おすすめポイント [名著] 推薦リスト
現在、94件登録されています。
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  1. 推薦者 : 山口 良文   (低温科学研究所・教員)

    生物学の世紀の来し方行く末

    ハエ・マウス・ヒト / フランソワ・ジャコブ. - みすず書房, 2000   北大ではどこにある?

     分子生物学の黎明期にオペロン説の提唱によりノーベル医学生理学賞を受賞したフランソワ・ジャコブが、現代生物学が辿ってきた道を解説するとともに、彼自身の科学哲学や、科学と政治・社会の関係性についても織り交ぜながら解説した本。
     私自身は大学院生時代にこの本に出会い、自身の将来の研究の方向性について思案を深めることができました。いまでもバイブル的に時折読み返しています。
     本著が世に出てすでに20年以上、遺伝子の世紀と言われた20世紀後半は過ぎ去り、21世紀に入ってもなお生物学研究は新しい方法論が次々と登場しますます加速しています。著者が本...   [続きを読む]

    登録日 : 2023-11-21

  2. 推薦者 : 山口 良文   (低温科学研究所・教員)

    今の時代にこそあらためて

    夜と霧 / ヴィクトール・E・フランクル. - みすず書房, 2002   北大ではどこにある?

     ナチス・ドイツによる強制収容所生活を生き延びた精神科医フランクルによる、その体験と分析記録。ここで改めて紹介するまでもなく色々なところで紹介されている名著ですが、まだこちらのリストにはないようだったので挙げておきます。
     生命の危機どころか生きる意欲をも見失うような極限状態に置かれたとき、人はどのように振る舞うのか。そして、そこをどう乗り越えるのか。この究極的な問に対する箴言の数々がのっています。

    ”「生きていることにもうなんにも期待がもてない」こんな言葉にたいして、いったいどう応えたらいいのだろう。
    ここで必要なのは、生きる...   [続きを読む]

    登録日 : 2023-11-21

  3. 推薦者 : 山口 良文   (低温科学研究所・教員)

    冬眠の謎にワクワク

    冬眠の謎を解く / 近藤宣昭. - 岩波書店, 2010   北大ではどこにある?

     哺乳類の冬眠は、わたしたちヒトや他の冬眠しない哺乳類なら死んでしまうような低体温下で長期間の生存を可能とする、ある意味究極の生存戦略のひとつです。
     本著は、シマリスを用いて冬眠の謎に迫った孤高の科学者・近藤宣昭博士による、ご自身の研究録です。実は近藤博士の一連の研究の面白さに私は惹きつけられて冬眠研究をはじめた経緯があり、まさに私の人生を変えた研究です。とはいえこの本は過度に専門的すぎず、実験科学研究がどのような考え方のもと進むのか、専門外の人間でもワクワクしながら読み進められる構成となっています。
     将来科学者を目指す若者...   [続きを読む]

    登録日 : 2023-11-21

  4. 推薦者 : 小林 和也   (高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター・職員)

    北大図書館に眠る財宝

    四季・ユートピアノ (DVD) / 佐々木昭一郎. - NHKサービスセンター, 1986   北大ではどこにある?

     佐々木昭一郎という偉大なる映像作家の作品は、テレビドラマであったということが災いし、ほとんどソフト化されていない状況です。しかしなんと我らが北大図書館には『四季・ユートピアノ』のVHSがあるではありませんか。 映画は映像、イメージです。だからこの映画について抽象された物語の部分を伝えても何の意味もありません。家族は主人公榮子を置いて皆死んでしまいます。彼女は貧困の中で育ちますが、ピアノの調律師となります。多くの出会いがあり訣れがあります。でも映画は少しも暗くありません。彼女は「音の日記」をつけています。最初に聞こえた音の記憶か...   [続きを読む]

    登録日 : 2018-10-11

  5. 推薦者 : 橋本 雄   (文学研究科(日本史学講座)・教員)

    常識を突き崩してみよう。

    民族という虚構 / 小坂井敏晶著. - 筑摩書房, 2011   北大ではどこにある?

    本書は、強いていえば、著者小坂井氏の〈本籍〉からして、社会心理学の成果と言えるでしょうか。しかしながら本書は、グローバル時代に生きる者すべてが参照すべき卓見に満ちあふれています。隣人・隣国とのより良い関係のために書かれた書として、歴史学にとっても重要な一書と考えます。
    本書の「あとがき」によると、「生物学・社会学・政治哲学など広い領域に触れ、学際的試論の性格を持つ」、真に学際的な成果です。また、「民族同一性の脱構築を試み、近代的合理主義を批判する」ことを目指したものだともいいます。そのいずれにおいても成功を収めた快著だと私は考え...   [続きを読む]

    登録日 : 2018-03-12

  6. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター・教員)

    揺るぎない体験と明敏な眼と強靱な思索の結晶

    自分のなかに歴史をよむ / 阿部謹也著. - 筑摩書房, 2007   北大ではどこにある?

    何年かにわたって「一般教育演習」や「多文化交流科目」で異文化間コミュニケーションの理論と実践といった類いの授業を展開してきたが、この本はそうした授業の設計思想を作る上で常に座右に置いていたものである。この本が出たとき、ある夕刊紙の書評が「これは真に感動的な本である。」と書いた。「感動的」ということばが適切かどうかは分からないが、「目からウロコが落ちる」という感覚が得られる本ではあると確かに思う。内容は、少年時の修道院生活、大学時代の上原専録との出会い、ヨーロッパ留学生活等々著者の体験談が多いように見えるが、その根底で著者はヨー...   [続きを読む]

    登録日 : 2018-03-08

  7. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター・教員)

    「革命」の担い手は誰だったのか。

    青きドナウの乱痴気 : ウィーン1848年 / 良知力著. - 平凡社, 1985   北大ではどこにある?

    1848年、西ヨーロッパに勃発した「革命」の一つの舞台となったウィーンでの、様々な人びとの思惑や欲望や理想や愚痴(?)が渦巻く展開を、帝国、国家、権力者の立場からではなく、「革命」に参加した人びとの目線から描いたすぐれた本である。歴史を庶民、あるいは当事者の立場に寄り添って書くということは決して簡単ではない。その困難な試みがいかに為されたかを読み取ってみてほしい。特に、「あとがき」に書かれているグレーテというウィーン子のことばは心に染みる。

    登録日 : 2017-12-19

  8. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター・教員)

    日本人はアジアとどう向き合ってきたか

    日本とアジア / 竹内好著. - 筑摩書房, 1993   北大ではどこにある?

    これは、竹内好という稀代の中国文学者の手になるすぐれた日本、及びアジア研究の書である。初版が刊行されてから50年以上が経過しているが、そこに示される分析(あるいは同時代思想批判の)の観点には今なお学ぶものが多くある。中国、アジアだけでなく、というよりむしろ欧米社会・文化に関心を持つ人にこそ読んでほしいと思う。特に「二つのアジア史観」、「方法としてのアジア」は人文社会科学を勉強する上で貴重な示唆を含んでいる。

    登録日 : 2017-08-04

  9. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター・教員)

    現代に活きる「古典」

    人口論 / マルサス. - 光文社, 2011   北大ではどこにある?

    この『人口論』は、食糧供給と人口増加の関係を軸に貧困や失業や労働移動などの社会問題にどのように対応するべきかを考察した古典である。18世紀のイングランドが叙述の背景となっているが、マルサスが述べる考察は現代のアクチュアルな問題に通じるものであることを納得できるであろう。古典が現代に活きることを示すものとして薦めたい。

    登録日 : 2017-04-01

  10. 推薦者 : 野中 雄司   (附属図書館・職員)

    これから「どう生きるか」を改めて考えたいときに

    君たちはどう生きるか / 吉野源三郎. - 岩波書店, 1982   北大ではどこにある?

     この本は、軍国主義が勢力を強めつつあった昭和十二年に山本有三が少年少女向けに偏狭な国枠主義を越えた自由で豊かな文化のあることを伝えようとして編纂した『日本少国民文庫』シリーズ中の「倫理」を扱ったものです。私はこの少年少女向けの本を25歳を過ぎてから読みましたが、恥ずかしながら「勉強する意味」などハッとさせられる部分が多くあり感銘を受けました。読了後少し恥ずかしく思いつつ解説を読んでいると、なんとかの丸山眞男も大卒後東大法学部の助手になり研究者になった後に読み「私の魂をゆるがした」と記されており、驚いたのと同時にほっとしたことを覚...   [続きを読む]

    登録日 : 2016-12-12

  11. 推薦者 : 小浜 祥子   (公共政策学連携研究部・法学研究科・教員)

    突如として権力者が消えた世界、そこで何が起こるか

    別荘 : Casa de campo / ホセ・ドノソ著 ; 寺尾隆吉訳. - 現代企画室, 2014   北大ではどこにある?

    権力と自由こそ、政治学におけるメインテーマである。チリの作家ホセ・ドノソの傑作『別荘』では、ある小国で栄華を誇るベントゥーラ家の大人たちがピクニックに出かけ、33人の子どもたちだけが別荘に残される。突如として権力者が消えてしまった世界で、何が起こるのか。本作は1973年にチリで起こったアウグスト・ピノチェト将軍によるクーデターに着想を得て執筆されたものと言われている。ぜひ自分を取り巻く権力と自由に思いを馳せながら、このドラマチックな小説を楽しんでほしい。チリや中南米の政治史を学べばよりいっそう味わい深いに違いない。

    登録日 : 2016-12-02

  12. 推薦者 : 武藤 俊雄   (公共政策大学院・教員)

    文系・理系区分なんてぶっ飛ばせ!

    自我の起原 : 愛とエゴイズムの動物社会学 / 真木悠介. - 岩波書店, 2008   北大ではどこにある?

    日々更新されてゆく自然科学は、私たちに新しい生命や、人間の理解を提示してくれる。そうしたサイエンスとしての生命と人間の理解を、人文・社会科学の知見と自在に往復しながら、深く問いかけてくる名著である。学問領域の枠にとらわれない、生き生きとした精神の持ち主に読んで欲しい。

    登録日 : 2016-12-02

  13. 推薦者 : 小林 和也   (高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター・職員)

    ゾーンへの招待

    ストーカー / アルカジイ・ストルガツキー,ボリス・ストルガツキー著 ; 深見弾訳. - 早川書房, 1983   北大ではどこにある?

    アンドレイ・タルコフスキー監督による映画のほうが有名かもしれないが、この原作もまた偉大な文学作品だ。

    本作は通常SFとされる。しかしそれだけではない。戦争や核汚染後の世界のメタファーとも言える突如現れた謎の危険地帯「ゾーン」。ストーカーはそこに侵入して、異星人が残したとされる異物を採取する。ストーカーとは何者であるのか? この問いに対する答えを、主人公レドリックの述懐に読み取ることができなければ、それはこの本との出会い損ね、悲しい接触と言わざるをえない。

    登録日 : 2016-11-30

  14. 推薦者 : 長堀 紀子   (女性研究者支援室・教員)

    仕事の報酬は”収入・能力・仕事・成長”

    仕事の報酬とは何か : 人間成長をめざして / 田坂広志. - PHP研究所, 2008   北大ではどこにある?

    「働かない人生なんてあり得ない?!」
    「何のために働くのか?」という問いに、シンプルかつ本質的に答えています。
    「仕事には、目に見える報酬と目に見えない報酬がある」仕事の報酬とは「収入・能力・仕事・成長」~気になった方は是非、読んでみてください。
    仕事とはそもそも何なのか自分なりに答えを見つけたい方、将来仕事と子育て(家庭)の両立で悩むかも、、、と漠然と思っている方、おススメです。
    働いて何年たって読み返しても、自分がその仕事をする目的やモチベーションを再確認することができる良本です。

    登録日 : 2016-11-30

  15. 推薦者 : 瀬名波 栄潤   (文学部・教員)

    クイア理論の古典

    クローゼットの認識論 : セクシュアリティの20世紀(原タイトル:Epistemology of the closet) / イヴ・K・セジウィック. - 青土社, 1990年(原書)、1999年(翻訳)   北大ではどこにある?

    セクシュアリティやLGBTを理解するための必読本

    登録日 : 2016-11-14

  16. 推薦者 : 瀬名波 栄潤   (文学部・教員)

    21世紀の混沌を解く名著

    ある学問の死 : 惑星思考の比較文学へ (原タイトル:Death of a discipline) / G. C. スピヴァク. - みすず書房, 2003年(原書)、2004年(翻訳)   北大ではどこにある?

    「惑星思考」が現代と未来を解くキーワードです。

    登録日 : 2016-11-14

  17. 推薦者 : 瀬名波 栄潤   (文学部・教員)

    男性性研究の古典

    男同士の絆 : イギリス文学とホモソーシャルな欲望(原タイトル:Between men) / イヴ・K・セジウィック. - 名古屋大学出版会, 1985年(原書)、2001年(翻訳)   北大ではどこにある?

    この本が男社会の見方を変えた!

    登録日 : 2016-11-14

  18. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    いつの時代にも共通する「悶々」

    恋愛論 / スタンダール. - 岩波書店,    北大ではどこにある?

    スタンダールの『恋愛論』と言えば、「結晶作用」や「恋愛の四分類」であまりにも有名であるが、これらのことばだけが一人歩きしてしまっている観がなきにしもあらずである。この本は、周知のようにスタンダール自身がある女性との恋愛に悶々としていた経験を下敷きにして、当時のヨーロッパの知識人の12世紀から18世紀にわたる古典的教養を背景として書かれた人間観察の集成と言えるものである。そこに描かれる様々な恋愛事情の「悶々」は、21世紀日本の我々には分かりにくい部分や、今なら御法度になる部分を含んではいるものの恋愛という経験について今なお教えてくれると...   [続きを読む]

    登録日 : 2016-09-24

  19. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    今読まずにいつ読むか。

    言論・出版の自由 / ジョン・ミルトン. - 岩波書店, 2008   北大ではどこにある?

    つい最近、マスメディアに対する権力側の幾つかの横暴とも言える対応が報道された。報道機関やジャーナリストたちはそれなりに危機感を示しているもののいよいよ政治権力が牙をむき始めた、という慄然たる思いがする。大学に身を置く我々にとって大切な、日本国憲法で保障されている学問・良心の自由もいつ危うくなるか分からない。その前に読んでおくべきものとしてこの本を推薦しておく。

    登録日 : 2016-09-24

  20. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    現代アラブ文学への扉

    バイナル・カスライン / ナギーブ・マフフーズ. - 河出書房新社, 1988   北大ではどこにある?

    『千夜一夜物語』以外でアラブ文学を読んだという人は、おそらくごく少数だろう。現代アラブ文学と聞いてもおそらく作家名もイメージも思い浮かばないと思う。かく述べる僕自身も、自分がエジプトに赴任するまでそれらについては全く知らなかった。ここに挙げる『バイナル・カスライン』とその著者ナギーブ・マフフーズについてもエジプトに行ってから周囲の同僚や学生たちに教えられて知ったのだが、その当時既にこの本を含む「現代アラブ小説全集」は刊行されていた。マフフーズは、アラブ世界初のノーベル文学賞受賞者(1988年)であり、僕がカイロにいたときにはまだ存命し...   [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-23

  21. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    もう今はない旧制高校の青春とは

    どくとるマンボウ青春記 / 北杜夫. - 新潮社, 2000   北大ではどこにある?

    僕が大学時代に教えを受けた先生方の半数以上は、旧制高等学校の卒業生だった。旧制高校は、戦後は新制大学(の一部)になり、僕ら新制高校卒業世代は知識としてそういうものがあったという形でしか認識していないのだが、実際に旧制高校生活を送った先生方にはその後の人生のスタイル(というと安っぽく聞こえてしまうが)を決定するような大きな影響力のある教育機関だったらしい。最早体験的に知ることのできない、そうした旧制高校の魅力とそこで学生生活を送った著者自身の内面的な成長過程、そして、思わず笑いを誘う、あるいは人生の意味を真剣に考えさせるエピソードの数...   [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-15

  22. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    長編の魅力ここにあり

    チボー家の人々 / ロジェ・マルタン・デュ・ガール. - 白水社,    北大ではどこにある?

    実は僕は長編小説(特に日本の)を読むのは苦手である。登場人物が多くなるので関係を覚えきれない、というより覚えるのが面倒くさいという怠惰な精神のせいなのだが、その結果として山岡荘八『徳川家康』、中里介山『大菩薩峠』、塩野七生『ローマ人の物語』、埴谷雄高『死霊』と、挫折した作品は死屍累々である。その割に西洋文学の長編はなぜか日本文学ほど抵抗なくダンテ『神曲』、デュマ『モンテ・クリスト伯』、そしてこの『チボー家の人々』は結構夢中になって読めた。特に『チボー家の人々』は第一次大戦期のフランスという一種重苦しい時代を描きつつも主人公とな...   [続きを読む]

    登録日 : 2016-05-13

  23. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    わくわくするナイル源流への旅の記録

    ナイルに沈む歴史-ヌビア人と古代遺跡- / 鈴木八司. - 岩波書店, 1970   北大ではどこにある?

    最近(特に今世紀になってから)、岩波新書(新赤版)がつまらなくなってきた。社会の流れが速くなるのに歩調を合わせすぎているのか、時事的なものが多くなり-それはそれで必要だと思うが-長く手元に置いて何度も繰り返して読みたくなるような内容のものが減っている気がする。ここに推薦する青版の『ナイルに沈む歴史』は、僕が中学生の時にでた本であるが、アスワン・ハイダムの建設によるアブ・シンベル神殿の水没を回避するための国際プロジェクトの一環として著者の鈴木氏が行ったエジプト・ナイル川上流地域の踏破記録である。それまでもハワード・カーターによる...   [続きを読む]

    登録日 : 2016-02-08

  24. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    文学という営みを通してみた日本人像とは

    近代日本人の発想の諸形式 / 伊藤整. - 1981, 岩波書店   北大ではどこにある?

    標題となっている論文で、著者は、日本人の手によって行われた文学(創作と作品)を「逃避型と破滅型」、「上昇型と下降型」等いくつかの切り口から鋭く考察し、日本に於いてその文学的な風土がどのように形成されたかという問題に取り組んでいる。その過程で一つの鍵となるのは、創作の専門性とそれを体現する”文士”という存在である。そうした観点から見たとき、多くの人が常識的に(?)受け止めている「文豪」漱石と鴎外への批判は苛烈を極める。

    20世紀末から日本哲学(史)の研究が徐々に隆盛の兆しを見せてきたが、哲学研究者とは別の(「異質」と言っても良い...   [続きを読む]

    登録日 : 2016-01-11

  25. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    科学という営みを伝えることの大切さを知る

    ロウソクの科学 / マイケル・ファラデー. - 岩波書店, 2010   北大ではどこにある?

    この本は、まさに「古典」という名にふさわしい有名な本だから既に読んでいる人が多いかと思うが、今の学生は(ああ、これもまた「古典」的な説教口調だ!)「古典」をあまり読まないらしいので推薦する意味はそれなりにあるだろうと思う。

    僕が小学生の頃は、雑誌『子供の科学』が毎月発刊されるのが待ち遠しく、またあかね書房から『少年少女最新科学全集』が刊行され、所謂”科学読み物”が一つの隆盛を迎えていた時代であった。その時期にこの『ロウソクの科学』と初めて接したのであるが、小学生が読むには少し手強かった。僕は、日下実男訳の旺文社文庫版(今は廃...   [続きを読む]

    登録日 : 2016-01-01

  26. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    台湾における「日本語世代」「日本語人」の戦後の人生

    台湾アイデンティティー (DVD) / 酒井充子. - マクザム , 2013   北大ではどこにある?

    同監督のドキュメンタリー『台湾人生』の姉妹編とも言うべきドキュメンタリー作品。『台湾人生』同様、戦前の台湾に生まれ戦前の教育を受けた「日本語世代」「日本語人」たちへのインタビュー記録。本作では特に戦後における「日本語世代」「日本語人」たちのライフコースが語られます。戦後日本に残った人、戦地ジャカルタに残った人、戦後台湾の白色テロを受けて監獄生活を送った人など、様々な人生が語られます。

    ※図書館注:『台湾人生』も所蔵しています。(ID:2001522597)

    登録日 : 2014-12-26

  27. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    日本人の幸福感・運命主義・根性主義

    日本人の心理 / 南博. - 岩波書店, 1956   北大ではどこにある?

    社会心理学者・南博先生による日本人の心理的特性を扱った本。初版は1953年と結構昔のものであるが、個人的には今でも十分読み応えのあるものだと感じた。江戸時代の各種養生書・処世書などをベースとしつつ、出版の処世書(今でいう自己啓発本か?)などからも引用をし、日本人の心理を整理している。日本人論の初期作品と言っていいかもしれない。もっとも日本人論と言っても、出版された当時の社会状況を反映してか、多くの日本人論に見られるような日本の素晴らしさを唱導する論調は見られない。むしろ軍隊や戦争、日本の権威主義的人間関係などを鋭く批判するというスタン...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-12-26

  28. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    異質な他者との共存は可能か

    地球(テラ)へ… (全3巻) / 竹宮惠子. - 中央公論新社, 1995   北大ではどこにある?

    この作品は日本のSF漫画史上に語り継がれるべき大傑作である。それがこの北海道大学附属図書館に置いてあることについて、北大附属図書館スタッフの見識を僕は高く評価したい。単に傑作漫画を置いているからということではなく、この漫画が突きつけてくるあまりにも重い問いが、今日の我々にとって何よりも考え抜かれ、かつ実践されねばならない問いだからである。
    グローバル化した社会で異文化としての他者と向き合ってそこで、関わりを深めていこうとするか相手を拒絶するかの選択に迫られることは現代では以前よりも遙かに頻繁にかつ容易に起こりえる。この漫画は、コン...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-12-04

  29. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    福祉国家の比較歴史社会学

    福祉資本主義の三つの世界: 比較福祉国家の理論と動態 / エスピン・アンデルセン. - ミネルヴァ書房, 2001   北大ではどこにある?

    エスピン・アンデルセンによる福祉社会の比較歴史社会学の重要書。近代化・社会主義化といった単線的な軸で、各地域を分析・比較するのではなしに、各地域ごとの福祉制度の歴史的展開に分け入りながら(教会による救貧活動の変化や労働運動の政治へのインパクトなど)、タイポロジーを作成。具体的には保守主義レジーム(ドイツ・イタリアetc)、社会民主主義レジーム(北欧)、自由主義レジーム(アメリカetc)を作成し、そこから福祉社会の比較分析を行うといういうもの。重厚な文体で論じているため、読むのに少々力がいるが、歴史叙述の詳細さやマクロ統計を駆使した比較など圧巻であ...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-10-16

  30. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    日本統治時代台湾の女性史

    近代台湾女性史 : 日本の植民統治と「新女性」の誕生 / 洪郁如. - 勁草書房, 2001   北大ではどこにある?

    日本統治時代の台湾の女性史の研究。著者の博士論文をまとめた本。纏足解放、女子教育、女性運動、「新女性」のライフスタイルなどが丹念に検討されている。個人的には女子教育を社会階層の視点から分析しているのがとても興味深かった。
     たとえば、1920年代の新女性とその夫からなる核家族において、新女性は家事労働をさほど担わなかったというところが面白い。台湾の高等女学校では、近代的知識を伝授するとともに良妻賢母的な教育(料理・礼儀作法・伝統芸能)などを伝授されていたのだが、結婚後の日常生活において家事に関する技能はさほど生かされなかったようであ...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-10-15

  31. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    台湾の「日本語世代」「日本語人」の語り

    台湾人生 (DVD) / 酒井充子. - 協映, 2008   北大ではどこにある?

    戦前の日本統治時代に生まれ、日本統治時代の教育を受けたいわゆる「日本語世代」「日本語人」と言われる人々へのインタビューを収録したドキュメンタリー作品。「どのようなライフコースを歩んできたのか」「日本統治時代にどのような暮らしを送って何を考えてきたのか」「戦後どのような人生を歩んできたのか」など、興味深い話が収録されています。台湾、植民地経験に関心のある人のみならず、社会学・心理学・文化人類学などにおける質的研究・定性的研究に関心のある人にも大いに参考になる作品ではないかと思います。本作品をもとにしたルポルタージュも出版されてい...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-10-13

  32. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    台湾映画の名作

    悲情城市 (DVD) / 侯孝賢監督 ; 呉念眞, 朱天文脚本, トニー・レオンほか出演. - Imagica, 1989   北大ではどこにある?

    台湾における日本統治時代・敗戦・戦後初期の中華民国統治時代を舞台に、これらの時代を生きた一族を描いた作品。特に1947年に生じた二・二八事件の一部を描いた映画として有名です。台湾、植民地経験、弾圧、歴史的記憶などに関心のある人に特におすすめです。1989年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞グランプリ受賞作品。

    登録日 : 2014-10-13

  33. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    タイの僧侶についての重厚な実証研究

    東北タイの開発僧─宗教と社会貢献 / 櫻井義秀. - 梓出版, 2008   北大ではどこにある?

    タイにおいて教育や地域開発、福祉事業などの各種開発を行ういわゆる「開発僧」と呼ばれる僧侶たちへの丹念な聞き取り調査に基づいた実証的な宗教研究・地域研究。「宗教と社会貢献」「タイ研究の動向」「南部タイの暴力」などの大きな議論を踏まえたうえで、僧侶の実証研究が紹介される。
    実証研究の最大の目玉は、東北タイの三地点、約100名を超える僧侶の比較研究である。「開発僧」として著名な僧侶のみならず「一般的」な僧侶なども検討していくことで、地域社会における僧侶の役割、「開発僧」と「一般的」な僧侶の連続性、「開発僧」が「開発僧」たる上での政治的コン...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-08-27

  34. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    北海道夕張産炭地の生活誌・社会史の決定版!

    地域産業変動と階級・階層 : 炭都・夕張/労働者の生産・労働(新装版) / 布施鉄治編著. - 御茶の水書房, 1990   北大ではどこにある?

    北海道大学教育学部の故・布施鉄治教授率いる「布施グループ」による調査モノグラフ。地域は北海道の産炭地夕張であり、大学院生・学部学生総出で、炭鉱関係者の生活史を調査したモノグラフである。対象者は炭鉱職員・鉱員・その家族など、ほぼ「ローラー作戦」で聞き取り調査をしている。そこから夕張における階層・階級構造、労働者の入炭経緯、ライフスタイル、将来への展望などが浮かび上がってくる。北海道社会史としても極めて貴重な書籍である。初版は1982年。
    なお「布施グループ」による調査には夕張の他にも、水島・倉敷などで行った調査がありそれらも出版されて...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-08-27

  35. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    「日本人論」の系譜と「日本人論ブーム」の社会的背景を探る!

    「日本人論」再考 / 船曳建夫. - 日本放送出版協会, 2003   北大ではどこにある?

    近代以降の日本では数々の「日本人論」が刊行されてきた。『武士道』『菊と刀』『「甘え」の構造』『ジャパンアズナンバーワン』が代表的ですが、近年の藤原雅彦『国家の品格』なども「日本人論」といえましょう。
    ではなぜ「日本人論」が生産され、広く人口に膾炙したのか?
    ブームの背景にある日本社会の「不安」、アイデンティティの「揺らぎ」といった社会的・心理的背景を本書は探ります。また本書は「日本人的なるもの」をいわゆる「サムライ」「武士道」などに限定せず、戦時中の「国民」さらには、今日でも日常的に使われる「人間」「職人」といった概念に見られる...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-08-27

  36. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    台湾ノートパソコン企業の成長メカニズムを解き明かす!

    圧縮された産業発展─台湾ノートパソコン企業の成長メカニズム / 川上桃子. - 名古屋大学出版会, 2012   北大ではどこにある?

    台湾はノートパソコン生産の世界シェア90%以上といわれています。当初はいわゆる低コストの下請企業として国際的な産業内分業の中での後発のメーカーという位置づけでした。そうした台湾のノートパソコン産業が急激な成長をとげたメカニズムを、丹念なインタビュー調査や観察、史資料分析などで実証的に論じています。経済学・経営学・経済社会学・産業社会学・労働社会学などにかかわる近年の重要書です。第29回(2013年度)「大平正芳記念賞」受賞作品

    登録日 : 2014-08-27

  37. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    社会科学方法論の名著

    創造の方法学 / 高根正昭. - 筑摩書房, 1979   北大ではどこにある?

    入門~。社会科学の方法論についてわかりやすく解説した名著です。
    理論とは何か、概念とは何か、モデルとは何か、理論をどのようにして具体的なデータで検証するのか、条件を統制するとはどういうことなのか、といったことが著者のアメリカでの研究生活の話を交えながら丁寧に説明されています。特に実験との対比させながら社会調査における分析のロジックを説明しているのがわかりやすいと思います。社会科学専攻の人に限らず多くの人々に是非一度手に取ってもらいたい一冊です。

    登録日 : 2014-08-27

  38. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    日本人は日本的なのか?何を以て日本的と言えるのか?

    日本人論の方程式 / 杉本良夫, ロス・マオア. - 筑摩書房, 1995   北大ではどこにある?

    「日本人論」というものがしばしば人口に膾炙することがあります。古くは新渡戸稲造『武士道』、最近では藤原雅彦『国家の品格』といったところでしょうか。そうした書籍では、日本国内の格言、歴史上の人物の言動録、著者の国内外での体験などをエビデンスとして「日本人は〇〇である」とされることがしばしばあります。そうしたエビデンスの使い方によって「本当に日本人は日本的である」と言っていいのか?と疑問を呈したのが本書です。
    社会科学方法論としても重要な書籍ですが、日本文化や日本と海外の比較に関心がある人も一度目を通してみるといろいろ頭のトレーニン...   [続きを読む]

    登録日 : 2014-08-27

  39. 推薦者 : 寺沢 重法   (文学研究科)

    幕末日本の農民運動を発生させた要因とは何か?

    変革期における社会運動の研究 : 19世紀日本の農民運動を通して / 野宮大志郎. - 北海道大学, 1998   北大ではどこにある?

    幕末日本の農民運動がどのような社会構造的要因によって発生したのかを統計的に検討した歴史社会学的研究。江戸時代日本の農民階級と武士階級の探索から始まり、農民運動が発生する要因に関する理論的考察、そしてその理論を検証するための実証分析を行うというスタイルになっています。実証分析では農民運動の年表から各年の運動発生件数をデータセット化し、物価変動や飢饉発生などの社会変動との関連を検討していきます。歴史学専攻の人にも是非読んでもらいたい書籍です。
    (図書館注:科学研究費補助金基盤研究(C)(2)研究成果報告書 ; 平成8年度-平成9年度)

    登録日 : 2014-08-27

  40. 推薦者 : 寺沢 浩一   (医学部)

    下山事件を現代の法医学で見る

    死の法医学―下山事件再考― / 錫谷 徹. - 北海道大学図書刊行会、北海道大学出版会, 1983   北大ではどこにある?

    1949年に国鉄総裁下山氏が失踪し、翌日、鉄道の線路上で死亡して発見された事件である。現代の法医学を紹介し、次いで轢断死体の法医学に進み、最後に下山事件を法医学的に見直している。ロジックで考えることの大事さを見せてくれる。
    新入生にも読めるが、医学部で法医学を勉強し終わった人に一番向いている本である。分かりやすく書かれている本として名著に属していると私は捉えている。

    登録日 : 2014-08-26

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