留学体験記 vol.1-3

――なにかカルチャーショックのようなものはありました?

留学中と留学直後はなかったんですよ。ただ留学から帰って1ヶ月過ぎた頃に「スウェーデン戻りたいなー」っていう想いになりましたね。

留学して思ったことが、留学直前の準備とか留学中のアドバイスの本やウェブサイトってあると思うんですけど、僕は全然そこは重要じゃないと思うんです。なぜかというと、度胸があればどうにかなっちゃうからなんです。

僕が一番重要だと思っているのは、留学後なんです。
それは今言ったカルチャーショックなんです。

留学すると、自分の人生が変わるほどの体験をすることも大いにあると思うんですよね。それは自分の人生に思いもよらなかった選択肢を提供してくれるんですよ。現実的なものだったり、現実とはかけはなれたものだったりする。自分を見つめなおす機会っていうのが与えられるんですけど、そこを上手く乗り切れるかっていうのが重要だと思うんですよ。僕はそこですごく悩んで。このまま日本にいていいのかとか、このまま留学前に漠然と思っていたように日本で就職して働いていくのがいいのかとか、留学前の自分が思いもよらなかったことで悩まされるというのがありました。大学生はいつ留学しても、自分の将来を考える時間と密接な関係が生まれてしまいます。3年後期で留学すると就職活動を意識しなくちゃならない。就活を意識しつつ、自分に生じた新たな変化と向き合わなくてはならない。そこを重点的にアドバイスされてる本とかってあまりないんじゃないかと思うんですよね。

だから、これから留学する人は、帰ってきたら自分になんらかの大きな変化が生じうるという覚悟、認識を持って留学したほうがいいと思います。その方が留学後にそういうのを経験したときの衝撃緩和になるかなと。変化に対して「こんなはずじゃなかった」ではなくて、「待ってましたっ」と思えること。

――2012年の1月に帰ってきて、今その戸惑いは乗り越えました?

大体克服しました。今は、自分の本当にやりたいことに向かって前進している感じです。留学したがゆえに生じた問題も、結局は留学して得たもの・・・英語力、度胸、勇気、インスピレーション等が、その問題を乗り越えて自分が成長することを支えてくれた。

――留学行って、いい企業に就職して、みたいな感じではないと。

そうですね。自分には、それ以外の道もあるのだということを認識しました。それもやっぱりカルチャーショックといいますか、留学がもたらした大きな変化によるところが非常に大きいと思います。

――どのようなことで悩んでいたのですか?

留学してから自分の中で生じたいろんな変化・問題で、たとえば、本気でスウェーデンに将来住みたいと思って、それに向けて行動していたこともあります。日本語教師として働くとか、いろんな道を模索していました。

今はいろいろ調べて、日本語教師といってもみんながみんななれるわけではなくて、収入も少ない。スウェーデンって教師ってお金全然もらえないんです。スーパーで働いているひとの方が収入が多いくらいと聞いたこともあります。今、教師の待遇って問題視されているんです。社会福祉・教育に熱心なイメージあるんですけど、教師と看護師の給料がすごく低いんです。日本文化は今もさらに浸透しつつあると思いますが、日本語教師の需要は年によって開きがあるようです。

余談ですが、向こうに住む道はいろいろあります。中でもスウェーデン人のボーイフレンドやガールフレンドを作って同棲ビザをとって住む方法はユニークだと思います。

 


――帰国後の話をしてもよいでしょうか? 外国の文化を体験したことで、日本についての見方は変わりましたか?

変わりましたね。社会福祉・社会保障がまったく違うので、ギャップにカルチャーショックというのはありました。向こうは社会福祉が手厚いので自分の好きなことをできるんですよ。ミュージシャンになりたければなればいいじゃない、熱中してて全然オッケー。プロゲーマーになりたければ、なればいいじゃない。自分の好きなことをできるほど、国が保護してくれるのはすごいことだなと。

あとスウェーデンでは出席率とかの一定の条件を満たせば、国から学生がお小遣いをもらえるんです。大学生の場合は月に最大10万円位もらえる。そのお金で留学する人もいます。また日本の奨学金みたいに卒業後すぐに返せというわけではない。

――帰国後の学生生活はどういったものですか?

授業においては、まだまだ先生が一方的に話しかける授業が多いなと思いました。スウェーデンでは僕が受けた授業は一つの授業に20人ほどで、ゼミみたいな感じでした。先生からの質問や学生間のやりとりが激しかったですね。

それからスウェーデンは実学志向で、職業と密接に結びついた実用的・専門的なことを習いますが、日本だと抽象的というか実用性に欠けるかなというのを違いとして感じました。

あと、日本の学生は勉学の合間にアルバイトをしますけど、向こうはそれはなくて、勉強だったら勉強。バイトだったらバイト。バイトは授業のないとき、休みだとか。向こうでは高校卒業後2年くらい仕事したり、旅に出たり、アルバイトをしたりする期間が設けられているので、勉強は勉強、仕事は仕事と分かれているのも違いかな。

――スウェーデンに戻りたいなという気持ちもありますか?

そうですね。しかし、今はスウェーデンに限らず、北欧全体に興味があります。日本の文化、アジアの文化は流行ってきているので、こうすればウケるんじゃないかなというのはけっこうあります。だから留学先でビジネスチャンスを見つけるというのも、それも留学する一つの楽しみかもしれませんね。