推薦者: 西 昌樹
所属: メディア・コミュニケーション研究院
マンガが入り口になる
タイトル(書名):
虹色のトロッキー(全8巻)
著者:
安彦良和
出版者:
中央公論新社(文庫)
出版年:
2000
ISBN:
0280219667
北大所蔵:
推薦コメント
初めてマンガを推薦するが、今「ガンダム・ザ・オリジン」を連載中の作者による満州を舞台にした現代史ものである。私たちが知らないでいた太平洋戦争時代の一面がここにある。五族協和とは何か。その実現のためにあった満州建国大学。そこに学ぶ蒙古人青年を主人公に、歴史上の人物が多数登場する。たとえば、これからの世界はアジアの盟主たる日本と白人の盟主となるアメリカの最終戦争になると主張した石原莞爾、合気道の創始者植芝盛平、現首相が尊敬するその祖父、岸信介...トロッキーの説明はしない、読んで知ってください。そして中国の八路軍ではなく抗日聯軍...ただファナティックとか軍国主義とかですまさないで、当時の日本という国が何を考え、どこでくい違ったのか考えてみてほしい。歴史に学ぶというのはそういうことである。蛇足だが、興味があれば、石原莞爾(平岡正明の石原莞爾論が入門書)、大川周明(イスラム研究、アジア主義者、「大川周明集」図書館にあり)、日本浪漫派なら保田與重郎、三島由紀夫に影響を与えた蓮田善明などがおすすめだし、戦後なら福田恒存(保守として)や竹内好なども参考になると思う。右も左もない。今の時代は論壇に人材が乏しいのではないだろうか。このマンガが気に入れば潮出版社の元本(大判)を古書で探してください。
※推薦者のプロフィールは当時のものです。