推薦者: 中村 重穂
所属: 国際連携機構国際教育研究センター
「教養」は実践するものである。
タイトル(書名):
人生を面白くする本物の教養
著者:
出口治明
出版者:
幻冬舎
出版年:
2015
ISBN:
4344983920
北大所蔵:
推薦コメント
この本の推薦文は、僕の体験したエピソードの紹介を以てこれに替えたいと思う。
大学時代に読んだ本の中に、イギリス人は初対面の相手にまず政治の話題を振って、相手がその話題についてこられなかったら「こいつは付き合う価値のない奴だ」と見切りをつける、という趣旨のことが書いてあった。いくら何でもそれは決めつけすぎだろうと思ったものの、そのことを忘れて十年ほどが経過し、機会を得てエジプトに赴任することになった。そして、彼の地でイギリス人のカップルと知り合い、ある日彼らの家に夕食に招待された。席についてまずワインで乾杯となったのだが、一口飲んだところで相手(男性の方)が僕にいきなり、「最近の日本の自民党の内部のごたごたは、あれはどうなってるんだ?」と聞いてきたのである。おそらくそのときの僕は間違いなく「目が点になる」状態だったに違いない。ワインの味も分からなくなり、つたない英語で必死に自民党内の派閥力学といったことについて説明しつつ頭の中では大学時代に読んだ上の話を思い出していたのだが、どうやら見切りをつけられたらしく、その後彼らの家に招待されることはなかった。
さて、そこで、この推薦文を読んでいるあなたに問いたい。あなただったら、こんなときどう答えてどのように会話を弾ませるか? その答えが分かる人、話題についていく自信がある人はこの本を読む必要はない。そうではない人は読んでみてほしい。「教養」というものが、”身につける”ものではなく(あるいはそれだけではなく)”実践する”ことだというのがよく分かるであろう。
ただ、この本は出口氏が語ったことをライターの藤田哲生氏が本にまとめたものなので、何回かに分けて聞き書きをしているうちに内容に矛盾を生じているところや突っ込みどころが少なからずある。鋭い読者ならそれに気づくであろうが、そこは大目に見てよいのではないかと思う。また、最後の第10章は、出口氏が立ち上げたライフネット生命保険株式会社の宣伝といった趣なので、読まなくてもよい。標題が標題なのでそれで損をしている部分もあるが、大上段に構えた「教養」論議よりはよほど面白い本である。
大学時代に読んだ本の中に、イギリス人は初対面の相手にまず政治の話題を振って、相手がその話題についてこられなかったら「こいつは付き合う価値のない奴だ」と見切りをつける、という趣旨のことが書いてあった。いくら何でもそれは決めつけすぎだろうと思ったものの、そのことを忘れて十年ほどが経過し、機会を得てエジプトに赴任することになった。そして、彼の地でイギリス人のカップルと知り合い、ある日彼らの家に夕食に招待された。席についてまずワインで乾杯となったのだが、一口飲んだところで相手(男性の方)が僕にいきなり、「最近の日本の自民党の内部のごたごたは、あれはどうなってるんだ?」と聞いてきたのである。おそらくそのときの僕は間違いなく「目が点になる」状態だったに違いない。ワインの味も分からなくなり、つたない英語で必死に自民党内の派閥力学といったことについて説明しつつ頭の中では大学時代に読んだ上の話を思い出していたのだが、どうやら見切りをつけられたらしく、その後彼らの家に招待されることはなかった。
さて、そこで、この推薦文を読んでいるあなたに問いたい。あなただったら、こんなときどう答えてどのように会話を弾ませるか? その答えが分かる人、話題についていく自信がある人はこの本を読む必要はない。そうではない人は読んでみてほしい。「教養」というものが、”身につける”ものではなく(あるいはそれだけではなく)”実践する”ことだというのがよく分かるであろう。
ただ、この本は出口氏が語ったことをライターの藤田哲生氏が本にまとめたものなので、何回かに分けて聞き書きをしているうちに内容に矛盾を生じているところや突っ込みどころが少なからずある。鋭い読者ならそれに気づくであろうが、そこは大目に見てよいのではないかと思う。また、最後の第10章は、出口氏が立ち上げたライフネット生命保険株式会社の宣伝といった趣なので、読まなくてもよい。標題が標題なのでそれで損をしている部分もあるが、大上段に構えた「教養」論議よりはよほど面白い本である。
※推薦者のプロフィールは当時のものです。