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以前奨めてくれる人があって、飯田隆『言語哲学大全Ⅰ~Ⅳ』(勁草書房)を読んでみたことがある。確かに現代の言語哲学、あるいは分析哲学をフレーゲからデヴィッドソンまで熱く語っている良書ではあるのだが、これをもって「大全」ということには大きな不満を覚える。その点は飯田氏も分かっているようで、第Ⅰ巻の冒頭で「『大全』というのは、さすがに私にしても調子に乗り過ぎという感がしないでもない」と書いている。この本を「大全」と言ってほしくないのは、対象がフレーゲとヴィトゲンシュタインを除くと現代英米言語哲学に集中してしまっていて、それが即ち言語哲学だという誤解を与えかねないからである。一方には、ライプニッツから始まって(と言っていいだろう)、ヘルダー、フィヒテ、フンボルト、ハーマン、カッシーラー、ハインテル、アーペル、リープルックス、ロレンツェン、パツィッヒ、ヘニッヒフェルト―このくらいでいいか―と、連綿と続くドイツ・オーストリア言語哲学の伝統があるのであり、それを無視して言語哲学は語れないと考える次第である。(同じことがもちろんフランスについても言える。)
ここに推薦する本はやや古いものであり、今ならドイツではより良い概説書が手に入るかもしれないが、まずは言語哲学を現代英米中心に見てしまう視野狭窄に陥らないために是非とも読んでもらいたいと思う。言語哲学への視野が広がることは間違いない。
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