推薦者: 中村 重穂
所属: 国際連携機構国際教育研究センター
バッハを聴くために
タイトル(書名):
J・S・バッハ
著者:
礒山雅
出版者:
講談社
出版年:
ISBN:
4061490257
北大所蔵:
推薦コメント
私事から始めるので恐縮だが、僕の父親は、生前「バッハは何を聴いても同じに聞こえるから嫌いだ」と言っていた。まあ、ギターで「湯の町エレジー」(知らないだろうなぁ)を弾くような父親だったから、バッハにそれほど縁があったとは思えないが、幼少時の僕には結構このことばは刷り込みになってしまい、後年楽器を習うようになってからもバッハは聴くのを避けていたところがある。しかし、チェロを習うようになって「無伴奏チェロ組曲第一番」を自分で演奏してみたとき、一見単純に見える楽譜から実に調和に満ちた曲が立ち現れてくるのに驚き、いかに父親のことばがいい加減なものだったかよく分かった。
この礒山氏の本は、すでにバッハに関する優れた書物として定評を得ているが、バッハの生涯や音楽を知ると言うだけでなく、バッハ所有の『聖書』や楽曲の分析がどのように行われるかという音楽研究のあり方を研究者にありがちな難しい叙述で行うことなく、それでいて学問的な水準は決して低くしていないというところに大きな魅力がある。最初の方で、「ジャズ化される生命力」という形でバッハの演奏の新たな魅力を語り、後半では「フーガの技法」の読み解きを丹念に示してくれる。これまで、かつての僕のように、バッハを縁遠いものとしていた人にとって、この本を読むことはきっと新しい音楽体験への道を開いてくれると思う。興味が湧いたらさらに同じ著者の『バッハ=魂のエヴァンゲリスト』(講談社学術文庫)も読んでみることをおすすめする。
この礒山氏の本は、すでにバッハに関する優れた書物として定評を得ているが、バッハの生涯や音楽を知ると言うだけでなく、バッハ所有の『聖書』や楽曲の分析がどのように行われるかという音楽研究のあり方を研究者にありがちな難しい叙述で行うことなく、それでいて学問的な水準は決して低くしていないというところに大きな魅力がある。最初の方で、「ジャズ化される生命力」という形でバッハの演奏の新たな魅力を語り、後半では「フーガの技法」の読み解きを丹念に示してくれる。これまで、かつての僕のように、バッハを縁遠いものとしていた人にとって、この本を読むことはきっと新しい音楽体験への道を開いてくれると思う。興味が湧いたらさらに同じ著者の『バッハ=魂のエヴァンゲリスト』(講談社学術文庫)も読んでみることをおすすめする。
※推薦者のプロフィールは当時のものです。