本は脳を育てる ~北大教職員による新入生への推薦図書~ 

推薦者 :  中村重穂      所属 :  国際連携機構国際教育研究センター      身分 :       研究分野 : 
「田辺元ルネサンス」のために
タイトル(書名) 田辺元哲学選I~IV(全4冊)
著者 田辺元
出版者 岩波書店
出版年 2010
ISBN 4003369440
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推薦コメント

前にこの「本は脳を育てる」に西田幾多郎の『善の研究』を推薦したことがある。ところが、日本のアカデミックな哲学界では、西田は何かと話題にもなり研究対象にもなるのに、その謂わば批判者であった田辺元については(同じく批判者であった戸坂潤と比べても)圧倒的に研究(あるいは言及)が少なかったし、むしろ色々な意味で批判的に見られすぎたり西田との対比(それもマイナスの)で捉えられすぎたりしてきたように思われる。私事で恐縮だけれども、僕も院生時代に西田哲学と田辺哲学の対立点について研究発表をしたが、聞き手の殆どが西田哲学の方に関心が強い人たちだったのであまり相手にしてもらえなかった記憶がある。過去、筑摩書房から『田邊元全集』は出版されていたし、辻村公一編『現代日本思想体系 田辺元』や中埜肇篇『田辺元集』(いずれも図書館にある)、そして氷見潔や中沢新一の研究書もあったが、16年前、僕が北大に赴任してきた時にはここでは(なぜか)農学部図書室に全集第3巻だけがぽつんとあるような状態だった。図書館の方々のご尽力でそうした状況は改善されてきたが、田辺哲学がそれ自体の価値を本格的に研究されるようになるのはまだこれからであると思われる。今年の後半になって、一気に4冊、田辺哲学の重要なエッセンスが文庫版で刊行された。初期の、まだ西田の影響下にあった頃の論文も再刊が望まれるところではあるが、日本の近代哲学についての関心が高まり始めている現在、田辺の仕事を曇りのない目で評価し、その成果を検討するためにも、また、外来の知的営為である「哲学」を日本ですることの意味を考える上でも、哲学・倫理学専攻の人々だけでなく多くの人に読んでもらいたいと思い、ここに推薦する。

※推薦者のプロフィールは当時のものです。

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