心や思考の仕組みを探る
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  1. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    人の振り見て我が振り直せ

    カネを積まれても使いたくない日本語 / 内館牧子. - 朝日新聞出版, 2013   北大ではどこにある?

    最近の出版業界は「脅迫産業」めいてきたところがあり、本の表題にやたらと「知らないと恥をかく~」だの「あなたもきっとだまされる」だの「~のウソ」だの「その○○は恥をかく」だの、これでもかとばかりに読者を不安がらせ(て買わせ)ようとするフレーズを入れるものが多い。こういった表題の本は、おおむね中身はたいしたことがないので買わないことにしているが、ここに挙げた内館氏の本は、その大仰な表題に似合わず、今使われている、あまり適切とは言えないことばづかいを丁寧に拾い上げて論評しており、まさに「人の振り見て我が振り直せ」で、自分の日本語の使...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-07-12

  2. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    西田哲学の実践としての西田評伝

    西田幾多郎 / 大橋良介. - ミネルヴァ書房, 2013   北大ではどこにある?

    西田哲学の難しさについてはその一端を、以前この「本は脳を育てる」に『善の研究』を推薦したときに書いておいた。この『西田幾多郎』は、現在西田幾多郎研究の世界水準を牽引する著者が、単に「伝記」=時間の流れの中である人物がなしたあれこれのことを書くだけでなく、まさに西田を一つの”出来事”とし、それに西田哲学を実践してみせることによって新たな西田像を明らかにしたものである。西田の伝記はこれまでさまざまなものがあったけれども、西田自身の歴史哲学的思索によって書かれた西田には、これまでのものにはない新鮮な人間像が見られる。「哲学」という特...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-06-22

  3. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    読み物として面白い文章読本

    思考のための文章読本 / 長沼行太郎. - 筑摩書房, 1998   北大ではどこにある?

    ここ何年か、「一般教育演習(フレッシュマンセミナー)」で日本語文章表現関係の授業を開講しており、その参考とするためにあれこれの文章読本を45冊ほど読んで、今46冊目を読んでいる。率直に言って授業の素材として役に立ったものはほとんどなく、推奨できるものは4、5冊程度である。そして、これらの推奨できる数少ない本も、どう言ってみても結局はハウツー本であり、面白さという点ではほとんど期待できない。その中にあって、長沼氏のこの本は唯一と言っていいほど読み物としての面白さがある文章読本である。この本を通して読者は、文章作成の根本にある「問い」を立てる...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-06-20

  4. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    死と美意識と

    太陽と鉄 / 三島由紀夫. - 中央公論新社, 1987   北大ではどこにある?

    この作品は三島の、精神と肉体の拮抗を軸とした自己認識過程の吐露であるとともに、己の死と向き合おうとする冷徹な美意識の自己表現の書でもある。この本に書かれた思索とその基盤をなす体験の延長線上で三島はあのような「自決」という仕方を選び取ったのであり、その死は三島の、死に対する美意識の自己完結的結晶であったのだ。「国(でも何でもいいが要するに他者)のために自分の生命を投げ出して死ぬ」ということを自分の真剣な問題として考えたいなら、この本は、その内容を肯定するにせよ否定/批判するにせよ、避けて通れない作品であり、今の時代にあらためて読...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-06-20

  5. 推薦者 : 森川 正章   (地球環境科学研究院)

    柔軟な思考能力を鍛えるのに最適な書

    なぜ、それを考えつかなかったのか? / チャールズ W マッコイ Jr(ルディー和子訳). - ダイヤモンド社, 2003   北大ではどこにある?

    本書は合理的な思考や意思の決定の仕方について例をあげながら教えてくれます。
    ひとはついつい先入観にとらわれて物事をあいまいなまま判断しがちです。
    私たちが陥りやすい勘違いや錯覚を指摘してくれるので、なるほどと思わせるところがたくさんあります。

    登録日 : 2014-04-10

  6. 推薦者 : 和多 和宏   (理学部 生物科学科(生物))

    ヒトを含む生物の「生まれと育ち」を考える

    やわらかな遺伝子 / マット・リドレー著 ; 中村桂子, 斉藤隆央訳. - 紀伊国屋書店, 2004   北大ではどこにある?

    自分は他人と何が同じで、違うのか、それはどうして、いつそうなったのか。生物学から、人の生き方や教育・心理学・哲学にも影響を与える内容が盛り込まれています。

    登録日 : 2014-04-10

  7. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    思索するカントの姿に迫る

    理性の不安-カント哲学の生成と構造- / 坂部 恵. - 勁草書房, 2001   北大ではどこにある?

    この推薦文を書いている今日の昼間、書店に行ったら故石川文康先生訳『純粋理性批判(上下)』(筑摩書房)が棚に並んでいるのを見てびっくりした。石川先生は昨年逝去されたし、『純粋理性批判』を翻訳していらっしゃったことも知らなかった。同時に、どうしてこうも日本の哲学研究者(あるいは出版社?)は『純粋理性批判』の翻訳を出したがるのかなぁ、とも思ってしまった。この「本は脳を育てる」に文学研究科の千葉先生が熊野純彦先生の翻訳を推薦していらっしゃるが、それ以外にも多くの翻訳があり、訳書の多さという点では哲学書に限定せずとも『純粋理性批判』、ハイデガー...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-03-09

  8. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    もう一つの「本は脳を育てる」

    古典力 / 斎藤 孝. - 岩波書店, 2012   北大ではどこにある?

    以前森鴎外の『舞姫』を推薦した時に、「古典」を読むということについて少しだけ書いたことがある。では「古典」とは何か、と言うことになると答えはそれほど簡単ではない。そのわかりやすい見取り図の一つがこの『古典力』である。これを読むと、読んだことがある本に再会したり、名前は知っていても(案外それで分かった気になって)読んでいない本に出遭ったりするだろう。そこで興味が湧いた本があればためらうことなく手にとって欲しい。なぜそれが「古典」になっているかは、斉藤氏の解説を手がかりに読めば自分なりの理解を獲得することができると思う。
    ちなみに、...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-03-08

  9. 推薦者 : 千葉 惠   (文学研究科)

    Japan’s Best

    Living for Jesus and Japan : the social and theological thought of Uchimura Kanzō / edited by Shibuya Hiroshi and Chiba Shin. - Eerdmans Pub., 2013   北大ではどこにある?

    本書は皆さんの大先輩札幌農学校二期生内村鑑三の研究書です。
    新しい日本の黎明期、明治、大正そして昭和初期を力一杯駆け抜けたこの人物は思想家として信念を貫いた魅力ある人物です。外国人にも魅力的に見え、彼の諸著作は数カ国語に翻訳され、外国人による研究書は私の知る限りでも10冊を超えています。
    本書は主に日本の内村研究者たちにより、彼の平和思想、愛国心そして神学思想を中心に人文学、自然科学に通じたジェネラリスト、社会思想家そして信仰者にしてキリスト教独立伝道者としての内村の諸側面を明らかにすることをめざし編集された英語論文集です。この...   [続きを読む]

    登録日 : 2013-11-25

  10. 推薦者 : 戸田 聡   (文学研究科)

    イエス・キリストってどんな人だったの?

    イエスの影を追って / ゲルト・タイセン. - ヨルダン社, 1989   北大ではどこにある?

    聖書やキリスト教の中心的テーマはやはり何と言ってもイエス・キリストであり、そのイエスがどういう人物だったのかという問いは、そういう研究の根底にある問題だと言えます。学問的にイエスの生涯を論じた書物は他にも数多くあり、その意味では別の本も薦められますが(例えばE・P・サンダース『イエス』)、読み物としてはタイセンのこの本がお薦めです。
    実は、イエスの生涯を物語風に書いた本も既に数多く世に出ており(例えばモーリヤック、遠藤周作、三浦綾子)、それらもそれぞれに一読の価値がありますが、このタイセンという著者は、もともと新約聖書を専門的に研...   [続きを読む]

    登録日 : 2013-05-30

  11. 推薦者 : 河合 剛   (メディア・コミュニケーション研究院)

    道を極むる者を極道といふ

    シャングリ・ラの夢 原信太郎が描き続ける理想郷 (DVD) / 原信太郎 (出演), 久地浦恭寛 (監督). - TCエンタテインメント, 2012   北大ではどこにある?

    Noburato Hara was born in a wealthy family and spent a fortune on trains. He photographed them, made home movies about them, rode them, and occasionally drove them. His biggest accomplishment was his model train collection that he built from scratch. Check out his own private model railway company -- the Shangri La -- on his DVD.

    Visit his museum at:
    http://www.hara-mrm.com/

    登録日 : 2013-04-11

  12. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    東大入試問題から見える「倫理」

    東大入試 至高の国語「第二問」 / 竹内康浩. - 朝日新聞出版, 2008   北大ではどこにある?

    過去のある時期、東京大学の入学試験(二次試験)の現代国語の第二問は、200字以内で作文を書かせるという問題だった。この本は、その「第二問」を分析して東大が年度に関わりなく執拗に問おうとしたものを明らかにしていくという著作である。著者の竹内氏によれば、「底流には『死』という大問題があって、死を見ることで『生きること』について考えさせる」(「あとがき」より)というのがこの問題の勘所となっている。これだけ読むと、入試問題から人生訓を牽強付会しているような印象を与えてしまうかもしれないが、この本の真骨頂は、後半に進むに従って「死(と生)」の問題...   [続きを読む]

    登録日 : 2012-11-19

  13. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    論理学の深さを知る

    現代論理学入門 / 沢田 允茂. - 岩波書店, 1962   北大ではどこにある?

    今から50年前に出たこの本は、いまなお論理学の名著としての価値を失っていない。もちろん50年の間には論理学にも進歩があって、多値論理、様相論理、量子論理などはこの本では取り扱われていないし、用語や記号の表記も古いところがあるが、それは仕方ないこととしても、論理学を専門的に研究するならともかく、それ以外の幅広い哲学的関心に広く答え得る点でこの本をしのぐ内容のものはいまだにほとんどないと言って良い。こうした優れた本を絶版にしないで出し続けている岩波書店の“営業努力”は賞讃されてしかるべきである。
    この本を紹介する際に、記号の使用を最小限...   [続きを読む]

    登録日 : 2012-11-19

  14. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    「英学」のもう一つの姿

    日本における近代倫理の屈折 / 堀孝彦. - 未来社, 2002   北大ではどこにある?

    さきにこの「本は脳を育てる」に、惣郷正明『日本英学のあけぼの』を推薦した。今度の『日本における近代倫理の屈折』は、惣郷の本にも登場する幕末の英語通詞・堀達之助の子孫である堀孝彦氏が、達之助の営為を通じて「英学」を語学としてのみではなく「人文学」と捉え、その内実が急激な近代化を急ぐ日本の中でいかなる変化を余儀なくされたか-著者のことばで言えば「屈折」を経たか-を明らかにし、現代にまで繋がるその「屈折」の影響を読み取ろうとしたものである。その「屈折」の延長線上には、明治期から現代までの日本の倫理道徳上の様々な問題が関連してくること...   [続きを読む]

    登録日 : 2012-11-19

  15. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    英語と格闘した日本人の足跡を辿る

    日本英学のあけぼの-幕末・明治の英語学- / 惣郷正明. - 創拓社, 1990   北大ではどこにある?

    20年以上まえに出たこの本を今頃推薦するのは実は大変恥ずかしい。というのは、出版されてから割合すぐに買い求めたのだけれど、最近まで“本棚の肥やし”にしてあって読んでいなかったからである。(言い訳すれば、昔、僕の恩師も「20年前に買った本がまだ読めないんだ」とぼやいていたので、同じようなことは案外あるのかもしれない。)
    「英学」という表題はいかめしいが、要するに日本人が英語と接して以来、どのようにこの言語を勉強しようと工夫なり悪戦苦闘なりを重ねてきたかの歴史が描かれているものであり、具体的な教科書や参考書や辞書、果てはかなり怪しげな学...   [続きを読む]

    登録日 : 2012-11-15

  16. 推薦者 : 河合 剛   (メディア・コミュニケーション研究院)

    to tie a knot literally

    The Ashley Book of Knots / Clifford Ashley. - Doubleday, 1944   北大ではどこにある?

    Sometimes a person collects, organizes, and delivers information in such a way that the exhaustive knowledge is clearly explained along with its background culture and history. The Ashley Book of Knots (or ABOK for short) is such a treatise. It is rare that a book as old as my parents continues to reign as the standard reference. We academics should learn humility from a work of this scope.

    For more information about ABOK, visit Wikipedia:
    http://en.wikipedia.org/wiki/The_Ashley_Book_of_Knots

    View parts of this book including its wonderful drawings at Google Books:
    http://books.google.com/

    登録日 : 2012-11-05

  17. 推薦者 : 千葉 惠   (文学研究科)

    最後まで読めるカントの『純理』

    純粋理性批判(熊野純彦訳) / カント. - 作品社, 2012   北大ではどこにある?

    この名著については邦語においても数種類の翻訳を容易に手にすることができます。今年出版されたあたらしい熊野純彦氏による訳業は、従来の成果を取り入れつつ、従来のゴツゴツした訳業とは異なり、あまり負荷をかけられることなしに「分かる」という感覚の中で読み進めることができます。学問に憧れをもつ多くの人々が大学生になったことを期にこの難解の誉れ高い書を手にして挑戦してきました。私もそのひとりでしたが、その当時最後まで読み進めることはできませんでした。今の若者は幸いな翻訳にであえたと言うことができます。カントはこの書で理性が理性自身を吟味し...   [続きを読む]

    登録日 : 2012-10-10

  18. 推薦者 : 河合 剛   (メディア・コミュニケーション研究院)

    short talks about language and linguistics

    The 5 Minute Linguist: Bite-Sized Essays on Language and Languages, 2nd edition / E. M. Rickerson (Author, Editor), Barry Hilton (Editor). - Equinox Publishing, 2012   北大ではどこにある?

    Did you know that 75 percent of the world's population speaks more than 1 language?

    'The 5-minute linguist' explains various topics on language and linguistics.

    Learn, for example, what it means to be bilingual (that is, speaking 2 languages), or how many languages we can learn.

    The series started as an audio program developed in 2005 by the College of Charleston and the National Museum of Language. The book is based on that radio program.

    Download the audio files for free from iTunes U (http://itunes.apple.com/us/itunes-u/the-five-minute-linguist/id452255394 -- accessed 2012-07-20).

    登録日 : 2012-09-25

  19. 推薦者 : 千葉 惠   (文学研究科)

    あらゆる学問の基礎

    The Oxford Handbook of Aristotle / ed.Christopher Shields. - Oxford University Press, 2012   北大ではどこにある?

    本書においては、その後の人類の知的な営みにおける思考の規範となりあらゆる学問の基礎となったアリストテレスの哲学についてそれぞれの領域の第一人者24人(26章)の執筆者により包括的な研究および紹介がなされています。推薦者が今思いますのは人間の正しい思考方法がアリストテレスにより明晰に提示されたからこそ、ひとはいかなる領域においてであれ思考を進めるためにはアリストテレス的に思考せざるをえないということです。彼は「美しく問い(行き詰まり・アポリア)をたてること」が、その解に導くと言います。そして人類にとって、そのような方法は他にない...   [続きを読む]

    登録日 : 2012-08-07

  20. 推薦者 : 河合 剛   (メディア・コミュニケーション研究院)

    a montage of a fighter pilot who wanted to live

    永遠の0 (ゼロ) / 百田尚樹. - 太田出版, 2006   北大ではどこにある?

    I teach 99 percent of Hokudai's entire freshman class. 99 percent of all undergraduates have taken a course that I teach. They may not remember me, nor do I remember all of them, but as a whole generation, I do have a clear impression of who my students are. One characteristic is that our students rarely if ever exert themselves to the fullest. What they believe is an honest effort is, sadly, barely a start compared to people who lived during and after the war. This book is about a fictitious navy aviator (they weren't called pilots back then) who, after a one-week marriage, determines not to get killed so he can return home, see his wife, and meet his baby girl. The individuals are imaginary but the stories are not. Most Hokudai students will shed a tear reading this story. Whiners shoul...   [続きを読む]

    登録日 : 2012-07-03

  21. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    誤解の連続は新たな思想を生むか

    仏教、本当の教え-インド、中国、日本の理解と誤解- / 植木雅俊. - 中央公論新社, 2011   北大ではどこにある?

    大学で哲学を学んでいた時、先輩から「結局ドイツ観念論哲学というのは、フィヒテとシェリングとヘーゲルがカントをどのように“誤読”したかの歴史だ」と言われて、へえぇ、そんなもんなの、と思ったことがある。この本は、帯に書かれた「壮大な伝言ゲームの果てに。」という一句に惹かれて買ってしまったのだが、読んでみると結構面白かった。その面白さというのは、-著者には申し訳ないけれど-謂わば底意地の悪い面白さで、これまでの翻訳者(=謂わばその学問の世界ではお偉いさん)や、さらには道元や親鸞などの宗祖までもがどのように仏典を誤読してきたかが、宗教...   [続きを読む]

    登録日 : 2012-05-01

  22. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    文章を書くことが苦手な人に安心を与えてくれる本

    「書くのが苦手」をみきわめる / 渡辺哲司. - 学術出版会, 2010   北大ではどこにある?

    今学期(2011年度第2学期)から、文章表現が苦手な人を対象にした「一般教育演習」を開講したので、その準備のため過去1年かけて、いわゆる「文章読本」的な本を36冊ほど読んでみた。(実は、こういうことはすでに小説家の斎藤美奈子さんがやっていて、その成果は『文章読本さん江』(筑摩書房)で公にされている。) この本は、その中でも「苦手」という心理がどうして生じているのかを明らかにして、具体的にどのような対策を採ればそれが克服できるのかを書いている点でもっとも参考になったものである。
    ...   [続きを読む]

    登録日 : 2011-11-14

  23. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    『聖書』成立のドラマに迫る

    聖書の起源 / 山形孝夫. - 筑摩書房, 2010   北大ではどこにある?

    山形孝夫氏の本の中では、過去に『砂漠の修道院』をこの「本は脳を育てる」に推薦したことがある。あの本が砂漠の修道院に生きる修道士達の人間ドラマとして読めるとすれば、今回推薦する『聖書の起源』は、『聖書』という信仰の書が現実の一つの書物として成立していく過程に込められた(ナザレのイエスや福音書記者達の活動を含めた)様々な事象の展開としてのドラマと読めるだろう。要となるのは『聖書』を古代オリエント世界の神々との関係-ある意味ではパワーゲームと言い換えても良い-の中で形成されたものと...   [続きを読む]

    登録日 : 2011-01-04

  24. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    「田辺元ルネサンス」のために

    田辺元哲学選I~IV(全4冊) / 田辺元. - 岩波書店, 2010   北大ではどこにある?

    前にこの「本は脳を育てる」に西田幾多郎の『善の研究』を推薦したことがある。ところが、日本のアカデミックな哲学界では、西田は何かと話題にもなり研究対象にもなるのに、その謂わば批判者であった田辺元については(同じく批判者であった戸坂潤と比べても)圧倒的に研究(あるいは言及)が少なかったし、むしろ色々な意味で批判的に見られすぎたり西田との対比(それもマイナスの)で捉えられすぎたりしてきたように思われる。私事で恐縮だけれども、僕も院生時代に西田哲学と田辺哲学の対立点について研究発表を...   [続きを読む]

    登録日 : 2011-01-04

  25. 推薦者 : 千葉 惠   (文学研究科)

    哲学の始原がよくわかる

    Definition in Greek Philosophy / ed.David Charles. - Oxford University Press, 2010   北大ではどこにある?

    本書により哲学の揺籃であるギリシア哲学において、とりわけソクラテスがこだわった事物の同一性とその認識の問題がプラトン、アリストテレスそしてストアにおいてどのように理解され、哲学理論へと展開されていったかをテクストに即して理解することができる。周知のようにソクラテスは会う人ごとに、勇気とは、節制とは正義とはそして幸福とは「何であるか?」を尋ね、共に探求した。当時の人々同様多くの人が持つ哲学の理屈っぽさのイメージはこのソクラテスの問答の持つ吟味、論駁の詳細さそして厳密さに起因しているように思われる。しかし、本書によりこの「何である...   [続きを読む]

    登録日 : 2010-10-16

  26. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    「哲学」のススメ

    善の研究 / 西田幾多郎. - 岩波書店, 1979   北大ではどこにある?

     『善の研究』については、これまで嫌になるくらい論文や研究書があり、僕もかつてその手のものを書いたことがある。それだけいろいろな読み方・解釈が可能だという点では紛れもなく「古典」であるが、同時に何回読んでもすっきりと分かった感じになれないところもある。そういうところから、「西田哲学を理解するためにも実際に参禅をしなければならない」(久松真一)といった言説が出てくるのだろう。
     『善の研究』は、すぐ分かるようでありながら実は分かりにくいし、まさにその「分かる=理解」という営みそのものを問題にしているところがあるので、どこまで行って...   [続きを読む]

    登録日 : 2010-08-17

  27. 推薦者 : 高橋 英光   (文学研究科)

    北大の全学教育から誕生した言語学の本

    言葉のしくみー認知言語学のはなしー / 高橋英光. - 北海道大学出版会, 2010   北大ではどこにある?

     なぜ言葉は自分の思いをそのまま伝えてくれないのか、なぜ母語の学習はふつう成功するのに外国語の学習は失敗するのか、交通標識などの記号と言語の共通点は何か相違点は何か、日本語は特殊な言葉か否か、日本語のようなS0V言語と英語のようなSVO言語はどちらが多いのか、ヒトはなぜメタファーが好きなのか、「明日は忙しくて、ごめんなさい」はなぜ断りになるのか、そもそもなぜどの言語にも語彙と文法があるのか、などの疑問をもったことはないだろうか。

     本書は、これらの疑問に触れながら言葉のしくみを丁寧に噛み砕いて説明する。豊富なエピソードとイラストを用い...   [続きを読む]

    登録日 : 2010-03-10

  28. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    一つの国を知るということ

    オーストラリアの言語教育政策 / 青木麻衣子. - 東信堂, 2008   北大ではどこにある?

    オーストラリアという国は、私が小学生の頃(!)は「白豪主義」というキーワードとともに社会科で教えられていた。しかし、その後この国は「白豪主義」から「多文化主義」へと大きな方針転換を遂げることになる。本書は、オーストラリアの言語教育政策に焦点を絞って、上記の方針転換過程でそこに浮かび上がる「国家統合」と「多文化主義」の緊張関係を明らかにした労作である。しかし、ただ言語教育政策の検討だけでなく、(比較)教育研究や地域研究、マイノリティ研究に関してもこの本が提供してくれる知見は多い。広い意味での社会科学研究とは何かを、そしてまた、その方法...   [続きを読む]

    登録日 : 2010-01-14

  29. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    「倫理」は可能か?

    支配と服従の倫理学 / 羽入辰郎. - ミネルヴァ書房, 2009   北大ではどこにある?

    羽入辰郎は、過去、『学問とは何か』で些か刺激的な言説を思想界に投げかけてきた研究者である。本学経済学研究科の橋本努教授が、そのホームページで「羽入-折原論争の展開」を企図され、そこに羽入の著作に対する見解が数多く寄せられたが、残念ながらこの「論争」は、生産的な方向に向かう前に羽入によって『学問とは何か』の中で終結を宣言されてしまった。
    本書は、羽入の講義録を基にまとめられたものであるが、「倫理」をもし「よく生きること」と解釈するなら、「支配と服従の倫理」というの...   [続きを読む]

    登録日 : 2010-01-04

  30. 推薦者 : 清水 誠   (文学研究科)

    比較言語学の最前線

    East and West. Papers in Indo-European Studies / Kazuhiko Yoshida, Brent Vine (eds.). - Ute Hempen, 2009   北大ではどこにある?

    インドからヨーロッパ全域までに広がり、世界中に伝播した印欧語は、私たちが学んでいる英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、スペイン語などをすべて含んだ世界最大の大言語群です。歴史的系統関係を同一にする印欧諸語は、古くからの豊富な文献を備え、グリム兄弟たちが活躍した19世紀にその礎が築かれました。これをもって、言語学が初めて独立した学問分野として誕生したのです。この本はその研究の最前線を日本のすぐれた研究者たちが主導しつつ、世界のトップレベルの研究者たちと共同研究した成果が再録されています。編者の吉田和彦先生は京都大学言語学科教授で、...   [続きを読む]

    登録日 : 2009-08-31

  31. 推薦者 : 千葉 惠   (文学研究科)

    学際的研究の模範

    光と視覚の科学―神話・哲学・芸術と現代科学の融合― / アーサー・ザイエンス. - 白掦社, 1997   北大ではどこにある?

    本書は物理学者であるザイエンスによる、一切のものの基礎にある光についての哲学、宗教、芸術など人間の知力と想像力を駆使して解明にせまる、通史としての学際的研究の著しい成功例である。光の解明に取り組む物理学者、哲学者、数学者たちの知的営為が彼らの人間性を知らせる興味深いエピソードとともに、わかりやすく解説されている。「あらゆる物理系の振る舞いの背後、あらゆる物理法則の背後に何があるのか」という問いが本書を読むことにより道理あるものとして受け止められるのは、事物の一切に浸透する光という形而上学的な対象の故にであろう。アインシュタイン...   [続きを読む]

    登録日 : 2009-07-03

  32. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    「大学」の行く末を考えたい人に

    学問の下流化 / 竹内洋. - 中央公論新社, 2008   北大ではどこにある?

    竹内洋の著書を既に何冊か読んでいる人が、その社会学的分析によって表題の「学問の下流化」という現象を理論的に解明し、その処方箋を論じたものであると期待して読むとやや肩すかしを喰います。これは別段否定的に評価しようというわけではなく、書評や短い評論の集成という書き方のスタイルに起因するもので、内容は広い意味での学問論や大学論を幅広く取り上げ、そのある種の病理的状況を竹内氏独特の切り口と語り口で捌いていくものになっています。「学問の下流化」そのものが全体的な主題とは言い難い面があるので、読み方によっては不満が残る面もあるかもしれませ...   [続きを読む]

    登録日 : 2009-06-23

  33. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    「自分」の深奥をのぞく

    砂漠の修道院 / 山形孝夫. - 平凡社, 1998   北大ではどこにある?

    ややもすれば抹香臭い表題ですが、エジプトの砂漠の修道院に引きつけられてきた人々の心の遍歴と葛藤、そのような心性を生み出すエジプトの社会と歴史が生き生きと描かれている、読み応えのある本です。特に修道士一人一人の聞き取り調査に基づくストーリーは、普段うかがい知ることが難しい「修道院」の生活と、そこに何かを求める魂のありようをキリスト教という枠組みを超えて明らかにしてくれます。キリスト者であってもなくてもここに描かれた修道士の誰かに、読者が共感できる人物を見つけることができると思います。「世間」と「自分」との葛藤をどう受け止めるかと...   [続きを読む]

    登録日 : 2009-06-08

  34. 推薦者 : 河合 剛   (メディア・コミュニケーション研究院)

    read, weep, and live

    二式大艇空戦記 -- 海軍801空搭乗員の死闘 / 長峯 五郎. - 光人社, 2006   北大ではどこにある?

    I picked up this book because I am a floatplane pilot (a floatplane is a plane that takes off and lands on water).
    The wife of my good friend (also a floatplane pilot) was named Emily.
    Emily is the code name given by the Allies to the Imperial Japanese Navy Type 2 Flying Boat.

    Although readers of this book would be helped with a bit of aviation knowledge (the book does not explain how airplanes fly, nor how the Type 2 Flying Boat was built and flown), readers will not miss the anguish and dedication Goro Nagamine endured before, during, and after his kamikaze tokko attack.
    No, he was not unafraid. No, he did not volunteer. No, he was not killed in action.
    He was young, energetic, and full of life. Just like you.

    Read an honest story of a young man, 21 years old on 15 August 1945...   [続きを読む]

    登録日 : 2009-06-08

  35. 推薦者 : 大平 具彦   (メディア・コミュニケーション研究院)

    フランス人画家が描く日本古代神話の色彩曼陀羅の世界

    日本神話 / マークエステル. - Xiang-Hap社(香港), 2006   北大ではどこにある?

     このずっしりと重い大判の画集を開いてゆくと、驚きを禁じえない。日本の原点とされてきた『古事記』の世界が、われわれが何となく思い描いていたものとはまるで違う壮大な色彩宇宙として展開してゆくのだ。古事記の物語世界に肉迫してゆくそのイメージ力の雄渾さ。創世神話を彩って華麗に舞い上がるその色彩のド迫力。これまで誰がこのような途轍もないスペクトルでわれわれの神話世界を表現してきただろうか。
     描いているのは、大の親日家であり――首相経験者から著名歌手にまで及ぶその交友の広さは驚くばかりである――、日本文化に非常に造詣の深い現代フランス人...   [続きを読む]

    登録日 : 2008-12-25

  36. 推薦者 : 高見 敏子   (メディア・コミュニケーション研究院)

    2年間で英語を100万語読もう―英語多読図書の薦め

    英語多読図書 (Penguin Readers, Macmillan Readersほか) / . - ピアソンエデュケーション他,    北大ではどこにある?

     英語は必要だし勉強したいと思っているけど、長文が読めない―という人は多いことでしょう。そんな人にお勧めしたいのが北分館にある英語多読図書です。ペンギンマクミランオックスフォードなどのシリーズがあり、オリジナルストーリーのほか、やさしい英語で書きなおした古今東西の名作、子供の頃に読んだ懐かしいお話、映画のノベライズ版、映画スタ...   [続きを読む]

    登録日 : 2008-10-01

  37. 推薦者 : 岸本 晶孝   (理学研究科)

    西洋文明と哲学

    反哲学入門 / 木田元. - 新潮社, 2007   北大ではどこにある?

     アメリカでは最近哲学専攻の学生が増えていると云います(ニューヨークタイムズ2008年4月6日の記事)。ただし、歴史上の哲学者のあれこれに興味があるのではなく、将来の見通しが立たない現代社会にあっては、思索で頭脳を鍛え論争の術を身につける必要があるという認識にたってのようです。哲学がそういう処世術にも通ずる生きた学問だと意識されていることに驚きました。
     同時にアメリカ大統領予備選挙の記事を追っていると、度を越したような泥試合のなかにも、時として当事者に正気がもどり、その晴れ間をぬって歴史を貫いてきたギリシャ以来の精神が現前すると思われ...   [続きを読む]

    登録日 : 2008-07-15

  38. 推薦者 : 清水 賢一郎   (メディア・コミュニケーション研究院)

    現代中国を代表する哲学者による回想録

    馮友蘭自伝 : 中国現代哲学者の回想 1・2 (東洋文庫 ; 767-768) / 馮友蘭著 ; 吾妻重二訳 . - 平凡社, 2007   北大ではどこにある?

    現代中国を代表する哲学者による回想録。19世紀末から1980年代に至る、変貌の時代を生きた著者が同時代史を記し、自己の経験をまとめた書で、激動の中国近現代史を理解するうえで必読書といってもよい名著の翻訳である。なかでも中華人民共和国成立後の部分は、知識人の内面史として他書に類例をみぬ価値を持つ。翻訳も平明で読みやすい。

    登録日 : 2007-12-18

  39. 推薦者 : 清水 賢一郎   (メディア・コミュニケーション研究院)

    楽しみながら中国語を学ぶ入門書

    ウーロン茶のCMソングから中国語を始めませんか? / amin著. - 小学館,    北大ではどこにある?

    おなじみの烏龍茶CMソングの歌詞から、楽しみながら中国語を学ぶ入門書。中国人歌手として史上初のNHK紅白歌合戦出場を果たしたamin(阿明)自らが吹きこんだ解説CD付き。中国人の前で歌がうたえれば絶対ウケるし、なにより楽しい。楽しいがいちばん!

    登録日 : 2007-12-06

  40. 推薦者 : 西 昌樹   (メディア・コミュニケーション研究院)

    文系の学生、院生の必読書

    大学生の論文執筆法 / 石原千秋. - 筑摩新書, 2006   北大ではどこにある?

    漱石の研究家である著者が大学の教育の中で、痛感した学生のレポートや論文の書き方の不備、欠点を指摘し、如何に書くか、また書く準備として書く心構えから、資料の扱い方、何が資料とはならないかなど詳しく指摘したもの。ネットで集めた知識は評価されないことなど教員には分り切ったことだが、学生はちゃんと知らない人もいることが書かれていて、こういうことを大学院生になってもいい加減な人もいるので、必読書である。この程度のことは先刻承知だという人は大変結構です。論文の推敲例もあるので、参考になります。

    登録日 : 2007-10-25

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