推薦者: 中村 重穂
所属: 国際連携機構国際教育研究センター

冒険記は面白い!

タイトル(書名):
世界の測量-ガウスとフンボルトの物語-
著者:
ダニエル・ケールマン
出版者:
三修社
出版年:
2008
ISBN:
4384041071
北大所蔵:
北大所蔵 1 
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推薦コメント

この本は、近代ドイツの学術史に屹立する偉人、数学者のガウスと博物学者のフンボルトの知的探求の冒険を描いた作品である。第一章と第十四章でガウスとフンボルトは邂逅するが、それ以外の章は一章ごとにそれぞれの探求の人生が描かれる。異世界に新しい知識と発見を求めて踏み込んでいくことが(単純に)偉業だと考えられていた時代を現代の視点から振り返るどのように表せるか、ということが興味深く読み取れるだろう。

勿論、小説なので虚実取り混ぜられており、ガウスが哲学者カントのところに非ユークリッド幾何学の発見を告げに行く部分などは完全なフィクションだが、事実を知らなければフィクションとは思わせないほどの面白さがある(実際にガウスは非ユークリッド幾何学を発見していたらしいが、カントの批判を恐れて公表しなかった、という説がある)。現実にも長く友好関係にあったこの二人(往復書簡集が旧東ドイツ(!)の出版社から出ている)の事績をたどり、ヨーロッパが異質な世界を経験するプロセスを知ることはグローバル化が叫ばれる社会に生きる我々に色々なことを考える契機を与えてくれる。
なお、第6章「河」3行目に「ボンパルト」という人名が出てくるが、これは原著で確認したところ「ボンプラン」の誤植であるのでそのように修正して読まれたい。

※推薦者のプロフィールは当時のものです。