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日本統治時代の台湾の女性史の研究。著者の博士論文をまとめた本。纏足解放、女子教育、女性運動、「新女性」のライフスタイルなどが丹念に検討されている。個人的には女子教育を社会階層の視点から分析しているのがとても興味深かった。
たとえば、1920年代の新女性とその夫からなる核家族において、新女性は家事労働をさほど担わなかったというところが面白い。台湾の高等女学校では、近代的知識を伝授するとともに良妻賢母的な教育(料理・礼儀作法・伝統芸能)などを伝授されていたのだが、結婚後の日常生活において家事に関する技能はさほど生かされなかったようである。理由としては、台湾では都市中間層・サラリーマン層が形成されず、主婦というものの必要性がなかったこと、家政婦を雇うのが一般的だったため妻が家事を行う必要がなかったこと、などが挙げられている。
そのほかにも、高等女学校卒という肩書きが、台湾女性の階層的ステータスになっており、その中で特に日本語や日本文化がハイカルチャーのシンボルになっていたといったことも述べられている。台湾の高等女学校文化がどういう階層的機能をもっていたのかについても、いろいろ興味をそそられる。 |