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推薦者 : 松本 伊智朗 (教育学研究院・教員)
教育学の面白さを伝えたい
ともに生きるための教育学へのレッスン / 北海道大学教育学部他編. - 明石書店, 2019
北大ではどこにある?
北大教育学部に所属する教員が、それぞれの研究テーマにもとづいて初学者向けに執筆した40の論考です。「こころと身体」「学びと教育」「社会と文化」の3つの領域で編集され、「教育」の研究の領域や方法がイメージできます。各教員が推薦するブックガイドも掲載されており、以後の学習に有益です。教育学部のほぼすべての教員が執筆しているので、学部の研究内容のガイド本としても役立ちます。 -
推薦者 : 橋本 雄 (文学研究科(日本史学講座)・教員)
仏教って、こんなに素晴らしいものなんだ。
仏教発見! / 西山厚著. - 講談社, 2004
北大ではどこにある?
本書は、仏教関連の一般書である。ご自身断っておられるように、本書は純粋に正統的な仏教書ではない、かもしれない。だが、長年、奈良国立博物館で研鑽を積んでこられた氏の、仏教やモノへの愛がギュッと詰まった〈啓蒙の書〉である。
ある日、私はこの本を電車のなかで読み始め、終盤近くでとうとう泣き出してしまった。新書を読んで泣いたり笑ったりなどという経験は、初めてのことである。読者に直接繙いて貰いたいので、ここに詳しくは書かないが、西山氏の手がけた「東大寺のすべて」展(奈良博・二〇〇二年)を、東大寺附属の幼稚園児たちに展示解説するくだり(→笑... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
揺るぎない体験と明敏な眼と強靱な思索の結晶
自分のなかに歴史をよむ / 阿部謹也著. - 筑摩書房, 2007
北大ではどこにある?
何年かにわたって「一般教育演習」や「多文化交流科目」で異文化間コミュニケーションの理論と実践といった類いの授業を展開してきたが、この本はそうした授業の設計思想を作る上で常に座右に置いていたものである。この本が出たとき、ある夕刊紙の書評が「これは真に感動的な本である。」と書いた。「感動的」ということばが適切かどうかは分からないが、「目からウロコが落ちる」という感覚が得られる本ではあると確かに思う。内容は、少年時の修道院生活、大学時代の上原専録との出会い、ヨーロッパ留学生活等々著者の体験談が多いように見えるが、その根底で著者はヨー... [続きを読む] -
推薦者 : 小泉 均 (工学研究院・教員)
働いていて痛感するのは、「効率的であれば忙しいことは苦にならない」ということ。
未来食堂ができるまで / 小林せかい著. - 小学館, 2016
北大ではどこにある?
理学部数学科卒業後、日本IBMとクックパッドでエンジニアとして働いた女性が、会社をやめ自分の食堂を開業するまでの1年半のことを書いたものである。この食堂には「まかない」「あつらえ」「ただめし」といったユニークなシステムがある。しかし、それ以上に注目すべきところは、彼女が自分で何をやったらよいかを考え、自分が良いと思うことを今までのこの業界の慣習や常識にとらわれず実行したことである。何が必要か、それは結局どういうことを意味するのか、そのためには何をやれば良いかをきちんと考えている。「働いていて痛感するのは、「効率的であれば忙しいことは... [続きを読む]登録日 : 2018-02-28
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推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
「新しい」学問の「古典」
言語と社会 / P.トラッドギル著 ; 土田滋訳. - 岩波書店, 1975
北大ではどこにある?
推薦文タイトルの”「新しい」学問の「古典」”という表現はそのまま読めば形容矛盾でしかない。しかし、この本は、社会言語学という1960年代から形成され始めた「新しい」学問の分野においては紛れもなく今や「古典」であり、タイトル通り「言語」と「社会」を見るための視点や研究の方法を手際よく整理して提示している。現在、社会言語学についての概論書、入門書は数多く出版されているし、その対象や方法も発展しているけれども、この本に盛り込まれた内容は今日でも(あるいは今日なお)有益であり学ぶことが多い。社会言語学という個別分野だけでなく、言語と社会の関... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
「研究者」になるための知的基礎体力をつけたい人に
これから研究を書くひとのためのガイドブック : ライティングの挑戦15週間 / 佐渡島紗織, 吉野亜矢子著. - ひつじ書房, 2008
北大ではどこにある?
何年か前に、日本各地の大学で文章表現法関係の授業を担当している教員が集まって実践研修会をしたことがある。各人が自分の授業実践を発表し、ワークショップを通してよりよい授業のあり方を考えるというものだったが、そこで僕が言ったのは、文章表現法の授業をやるということが「自分が教わっていないことを教える”恐怖”」を伴う営為であるということだ。欧米の大学(院)に留学した人は別だろうが、僕自身の高校・大学時代には文章表現法やレポート作成法、論文執筆法は誰も教えてくれなかった。(僕の卒業した大学の教養科目の「文章表現法」は、1年間の総仕上げに短... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
宗教を信じつつ宗教を超える
はじめて読む聖書 / 田川建三ほか著. - 新潮社, 2014
北大ではどこにある?
この本を推薦するのは、僕がキリスト教徒であるからでもなく、『聖書』にありがたみを感じているからでもない。どのような本にせよ、読み手の体験を通してその内面と響き合うものでなければそもそも本を読む意味はないということをこの本の中の第Ⅳ章「レヴィナスを通して読む『旧約聖書』」(内田樹)が慄然たる厳しさを持って教えてくれるからである。この本を手にした人は全部読まなくても良い(読めば読んだでそれなりに得るものはあろうけれども)が、上記の箇所だけはじっくりと読んで欲しい。その上で、関心があればレヴィナスの本に向かうこともお勧めする。わかり... [続きを読む] -
推薦者 : 小泉 均 (工学研究院・教員)
将来の世界の在り方、政策などを考えるうえで必読の本
隷属なき道 : AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働 / ルトガー・ブレグマン著 ; 野中香方子訳. - 文藝春秋, 2017
北大ではどこにある?
生活維持に必要な現金を一律に給付する制度、すなわちベーシックインカムの有効性について説明している本である。著者は、将来わたしたちが、豊かな生活を維持しその質を向上させてゆくためには、この制度の実施がぜひ必要であると主張している。著者によれば、現代では、コンピュータやコンテナの利用などにより、品物やサービス、資金などがかつてないスピードで世界を回るようになっている。ロボットにより生産性が向上し、機械にできないような技術を取得していない人は、機械に仕事を奪われる。このため、不平等は広がり格差は広がってゆく。時間と富の再分配、ベーシ... [続きを読む]登録日 : 2017-10-19
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推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
戦後日本の思想的骨格を掴む
日本の思想 / 丸山真男著. - 岩波書店, 1961
北大ではどこにある?
先日必要があって高校の倫理の用語集を見ていたら、丸山眞男が項目立てされて解説が書かれていたので少しびっくりした。同時にもうそういう時代になったのか(=丸山もそういう存在になったのか)とあらためて感じるものがあった。ということは、かなりの北大生が高校時代におそらくこの『日本の思想』を読んでいると思われるので、今更紹介するまでもないのかもしれないが、まだ読んでいない人のためにここに推薦しておきたい。
実は、僕自身はこの本を今読んでも率直に言って“程度の低い常識論”にしか読めない。しかし、裏を返せばそれは、今や常識論に思われるほどに... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
研究のための「転ばぬ先の杖」
実証的教育研究の技法 : これでできる教育研究 / 西川純著. - 大学教育出版, 2000
北大ではどこにある?
この本は著者の学生(大学院生)指導体験から得た知見をもとに書かれた「研究」のための手引き書である。素材の多くは教育学、特に教育現場の実践を想定しており、それらをどのように研究テーマとして成立させ処理していくかについて解説してくれている。副題に「これでできる教育研究」とあるが、実際の教育研究は現場の生身の人間(生徒・学生)を相手にするのだからこの本を読めば全て滞りなく研究ができるというわけではない。そのことは著者自身が最もよく分かっているだろう。それでもこの本を推薦するのは、学生が、壁にぶつかったり悩んだり理解しにくかったりする... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
アメリカに生まれて生きる、とは
ボーン・トゥ・ラン : ブルース・スプリングスティーン自伝 / ブルース・スプリングスティーン著 ; 鈴木恵, 加賀山卓朗他訳. - 早川書房, 2016
北大ではどこにある?
“ボス”と呼ばれるアメリカのロックンロール・ミュージシャン、ブルース・スプリングスティーンが7年をかけて執筆した自伝である。この本から彼の音楽に対する姿勢を窺えるのは当然だが、それ以上にアメリカ東海岸の労働者階級の家庭にアイルランド系、イタリア系、オランダ系という様々な血脈を受けて生まれ育ったスプリングスティーンが自分の出自を絶えず意識しながら音楽を作り演奏していく姿は、日本人のかなりの部分=日本(ヤマト)民族という出自を普段意識することのない存在には、強い印象を与えるであろう。彼の音楽が好きな人だけでなく、帰属意識(カタカナ言... [続きを読む] -
推薦者 : 今井 一郎 (水産科学研究院・教員)
ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ送る言葉
ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ : 15歳から始める生き残るための社会学 / 響堂雪乃著. - 白馬社, 2017
北大ではどこにある?
かつては「陰謀論」あるいは「都市伝説」と言われて一笑に付される様な一見荒唐無稽とも思える事項が,実は真実の場合がある。アメリカ同時多発テロ事件は,陰謀論の最たるものと言われて来た。しかし,死の床にあった元 CIA 局員、マルコム・ハワード氏は、ビル等の破壊に関する経歴や技術を持っていたことから、ニューヨークの世界貿易センタービルの破壊プロジェクトを CIA の幹部から強要されたとの内容を告白した。この事から,同時多発テロ事件は CIA の実行した,アメリカ政府による自作自演のテロである事がつい先日(2017年7月13日)判明した。この事件はアルカイダによる... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
哲学を体現した人の生涯
ウィトゲンシュタイン : 天才哲学者の思い出 / ノーマン・マルコム著 ; 板坂元訳. - 平凡社, 1998
北大ではどこにある?
20世紀以降の哲学に最も影響力のあった哲学者ウィトゲンシュタインに親しく接した著者が、その人柄、哲学に対する姿勢、同時代人との関わりからゼミナールの雰囲気までを生き生きと描いた人物伝である。ウィトゲンシュタインの哲学に関心がなくても、哲学者という人びとが自分の思索にどのような姿勢で臨んでいるかを知る上で一読の価値がある。 -
推薦者 : 橋本 努 (経済学院・教員)
「幸福とは何か」「善く生きるとはどういうことか」を問う新しい教養の書
The Routledge handbook of philosophy of well-being / Fletcher, Guy. - Routledge, 2015
北大ではどこにある?
この数年間で、「幸福」や「ウェルビイング」に関する研究が、社会科学の諸分野を巻き込みつつ大きく発展している。さまざまな国際指標が提案され、膨大な社会調査研究が蓄積されてきた。実証的な成果を受けて、哲学や社会理論においても新たな発展がみられる。本書はこのテーマに関する最新の社会諸科学の研究成果を展望するハンドブックであり、と同時に、「幸福とは何か」「善く生きるとはどういうことか」を問う新しい教養の書といえる。こうした書物を契機に、若い世代から新たな研究が生まれることを願っている。
登録日 : 2017-08-04
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推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
「知の巨人」たちはいかに思索したか
柳田国男と梅棹忠夫 : 自前の学問を求めて / 伊藤幹治著. - 岩波書店, 2011
北大ではどこにある?
先に竹内好の『日本とアジア』をこの「本は脳を育てる」に推薦したが、その中で竹内好がしばしば言及している一人が梅棹忠夫である。日本の知識人―という言い方を梅棹は嫌うだろうが―のアジア理解、文明観を問題にする上で避けて通れないと竹内は感じ取ったのだろう。その梅棹の知的営為を、先行する柳田国男のそれと対比的に考察し、そこに共通するものと相違するものを読み解こうとしたのが本書である。一つの学問を作り上げることの奥深さを知ることのできる好著として推薦したい。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
それでも君はボランティアをするか?!
ボランティアという病 / 丸山千夏著. - 宝島社, 2016
北大ではどこにある?
ボランティアはいいことだと思っている人、実際にやってみたことはないが関わってみたいという潜在的な魅力を感じている人は少なくないと思われる。しかし、ボランティアが全て手放しで賞賛されるべきものかというとそうでもない。この本は、「ヤバい」ボランティア、あるいはボランティアの「ヤバさ」についていろいろと教えてくれる。内容には賛否両論あるだろうが、「善意」が無条件にもてはやされることに疑問を感じるなら、折角のボランティア参加が心ならずも不本意な結果に終わらないよう一度目を通しておいてもいいと思う。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
その日本語にはわけがある!
揺れ動くニホン語 : 問題なことばの生態 / 田中章夫. - 東京堂書店, 2007
北大ではどこにある?
「日本語の乱れ」ということが時々メディアを賑わせる。しかし、これは言ってみればジャーナリズムや素朴な庶民感覚レベルの言い方で、その背後には(どこかに)“正しい(あるいは美しい)”日本語のあるべき用い方がある(はずだ)という一種の思い込みが隠れている。言語研究の観点から言えばこれが「乱れ」ではなく「変化」や「揺れ」であることは専門家の間では周知のことである。この本は、多様な現れ方をする日本語の表現を歴史的・計量的に分析し、実は「乱れ」と見えたものもそれなりの背景や理由があることを分かりやすく説明している。言語現象に対する切り口も... [続きを読む] -
推薦者 : 水本 秀明 (外国語教育センター・非常勤講師)
手軽にフィンランドの育児、生活習慣、etc.を知ることができます
フィンランド流イクメンMIKKOの世界一しあわせな子育て / ミッコ・コイヴマー. - かまくら春秋社, 2013
北大ではどこにある?
現在お母さんと赤ちゃんの相談所「ネウヴォラ」のシステムがフィンランドから日本に紹介され、大きな反響を呼んでいます。肩書は大使館の報道・文化参事官だけれどもごく普通のフィンランド人の父親から見た理想の子育ての姿からはたくさん得るものがあります。 -
推薦者 : 水本 秀明 (外国語教育センター・その他)
日本初の本格的な日本語・フィンランド語辞典
日本語・フィンランド語辞典 = Japani-Suomi sanakirja / 日本フィンランド協会編. - 日本フィンランド協会, 2017
北大ではどこにある?
企画から約20年、何度か頓挫しかけた日本語・フィンランド語辞典が日本フィンランド語協会の手でやっと2017年2月完成しました。フィン日、フィン英辞典はこれまでそれなりのものが手に入りましたが、日フィン辞典としては日本初の本格的なものです。学習用にぜひ利用してください。2017年6月には電子版もリリース予定です。 -
推薦者 : 池田 文人 (高等教育推進機構・教員)
学力世界一の秘密
競争やめたら学力世界一 : フィンランド教育の成功 / 福田誠治. - 朝日新聞社, 2006
北大ではどこにある?
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推薦者 : 池田 文人 (高等教育推進機構・教員)
感動します!
青い光が見えたから : 16歳のフィンランド留学記 / 高橋絵里香著. - 講談社, 2007
北大ではどこにある?
北海道で育った著者が、中学校でいじめに会い、絶望の中で見た青い光・フィンランド。苦労してフィンランドの高校に入学し、フィンランド語に苦戦しながらも、高校を卒業し、大学へ進学します。日本とは違い、個性と自主性を尊重するフィンランドの人々に囲まれ、自分らしさを取り戻していきます。自分に素直になれる素晴らしさにきっと感動するでしょう。 -
推薦者 : 田畑 伸一郎 (スラブ・ユーラシア研究センター・教員)
フィンランドの歴史を深く理解するための好著
「大フィンランド」思想の誕生と変遷 : 叙事詩カレワラと知識人 / 石野裕子著. - 岩波書店, 2012
北大ではどこにある?
フィンランドの文化を知るうえで重要な叙事詩カレワラが同国の歴史において,あるいは同国が独立を遂げていくなかでどんな役割を果たしのかがよく分かります。フィンランドの歴史について思想面を含めて深く学びたい人にとって必読書です。 -
推薦者 : 小泉 均 (工学研究院・教員)
英語に関する素朴な疑問について、英語の歴史に基づき答える本
はじめての英語史 : 英語の「なぜ?」に答える / 堀田隆一. - 研究社, 2016
北大ではどこにある?
英語に関する素朴な疑問について、英語の歴史に基づき答えている本である。なぜ母音で始まる単語の前の不定冠詞はanで子音で始まる単語の前はaなのか?(通常の英文法の解説とは逆で、oneの弱形のanがはじめにあり、子音で始まる単語では、子音が連続するためnが脱落した)、数詞oneに対して、なぜ1番目はfirstなのか?なぜ日本語では姓+名の順なのに、英語では名+姓の順なのかなど興味深い話題が多い。このような事を知らなくても、英語の習得には支障はないのかもしれない。しかし、そうなる理由がわかっている方が記憶に残るし、英語に対する興味が増す。英語の修得に、必ず... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
言語をめぐる思惟を広く捉えるために
ドイツ言語哲学の諸相 / 麻生建. - 東京大学出版会, 1989
北大ではどこにある?
以前奨めてくれる人があって、飯田隆『言語哲学大全Ⅰ~Ⅳ』(勁草書房)を読んでみたことがある。確かに現代の言語哲学、あるいは分析哲学をフレーゲからデヴィッドソンまで熱く語っている良書ではあるのだが、これをもって「大全」ということには大きな不満を覚える。その点は飯田氏も分かっているようで、第Ⅰ巻の冒頭で「『大全』というのは、さすがに私にしても調子に乗り過ぎという感がしないでもない」と書いている。この本を「大全」と言ってほしくないのは、対象がフレーゲとヴィトゲン... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
「日本語を教える」現場の熱気を伝える
世界の日本語教室から-日本を伝える30ヵ国の日本語教師レポート- / 国際交流基金. - アルク, 2009
北大ではどこにある?
ここ何年か国際教育研究センターで(旧留学生センター時代から)全学教育科目に「外国人に日本語を教える」という「総合科目」を提供している。受講動機は様々であろうが日本語教育に関心を持ってくれる学生が一定数いるようで関係者としては有り難く思っている。この本は、そんな、日本語教育に関心を持っている学生がちょっとだけその―特に海外の―現場を覗いてみたいと思った時に気軽に読めるものとして紹介しておきたい。内容は、外務省の外郭団体である国際交流基金が世界各国に派遣した日本語教育専門家の手になる現地レポートである。日本語教育の現場の雰囲気を少しで... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
イスラム教を「信じる」とはどのようなことか
日本の中でイスラム教を信じる / 佐藤兼永. - 文藝春秋社, 2015
北大ではどこにある?
日本社会の中ではイスラム教信者、中でも特に日本人の信者というのは姿が見えにくい存在である。この本は、日本社会の中でイスラム教信仰に生きる人びとの姿を描いたルポルタージュであり、イスラム世界というものが西アジア・中東・アフリカという遠いところにある(だけな)のではなく、我々のすぐそばにもあるものだということに気づかせてくれる。現在、多少緩和されたとはいえ、まだイスラム教に対する様々な偏見が社会の中に存在することは否定できない。著者の佐藤氏は、その偏見を我々も持つことを認めた上でそれを肯定的なものへと転換する契機を示してくれている... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
「戦争」を陳腐なことばで語らないために
ひとりの記憶 : 海の向こうの戦争と、生き抜いた人たち / 橋口譲二. - 文藝春秋, 2016
北大ではどこにある?
この本は、太平洋戦争前後に植民地を含む海外に渡り、様々な事情でその地に残り、あるいは再渡航してそこで生き抜くことを選んだ人々からの聞き取りの記録である。現代に於ける戦争に対する反対・批判・抑止のことばの一つとして「戦争は人間の運命を狂わせる」といったものがある。それを否定するつもりはないし、そうした事例もあることを認めはするが、この本を読んだあとでここに描かれている人々の人生が戦争によって“狂った(あるいは狂わされた)”と―「戦争を知らない子供たち」である我々が―いうことには大きな躊躇いを覚えてしまう。その背後にあったはずのお... [続きを読む] -
推薦者 : 松田 康子 (教育学研究院・教員)
すべての学び手に
ケアの本質 : 生きることの意味 / ミルトン・メイヤロフ著 ; 田村真, 向野宣之訳. - ゆみる出版, 1987
北大ではどこにある?
本書は、MILTON MAYEROFF著 On Caringの訳書です。対人援助職にとどまらず、すべてのケアの担い手にとって、ケアの営みにおいて常に立ち戻るべき本質が示されており、哲学書にしてはやさしい言葉で綴られている書物です。日本語も英語も一見すると、平易な言葉が並んでいるのですが、何度でも噛み締め味わうことができる論考です。高等教育機関において、「すべての学び手に」としてオススメしたい点は、メイヤロフが、ケアの対象を人のみならず、芸術、概念、理念というものにまで広げて考えているところです。メイヤロフは、ケアリングとは、ケアの受け手が他の誰かをケアできるよ... [続きを読む] -
推薦者 : 小俣 友輝 (URAステーション・その他)
言葉の違い、考え方の違いは面白い!
翻訳できない世界のことば / エラ・フランシス・サンダース著イラスト ; 前田まゆみ訳. - 創元社, 2016
北大ではどこにある?
生まれたところ、住んでいるところが違えば、人の気持ちやことばも違ってくるようです。
様々な国で使われていることばが表すものは、外国人である自分の想像を超えているにも関わらず、なるほどと思えるものでした。
新しいものの見方・考え方に触れられるのと同時に、ことばを使う世界の人々とのつながりをも感じるのでした。 -
推薦者 : 武村 理雪 (国際連携機構・その他)
自身の問いを見つめなおす機会に
途上国の人々との話し方 : 国際協力メタファシリテーションの手法 / 和田信明, 中田豊一. - みずのわ出版, 2010
北大ではどこにある?
途上国支援に限らず、様々な職業で活かすことのできる知識と技術を学べる書籍です。
実は私も本学の教員に薦められて読み始めました。自らの無知とコミュニケーション技術のなさを痛感させられた刺激的な書籍です。
責任と配慮をもって問いを発し、その問いをきっかけに希望が開かれるよう、この書籍を片手に精進していきたいと思わされました。
ある程度の業務経験があると、内容理解が進み易いだろうと推測します。一方で、今は十分に理解できない部分があったとしても、最後まで読んでみることで学生は将来の糧を得られるのではないかと思います。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
おじさんも、若い人も語学を楽しむために
おじさん、語学する / 塩田勉. - 集英社, 2001
北大ではどこにある?
あるきっかけからフランス語を勉強することになったおじさんの奮闘記、という形をとって語学を身につけるための秘訣と、それだけでなく異文化との関わり方を気づかせてくれるユニークな本。語学大好きな人にも語学嫌いな人にもお薦めしたい。
ただ、悲しいかな外国語の先生は日本語はお得意ではないようで、この中にも日本語の間違いが一箇所ある。探してみてほしい。 -
推薦者 : 野中 雄司 (附属図書館・職員)
これから「どう生きるか」を改めて考えたいときに
君たちはどう生きるか / 吉野源三郎. - 岩波書店, 1982
北大ではどこにある?
この本は、軍国主義が勢力を強めつつあった昭和十二年に山本有三が少年少女向けに偏狭な国枠主義を越えた自由で豊かな文化のあることを伝えようとして編纂した『日本少国民文庫』シリーズ中の「倫理」を扱ったものです。私はこの少年少女向けの本を25歳を過ぎてから読みましたが、恥ずかしながら「勉強する意味」などハッとさせられる部分が多くあり感銘を受けました。読了後少し恥ずかしく思いつつ解説を読んでいると、なんとかの丸山眞男も大卒後東大法学部の助手になり研究者になった後に読み「私の魂をゆるがした」と記されており、驚いたのと同時にほっとしたことを覚... [続きを読む] -
推薦者 : 増田 哲子 (メディア・コミュニケーション研究院・教員)
選択をする「自分」について知ること
おとなの進路教室。 / 山田ズーニー. - 河出書房新社, 2007
北大ではどこにある?
著者の山田ズーニーさんは、企業や大学でコミュニケーションや文章表現についての研修・教育を行っている方です。著者自身、30代後半に教育系の大手出版社を辞め、独立という大きな選択をしました。
大学進学、就職、転職といったさまざまな進路選択において、選ぶ基準となる自分自身の気持ちをどのように掘り下げ、どのように表現するのか?本書は、こうした問いについて、著者自身の経験や著者が出会ったさまざまな人たちのケースから考えさせてくれます。
人生のなかで、進路選択は1回きりではありません。高校進学、大学進学、就職の後も、まだまだ選択の機... [続きを読む] -
推薦者 : 宮本 淳 (高等教育推進機構・教員)
「少年よ、迷い悩め」
アンパンマンの遺書 / やなせたかし. - 岩波書店, 2013
北大ではどこにある?
この本のタイトルにちょっとドキッとした人もいるかもしれません。「遺書」とありますし、この本の著者で、アンパンマンの作者であるやなせたかしさんは、2013年10月13日に94歳で永眠されています。でも、タイトルを見て是非読んでみたいと思った人もいませんか?小さいころ大好きだったアンパンマンの遺書?!何が書かれているのだろう...ちなみに絵本ではありません。推薦する私がこの本を読んだ理由は2つです。ひとつは、私の実家が高知県にあること。高知県はやなせさんの出身地です。私は高知で暮らしたことがありませんが、両親がリタイヤ後に自分たちのふるさとである... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
やっぱり東京大学は凄い…。
アクティブラーニングのデザイン : 東京大学の新しい教養教育 / 永田敬, 林一雅編. - 東京大学出版会, 2016
北大ではどこにある?
平成24年8月24日付中央教育審議会答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」に於いて、今後の中等教育・大学教育に積極的にアクティブ・ラーニング型授業を導入するべきであることが打ち出された。この本は、東京大学教養学部で実践されたアクティブラーニングの理念と方略を報告したものである。読者としては、これからアクティブラーニングに取り組もうとする大学教員を想定しているものであるが、学生が読んでも21世紀に求められる能力をどの... [続きを読む] -
推薦者 : 小林 和也 (高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター・職員)
ゾーンへの招待
ストーカー / アルカジイ・ストルガツキー,ボリス・ストルガツキー著 ; 深見弾訳. - 早川書房, 1983
北大ではどこにある?
アンドレイ・タルコフスキー監督による映画のほうが有名かもしれないが、この原作もまた偉大な文学作品だ。
本作は通常SFとされる。しかしそれだけではない。戦争や核汚染後の世界のメタファーとも言える突如現れた謎の危険地帯「ゾーン」。ストーカーはそこに侵入して、異星人が残したとされる異物を採取する。ストーカーとは何者であるのか? この問いに対する答えを、主人公レドリックの述懐に読み取ることができなければ、それはこの本との出会い損ね、悲しい接触と言わざるをえない。 -
推薦者 : 長堀 紀子 (女性研究者支援室・教員)
2025年、働き方はどうなっているか?
ワーク・シフト : 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図「2025」 = Work shift / リンダ・グラットン著 ; 池村千秋訳. - プレジデント社, 2012
北大ではどこにある?
”2025年”に、今大学生の皆さんは、ちょうど30歳前後です。あなたはその時、どのような働き方をしていますか?
自分の親世代の常識から、働き方の常識が大きく変わってきています。大きく3つのシフトが予測されています。「食えるだけの仕事」から意味を感じる仕事へ。忙しいだけの仕事から価値ある経験としての仕事へ。勝つための仕事からともに生きるための仕事へ。
現在40代の私の世代でも、既にその変化は広がっています。
自然に見聞きする情報だけで将来を考えてはもったいない。未来への理解を深め、幸せに生きるための働き方に興味がある方はぜひ、読ん... [続きを読む] -
推薦者 : 長堀 紀子 (女性研究者支援室・教員)
将来のキャリアと”今”をつなげよう
大学生のためのキャリアデザイン : 大学生をどう生きるか / ヒューマンパフォーマンス研究会編 ; 三浦孝仁 [ほか執筆]. - かもがわ出版, 2013
北大ではどこにある?
学生向けに書かれた「キャリア」本が各種ある中で、キャリア開発の考え方と学びつつ「学生時代の今をどう過ごすか?」についての指南を与えてくれる本です。
大学生の時期は、自分を理解し、自己管理能力を身につける大変良い時期です。やみくもに努力するよりも、キャリア開発の知識を持ったうえでの努力の方が、より成長につながると思います。
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推薦者 : 髙橋 彩 (国際連携機構国際教育研究センター・教員)
仕事・生き方を模索するあなたに
聞き書緒方貞子回顧録 / 緒方貞子 [述] ; 野林健, 納家政嗣編. - 岩波書店, 2015
北大ではどこにある?
本書をあえてキャリア支援の書として紹介したい。
国連難民高等弁務官として様々な難局に立ち向かった緒方貞子氏には数々の賞賛があろう。また、本書は国際政治学、外交史、国際関係論など、いくつかの分野で貴重な資料ともなろう。
しかし、ここでは緒方氏の人生が一人の人間と歩みとして描かれていることに注目したい。
心あるその人が、仕事の各局面で、何を考え、どのような意思を持って、どう行動したのか。分野や進路を問わず、今後、社会の未来とどう向き合っていくのかを、読者自身が問われているようだ。 -
推薦者 : 長堀 紀子 (女性研究者支援室・教員)
フィールドワークと出産・育児の両立ノウハウ
女も男もフィールドへ / 椎野若菜, 的場澄人編. - 古今書院, 2016
北大ではどこにある?
野生動物の研究、地球や環境科学の研究、言語学の研究、文化人類学の研究まで、調査対象を求めて世界各地に出かけるフィールドワークはたくさんあります。フィールドワークとと出産・育児って両立できるの?どうやって?という疑問に、様々な分野のフィールドワーカーが実例で答えてくれています。研究者の仕事に興味がある方、女性に不利(?)と思われがちな分野での仕事に興味がある方、ヒントがたくさん詰まっていますよ。