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この作品は日本のSF漫画史上に語り継がれるべき大傑作である。それがこの北海道大学附属図書館に置いてあることについて、北大附属図書館スタッフの見識を僕は高く評価したい。単に傑作漫画を置いているからということではなく、この漫画が突きつけてくるあまりにも重い問いが、今日の我々にとって何よりも考え抜かれ、かつ実践されねばならない問いだからである。
グローバル化した社会で異文化としての他者と向き合ってそこで、関わりを深めていこうとするか相手を拒絶するかの選択に迫られることは現代では以前よりも遙かに頻繁にかつ容易に起こりえる。この漫画は、コンピューターが人間の出産・成長・教育・選別までもを管理する世界の中で異質な存在者として出現する超能力者・ミュウたちの、人類との融和に賭けた希望と苦悩と戦いを描き尽くし、異質なもの、異文化との共存がいかに困難と苦痛を伴い、そして時として破壊的な結末にさえ至ることを容赦なく描き出している。
たかが漫画というなかれ、「多文化共生」という耳に心地よいスローガンがささやかれ続ける世界の中で今少し足を止めてその実現可能性を根本から考えるための手がかりを得る上で強く一読を勧めるものである。 |