本は脳を育てる ~北大教職員による新入生への推薦図書~ 

推薦者 :  中村重穂      所属 :  国際連携機構国際教育研究センター      身分 :       研究分野 : 
文章を書くことが苦手な人に安心を与えてくれる本
タイトル(書名) 「書くのが苦手」をみきわめる
著者 渡辺哲司
出版者 学術出版会
出版年 2010
ISBN 4284102893
北大所蔵 北大所蔵1 
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推薦コメント

今学期(2011年度第2学期)から、文章表現が苦手な人を対象にした「一般教育演習」を開講したので、その準備のため過去1年かけて、いわゆる「文章読本」的な本を36冊ほど読んでみた。(実は、こういうことはすでに小説家の斎藤美奈子さんがやっていて、その成果は『文章読本さん江』(筑摩書房)で公にされている。) この本は、その中でも「苦手」という心理がどうして生じているのかを明らかにして、具体的にどのような対策を採ればそれが克服できるのかを書いている点でもっとも参考になったものである。

ただ、学生向けの本というよりは教師向けの内容であるため、いわゆるハウツー物にはならないが、自分は文章を書くことが苦手だと感じている学生のみなさんに、実はそうでもないんだ、と感じて文章表現/自己表現する勇気を持ってもらえる本ではないかと思い、ここに推薦することにした。

ちなみに、36冊読破した結果は一言で言うと「笑止千万」であった。例えば、ある本は文章の構成として「起承転結」を勧め、他の本は「起承転結」なんか止めてしまえ、と書いているし、またある本は接続詞を使って文の関係を明確化せよと書く一方で、他の本は接続詞はうるさいから控えよ、と書く。本当に「文章読本」の著者は罪作りなものだと実感した次第である。

本書の他に唯一推薦できるのは、戸田山和久『論文の教室』(NKH出版)。多くの場合、「文章が苦手だ」という人は、「何を/どう書いたらいいかわからない」と言う悩みを抱えているものだが、戸田山さんのこの本は、書くことを見つけるための目の付け所、考え方、論理展開の種類まで親切に書いてくれている。併せて一読をお勧めする。 

※推薦者のプロフィールは当時のものです。

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