推薦者: 三上 直之
所属: 高等教育推進機構
身分: 教員
研究分野: 科学技術社会論、環境社会学
就職活動にやさしく効くクスリ
タイトル(書名):
スコーレNo.4
著者:
宮下奈都
出版者:
光文社
出版年:
2009
ISBN:
4334746780
北大所蔵:
推薦コメント
よい成績で高校を卒業し、親もとを遠く離れた国立大学に進学した麻子は、3年になって就職活動を始めようとして戸惑った。もともと少し不器用なところのある麻子は、説明会やパンフレットで会社の様子を見聞きしても、そこで自分が働いている姿が想像できない。働きたくないのではない。どんな仕事が自分に向いているのか全然思いつかないのだ。結局、唯一得意だと思える英語を生かした仕事を、というあいまいな動機で輸入貿易商社をいくつか受け、幸い給料のよい大手に入ることができた。ところが入社後、ろくな研修もないまま靴屋に出向させられ、知識も興味もない靴の売り場で、ただ疲れるだけの散々な日々を送ることになる。
そんな状況を好転させるきっかけとなったのは、幼い頃から麻子が親しんできたある「もの」だった。それが何であるかは自分で読んで確かめてほしいが、仕事人生はだれにとっても多かれ少なかれ山あり谷ありの道のりである。キャリアという長い旅路で自分を支えてくれるのは、学校で習う知識や技術ばかりではない。親や祖父母が教えてくれたこと、きょうだいとのかかわりや恋愛の経験から身についたこと、そういうものが自分に味方してくれる時がきっとある。
就職や進路に悩んでいる人、不安がある人には、カンフル注射のようなノウハウ本もいいけれど、この本はもっとやさしくじわりと効いてくれると思う。就職活動が順調な人にも勧めたい。働き始めるのがさらに楽しみになるだろうし、いずれは避けて通れない失敗や挫折のときに、貴重な栄養分としてあなたを支えてくれるはずだ。ひとりの少女が大人の女性への成長するまでの物語としてとても味わい深い作品だから、そんな実利的な話は別にしてもお勧めしたい作品である。
ちなみに著者は、別の小説で2016年の本屋大賞を受賞した。受賞作『羊と鋼の森』(直木賞にもノミネートされた)は、迷いながら成長していく若きピアノ調律師の物語で、これも仕事やキャリアを考えるためのヒントが満載である。
そんな状況を好転させるきっかけとなったのは、幼い頃から麻子が親しんできたある「もの」だった。それが何であるかは自分で読んで確かめてほしいが、仕事人生はだれにとっても多かれ少なかれ山あり谷ありの道のりである。キャリアという長い旅路で自分を支えてくれるのは、学校で習う知識や技術ばかりではない。親や祖父母が教えてくれたこと、きょうだいとのかかわりや恋愛の経験から身についたこと、そういうものが自分に味方してくれる時がきっとある。
就職や進路に悩んでいる人、不安がある人には、カンフル注射のようなノウハウ本もいいけれど、この本はもっとやさしくじわりと効いてくれると思う。就職活動が順調な人にも勧めたい。働き始めるのがさらに楽しみになるだろうし、いずれは避けて通れない失敗や挫折のときに、貴重な栄養分としてあなたを支えてくれるはずだ。ひとりの少女が大人の女性への成長するまでの物語としてとても味わい深い作品だから、そんな実利的な話は別にしてもお勧めしたい作品である。
ちなみに著者は、別の小説で2016年の本屋大賞を受賞した。受賞作『羊と鋼の森』(直木賞にもノミネートされた)は、迷いながら成長していく若きピアノ調律師の物語で、これも仕事やキャリアを考えるためのヒントが満載である。
※推薦者のプロフィールは当時のものです。