留学体験記 vol.1-1


渡部さんは1988年生まれ。2011年8月から翌12年1月まで、経済学部の部局間協定校であるスウェーデンのイェーテボリ大学へ留学しました。学業に意欲的に取り組み、友人にも恵まれ、充実した留学生活を終えることができたようです。帰国後も、2012年「北海道大学サステナビリティ学生研究ポスターコンテスト」で特別賞を受賞するなど活躍を見せています。しかしその陰で、留学によってもたらされた、想像もしていなかった自分自身の変化に彼は戸惑っていたようです。
留学を「人生を大きく変えうる劇薬」とたとえた渡部さん。「劇薬=使用法を間違えると危険」な留学から彼は何を学び、変化をどう受け止め、どんなふうに成長していったのでしょうか?


page 1・・・留学前:入学前から留学をしてみたいなという気持ちはありました
page 2・・・留学中:どっちかというと英語というより度胸が試されるのかなと
page 3・・・留学後:留学前の自分が思いもよらなかったことで悩まされるというのがありました
page 4・・・後輩へ:留学できる可能性がゼロではないのであれば、ぜひ留学にチャレンジするべき

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北海道生まれ、北海道育ちの道産子です。今は実家から大学に通っています。

北大を志望したのは、通いやすく、かつ北海道で一番の国立大学だったからです。経済学部を志望した理由は、自分の学力等の適性を考慮して決めました。

今は西洋経済史の高井先生のゼミで、「募金の社会経済論」というのを卒論のテーマとして取り上げています。最初は社会福祉関係のことを調べようかなと思ったんですけども、範囲が広いというのと膨大に研究され尽くされていることからオリジナリティが見出せなかったので、社会福祉とちょっと関係ありそうな募金について、人がやっていないところだったので取り上げてみようかなと思いました。

留学を意識したきっかけですが、もともと英語が中学高校と積み重ねがあったことから、得意だし好きでしたことと、具体的なプランはありませんでしたが入学前から留学をしてみたいなという気持ちはありました。「北大の留学最大拠点」といわれる高井ゼミを選んで、先生やゼミの先輩のみなさんからアドバイスを受けて本当に留学してみようという気になりました。また、漠然とですが社会福祉に興味あり、卒業論文でもそれに関連したことを取り上げようと思っていたところ、福祉先進国といわれるスウェーデンが経済学部の学部間協定校として登録されていることを知り、これはチャンスだと思いました。

――それまで海外に行ったことは?

全くなくて。一人暮らしもしたことなくて、海外も行ったこともなくて。

後期の申込締切ギリギリ2月に応募して、奨学金も最終面接もトントンと決まった感じでいけました。

3年生に留学したのは、3年の後期から半年の留学ならばゼミでの基礎的なトレーニングを終えた後ですし、就職活動にあまり影響せずにいけると聞いていたからです。結果的に僕は就活という方向はとらないことに決めたのですが、基本的には、3年後期から半年の留学というのはいい時期ではないかなと思います。

――留学すると決意してからについて伺います。準備は大変でしたか?

私や、ゼミの仲間、先輩が編集に携わってきた「Trans Japan」という本に、旅費がいくらかかるとか一週間の予定がどういう感じだったとか国ごとにまとめてあったり、保険やカード、予防接種等、留学に必要な有益情報がたくさん書かれてあったのでこれを参考にして準備しました。けど・・・留学直前になって、海外行ったことがないのですごく不安になったんでしょうかね、すごく「行きたくない」っていう気持ちが出てきたんですよね(笑)。そういうとき、両親だとか先生や友達に思い切って助けを請うたり、相談したりというのがすごく大事でしたね。それがあって僕はきちんと準備できて行けたと思います。

応募書類も英語で準備しなくてはいけなかったりしました。ただ僕の場合そこまで面倒ではありませんでした。なぜなら、幸いにも、日本からはインターネットでビザ申請が済んだからです。

英語は、中学校の習いたてのときは全然できなくて、だから勉強したんです。その積み重ねがあって、英語に対する抵抗感がなくなって、大学ではさらに好きになって。

――英会話にも抵抗はなかったのですか?

会話は留学後も抵抗あります。留学したからといって必ずしも英語力が「ぐーんっ!!」と伸びるわけじゃないんですよね。多分度胸はつくと思うんですよ。留学後も英会話に多少苦手意識のある人が英語を伸ばすには、留学した後の積み重ねがおそらく大事だと思うんですよね。留学することによって日本では体験できない文化の差、たとえば日本における「フレンドシップ」と留学先の国の”Friendship”の範疇の違いとか、英語そのものに触れる機会が多いと思うんですよね。そうした日本における英語と現地における英語表現のギャップや生の英語を経験してはじめて、留学先の世界観や英語への理解が増し、さらにそれが英語を学ぶ際の英語に対する受容度を高めると思うんです。

今はテキストブックとかは全然使っていなく、友達とSkypeやチャットしたりしています。あと「こういうときどう言えばいいんだろう?」っていうのをネットですぐ調べたりしています。

留学前はテキストを使ったりしましたが、その他には「こういうとき、英語でどう言えばいいんだろう?」と思ったことをインターネットで調べたりとか、リスニングをしたりとか。英語だけを使う時間を自分で増やそうとしていました。学校から帰宅した ら、すぐにそのまま自分の部屋に行き英語の勉強をするとか英語のものを聴くとか。とにかく、英語を勉強中は、日本語で会話をすることから遠ざかりたかっ た。

――図書館はあまり使っていなかったですか?

そのときは図書館の有用性を認識していなくて。最近になって語学学習室とかあるのに気づきましたが、ああいうのはとてもいいと思います。

これは差し出がましいかもしれないんですけど、外国人と交流できる場所が少ないような気がして。もちろん国際交流サークル等の有用性は否定しませんが、図書館で学生を講師として英会話するイベントとかあったらいいんじゃないかなと。留学生も日本人と接してみたいらしいんですけど、日本人はシャイというか、reservedだから向こうも話しかけづらいみたいで。壁を取り払えるようなことができたらいいなと。

――それはいいアイディアですね。ところで授業料は交換留学なので必要なかったと思いますが、生活費などのお金はいくらくらいかかりましたか?

生活費は半年で小旅行を含めて70~80万くらいかかりました。クラーク財団の奨学金を利用したり、アルバイトをしたり。留学決めたのが直前だったので、両親からの援助もありました。

両親はすごく心配していましたが、向こうでFacebookに写真をアップロードすることで不安は和らいでいったみたいですね。