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推薦者 : 長堀 紀子 (女性研究者支援室・教員)
女性を”交渉が苦手”にさせているメカニズムとは?
そのひとことが言えたら… : 働く女性のための統合的交渉術 / L.バブコック, S.ラシェーヴァー著 ; 森永康子訳. - 北大路書房, 2005
北大ではどこにある?
女子学生の皆さんに質問です。
「自分のほしいものを欲しいと言えますか?」
「自分にふさわしい評価を求めていますか?」?”
「パートナー(彼氏)に、フェアじゃないと思いつつ、何となく料理や家事を提供する側になっていませんか?」
それは「女性は自分の気持ちを抑えるように周囲から期待され、気づかないうちにその期待に沿うように行動してしまっている」場合があるからです。その仕組みを理解してはじめて「どうすればよいか?」「どのように言えば良いか?」How toが役に立ちます。
男子3人を育てている親として、女子も男子も「幸せなパートナーシップ」を築き... [続きを読む] -
推薦者 : 長堀 紀子 (女性研究者支援室・教員)
将来のキャリアと”今”をつなげよう
大学生のためのキャリアデザイン : 大学生をどう生きるか / ヒューマンパフォーマンス研究会編 ; 三浦孝仁 [ほか執筆]. - かもがわ出版, 2013
北大ではどこにある?
学生向けに書かれた「キャリア」本が各種ある中で、キャリア開発の考え方と学びつつ「学生時代の今をどう過ごすか?」についての指南を与えてくれる本です。
大学生の時期は、自分を理解し、自己管理能力を身につける大変良い時期です。やみくもに努力するよりも、キャリア開発の知識を持ったうえでの努力の方が、より成長につながると思います。
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推薦者 : 長堀 紀子 (女性研究者支援室・教員)
2025年、働き方はどうなっているか?
ワーク・シフト : 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図「2025」 = Work shift / リンダ・グラットン著 ; 池村千秋訳. - プレジデント社, 2012
北大ではどこにある?
”2025年”に、今大学生の皆さんは、ちょうど30歳前後です。あなたはその時、どのような働き方をしていますか?
自分の親世代の常識から、働き方の常識が大きく変わってきています。大きく3つのシフトが予測されています。「食えるだけの仕事」から意味を感じる仕事へ。忙しいだけの仕事から価値ある経験としての仕事へ。勝つための仕事からともに生きるための仕事へ。
現在40代の私の世代でも、既にその変化は広がっています。
自然に見聞きする情報だけで将来を考えてはもったいない。未来への理解を深め、幸せに生きるための働き方に興味がある方はぜひ、読ん... [続きを読む] -
推薦者 : 長堀 紀子 (女性研究者支援室・教員)
社会は理不尽だ、、、それでも一歩踏み出そう!
Lean in (リーン・イン) : 女性、仕事、リーダーへの意欲 / シェリル・サンドバーグ著 ; 村井章子訳. - 日本経済新聞出版社, 2013
北大ではどこにある?
ある社会的に成功した女性の個人の経験をもとにしていますが、その時に感じた「壁」について、様々な統計と理論から多面的に考察しています。社会には女性にとって理不尽なことがまだまだたくさんあります。何故、理不尽を感じるのか?その仕組みについても解説されています。ひとつひとつの理不尽に対して「それは不公正である」ことを社会に伝える努力と、理不尽な現実を前提として自分がどう考え行動していくか、個人の戦略としての努力のどちらも必要ですが、それらをバランス考えていくことが大事だ、ということが分かる内容です。 -
推薦者 : 小林 和也 (高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター・職員)
ゾーンへの招待
ストーカー / アルカジイ・ストルガツキー,ボリス・ストルガツキー著 ; 深見弾訳. - 早川書房, 1983
北大ではどこにある?
アンドレイ・タルコフスキー監督による映画のほうが有名かもしれないが、この原作もまた偉大な文学作品だ。
本作は通常SFとされる。しかしそれだけではない。戦争や核汚染後の世界のメタファーとも言える突如現れた謎の危険地帯「ゾーン」。ストーカーはそこに侵入して、異星人が残したとされる異物を採取する。ストーカーとは何者であるのか? この問いに対する答えを、主人公レドリックの述懐に読み取ることができなければ、それはこの本との出会い損ね、悲しい接触と言わざるをえない。 -
推薦者 : 笹岡 正俊 (文学研究科・教員)
大学での「学び」で何を掴み取るのか
優秀なる羊たち : 米国エリート教育の失敗に学ぶ / ウィリアム・デレズウィッツ著 ; 米山裕子訳. - 三省堂, 2016年
北大ではどこにある?
「社会というのはそれ自体が、真実から遠ざかり、それに触れまいとする陰謀だ。僕らは宣伝工先にどっぷりつかって一生を過ごす。―商品の広告、政治家の弁舌、現状を伝えるジャーナリズムの断言、大衆文化の陳腐な表現、当や会派やクラスの会則・・・(中略)・・・プラトンはこれをドクサ(注:推測に基づいた考え、見方)と呼んだ。その力は・・・(中略)・・・お構いなしに浸透していくほど強い。真の教育(リベラルアーツ教育)の第一の目的はこのドクサを認識し、疑問に感じ、それにとらわれずに考える術を教え、そこからわれわれを自由にすることなのである」
... [続きを読む] -
推薦者 : 池見 真由 (経済学研究科・教員)
今日の経済と社会と自分を見つめ直す
世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ / [ムヒカ述] ; くさばよしみ編 ; 中川学絵. - 汐文社, 2014
北大ではどこにある?
「経済」とは元々、お金を儲けることや利潤を増やすことではなく、経世済民、つまり世の中をうまく経(おさ)めて民を救済する・幸せにすることが本来の意味だったと思います。
あなたは、ホセ・ムヒカ氏の立ち振る舞いや言葉に感銘し、彼の考え方を理解し、共感できる人であるでしょうか?
そしてあなたは、現在の世界経済や国際社会のあり方に興味関心を向け、「こんなんじゃだめだ」と、自分のことのように危機感を感じられる人であるでしょうか?
もしそうであれば、あなたは私にとって見ず知らずの他人ですが、それでも、自分のことのようにとても嬉しいです。
こんな... [続きを読む] -
推薦者 : 種村 剛 (高等教育推進機構 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)・教員)
生き方のフォームをつくる
うらおもて人生録 / 色川武大. - 新潮社, 2014
北大ではどこにある?
20数年前に大学生だった私は、麻雀に多くの時間を割いていました。そんなとき古本屋で『麻雀放浪記』(阿佐田哲也著)を見つけました。戦後の混乱期、博打で生きる人々の生き様が、筆者独特のリズムと文体で描かれていました。それに魅了された私は、阿佐田さんの書いた本を買い集め、読みふけりました。その過程で、阿佐田哲也(朝だ、徹夜)とは、色川武大さんのペンネームであることを知ったのでした。
今回『うらおもて人生録』を推薦するにあたって、もう一度読み返してみました。この本の初出は1984年、今からもう30年以上になります。もうすっかり古びてしまっているの... [続きを読む] -
推薦者 : 伊藤 孝行 (メディア・コミュニケーション研究院・教員)
一文字も読まない日なんて,ほぼない(でしょ)。
「読む」技術 : 速読・精読・味読の力をつける / 石黒圭. - 光文社, 2010
北大ではどこにある?
スマホで,読む。
電車で,読む。
黒板やホワイトボードの字を,読む。
空気も,よむ。
うれしい日もかなしい日も,
晴れの日も雪の日も,
一文字も読まない日なんて,
ほぼない(でしょ)。
夢の中だって読んでいるかも。
読み方が増えれば,
もう少しだけ,つよくなれるかもしれない。 -
推薦者 : 佐々木 亨 (文学部・教員)
「修行とは矛盾に耐えること」とは、名言?、迷言?
赤めだか / 立川談春. - 扶桑社, 2015
北大ではどこにある?
私がこの本に出会ったのは、つい最近です。それは、このところ落語に興味を持ってきたことに関係しています。著者の立川談春は、5年前に亡くなった立川談志の弟子です。
談志は、名言、迷言、暴言の多い落語家でした。名言としては、「修行とは矛盾に耐えることである」、「己が努力、行動を起こさずに対象となる人間の弱みを口であげつらって、自分のレベルまで下げる行為、これを嫉妬という」など、短い文で人間の行為の本質を的確に捉えたものが多いです。この本には、その談志の弟子である談春の修業時代からの苦労話が、たくさん詰まっています。
私は、もう一度... [続きを読む] -
推薦者 : 戸田 聡 (文学研究科・教員)
いかに生きるか ―附属図書館企画「少年よ、学部を選べ」に寄せて―
『余の尊敬する人物』 他 / 矢内原忠雄 他. - 岩波書店 他,
北大ではどこにある?
学内の知らせで、「少年よ、学部を選べ」という附属図書館企画があることを知ったが、この文章の主たる対象読者は既に学部を選んでしまっている学生諸君であるだろう。とすれば、今さら「学部を選べ!」と言われても「は?」といった応答しか返ってこないであろうことは必至である。むしろやはり、「生き方を選べ!」とか(ちと高圧的か?)、「いかに生きるか?」といった見出しで書くほうが、どのみち同じ内容だとしても、まだしも受け入れられやすいのではなかろうか。
などと書きはしたものの、自分の人生論をぶつことができるほど筆者(戸田)は老成しているとも... [続きを読む] -
推薦者 : 三上 直之 (高等教育推進機構・教員)
就職活動にやさしく効くクスリ
スコーレNo.4 / 宮下奈都. - 光文社, 2009
北大ではどこにある?
よい成績で高校を卒業し、親もとを遠く離れた国立大学に進学した麻子は、3年になって就職活動を始めようとして戸惑った。もともと少し不器用なところのある麻子は、説明会やパンフレットで会社の様子を見聞きしても、そこで自分が働いている姿が想像できない。働きたくないのではない。どんな仕事が自分に向いているのか全然思いつかないのだ。結局、唯一得意だと思える英語を生かした仕事を、というあいまいな動機で輸入貿易商社をいくつか受け、幸い給料のよい大手に入ることができた。ところが入社後、ろくな研修もないまま靴屋に出向させられ、知識も興味もない靴の売り... [続きを読む] -
推薦者 : 駒川 智子 (教育学研究院・教員)
企業はブラックだけじゃない!
ホワイト企業 : 女性が本当に安心して働ける会社 / 経済産業省監修. - 文藝春秋, 2013
北大ではどこにある?
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推薦者 : 敷田 麻実 (高等教育推進機構・教員)
君は、「面白い研究」をつまらなくプレゼンできないはずだ
勝率2割の仕事論 : ヒットは「臆病」から生まれる / 岡康道. - 光文社, 2016
北大ではどこにある?
岡はクリエイティブディレクターであり、またコマーシャルを作成するプランナーの肩書きを持つ。大手の広告代理店に勤めた後、仲間と独立し「TUGBOAT(タグボート)」(広告代理店)の代表を努めている。その岡が本書で強調するのは、「仕事の勝率は2割でよい」ということではない。岡が、クライアントの要求を超えて、彼らが気づいていない隠れた意図を提案したり、メッセージ性の強い仕事をしていると、結果的に勝率は2割になってしまうということだ。
彼の仕事と研究者の仕事の共通点は、「人の金」を使って仕事をしていることである。彼らはクライアントの資金を使い... [続きを読む] -
推薦者 : 敷田 麻実 (高等教育推進機構・教員)
この難しい時代のグローバル化政策を学ぶ
「文化」を捉え直す : カルチュラル・セキュリティの発想 / 渡辺靖. - 岩波書店, 2015
北大ではどこにある?
グローバリゼーションは、国際社会とは関係がない私たちの日常にも影響する。こちらの都合や好き嫌いにかかわらず、勝手に影響してくるのがグローバル化であって、自治体が意図して進めていく国際化とは大きな差がある。大学の近くの保育園には、異なる国々の子供たちが通う保育園をよく見かけるが、地域が好んでインターナショナルスクールを誘致したのではない。立地する大学の教職員、留学生の影響で結果的にそうなったのだ。
このようにグローバル化の中では、新しい文化が遠慮なく地域に入ってくる。しかしその一方で、固有の伝統文化の維持は難しくなってきてい... [続きを読む] -
推薦者 : 敷田 麻実 (高等教育推進機構・教員)
学ぶことを学べる本
学びとは何か : 「探究人」になるために / 今井むつみ. - 岩波書店, 2016
北大ではどこにある?
大学を出たときが学びのピークで、それ以降は知識レベルが下がっていくだけという批判には三分の理を認めるが、それは学習や学びをなめてかかっている。本当は社会に出てからが学びの本番であり、答えのない問題を解くチャンスに日々恵まれる。学校を出たときが学力のピークだという考えは、教室でインプットした知識だけで社会が理解できるという誤解に基づいている。学びは重要である。大学では、膨大な資料を読み、それを知ったうえでの研究を求められる。そのため、知識を得ること、レクチャーされることが大学生活の中心となりがちである。しかし、本書を読めば、知る... [続きを読む] -
推薦者 : 敷田 麻実 (高等教育推進機構・教員)
調査で「なぜ」と聞いてはいけない
途上国の人々との話し方 : 国際協力メタファシリテーションの手法 / 和田信明, 中田豊一著. - みずのわ出版, 2010
北大ではどこにある?
本書の筆者である和田と中田は国際協力のベテランであり、アジアなどの途上国の現場で学んだこと、特に、相手の状態を理解する調査について、ていねいに解説している。相手を知ることの第一は観察であるが、その次は質問を介したコミュニケーションである。それは地域調査でのやり取りでも同じである。
彼らは「問題は何か」や「原因は何か」と相手に聞いてはいけないと述べる。例示された、医者は患者を前に「なんで熱があるのか?」と聞くのではなく、医者が聞くべきは「いつから熱が出たのか」という事実であるというアドバイスは、まったく当を得ている。考えを聞... [続きを読む] -
推薦者 : 天野 麻穂 (大学力強化推進本部 URAステーション・その他)
科学者を目指したいけれど、不安や悩みが尽きない学生さんへ
科学者の卵たちに贈る言葉 : 江上不二夫が伝えたかったこと / 笠井 献一. - 岩波書店, 2013年
北大ではどこにある?
戦後日本の生命科学を牽引した一人である、江上不二夫先生にまつわるエピソードを、お弟子さんの笠井献一先生がエッセイとしてまとめた本です。
「研究」を「しごと」や「人生」に置き換えて読むこともできそうなので、科学者を目指す新入生はもちろん、どの道に進もうか、将来のことで悩んでいる大学院生や研究員の方にも、ぜひ薦めたい一冊です。
たとえば、世の中には「つまらない研究」なんて存在しない。本質的なものを見つけ出そう、という高い志をもっていれば、不可欠で立派な研究だから。大事なのは、自然を素直にみつめて、謙虚に接すること。
ある... [続きを読む] -
推薦者 : 瀬名波 栄潤 (文学部・教員)
男性性研究の古典
男同士の絆 : イギリス文学とホモソーシャルな欲望(原タイトル:Between men) / イヴ・K・セジウィック. - 名古屋大学出版会, 1985年(原書)、2001年(翻訳)
北大ではどこにある?
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推薦者 : 瀬名波 栄潤 (文学部・教員)
クイア理論の古典
クローゼットの認識論 : セクシュアリティの20世紀(原タイトル:Epistemology of the closet) / イヴ・K・セジウィック. - 青土社, 1990年(原書)、1999年(翻訳)
北大ではどこにある?
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推薦者 : 瀬名波 栄潤 (文学部・教員)
21世紀の混沌を解く名著
ある学問の死 : 惑星思考の比較文学へ (原タイトル:Death of a discipline) / G. C. スピヴァク. - みすず書房, 2003年(原書)、2004年(翻訳)
北大ではどこにある?
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推薦者 : 橋本 努 (経済学研究科)
現代を代表する思想家のチャールズ・テイラーの最新書であり、英語の教材としても最適である。
The language animal : the full shape of the human linguistic capacity / Taylor, Charles. - Belknap Pr, 2016
北大ではどこにある?
登録日 : 2016-11-08
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推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
いつの時代にも共通する「悶々」
恋愛論 / スタンダール. - 岩波書店,
北大ではどこにある?
スタンダールの『恋愛論』と言えば、「結晶作用」や「恋愛の四分類」であまりにも有名であるが、これらのことばだけが一人歩きしてしまっている観がなきにしもあらずである。この本は、周知のようにスタンダール自身がある女性との恋愛に悶々としていた経験を下敷きにして、当時のヨーロッパの知識人の12世紀から18世紀にわたる古典的教養を背景として書かれた人間観察の集成と言えるものである。そこに描かれる様々な恋愛事情の「悶々」は、21世紀日本の我々には分かりにくい部分や、今なら御法度になる部分を含んではいるものの恋愛という経験について今なお教えてくれると... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
今読まずにいつ読むか。
言論・出版の自由 / ジョン・ミルトン. - 岩波書店, 2008
北大ではどこにある?
つい最近、マスメディアに対する権力側の幾つかの横暴とも言える対応が報道された。報道機関やジャーナリストたちはそれなりに危機感を示しているもののいよいよ政治権力が牙をむき始めた、という慄然たる思いがする。大学に身を置く我々にとって大切な、日本国憲法で保障されている学問・良心の自由もいつ危うくなるか分からない。その前に読んでおくべきものとしてこの本を推薦しておく。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
東北大震災以後の日本を世界史的規模で考える
3・11以後この絶望の国で : 死者の語りの地平から / 山形孝夫・西谷修. - ぷねうま舎, 2014
北大ではどこにある?
この本は、東北大震災で被災した宗教学者の山形孝夫氏と、現代思想のあり方を問い続けてきた哲学者の西谷修氏との対談である。表題を見ると、現代の日本を直接の対象としているようであるが、むしろ対談者のお二人の中心問題は、(制度的)キリスト教世界の成立とそれが世界に何をもたらしたかということにあり、その延長線上で、ある時点から道を踏み外し始めた世界と、「死者の口封じ」の道具と化してしまった宗教への危機感が語られる。東北大震災はその具体的な危機の露呈の現場として考察され、その危機的状況からのどのような救いの道があるかは、山形氏の”つぶやき... [続きを読む] -
推薦者 : 小泉 均 (工学研究院)
自分の「夢」とどう向き合うか
夢があふれる社会に希望はあるか / 児美川 孝一郎. - KKベストセラーズ, 2016
北大ではどこにある?
キャリア教育の専門家が、[将来なりたい職業や成し遂げたい事などの]「夢」との付き合い方について述べている本である。著者は、「現在の日本社会は、『夢』をあおる社会であり、夢を持つことを強要する雰囲気を持った社会である。」ととらえている。そのような社会の中で、1)「夢」が見つからないとき、2)「夢」の実現を全力でめざしているとき、3)「夢」が実現できそうもないとわかったとき、どのように考え対処していったら良いか、キャリア教育や心理学などの研究成果にもとづき述べられている。
「重要なのは、[夢が見つからなくても]思いつめたりすること... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
この難しい時代をどう生きるか
感情で釣られる人々 : なぜ理性は負け続けるのか / 堀内進之介. - 集英社, 2016
北大ではどこにある?
去年から書店の本棚に“反知性主義”ということばを含む表題の本が並ぶようになってきた。国内・国外にわたって難しい問題が山積し、それらに対する処方箋がなかなか見つからない中で人びとのある種のいらだちのようなものが確かに感じられるし、それが時としてこれまでの価値観に対する破れかぶれの破壊衝動のように見える場合もあって、そのようなことばが現代社会の懸念すべき問題として本の表題になることは理解できる。しかし、その一方で、問題のあり方が様々に複雑化・多様化している世界の状況を“反知性主義”という術語で語ろうとするのもある種の“メタ・反知性... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
「男対女」の構図をいかに乗り越えるか
男子問題の時代?-錯綜するジェンダーと教育のポリティクス- / 多賀太. - 学文社, 2016
北大ではどこにある?
ジェンダー、あるいは男女平等/差別の問題が語られるときにほぼお決まりになっているパターンとして「男は支配する側、女は支配される側」あるいは「男は加害者、女は被害者」という言説がある。日本の社会のかなりの部分でそれは当てはまるのかもしれないが、僕はこの見方には強烈な反発を持っている。それは、“日本語教師”という「女性8割、男性2割」の業界で働いてきた経験から、女性が多数者側になれば「女性は加害者、男性は被害者」という事態も容易に出現することを知っているからである。そのような意味で日本のジェンダー研究はまだ色々なことを考え直さなければ... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
新たな歴史哲学を考える原点として
歴史における言葉と論理-歴史哲学基礎論- / 神川正彦. - 勁草書房, 1970-1971
北大ではどこにある?
この本については、少し過激な(?)推薦文を書きたい。
先日、某大学(敢えて名は秘す)の日本現代(1950年代以降)哲学の授業のシラバスを見ていたら、そこで取り上げてられているのが大森莊藏、廣松渉、坂部恵であった。しかしこれでは、結局戦前は「京都学派」で、それが戦後になったら“東大”に変わっただけじゃないか、という印象を拭えない。日本の哲学というのは京大と東大の“官学アカデミズム”の中で選手交代をやっていただけだとしたらあまりにも悲しい。ここに推薦する神川正彦は、今はもう哲学専攻の学生でも名前を知らない人が多いかもしれないが、上記... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
「承認」を切り口にして社会を考える
承認-社会哲学と社会政策の対話- / 田中拓道. - 法政大学出版局, 2016
北大ではどこにある?
「承認」というと堅苦しい響きがあるが、要するに「認めてくれ!」ということである。ではなぜある人びとやある問題が社会の中で認められていないのか、どのようにすればその問題にアプローチできるのか、といったことに気鋭の研究者たちが正面から取り組んだ労作である。その際の基本的視角となっているのは現代ドイツの哲学者アクセル・ホネットの“承認の哲学”と、それに関するナンシー・フレイザーとの論争である。決して易しくはないが、ここからさらに各自の関心に応じて(芋づる式に!)読書の範囲を広げ問題を整理することができるだろう。よく言われる「哲学が何... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
古典と現代をつなぐ読み方を知る
社会契約論-ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ- / 重田園江. - 筑摩書房, 2013
北大ではどこにある?
高校の世界史や政治経済の授業で「社会契約論」という考え方を知ったときに感じたのは、ルソーにせよロックにせよなぜあの時代の西ヨーロッパの思想家がそういうことをわざわざ考えなければならなかったのか、という強烈な違和感だった。「社会」というものをみんなで作ろう(?)といった感じで最初に約束事をするという発想自体について行けなかったのである。実は今でもその違和感は抜けきらず、“起源”ということをやたらに理屈を付けて解き明かしたがる(そのくせ割合に最後は「神」が出現して一切が片付く)西欧の思想にとことん付き合いきれない思いがある。
この本... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
さらに一段上の文章表現力のために
論理が伝わる世界標準の「書く技術」-「パラグラフ・ライティング」入門- / 倉島保美. - 講談社, 2012
北大ではどこにある?
ここに何度か書いたことだが数年前から「一般教育演習(フレッシュマンセミナー)」で文章表現が苦手な学生のための日本語文章表現法の授業を展開してきた。ただ、色々と訳あってこの授業は今年度で終わりにすることにした。そこで、これに替わるものとして、また、“苦手”のレベルを脱した学生がさらに上のレベルの文章表現力を身につけてもらう上で参考にすることができるようにこの本を推薦しておく。この本は、それ自体が主題としている「パラグラフ・ライティング」によって書かれているので、技法と実例を同時に身につけることができる点で優れている。あとは練習あるの... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
戦後日本の思想の絡まりを解きほぐす
現代日本思想論-歴史意識とイデオロギー- / 安丸良夫. - 岩波書店, 2004
北大ではどこにある?
この本は、戦後日本の社会科学(主として政治学と歴史学)の中で誰がどのような議論を展開しそれが誰に受け継がれ誰に批判されその中からどのような議論が新たに形成されてきたかを論じる第一部と、戦後の主に海外の歴史学研究方法論、丸山眞男の思想史研究、そして著者自身の現代社会状況分析からなる第二部とに分かれている。読者の関心に応じて興味を引かれる部分は異なると思うが、特に第一部は戦後の社会科学研究の“思想地図”といった内容になっており、広く日本の戦後政治や思想を学ぶ上での基本的な知識を提供してくれている。これらの方面に関心のある学生に一読... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
「辞書にはドラマがある」
<辞書屋>列伝-言葉に憑かれた人びと- / 田澤耕. - 中央公論新社, 2014
北大ではどこにある?
以前の推薦文に、最近岩波新書(新赤版)がつまらなくなってきた、と書いたが、最近の新書(岩波に限らない)ときたら、もう池上彰、佐藤優、島田裕巳、内田樹ばかり目立つ(少し前ならこれに香山リカも入っていた)。商業的に売れる本を書きたいというのは出版社の本音だろうし、若者の読書離れなどということも言われる中で出版社の新書編集部も大変だろうなぁとは思うが、こうも顔ぶれが変わらないと彼らの熱烈なファンでない限り購買意欲が逆にそがれてしまう。それにしても、この四人はよくも新書の大量執筆ができるもので、その点はうらやましい限りである。
閑話... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
あなたの知らないディープな大学図書館
変わりゆく大学図書館 / 逸村裕・竹内比呂也. - 勁草書房, 2005
北大ではどこにある?
北大図書館を頻繁に利用する人や図書館ウェブサイトをよく見る人の中でどのくらいの人が図書館トップページの一番右にある「附属図書館について」を見ているだろうか。図書館ホームページの中で蔵書検索やお知らせと同じくらい閲覧されていいページはこの「附属図書館について」の中にある様々な情報だと思う。それほど更新頻度が高いわけではないが、図書館がどのように北大の研究・教育活動に貢献しているか、そのために職員の方々がどのような仕事をしていらっしゃるかがよく分かる。時間があるときには是非見てほしい。それと関連して... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
現代哲学の源流をたどる
人間知性の探究・情念論 / デイヴィッド・ヒューム. - 晢書房, 1990
北大ではどこにある?
現代哲学、あるいは哲学史に於ける「現代」というのがなに/いつを指すのかは色々議論があるであろうけれども、(ニーチェを別にすれば)20世紀以降の西洋哲学のかなりの部分が目指そうとしたことは、ヒュームの哲学を練り直し、彼が問題としてことを問い直して現代に甦らせようとすることだったと言って良い。(例えば、ジョン・デューイはそのことをはっきりと述べている。) ヒュームは、哲学史の教科書的に言えば、懐疑論者でありイギリス経験論の完成者であるなどと言われるが、-そう見ることも可能であるとしても-彼が目指したのは日常的な経験をいかに概念化して人間の... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
大学の「勉強」は大変なのである!
「知」の方法論-論文トレーニング- / 岩崎美紀子. - 岩波書店, 2008
北大ではどこにある?
この本を推薦するに当たっては苦い思い出から始めたい。高校時代の「倫理・社会」の授業で、「大学に行く目的は何か?」というテーマでグループ・ディスカッションをしたことがあった。僕のグループ5人の中で、「大学へは勉強しに行く」という意見を出したのは僕だけで、他の同級生は全員「大学へは遊びに行く」と答えたのである。グループ代表として結論を報告した同級生の、僕を小馬鹿にしたような目つきはいまだに目に浮かぶ。そんな高校だったから、卒業時、男子生徒20名中現役で大学に進学したのは2名だけだった(僕も浪人組)。
北大に進学してきた学生諸君の高校... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
「馬鹿ばかしさのまっただ中で犬死しないための方法」とは何か?
赤頭巾ちゃん気をつけて / 庄司薫. - 新潮社, 2012
北大ではどこにある?
この小説は、一時期多くの読者の心を捉え、近年また出版社を替えて文庫化されるほどに読み継がれてきた名作である。大学紛争(と言ってももう知識としてしか知らない学生ばかりだろうが)で1969年度の東大入試が中止になるという時代背景の中、東京都立日比谷高校3年生の「庄司薫」君の饒舌的で独白的な文体を軸に綴られたこの作品を高校時代に最初に読んだとき、僕は作者が本当に日比谷高校3年生ではないかと思ったほどである。著者の庄司氏と僕はちょうど20歳の年齢差があるが、僕自身―全盛期末期か凋落期かの違いはあれど―都立高校に在籍し卒業した者として主人公の「薫」君... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
もう今はない旧制高校の青春とは
どくとるマンボウ青春記 / 北杜夫. - 新潮社, 2000
北大ではどこにある?
僕が大学時代に教えを受けた先生方の半数以上は、旧制高等学校の卒業生だった。旧制高校は、戦後は新制大学(の一部)になり、僕ら新制高校卒業世代は知識としてそういうものがあったという形でしか認識していないのだが、実際に旧制高校生活を送った先生方にはその後の人生のスタイル(というと安っぽく聞こえてしまうが)を決定するような大きな影響力のある教育機関だったらしい。最早体験的に知ることのできない、そうした旧制高校の魅力とそこで学生生活を送った著者自身の内面的な成長過程、そして、思わず笑いを誘う、あるいは人生の意味を真剣に考えさせるエピソードの数... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
「教養」は実践するものである。
人生を面白くする本物の教養 / 出口治明. - 幻冬舎, 2015
北大ではどこにある?
この本の推薦文は、僕の体験したエピソードの紹介を以てこれに替えたいと思う。
大学時代に読んだ本の中に、イギリス人は初対面の相手にまず政治の話題を振って、相手がその話題についてこられなかったら「こいつは付き合う価値のない奴だ」と見切りをつける、という趣旨のことが書いてあった。いくら何でもそれは決めつけすぎだろうと思ったものの、そのことを忘れて十年ほどが経過し、機会を得てエジプトに赴任することになった。そして、彼の地でイギリス人のカップルと知り合い、ある日彼らの家に夕食に招待された。席についてまずワインで乾杯となったのだが、一口... [続きを読む]