読む]

    登録日 : 2010-01-14     ぜひ読んでみてほしい

  112. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「大学」の行く末を考えたい人に 
    学問の下流化 / 竹内洋. - 中央公論新社 , 2008     北大ではどこにある?
    竹内洋の著書を既に何冊か読んでいる人が、その社会学的分析によって表題の「学問の下流化」という現象を理論的に解明し、その処方箋を論じたものであると期待して読むとやや肩すかしを喰います。これは別段否定的に評価しようというわけではなく、書評や短い評論の集成という書き方のスタイルに起因するもので、内容は広い意味での学問論や大学論を幅広く取り上げ、そのある種の病理的状況を竹内氏独特の切り口と語り口で捌いていくものになっています。「学問の下流化」そのものが全体的な主題とは言い難い面があるので、読み方によっては不満が残る面もあるかもしれませ...  [続きを読む]

    登録日 : 2009-06-23     HOT TOPIC!(時事的なもの)

  113. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    芸術は人生を救済するか 
    虚空遍歴 / 山本周五郎. - 新潮社 , 1966     北大ではどこにある?
    山本周五郎というと『樅ノ木は残った』や『赤ひげ診療譚』などが思い出されますが、この『虚空遍歴』は、それらとはまた違った人間像を描いています。行きつけの古書店のご主人とこの本の話になったとき、「暗い話ですよね」と言われましたが、確かにハッピーエンドは全くありません。しかし、自分の追い求めるもののために、周りの人間たち-「世間」と言い...  [続きを読む]

    登録日 : 2009-06-08     ぜひ読んでみてほしい

  114. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    「戦争」を陳腐なことばで語らないために 
    ひとりの記憶 : 海の向こうの戦争と、生き抜いた人たち / 橋口譲二. - 文藝春秋 , 2016     北大ではどこにある?
    この本は、太平洋戦争前後に植民地を含む海外に渡り、様々な事情でその地に残り、あるいは再渡航してそこで生き抜くことを選んだ人々からの聞き取りの記録である。現代に於ける戦争に対する反対・批判・抑止のことばの一つとして「戦争は人間の運命を狂わせる」といったものがある。それを否定するつもりはないし、そうした事例もあることを認めはするが、この本を読んだあとでここに描かれている人々の人生が戦争によって“狂った(あるいは狂わされた)”と―「戦争を知らない子供たち」である我々が―いうことには大きな躊躇いを覚えてしまう。その背後にあったはずのお...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-02-19     ぜひ読んでみてほしい

  115. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    バッハを聴くために 
    J・S・バッハ / 礒山雅. - 講談社 ,      北大ではどこにある?
    私事から始めるので恐縮だが、僕の父親は、生前「バッハは何を聴いても同じに聞こえるから嫌いだ」と言っていた。まあ、ギターで「湯の町エレジー」(知らないだろうなぁ)を弾くような父親だったから、バッハにそれほど縁があったとは思えないが、幼少時の僕には結構このことばは刷り込みになってしまい、後年楽器を習うようになってからもバッハは聴くのを避けていたところがある。しかし、チェロを習うようになって「無伴奏チェロ組曲第一番」を自分で演奏してみたとき、一見単純に見える楽譜から実に調和に満ちた曲が立ち現れてくるのに驚き、いかに父親のことばがいい...  [続きを読む]

    登録日 : 2014-06-21     名著

  116. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    現代に活きる「古典」 
    人口論 / マルサス. - 光文社 , 2011     北大ではどこにある?
    この『人口論』は、食糧供給と人口増加の関係を軸に貧困や失業や労働移動などの社会問題にどのように対応するべきかを考察した古典である。18世紀のイングランドが叙述の背景となっているが、マルサスが述べる考察は現代のアクチュアルな問題に通じるものであることを納得できるであろう。古典が現代に活きることを示すものとして薦めたい。

    登録日 : 2017-04-01     名著

  117. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    日本人はアジアとどう向き合ってきたか 
    日本とアジア / 竹内好著. - 筑摩書房 , 1993     北大ではどこにある?
    これは、竹内好という稀代の中国文学者の手になるすぐれた日本、及びアジア研究の書である。初版が刊行されてから50年以上が経過しているが、そこに示される分析(あるいは同時代思想批判の)の観点には今なお学ぶものが多くある。中国、アジアだけでなく、というよりむしろ欧米社会・文化に関心を持つ人にこそ読んでほしいと思う。特に「二つのアジア史観」、「方法としてのアジア」は人文社会科学を勉強する上で貴重な示唆を含んでいる。

    登録日 : 2017-08-04     名著

  118. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    イスラム教を「信じる」とはどのようなことか 
    日本の中でイスラム教を信じる / 佐藤兼永. - 文藝春秋社 , 2015     北大ではどこにある?
    日本社会の中ではイスラム教信者、中でも特に日本人の信者というのは姿が見えにくい存在である。この本は、日本社会の中でイスラム教信仰に生きる人びとの姿を描いたルポルタージュであり、イスラム世界というものが西アジア・中東・アフリカという遠いところにある(だけな)のではなく、我々のすぐそばにもあるものだということに気づかせてくれる。現在、多少緩和されたとはいえ、まだイスラム教に対する様々な偏見が社会の中に存在することは否定できない。著者の佐藤氏は、その偏見を我々も持つことを認めた上でそれを肯定的なものへと転換する契機を示してくれている...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-05-01     ぜひ読んでみてほしい

  119. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    言語をめぐる思惟を広く捉えるために 
    ドイツ言語哲学の諸相 / 麻生建. - 東京大学出版会 , 1989     北大ではどこにある?
    以前奨めてくれる人があって、飯田隆『言語哲学大全Ⅰ~Ⅳ』(勁草書房)を読んでみたことがある。確かに現代の言語哲学、あるいは分析哲学をフレーゲからデヴィッドソンまで熱く語っている良書ではあるのだが、これをもって「大全」ということには大きな不満を覚える。その点は飯田氏も分かっているようで、第Ⅰ巻の冒頭で「『大全』というのは、さすがに私にしても調子に乗り過ぎという感がしないでもない」と書いている。この本を「大全」と言ってほしくないのは、対象がフレーゲとヴィトゲン...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-05-12     基本書

  120. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    「日本語を教える」現場の熱気を伝える 
    世界の日本語教室から-日本を伝える30ヵ国の日本語教師レポート- / 国際交流基金. - アルク , 2009     北大ではどこにある?
    ここ何年か国際教育研究センターで(旧留学生センター時代から)全学教育科目に「外国人に日本語を教える」という「総合科目」を提供している。受講動機は様々であろうが日本語教育に関心を持ってくれる学生が一定数いるようで関係者としては有り難く思っている。この本は、そんな、日本語教育に関心を持っている学生がちょっとだけその―特に海外の―現場を覗いてみたいと思った時に気軽に読めるものとして紹介しておきたい。内容は、外務省の外郭団体である国際交流基金が世界各国に派遣した日本語教育専門家の手になる現地レポートである。日本語教育の現場の雰囲気を少しで...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-05-08     基本書

  121. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    モンゴルの魅力に近づくために 
    草原の革命家たち : モンゴル独立への道 / 田中克彦著. - 中央公論社 , 1990     北大ではどこにある?
    この「本は脳を育てる」の過去の推薦文に何回か書いたことであるが、僕は1990年代にエジプトに赴任していた。だが、最初に赴任先候補地としてあげられたのは、実はモンゴルであった。それがどこかでどうにかこうにかなってエジプトに落ち着いた(?)のであるが、今でも時々、あのときモンゴルに行っていたらどうなっていただろうかと思うことがある。今は、モンゴルと言えば相撲の世界が思い浮かぶだろうが、多くの日本人の間でこの国の歴史と現在の姿は意外に知られていないと言ってよいだろう。この本は、モンゴルが中国、ソヴィエトという巨大な国に挟まれて―しかもここ...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-08-04     ぜひ読んでみてほしい

  122. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    真実の発見に生涯をかけた医師のドラマ 
    手洗いの疫学とゼンメルワイスの闘い / 玉城英彦. - 人間と歴史社 , 2017     北大ではどこにある?
    今年2月のある日、この本の著者である玉城英彦先生(現名誉教授)が僕の研究室に突然いらして、「中村先生、最近元気ないみたいだけどこの本を読めば元気になるよ」と仰言ってサイン入りの本をくださった。その頃そんなに元気がなさそうだったのか、自分では分からないのだけれども成績提出などのドタバタで疲れていたことは確かだ。折角頂いたご本なのだが、その後もあれこれと忙しく、5月になってからようやく読むことができた。そして、確かに少し元気になれたので、こうして推薦することにした次第である。
    ゼンメルワイスと産褥熱の研究については、僕も中学生時代...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-05-27     ぜひ読んでみてほしい

  123. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    「知の巨人」たちはいかに思索したか 
    柳田国男と梅棹忠夫 : 自前の学問を求めて / 伊藤幹治著. - 岩波書店 , 2011     北大ではどこにある?
    先に竹内好の『日本とアジア』をこの「本は脳を育てる」に推薦したが、その中で竹内好がしばしば言及している一人が梅棹忠夫である。日本の知識人―という言い方を梅棹は嫌うだろうが―のアジア理解、文明観を問題にする上で避けて通れないと竹内は感じ取ったのだろう。その梅棹の知的営為を、先行する柳田国男のそれと対比的に考察し、そこに共通するものと相違するものを読み解こうとしたのが本書である。一つの学問を作り上げることの奥深さを知ることのできる好著として推薦したい。

    登録日 : 2017-08-04     ぜひ読んでみてほしい

  124. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    君は世界をまたにかけるビジネスパースンになれるか? 
    反省しないアメリカ人をあつかう方法34 / ロッシェル・カップ著. - アルク , 2015     北大ではどこにある?
    北大生の中には将来外資系企業、あるいは海外で働くことを希望している人もいるだろう。また、国内の職場でも上司や同僚や部下が外国人という環境は最早珍しくない。この本は、「反省しないアメリカ人を~」と書いてあるとおり、アメリカ人の、主に従業員に対してどう接し、どのように良好なビジネス上の関係を構築するかについてアドバイスを述べたものであるが、アメリカ人に限らず異なる文化的背景の人間―日本人でもその範疇に入ってくる可能性は大いにある―と仕事をする上でヒントになるものと思う。比較文化研究や異文化間コミュニケーションに関心のある人には、色...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-08-07     

  125. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    国際関係を複眼的に解きほぐす 
    大英帝国の親日派 : なぜ開戦は避けられなかったか / アントニー・ベスト著 ; 武田知己訳. - 中央公論新社 , 2015     北大ではどこにある?
    国際関係、分けても戦時期の国際関係を理解することは容易ではない。この本は、日英の政治家(外交官)に対象を絞り、それぞれの言説と行動を分析しつつ第二次大戦期の日英関係を解明しようとするものである。その際、直接の対象である日英関係の背後にあって大きな影響を及ぼしていた日中、英中、英米、英露の国際関係にも目を配り、当時の国際関係が複眼的に理解できるようになっている点が特徴である。国際関係論や政治学のみならず、歴史記述の方法についても学ぶところの多い本である。

    登録日 : 2017-08-08     ぜひ読んでみてほしい

  126. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    「革命」の担い手は誰だったのか。 
    青きドナウの乱痴気 : ウィーン1848年 / 良知力著. - 平凡社 , 1985     北大ではどこにある?
    1848年、西ヨーロッパに勃発した「革命」の一つの舞台となったウィーンでの、様々な人びとの思惑や欲望や理想や愚痴(?)が渦巻く展開を、帝国、国家、権力者の立場からではなく、「革命」に参加した人びとの目線から描いたすぐれた本である。歴史を庶民、あるいは当事者の立場に寄り添って書くということは決して簡単ではない。その困難な試みがいかに為されたかを読み取ってみてほしい。特に、「あとがき」に書かれているグレーテというウィーン子のことばは心に染みる。

    登録日 : 2017-12-19     名著

  127. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    韓国は「異星」である、か? 
    韓国、愛と思想の旅 / 小倉紀藏. - 大修館書店 , 2004     北大ではどこにある?
    仕事柄韓国人留学生とのつきあいが少なからずあるが、いつも彼ら彼女らとの独特の距離の置き方にはかなりデリケートに神経を使う。こういうことを“国際交流”の入り口で仕事をしている人間が書くと問題だと感じる人もいるだろうが、むしろそうした仕事をしているからこそ適度な距離感が必要であるとも言える。この小倉氏の本は、韓国滞在・渡航経験の中でその距離を縮めようとしてついに叶わなかった(もしくは彼なりのやり方でその距離を消滅させていった)異文化間コンフリクトの記録である。韓国に対する読者のスタンスの取り方に応じてそれなりに“ツッコミどころ”も...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-06-12     ぜひ読んでみてほしい

  128. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    「研究者」になるための知的基礎体力をつけたい人に 
    これから研究を書くひとのためのガイドブック : ライティングの挑戦15週間 / 佐渡島紗織, 吉野亜矢子著. - ひつじ書房 , 2008     北大ではどこにある?
    何年か前に、日本各地の大学で文章表現法関係の授業を担当している教員が集まって実践研修会をしたことがある。各人が自分の授業実践を発表し、ワークショップを通してよりよい授業のあり方を考えるというものだったが、そこで僕が言ったのは、文章表現法の授業をやるということが「自分が教わっていないことを教える”恐怖”」を伴う営為であるということだ。欧米の大学(院)に留学した人は別だろうが、僕自身の高校・大学時代には文章表現法やレポート作成法、論文執筆法は誰も教えてくれなかった。(僕の卒業した大学の教養科目の「文章表現法」は、1年間の総仕上げに短...  [続きを読む]

    登録日 : 2018-01-04     学習に最適

  129. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    宗教を信じつつ宗教を超える 
    はじめて読む聖書 / 田川建三ほか著. - 新潮社 , 2014     北大ではどこにある?
    この本を推薦するのは、僕がキリスト教徒であるからでもなく、『聖書』にありがたみを感じているからでもない。どのような本にせよ、読み手の体験を通してその内面と響き合うものでなければそもそも本を読む意味はないということをこの本の中の第Ⅳ章「レヴィナスを通して読む『旧約聖書』」(内田樹)が慄然たる厳しさを持って教えてくれるからである。この本を手にした人は全部読まなくても良い(読めば読んだでそれなりに得るものはあろうけれども)が、上記の箇所だけはじっくりと読んで欲しい。その上で、関心があればレヴィナスの本に向かうこともお勧めする。わかり...  [続きを読む]

    登録日 : 2018-01-04     ぜひ読んでみてほしい

  130. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    その日本語にはわけがある! 
    揺れ動くニホン語 : 問題なことばの生態 / 田中章夫. - 東京堂書店 , 2007     北大ではどこにある?
    「日本語の乱れ」ということが時々メディアを賑わせる。しかし、これは言ってみればジャーナリズムや素朴な庶民感覚レベルの言い方で、その背後には(どこかに)“正しい(あるいは美しい)”日本語のあるべき用い方がある(はずだ)という一種の思い込みが隠れている。言語研究の観点から言えばこれが「乱れ」ではなく「変化」や「揺れ」であることは専門家の間では周知のことである。この本は、多様な現れ方をする日本語の表現を歴史的・計量的に分析し、実は「乱れ」と見えたものもそれなりの背景や理由があることを分かりやすく説明している。言語現象に対する切り口も...  [続きを読む]

    登録日 : 2017-06-09     学習に最適

  131. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    「日本国」の主権者であるために 
    新解説世界憲法集 / 初宿正典, 辻村みよ子編. - 三省堂 , 2017     北大ではどこにある?
    以前、『一般教育演習』を開講していた際に、授業中日本国憲法が定める国民の三大義務や憲法第25条の規定について学生に聞いてみたところ、みんな余りにも知らないので愕然としたことがある。大学受験科目が「公民」ではないと余り憲法を読む機会がないのではないかと推察されるが、これだけ憲法改正の動きが明らかになっている時代に日本国民なのに日本国憲法を(特に日常生活に関わりの深い条文を)きちんと読んでいないというのは悲しいことである。『ナルニア国物語』のディゴリー卿のセリフで...  [続きを読む]

    登録日 : 2018-01-04     基本書

  132. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    「新しい」学問の「古典」 
    言語と社会 / P.トラッドギル著 ; 土田滋訳. - 岩波書店 , 1975     北大ではどこにある?
    推薦文タイトルの”「新しい」学問の「古典」”という表現はそのまま読めば形容矛盾でしかない。しかし、この本は、社会言語学という1960年代から形成され始めた「新しい」学問の分野においては紛れもなく今や「古典」であり、タイトル通り「言語」と「社会」を見るための視点や研究の方法を手際よく整理して提示している。現在、社会言語学についての概論書、入門書は数多く出版されているし、その対象や方法も発展しているけれども、この本に盛り込まれた内容は今日でも(あるいは今日なお)有益であり学ぶことが多い。社会言語学という個別分野だけでなく、言語と社会の関...  [続きを読む]

    登録日 : 2018-01-29     基本書

  133. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    揺るぎない体験と明敏な眼と強靱な思索の結晶 
    自分のなかに歴史をよむ / 阿部謹也著. - 筑摩書房 , 2007     北大ではどこにある?
    何年かにわたって「一般教育演習」や「多文化交流科目」で異文化間コミュニケーションの理論と実践といった類いの授業を展開してきたが、この本はそうした授業の設計思想を作る上で常に座右に置いていたものである。この本が出たとき、ある夕刊紙の書評が「これは真に感動的な本である。」と書いた。「感動的」ということばが適切かどうかは分からないが、「目からウロコが落ちる」という感覚が得られる本ではあると確かに思う。内容は、少年時の修道院生活、大学時代の上原専録との出会い、ヨーロッパ留学生活等々著者の体験談が多いように見えるが、その根底で著者はヨー...  [続きを読む]

    登録日 : 2018-03-08     名著

  134. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 教員

    不愉快な、しかし有益な本 
    介護する息子たち : 男性性の死角とケアのジェンダー分析 / 平山亮. - 勁草書房 , 2017     北大ではどこにある?
     これを書いている僕は3月31日付けで北海道大学を退職する。理由は介護離職、つまりこの本の標題にもなっている「介護する息子」になるわけだ。この本は、そのような「介護する息子」になる前に参考とするべき点を調べようと思って読んだのだが、内容は全く違っていて、所謂ジェンダー社会学の立場から「介護する息子」たちが一見親の介護で苦労しているように見えながら、その背後には女性(配偶者や姉妹)からの支援や女性に対する差別やジェンダー的不均衡があるという可視性の低い問題点をこれでもかとばかりに暴き出す研究書だった。

     考えてみれば著者の平山...  [続きを読む]

    登録日 : 2018-03-27     HOT TOPIC!(時事的なもの)

  135. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 国際連携機構国際教育研究センター  身分 : 

    「自分」の深奥をのぞく 
    砂漠の修道院 / 山形孝夫. - 平凡社 , 1998     北大ではどこにある?
    ややもすれば抹香臭い表題ですが、エジプトの砂漠の修道院に引きつけられてきた人々の心の遍歴と葛藤、そのような心性を生み出すエジプトの社会と歴史が生き生きと描かれている、読み応えのある本です。特に修道士一人一人の聞き取り調査に基づくストーリーは、普段うかがい知ることが難しい「修道院」の生活と、そこに何かを求める魂のありようをキリスト教という枠組みを超えて明らかにしてくれます。キリスト者であってもなくてもここに描かれた修道士の誰かに、読者が共感できる人物を見つけることができると思います。「世間」と「自分」との葛藤をどう受け止めるかと...  [続きを読む]

    登録日 : 2009-06-08     ぜひ読んでみてほしい



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