留学体験記 vol.6-2

――FSPでは前半でラオスに、後半でシンガポールに滞在して様々なところを訪問されたと思うんですが、特に思い出に残っている訪問先はありますか?

シンガポールで旅行会社のJTBの方とお話させていただく機会があったんです。その方が法学部出身で、法学部の勉強というのはいろいろなところに適用可能だよというお話が印象に残っています。旅行会社での仕事は、その方は「お客様に対して商品である旅行プランをいかに魅力的なものに感じさせることができるかにかかっていて、つまり自分の話し方次第で商品の価値が変わってくるんだ」と仰っていました。そのための説得的な話し方を身に付けるのに、法学部で染みついた三段論法などが役に立ったと。つまり法律家にならなくても、法律や政治の勉強で身に付けた理論の作り方とか、一般的な教養というのは必ず生きるから、と。「君が法律家になりたいとか今の段階でやりたい仕事がないのであれば、常に視野を広く持っておけ。でも法律は真面目に勉強しろ」と言われて、そのような考え方もあるのかと思ったんですよね。

他の訪問先にいる方々はほとんどエキスパートで、世界銀行のカントリーマネージャーの女性の方、早稲田の研究所の理系の研究者の方、みなさん「その道のプロ」でした。でも僕が話を聞いた旅行会社の営業の方は、一般企業に入社して営業で海外を回っていた方でした。なので、もし海外で働きたいときに、必ずしも何かを極める必要があるわけではないと思えたんですよね。僕はそのとき「海外で働くって大変だな」と割と煮詰まっていたんですけど、その方は「法学部卒業して会社に入ったらこっちに配属されたけどなんとかやってるよ」と仰っていたので、身近に感じられたんですかね。「ああ、何かのエキスパートにならなくても、勉強したことを活かして立派に働くこともできるんだ。」って気が楽になったというか。海外で仕事をする上での一つのモデルとしてためになったというか。だからこそ僕は今こうやって、余裕ではないんですけど、焦らず自分のやりたいことを見定めつつ勉強できているので、ありがたい経験をさせていただきましたね。

――ラオスの印象を教えてください。

めちゃめちゃのんびりしていて、アバウト。あと優しいです。

ホテルで先輩の一人がエレベーターに閉じ込められたんです。人だかりができていて、どうしたどうしたと言っている。そういうとき日本のホテルだったら警備会社とか設備の会社とか、プロフェッショナルを呼んで対処するじゃないですか。でもラオスではフロントの人がわらわらでてきて、木の棒とかでガッガッってやってる。そういう適当さがおもしろかったですね~(笑)。何とか開いて脱出してましたけど。
それとか、僕、ホテルで寝ぼけてトイレに行くときに間違って物を壊してしまったんです。で、フロントの人に謝ったら「No Problem」と言われて終わりだった。優しい。

ま、でも危険な面はあります。プログラムに参加する前にも、薬物とか売春には気をつけろと言われました。夜歩いていると声をかけられたりします。そういう危ないところもあって、油断はできないですよね。

――シンガポールの印象を教えてください。

独裁政権をやっていたリー・クアンユーという政治家がいるんですが、彼の政策とか体制とかを前もって勉強して知っていたので、あの人がどんな街を作ったのかなという興味が元々ありました。実際訪れてみると、めっちゃ完成されていて、きれいで、秩序だって、経済力の強い国だった。本で読んだ政治家の政策が実際にどうなっているのかを見ることができてよかったです。日本とかアメリカと違って小さい国なのでそういうのが見えやすいんです。


――自由時間にはどんなことをして過ごしていましたか?

僕はご飯を食べに行ったり、リー・クアンユーの本を読んだりしてました。クラブにも1回行きましたけど、あんまり馴染めなかったです(笑)。

北大OBの方との懇親会では、「アフリカと国際政治という授業を受けて、部族の紛争とかにアメリカやソ連とかの国がどういう風に影響力を使っていたのか、国際政治が実際どんな風に動いているのかを見たかったので参加したんです」と言ったら、「やー、それはここではわからないんじゃない?」と言われて、その通りだなと(笑)。でもそれぞれの訪問先で聞ける話はためになるので、そのときにはもう「今回のFSPで国際政治がわからなくてもいいな」という気分になっていました。

――一緒に参加したメンバーはみなさんいろいろな目的意識をもって参加されていたと思いますが、印象をお聞かせ下さい。

やー、先輩方はとても頼りになる方々でした。何しろみなさんめちゃめちゃ個性的なんです。リーダーを務めてくださった先輩方はすごく頼りになりました。自分の研究を一生懸命やっている方もいて、自分の専門と訪問先で聞いた話を絡めて考えた上で質問をしていたんですよね。先輩たちを見て、僕も早く自分の専門ですと言えるものを勉強したいという気持ちになりました。留学に行って来た方の話を聞くと留学したいなという気持ちにもなりました。

あのとき1年生だったんですが、同学年の法学部の女の子2人はしゃべりもうまいし、英語もできるし、自分が何を勉強したいのかというのに敏感で、チャンスがあったら話しかけていて積極的ですごいなと。他にも尊敬できる同学年の人たちがいました。彼らは彼らなりに悩みはあったのかもしれませんが、僕から見れば英語も話せていたし、それぞれが自分のやりたいことを探しながら先輩や訪問先の方と積極的にコミュニケーションをとっていて、「俺も追いつきたいな。勢いで負けちゃってるな」という印象がありました。