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今から50年前に出たこの本は、いまなお論理学の名著としての価値を失っていない。もちろん50年の間には論理学にも進歩があって、多値論理、様相論理、量子論理などはこの本では取り扱われていないし、用語や記号の表記も古いところがあるが、それは仕方ないこととしても、論理学を専門的に研究するならともかく、それ以外の幅広い哲学的関心に広く答え得る点でこの本をしのぐ内容のものはいまだにほとんどないと言って良い。こうした優れた本を絶版にしないで出し続けている岩波書店の“営業努力”は賞讃されてしかるべきである。
この本を紹介する際に、記号の使用を最小限に抑えているといった評価がなされることがあった。しかし、それはこの本の眼目ではない。この本の最大の長所は、論理学が哲学(上の諸問題)とどのような内的連関を有しているか、ということがわかりやすく書かれている点と、論理学と数学基礎論のつながりがコンパクトにまとめられている点である(実際、数学基礎論の本がなぜ集合論から始まっているのかが、この本を読んで僕は初めて理解できた)。論理式が連なって出てくるページなどは読み流したくなるかもしれないが、ここに出てくる水準の論理式くらいはきちんと意味を考えながら読む努力は払ってほしい。得るものは決して少なくないはずであり、読み終わったときに論理学に対する印象と理解はずっと深まるだろうと思う。
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