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この本は、ルース・ベネディクトの『菊と刀』以後の代表的な日本人論・日本論を取り上げてそれらを関連づけて論じることを通して日本と日本人に対する内外の見方がどのように関連し合ってどう変化してきたかのわかりやすい見取り図を描き出すものである。
この本の眼目は、所謂広義の「日本(文化)論」と言われるものを「日本論」と「日本人論」に分けてそれぞれが登場してくる歴史的・政治的文脈を明らかにしている点である。これを読むと、結局のところ、“代表的な”(と言われている)「日本人論」や「日本論」は、実は-カレル・ヴァン・ウォルフレンを除くと-基本的にアメリカの対日政治判断や経済的利害に少なからぬ影響を受けているものであることが判る。その分、では他の国で出版された「日本論」や「日本人論」は(あるとすれば、だが)どうなっているのか、という疑問に当然行き当たることになる。その意味でさらなる知的好奇心を刺戟される格好の入門書でもある。 |