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本書は物理学者であるザイエンスによる、一切のものの基礎にある光についての哲学、宗教、芸術など人間の知力と想像力を駆使して解明にせまる、通史としての学際的研究の著しい成功例である。光の解明に取り組む物理学者、哲学者、数学者たちの知的営為が彼らの人間性を知らせる興味深いエピソードとともに、わかりやすく解説されている。「あらゆる物理系の振る舞いの背後、あらゆる物理法則の背後に何があるのか」という問いが本書を読むことにより道理あるものとして受け止められるのは、事物の一切に浸透する光という形而上学的な対象の故にであろう。アインシュタインによる「50年にわたって意識的に考え続けてきたが、「光とは何か」という問いへの答えに少しも近づいていない。もちろん今日、恥知らずな連中はみな答えを知っているつもりでいるが、それは自分を欺いているのだ」という言葉は今や説得的なものとして受け止められる。もちろん、光が何であるにせよ、相対性原理に従わねばならないのではあるが。知的好奇心が満たされるとはこのような書物のことを言う。そして、その喜びは新たな学的探究に向かわせるが、しかも宇宙の一切を念頭に置きつつ個別の探究に向かうことによってだけ、すぐれた発見が得られるという確信のなかで、学的探究の喜びを満喫する。 |