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推薦者 : 山口 良文 (低温科学研究所・教員)
今の時代にこそあらためて
夜と霧 / ヴィクトール・E・フランクル. - みすず書房, 2002
北大ではどこにある?
ナチス・ドイツによる強制収容所生活を生き延びた精神科医フランクルによる、その体験と分析記録。ここで改めて紹介するまでもなく色々なところで紹介されている名著ですが、まだこちらのリストにはないようだったので挙げておきます。
生命の危機どころか生きる意欲をも見失うような極限状態に置かれたとき、人はどのように振る舞うのか。そして、そこをどう乗り越えるのか。この究極的な問に対する箴言の数々がのっています。
”「生きていることにもうなんにも期待がもてない」こんな言葉にたいして、いったいどう応えたらいいのだろう。
ここで必要なのは、生きる... [続きを読む] -
推薦者 : 朝倉 清高 (触媒科学研究所・教員)
理系も文系もとにかく一読する。
Homo Deus : A Brief History of Tomorrow / Yuval Noah Harari. - Vintage, 2017
北大ではどこにある?
今、AI、深層学習といったことが話題になっている。それを単に便利な道具と考えているかもしれません。しかし、本書は農業革命、産業革命に匹敵する情報革命という社会の大革命としてとらえ、“人類”の置かれた立場を考えさせる本です。
“Homo Sapiens will vanish”(p443) ということも言っています。皆さんが自分の未来を思い描くときに参考になると思います。
邦文もありますので、そちらで読まれるとよいかもしれません。
ホモ・デウス : テクノロジーとサピエンスの未来 / ユヴァル・ノア・ハラリ著 ; 柴... [続きを読む] -
推薦者 : 河合 剛 (外国語教育センター・教員)
「つい最近」を体験する
海峡の鉄路青函連絡船 : 110年の軌跡と記憶 / 原田伸一. - 北海道新聞社, 2018
北大ではどこにある?
函館キャンパスの諸君はもちろん、札幌キャンパスの諸君も青函連絡船の役割を知るのは大切な素養。写真たっぷり、じっくり楽しめる。
函館駅から徒歩数分に青函連絡船「摩周丸」が展示されている。本書を読みつつ船を巡ると時代の変遷がわかる。 -
推薦者 : 河合 剛 (外国語教育センター・教員)
平城京遺跡を専属ガイドつきで回る気分
平城京一三〇〇年「全検証」 : 奈良の都を木簡からよみ解く / 渡辺 晃宏. - 柏書房, 2010
北大ではどこにある?
博物館・美術館を訪れると展示物よりも説明文に目が向いてしまう私は、文章による解説が不可欠と見えて、図録などを自宅でじっくり読みふけり、肝心の展示品の画像記憶ができないためスケッチはおろか形状・色彩もろくに説明できないありさま。逆に言えば、展示物だけでは不満足で、どなたかに詳しくお話を伺いたい。講演は垂涎の的。
さて本書は平城京遺跡を専属ガイドつきで回る気分が味わえる希有の作品。著者とともに働いた経験をもつ同僚によれば、著者の渡辺晃宏博士は、研究させていただいてるものを世間に還元する意識が強く、木簡に対する愛も加わり、誰にで... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
「革命」の担い手は誰だったのか。
青きドナウの乱痴気 : ウィーン1848年 / 良知力著. - 平凡社, 1985
北大ではどこにある?
1848年、西ヨーロッパに勃発した「革命」の一つの舞台となったウィーンでの、様々な人びとの思惑や欲望や理想や愚痴(?)が渦巻く展開を、帝国、国家、権力者の立場からではなく、「革命」に参加した人びとの目線から描いたすぐれた本である。歴史を庶民、あるいは当事者の立場に寄り添って書くということは決して簡単ではない。その困難な試みがいかに為されたかを読み取ってみてほしい。特に、「あとがき」に書かれているグレーテというウィーン子のことばは心に染みる。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
国際関係を複眼的に解きほぐす
大英帝国の親日派 : なぜ開戦は避けられなかったか / アントニー・ベスト著 ; 武田知己訳. - 中央公論新社, 2015
北大ではどこにある?
国際関係、分けても戦時期の国際関係を理解することは容易ではない。この本は、日英の政治家(外交官)に対象を絞り、それぞれの言説と行動を分析しつつ第二次大戦期の日英関係を解明しようとするものである。その際、直接の対象である日英関係の背後にあって大きな影響を及ぼしていた日中、英中、英米、英露の国際関係にも目を配り、当時の国際関係が複眼的に理解できるようになっている点が特徴である。国際関係論や政治学のみならず、歴史記述の方法についても学ぶところの多い本である。 -
推薦者 : 水本 秀明 (外国語教育センター・非常勤講師)
サンタクロースについてどれだけあなたは知っていますか?
サンタクロースの大旅行 / 葛野浩昭著. - 岩波書店, 1998
北大ではどこにある?
サンタクロースはフィンランド語でjoulupukki、すなわち「クリスマス(joulu)」+「山羊(pukki)」。いったい「山羊」は何を表しているのでしょう?この本を読むと、とんがり帽子に赤い衣装で煙突からプレゼント配達に来る、といったサンタクロースの一般的なイメージが大きく覆されるはずです。好著! -
推薦者 : 田畑 伸一郎 (スラブ・ユーラシア研究センター・教員)
フィンランドの中学における歴史教科書
世界史のなかのフィンランドの歴史 : フィンランド中学校近現代史教科書 / ハッリ・リンタ=アホ [ほか] 著 ; 石野裕子, 高瀬愛訳. - 明石書店, 2011
北大ではどこにある?
フィンランドの中学で使われている歴史教科書を翻訳したものです。フィンランドの歴史が平易に書かれています。フィンランドの歴史がよく分かるだけでなく,どのように歴史が教えられているのかについてもよく分かります。 -
推薦者 : 河合 剛 (外国語教育センター・教員)
大名の生活を英語で説明しよう
The life and culture of samurai lords : masterworks from the Tokugawa Art Museum / The Tokugawa Art Museum. - 徳川美術館, 2016
北大ではどこにある?
諸君、和服が着られるかな?女の子なら振袖を着た経験があるだろうか?男の子なら羽織・袴。しかし所有していない人も多いのでは?まさか着方を知らない?日本の民俗衣裳だぞ。しかも意外と安いのもある。
さてさて。日本の文化を英語で説明できれば、日本の文化を知っているといえるだろうし、日本の文化を知ってもらう力を有しているともいえるだろう。
本書は、御三家大名のひとつ尾張名古屋の徳川藩ゆかりの徳川美術館が著した、大名生活の英語による説明だ。日本を知り、日本を知ってもらう力を身につけよう。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
歴史学者とはどのような人々か
昭和史学史ノート-歴史学の発想- / 斉藤孝. - 小学館, 1984
北大ではどこにある?
歴史学者が歴史研究を行ったり歴史書を書いたりするときには当然その歴史観が反映される。史学史とはそうした歴史観や歴史記述の態度・意識の歴史である。この本では、具体的な個々の(主に昭和戦前・戦中期の)歴史学者を取り上げて通観することによって昭和の歴史研究がどのようなものであったかを示そうとするものである。歴史に興味のある学生、歴史学者の仕事を覗いてみたい学生、昭和時代を何らかの学問の研究対象としたい学生にお勧めする。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
わくわくするナイル源流への旅の記録
ナイルに沈む歴史-ヌビア人と古代遺跡- / 鈴木八司. - 岩波書店, 1970
北大ではどこにある?
最近(特に今世紀になってから)、岩波新書(新赤版)がつまらなくなってきた。社会の流れが速くなるのに歩調を合わせすぎているのか、時事的なものが多くなり-それはそれで必要だと思うが-長く手元に置いて何度も繰り返して読みたくなるような内容のものが減っている気がする。ここに推薦する青版の『ナイルに沈む歴史』は、僕が中学生の時にでた本であるが、アスワン・ハイダムの建設によるアブ・シンベル神殿の水没を回避するための国際プロジェクトの一環として著者の鈴木氏が行ったエジプト・ナイル川上流地域の踏破記録である。それまでもハワード・カーターによる... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
世界に働く根本的な力を考える
歴史の終わり(上・下) / フランシス・フクヤマ. - 三笠書房, 1992
北大ではどこにある?
個人的に2015年はあまり面白い本にめぐり逢わなかった1年だった。その中では比較的面白かったのがこの本である。1992年に刊行されたこの本を20年以上経って読んでみると、著者が重視するリベラルな民主主義が現在の世界で置かれているアクチュアルな立場をよく見通すことができる。20年以上前に書かれた本ではあるが、そこに含まれる観点は20年そこそこの時間の経過の中では古びてしまうということはなく、今なお国際政治・国際関係を考える上で必要な知見を提供してくれると思う。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
留学する前に読んでおこう!
魯迅の日本 漱石のイギリスー「留学の世紀」を生きた人びとー / 柴崎信三. - 日本経済新聞社, 1999
北大ではどこにある?
国を挙げての「留学」ばやりである。文部科学省もAKB48まで動員して「トビタテ!留学JAPAN」なるキャンペーンまでやっている。北大から海外協定大学に留学する学生も増えているようで結構なことである。(「留学」したことがない僕はちょっと僻んでこの推薦文を書いているのだが)かつては「留学」というのは決定的にエリートへの道筋であった。筆者はその時代に「留学」し(て苦労し)た代表者としての魯迅と漱石を軸にして、「留学」ということが日中それぞれの社会と個人にどのような意味を持ったかを浮かび上がらせようとしている。今と昔で意味合いは違うものの「留学」と... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
台湾における植民地経験をフィールドワーク、史資料分析から重層的に読み解く!
台湾における<植民地>経験─日本認識の生成・変容・断絶 / 植野弘子・三尾裕子編. - 風響社, 2011
北大ではどこにある?
台日本統治時代を肯定的に評価するという意味でしばしば「親日的」という言葉で語られる台湾。本当にイメージ通りなのでしょうか?あるいは「親日的」だとすればそれはどのような意味で「親日的」なのでしょうか?本書は台湾における植民地経験、植民地時代への感情をフィールドワークや史資料を通じて多面的に論じています(姉妹編あり)。歴史社会学・文化人類学・歴史社会学・地域研究の重要書です。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
台湾における日本統治時代の経験・感情とは?
戦後台湾における〈日本〉─植民地経験の連続・変貌・利用 / 五十嵐真子・三尾裕子編. - 風響社, 2006
北大ではどこにある?
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推薦者 : 戸田 聡 (文学研究科)
日本人と全く関係のない或る昔の文明世界のお話
ビザンツ世界論 / ハンス=ゲオルク・ベック. - 知泉書館, 2014年
北大ではどこにある?
「日本人と全く関係のない或る昔の文明世界」の話だって? そんなもの読む暇ないよ! と思う人は以下を読まなくてよろしい。しかし、実益ばかりが強調される今の時代だからこそ、こういうものだってあると言ってみたくなる。
この本でとりあげられているビザンツ帝国は、かの輝かしきローマ帝国の後継国家(正確には、ローマ帝国の断絶なき継続)として、西欧史で言われる中世のほぼ全時代を通じて存在した国家・帝国であり、日本とは全く関係がない。しかも、現代人(特に現代日本人)はそもそも古典(つまり、共通の教養基盤)なるものを顧みなくなって久しいが、ビザ... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
日本陸軍の戦争理念に迫る
未完のファシズム-「持たざる国」日本の運命- / 片山杜秀. - 新潮社, 2012
北大ではどこにある?
アジア・太平洋戦争についてある程度勉強してきた時、頭に浮かんだ疑問というのが、「なぜ日本軍は兵員を無駄死にさせるような戦闘行動や作戦を行ったのか」ということだった。戦争-特に近代戦-にあっては、いかに戦闘手段の損失を少なくしつつ有利に戦況を進めるかということが目標になる。にもかかわらず、日本軍は、例えば「バンザイ突撃」等に見られるような「玉砕」戦を実行し、それらに対して日本軍の狂気じみた精神主義、あるいはまた「戦陣訓」の影響といったことが原因として指摘されてきた。
この本は、第一次世界大戦以降の日本陸軍内部の戦争指導理念の変容を... [続きを読む] -
推薦者 : 河合 剛 (メディア・コミュニケーション研究院)
Succinctly describes a global horror
The Second World War / Antony Beevor. - Little, Brown and Company, 2012
北大ではどこにある?
Japan war memory is dying (at least the people with hands-on experience with warfare are), and nothing is taught (shameful that Japan cannot confront itself, compared to Germany for instance). This book should shed some light on what happened during those painful years. The book is long but so was the war. Considering the deadliness of it all, the book treats everything swiftly. -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
もう一つの「ローマ人の物語」
ディスコルシ-「ローマ史」論- / マキアヴェッリ. - 筑摩書房, 2011
北大ではどこにある?
「ローマ人の物語」といえば塩野七生さんの著作があまりにも有名であるが、この『ディスコルシ』はマキアヴェッリによるもう一つのローマ史である。マキアヴェッリは、この本を書く時に間違いなく彼が生きていた時代のイタリアの運命を考えながら-その姿勢は『君主論』にもつながる-筆を走らせていた。歴史から何事かを学ぶ、ということがどのようなものか、この本から浮かび上がってくるだろう。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
本は脳を鍛える!
クアトロ・ラガッツィ-天正少年使節と世界帝国- / 若桑みどり. - 集英社, 2003
北大ではどこにある?
天正少年使節と言えば、高校の日本史や世界史で習った記憶があるだろう。これは、博覧強記の著者が、西欧の図書館や文書館に収蔵されている第一次史料を丹念に読み解いて、天正少年使節をとりまく権力者たちとキリスト教信者たち、そしてキリスト教会内の様々な駆け引きを世界史の大きな変動の中に於いて捉えようとした大著である。
ただ、表題に惹かれて読んでみたものの羊頭狗肉の感は否めない。550ページにのぼるこの本を230ページくらいまで読まないとそもそも天正少年使節が出てこないし、彼らのヨーロッパでの体験もむしろ彼ら少年使節よりはキリスト教会と教皇庁、そし... [続きを読む]登録日 : 2012-05-01
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推薦者 : 筑和 正格 (メディア・コミュニケーション研究院)
歴史の決定的転換点を追体験する!
世界に衝撃を与えた日 全30巻 (DVD) / BBC Active. - キュービカル・エンタテインメント (発売), 2006
北大ではどこにある?
貴重な映像資料が閲覧できるようになった。
イギリスBBC作成の30巻に及ぶドキュメンタリー映像は、私たちに歴史の決定的転換点を追体験させてくれる。
「世界に衝撃を与える事件」は、歴史が、また時代・社会が内包する矛盾が、何らかの形で顕在化したものだと捉えることができる。
したがって、私たちは、映像がもつ迫力をまず受け止めながら、その矛盾と矛盾を通じて伝えられる時代像・社会像について考えるという喜びを経験できるのである。
学生諸君には、是非一度閲覧していただきたいものである。 -
推薦者 : 寺田 龍男 (メディア・コミュニケーション研究院)
『太平記』が描く時代を見る
太平記 : 完全版 (DVD) / 吉川英治原作 ; 池端俊策, 仲倉重郎脚本 ; 高橋康夫, 一柳邦久制作. - NHKエンタープライズ, 2008
北大ではどこにある?
『太平記』が描く時代(14世紀前半)は、南北朝の分裂などもあり、日本社会の大きな転換期となりました。この時代ならではの現象が噴出し、戦後歴史学では進展が著しい一方で、今なお小説には書きにくい時代とも言われています。
この作品は原著『太平記』を吉川英治が脚色し、さらにNHKが大河ドラマ化したものです。その点を理解しておく必要はありますが、佐藤進一『私本太平記』 -
推薦者 : 清水 賢一郎 (メディア・コミュニケーション研究院)
現代中国への認識を深めるのに一読の価値あり
嵐を生きた中国知識人 : 「右派」章伯鈞をめぐる人びと / 章詒和著 ; 横澤泰夫訳. - 集広舎, 2007
北大ではどこにある?
現代中国への認識を深めるのに一読の価値あり。50年前に開始された「反右派闘争」の中で「最大の右派」とされた父・章伯鈞をめぐる人びとを活写することにより、「中国共産党の政治」のあり方を世に問うた問題作。流麗な文章と深い人間理解、歴史への洞察によって中国内外で高い評価を受けたものの、発売後2ヶ月で再版不許可・発禁処分となった『往事並不如煙』を香港で改題・出版した完全版『最後的貴族』(香港・牛津大学出版社2004年)の日本語版。 -
推薦者 : 岡田 敦美 (メディア・コミュニケーション研究院)
「他者」と向きあう人類最初の経験――コミュニケーションや異文化について考える
他者の記号学―アメリカ大陸の征服 / ツヴェタン・トドロフ. - 法政大学出版局, 1986(日本語初版)
北大ではどこにある?
著者のトドロフは、ブルガリア生まれでパリで活躍する言語学者。本のテーマは「他者の発見」で、その手がかりとして、新大陸の発見と征服の時期が、もっと具体的にいえば、新大陸とヨーロッパ人が出会って以降の100年あまりの間に新大陸に渡ったヨーロッパ人によって書かれた記録や文書が、分析対象として選ばれたのである。トドロフによれば、1492年は、「ヨーロッパの歴史上、最も驚嘆に値する他者との出会い」の画期をなした。「今あるヨーロッパ人のアイデンティティが示され、基礎づけられたのはまさにこの新大陸の発見にあるのだ」。その意味で、1492年以来、ヨーロッパ... [続きを読む] -
推薦者 : 陳 省仁 (教育学研究科)
日本人の故郷
写真ものがたり 昭和の暮らし Vols. 1- 7 / 須藤功. - 農山漁村文化協会, 2004-2006
北大ではどこにある?
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推薦者 : 西 昌樹 (メディア・コミュニケーション研究院)
マンガが入り口になる
虹色のトロッキー(全8巻) / 安彦良和. - 中央公論新社(文庫), 2000
北大ではどこにある?
初めてマンガを推薦するが、今「ガンダム・ザ・オリジン」を連載中の作者による満州を舞台にした現代史ものである。私たちが知らないでいた太平洋戦争時代の一面がここにある。五族協和とは何か。その実現のためにあった満州建国大学。そこに学ぶ蒙古人青年を主人公に、歴史上の人物が多数登場する。たとえば、これからの世界はアジアの盟主たる日本と白人の盟主となるアメリカの最終戦争になると主張した石原莞爾、合気道の創始者植芝盛平、現首相が尊敬するその祖父、岸信介...トロッキーの説明はしない、読んで知ってください。そして中国の八路軍ではなく抗日聯軍...た... [続きを読む] -
推薦者 : 鍋島 孝子 (メディア・コミュニケーション研究院)
人種差別の狂気と現実
ビーコウ、アパルトヘイトとの限りなき戦い / ドナルド・ウッズ. - 岩波書店, 1990年
北大ではどこにある?
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推薦者 : 西 昌樹 (メディア・コミュニケーション研究院)
占領を知らない世代へ
占領下パリの思想家たち / 桜井哲夫. - 平凡社新書, 2007
北大ではどこにある?
ナチスドイツ占領下のパリで、知識人たちはどう生きていたか。サルトル、カミュ、バタイユ、フーコー、レヴィ=ストロース、サン=テグジュペリ...沖縄だけでなく、日本全土がアメリカに占領(進駐軍と言い換えていたが)された日々はついこの前である。戦争も占領も知らなければ、せめて本や映像で知ろうとしてほしい。フランスの現代史を知るには、海原峻「フランス現代史」(平凡社、名著)がおすすめ。それを読んで、この本の前段の桜井「 -
推薦者 : 西 昌樹 (メディア・コミュニケーション研究院)
知らない歴史もある
ひめゆり忠臣蔵 増補新版 / 吉田司. - 太田出版, 2000
北大ではどこにある?
沖縄の「ひめゆり部隊」は知られている。しかし沖縄戦は沖縄の悲劇であり、沖縄の人々は軍国主義日本の被害者とだけ言って良いのだろうか。戦後占領し統治したアメリカに対して、復帰運動の中心になった教職員組合は戦前戦中はなにをしたのか(戦後アメリカの援助でアメリカ留学した人もいる)。そしてひめゆりはただ犠牲になった無辜の乙女たちだったのか。著者は人が隠し見たくないこと、忘れてしまいたいことを暴き出す。その主張に賛成できなくとも、歴史は一方からだけでなく、複眼で見なければならないことを痛感させられる。広島、長崎の原爆もなぜそこが選ばれたの... [続きを読む] -
推薦者 : 岸本 晶孝 (理学研究科)
占領下日本と憲法
敗北を抱きしめて(上下) / ジョン・ダワー. - 岩波書店, 2001,2004
北大ではどこにある?
この国の憲法を「押し付けられたものだから」(を理由のひとつとして)改正しようとする動きがあります。近隣諸国との諍いをも厭わず戦死者の霊を慰めることに熱心な人たちですから、敗戦後の生活の塗炭の苦しみに加えて意に染まぬ憲法を押し付けられるという精神的苦痛を味わった当時の庶民への同情に突き動かされて発議したのかと思っていましたら、そうでもなさそうです。いかに歴史を学ばないひとでも、当時の人々のほとんどが解放感に包まれてこれを歓迎したことは知っているでしょう。それとも、その始祖たる時の首相吉田茂が天皇裕仁のまえで「臣茂」と名乗ること... [続きを読む] -
推薦者 : 川島 真 (公共政策大学院)
戦後の日中関係を知る基本書
日中関係 : 戦後から新時代へ / 毛里和子. - 岩波書店(岩波新書), 2006
北大ではどこにある?
日中関係は、ますます難しい段階に入ってきました。しかし一方で、経済文化交流はきわめて盛んになり、学生諸君が将来にわたって中国と無関係でいるということは、ほとんどなくなってきています。日本と中国のかかわりの経緯と現状、そして将来についてコンパクトに知ることができる一書です。 -
推薦者 : 川島 真 (公共政策大学院)
東アジアの歴史認識問題と対処案を知る一書
国境を越える歴史認識 / 三谷博・劉傑・楊大慶編著. - 東京大学出版会, 2006年
北大ではどこにある?
東アジアの歴史認識問題が大きな課題となっていますが、情緒的に結論を出すのではなく、なぜこれほどまでに歴史認識が異なるのか、そして具体的にどのように異なるのか、さらにではどうしていくべきなのか、ということについて記された一書。 -
推薦者 : 岸本 晶孝 (理学研究科)
歴史を通じて現在をみる
憲法で読むアメリカ史(上下) / 阿川尚之. - PHP研究所, 2004
北大ではどこにある?
アメリカは歴史の浅い国というひとがいますが、それは果たして真実でしょうか。アメリカは13の州が連合して1776年に独立し、今に有効な憲法を1788年に制定しました。(世界で現に通用している憲法のなかで最古だそうです。)日本でいえば江戸時代半ばに制定された法律が本質的な変更なく今も、民主主義とその制度を宣言する文書として機能し模範とされていることを想像してみてください。江戸幕府はせいぜい幾つかの「諸法度」のもとで成立していたのです。もちろん、この憲法にも「瑕瑾」がありました。奴隷制度を容認しているととれる条項があることです(しか... [続きを読む] -
推薦者 : 高井 哲彦 (経済学研究科)
国境・領域を超越するユニークな世界交易史
ナマコの眼 / 鶴見良行著. - 筑摩書房, 1990
北大ではどこにある?
表題だけを見て、近頃流行の食べ物や生き物に関するエッセイだと勘違いすると、良い意味で大きく裏切られるはずだ。この本は、ちっぽけな食材(ナマコ)を切り口にしながら実は、アジア太平洋に生きる人間と交易の世界史を論じる、本格派の社会科学書だからだ。
国境・領域を越えて縦横無尽に駆け巡る構成の壮大さと、モノを軸に万物を網羅しようと試みる実証の緻密さは圧巻だ。この手法は、鶴見良行『カツオとかつお節の同時代史』(コモンズ)にも共通する。
しかも鶴見は、「歩きながら考える」現場主... [続きを読む]登録日 : 2006-04-20
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推薦者 : 下澤 楯夫 (電子科学研究所)
技術者によるアイヌ語地名の解読の大著
アイヌ語地名の研究 : 山田秀三著作集 / 山田秀三著. - 草風館, 1982
北大ではどこにある?
アイヌ語など聴いたこともない著者が、新設の化成工場長として登別へ赴任して以来、アイヌ語地名の研究でそれまでの誰よりも大きな足跡を残す。化学技術者としての基本、すなわち実証主義に徹していたからである。
気になるアイヌ語地名があると、現地へ足を運び、必ず地形を観察しスケッチに残し、現地の人々から地名の生活上での使われ方を学び、似た地名と比較し、共通点と差異を洗い出す。自分の調べた結果を持って、金田一春彦や知里真志保といった大家を、大学者とも知らずに訪ねる。
失われたと思われていることでも、意外なところにカケラは残っている。科学... [続きを読む] -
推薦者 : 加藤 博文 (文学研究科)
生きている自然に出会うための本
イニュニック : 生命 : アラスカの原野を旅する / 星野道夫[著]. - 新潮社, 1993.12
北大ではどこにある?
ヒトは、旅をすることに特徴をもつ動物「ホモ・モビリタス」であるという人がいる。確かに、見知らぬ土地を訪れて、これまで新たな出会いの中から未知のものに出会うことは大いに刺激的なことである。ヒトは自らが知らないということに気づくことに驚きとともに好奇心を刺激され、知りたいという新たな欲求を得るのである。
大学も新たな出会いと未知の領域を教えてくれる場所であるが、それ以上に無尽蔵の可能性を秘めた空間がフィールドである。私たちを旅立たせてくれるきっかけとなる本と出会えることは、さらに素敵なことである。
一冊の本を紹介したい。
一... [続きを読む] -
推薦者 : 下澤 楯夫 (電子科学研究所)
日本の歴史をよみなおす / 網野善彦著. - 筑摩書房, 2005.7
北大ではどこにある?
高校の歴史教科書とは全く異なる視点で、様々な職能集団(庶民)の生活と意識の変遷を見る。独自性や独創性は、独りよがりのことではない。異なる視点からの知見に裏付けられたてこそ、多様な価値観を認め合うことができることを教えてくれる。 -
推薦者 : 蔵田 伸雄 (文学研究科)
記憶を伝えていくために
夕凪の街桜の国 / こうの史代著. - 双葉社, 2004.10
北大ではどこにある?
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推薦者 : 加藤 博文 (文学研究科)
モノにこめられた意味とメッセージ
先史時代の女性 : ジェンダー考古学事始め / マーガレット・エーレンバーグ著 ; 河合信和訳. - 河出書房新社, 1997.5
北大ではどこにある?
考古学という学問がある。人間の社会を人間が作りだす「モノ」、つまり物質文化資料を通して復元しようという学問である。博物館などに足を運んだことのある人ならば、古い年代順に土器や石器が並べられて、どのように太古の時代から現在まで私たちの歴史が移り変わってきたのかを見たことがるであろう。あの歴史の多く、文字のない時代、物質文化に基づく歴史の復元の多くは、考古学の資料によって復元されたものである。
しかし、考古学は単に容器や道具がどのくらい古いのか、何千年前なのかを単に推定するだけのものではない。またただ容器を形や装飾の違いから分類... [続きを読む] -
推薦者 : 西 昌樹 (メディア・コミュニケーション研究院)
映像文化論関係
天皇の肖像 / 多木浩二著. - 岩波書店, 1988.7
北大ではどこにある?