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「日本語の乱れ」ということが時々メディアを賑わせる。しかし、これは言ってみればジャーナリズムや素朴な庶民感覚レベルの言い方で、その背後には(どこかに)“正しい(あるいは美しい)”日本語のあるべき用い方がある(はずだ)という一種の思い込みが隠れている。言語研究の観点から言えばこれが「乱れ」ではなく「変化」や「揺れ」であることは専門家の間では周知のことである。この本は、多様な現れ方をする日本語の表現を歴史的・計量的に分析し、実は「乱れ」と見えたものもそれなりの背景や理由があることを分かりやすく説明している。言語現象に対する切り口も抱負で研究の方法についても知識を得ることができる。日本語に興味のある人に広く薦めたい。
余計事を書いておくと、この本の「問題なことばの生態」という副題は、この3年前に出てちょっとしたブームになった北原保雄編『問題な日本語』(大修館書店)に対する皮肉かパロディだろうと個人的には思っている。どのような意味で皮肉やパロディと言えるのかについては各自で読み比べていただければ、と思う。 |