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本書においては、その後の人類の知的な営みにおける思考の規範となりあらゆる学問の基礎となったアリストテレスの哲学についてそれぞれの領域の第一人者24人(26章)の執筆者により包括的な研究および紹介がなされています。推薦者が今思いますのは人間の正しい思考方法がアリストテレスにより明晰に提示されたからこそ、ひとはいかなる領域においてであれ思考を進めるためにはアリストテレス的に思考せざるをえないということです。彼は「美しく問い(行き詰まり・アポリア)をたてること」が、その解に導くと言います。そして人類にとって、そのような方法は他にないからこそ、アリストテレス的に思考したひとびとがそれぞれの領域で一級の仕事をなしたのだと思います。美しく問いを立てることが決定的であり、本書において彼の問いの多くに出会うことになります。ユークリッドの『原論』は『分析論後書』の公理論的演繹体系を踏襲しています。ダーウィンは「リンネやキュビエは私の偉大な師であるが、彼らは老アリストテレスに比べるとmere school boys(小学生)」と語っています。ゲーデルは「アリストテレス以来の論理学者」(A.Weil)と言われます。その他、言論の諸技術から運動論、自然学、倫理学、政治学、存在論、芸術論にいたるまで、本書によりその基本的な思考様式とその果実をバランスよく学習することができます。諸君のなかでなぜヨーロッパが人類の知的な展開をリードしたのかという問いを持つひとがいますなら、そのひとは本書により「なるほど」と納得されるであろうと思います。 |