本は脳を育てる ~北大教職員による新入生への推薦図書~ 

推薦者 :  中村重穂      所属 :  国際連携機構国際教育研究センター      身分 :       研究分野 : 
古典と現代をつなぐ読み方を知る
タイトル(書名) 社会契約論-ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ-
著者 重田園江
出版者 筑摩書房
出版年 2013
ISBN 4480067426
北大所蔵 北大所蔵1 
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推薦コメント

高校の世界史や政治経済の授業で「社会契約論」という考え方を知ったときに感じたのは、ルソーにせよロックにせよなぜあの時代の西ヨーロッパの思想家がそういうことをわざわざ考えなければならなかったのか、という強烈な違和感だった。「社会」というものをみんなで作ろう(?)といった感じで最初に約束事をするという発想自体について行けなかったのである。実は今でもその違和感は抜けきらず、“起源”ということをやたらに理屈を付けて解き明かしたがる(そのくせ割合に最後は「神」が出現して一切が片付く)西欧の思想にとことん付き合いきれない思いがある。
この本は、上記のような違和感を少しでも解消したいと思って読んだのだけれども、むしろ近世のホッブズから現代のロールズまで古典の中に盛り込まれた思想的問題が現代とどうつながるかを理解できる点で有益だった。著者自身が、古典的な「社会契約論」と現代のアクチュアルな問題がどこでつながるかを最後の最後でご自身の経験を踏まえて述べているのが特に重要な点である。
しかし、それでもなお最後まで読んでみて上記の「なぜあの時代の西ヨーロッパの思想家が」という問いに対する答えはついに得られなかった。それが、筆者が哲学というものは特殊ヨーロッパ的な思惟だという知的自覚を欠いているせいなのか、僕の読み方が浅いのか、どちらに起因するのかはまだ分からない。そのような意味で繰り返し読んで考える必要のある本だとも思う。

※推薦者のプロフィールは当時のものです。

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