本は脳を育てる ~北大教職員による新入生への推薦図書~ 

推薦者 :  小林和也      所属 :  高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター      身分 :  職員      研究分野 : 
ゾーンへの招待
タイトル(書名) ストーカー
著者 アルカジイ・ストルガツキー,ボリス・ストルガツキー著 ; 深見弾訳
出版者 早川書房
出版年 1983
ISBN 4150105049
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推薦コメント

アンドレイ・タルコフスキー監督による映画のほうが有名かもしれないが、この原作もまた偉大な文学作品だ。

本作は通常SFとされる。しかしそれだけではない。戦争や核汚染後の世界のメタファーとも言える突如現れた謎の危険地帯「ゾーン」。ストーカーはそこに侵入して、異星人が残したとされる異物を採取する。ストーカーとは何者であるのか? この問いに対する答えを、主人公レドリックの述懐に読み取ることができなければ、それはこの本との出会い損ね、悲しい接触と言わざるをえない。

ストーカーは働くお父さんだ。しかしお父さんの仕事は危険!同僚は命を落とすし、許可なくゾーンに侵入するのは違法行為だ。危険で不法な稼業である。ブローカーにゾーンからもたらされた超技術の産物を売って生計を立てるも、搾取され続ける毎日。危険を冒しても収入は微々たるもの、一向に暮らし向きはよくならない。挙句に逮捕されもする。

それでもストーカーがゾーンに向かうのは、ゾーンはどこかに真の願いを叶える〈願望機〉を隠し持っているからだ。あるストーカーは弟を生き返そうとして願望機へ飛び込み、しかし意図とは裏腹に大金を得て自殺した。自分の真の願望が、その浅はかさが見抜かれてしまったからなのか? レドリックもまた願望機へ向かう。なんのためにこの稼業を続け、何を願ってきたのか? このことが問われているのだ。

本書を読んだ者は、この世というゾーンを旅するための強力な指針を得るだろう。真に願うことでなければ叶わない。そして真に願うべきことは、大金でも弟を生き返すことでも自分の幸福でもないのだ。そのことがわかれば、君は生きていける。そして願望機へダイブすることができるようになるはずだ(映画も最高だよ、図書館にあるよ)。


※推薦者のプロフィールは当時のものです。

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