推薦者: 中村 重穂
所属: 国際連携機構国際教育研究センター
身分: 教員
研究分野: 日本語教育史、意味論
「戦争」を陳腐なことばで語らないために
タイトル(書名):
ひとりの記憶 : 海の向こうの戦争と、生き抜いた人たち
著者:
橋口譲二
出版者:
文藝春秋
出版年:
2016
ISBN:
416390395X
北大所蔵:
推薦コメント
この本は、太平洋戦争前後に植民地を含む海外に渡り、様々な事情でその地に残り、あるいは再渡航してそこで生き抜くことを選んだ人々からの聞き取りの記録である。現代に於ける戦争に対する反対・批判・抑止のことばの一つとして「戦争は人間の運命を狂わせる」といったものがある。それを否定するつもりはないし、そうした事例もあることを認めはするが、この本を読んだあとでここに描かれている人々の人生が戦争によって“狂った(あるいは狂わされた)”と―「戦争を知らない子供たち」である我々が―いうことには大きな躊躇いを覚えてしまう。その背後にあったはずのおそらく途方もない葛藤と決断、覚悟といったものは生半可な想像力を拒む強さで、戦争と人間/個人の関わり方についての問いを突きつけてくる。その問いに向き合うことが若い人たちにとって生きることの意味を考える上で大切であると思って推薦することにした。
著者の橋口氏によれば、この本に収めきれなかった人々の記録がまだ70人あまりあるということであり、それについて橋口氏は「ここから先はこれから生きる人たちに託したいと思います。」と結んでいる。望むらくは北大生の中から、こうした記憶と記録を未来につなげる仕事に関心を持ってくれる人が出てくれたらと願う次第である。
著者の橋口氏によれば、この本に収めきれなかった人々の記録がまだ70人あまりあるということであり、それについて橋口氏は「ここから先はこれから生きる人たちに託したいと思います。」と結んでいる。望むらくは北大生の中から、こうした記憶と記録を未来につなげる仕事に関心を持ってくれる人が出てくれたらと願う次第である。
※推薦者のプロフィールは当時のものです。