推薦者: 高橋 英光
所属: 文学研究科

北大の全学教育から誕生した言語学の本

タイトル(書名):
言葉のしくみー認知言語学のはなしー
著者:
高橋英光
出版者:
北海道大学出版会
出版年:
2010
ISBN:
4832933728
北大所蔵:
北大所蔵 1 
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推薦コメント

 なぜ言葉は自分の思いをそのまま伝えてくれないのか、なぜ母語の学習はふつう成功するのに外国語の学習は失敗するのか、交通標識などの記号と言語の共通点は何か相違点は何か、日本語は特殊な言葉か否か、日本語のようなS0V言語と英語のようなSVO言語はどちらが多いのか、ヒトはなぜメタファーが好きなのか、「明日は忙しくて、ごめんなさい」はなぜ断りになるのか、そもそもなぜどの言語にも語彙と文法があるのか、などの疑問をもったことはないだろうか。

 本書は、これらの疑問に触れながら言葉のしくみを丁寧に噛み砕いて説明する。豊富なエピソードとイラストを用いて読者に語りかける。ヒトはその生存の大部分を言葉に依存している。言葉を持たない民族はなく、言葉なくしては学問も科学技術も存在しない。それどころか言葉がないとヒトの生活はヒト以前の状態に戻るのではなかろうか。言葉とはヒトそのものであり言葉のしくみを調べることはヒトとは何かを知ることにつながる。

 私たちは「金星」のことを「明けの明星」とも呼び、前後の文脈や状況によって使い分けている。これができるのはヒトに高度の認知能力(脳の働き)があるおかげである。言葉のしくみとヒトの認知は切り離すことはできない。『言葉のしくみー認知言語学のはなしー』には、著者と北大生との13年に及ぶ真剣で楽しいやりとりから得られた貴重な知識・洞察がふんだんに盛り込まれている。読者は本書から世界の言語の基本知識から認知言語学の最先端までをいつのまにか学ぶことができる。理系・文系の区別に関係なくすべての北大生に一読していただきたい一冊である。

※推薦者のプロフィールは当時のものです。