留学体験記 vol.2-3


――なにかカルチャーショックみたいなものはありましたか?

見た目的なカルチャーショックは、ピアスとか刺青とかですかね。向こうではおしゃれとか自己主張でタトゥーを入れます。それはまったく普通のこと。それとか耳に大きなピアスをして、鼻や口にもピアスをしている人が大学の職員だったりしたのはびっくりしました。

――外国の文化を体験したことで、日本についての見方は変わりましたか?

留学して日本のいい面が見えましたね。みんなが礼儀正しくて、いろんなことがきちんとしている日本はいいなと思います。

ただ向こうの人はすごく楽しく働いていて。お客さんが来なければコーヒー飲んでいたり、喋っていたりする。それはみんな受け入れているから変なことではない。日本ではお客さんがいないときでもピシっと立っていたりしますよね。そういう部分は日本はもう少し緩めてもいいんじゃないかなとは思いますね。

それから、これは留学から帰ってきて強く思ったことなのですが、「日本はとても閉じているな」と感じました。カナダは「外国人がいることが当たり前」という国、むしろ「カナダ人って誰?」と思うくらいいろいろな国籍の人が混在し混ざり合った国だったということもあり、「外国人がいないことが当たり前」である日本に、帰ってきてすぐ違和感を感じました。標識もすべて日本語、外国人に話しかけられても英語は喋れないのが当たり前。是が非でもグローバル化して海外の文化をどんどん取り入れた方がいい、とは思いません。日本固有の文化は、世界に誇れるものですし、残していくべきだと思います。ただ、別の面でもう少し外に開いた国になってもいいのではないかなと。少なくとも、海外からの旅行客など、「日本人ではない人」には、ちょっと不親切すぎるかなと感じました。「礼儀正しい」が裏目に出ている部分がある、ということも同時に感じますね。

――留学時に役に立った本としてお持ちいただいた本「英文レター・Eメール・FAXオリジナル表現集」は英文メールの本ですね。

留学前や留学中にすごくメールをする機会が多いので。教授にアポイントメントを取るのもメールだし、事務に質問したりするのもメール。最初はどうやって書けばいいのかわからなかったので、たくさん例文が載っているこの本を参照していました。

――話を聞いていて、すごくまじめに勉強していた印象を受けました。

語学留学で行った子、交換留学で行った子両方と知り合いましたが、交換留学の人たちはすごく勉強面でやることがたくさんあって大変ということはありますね。語学留学が悪いとか楽だとかそういう話ではなくて。交換留学だと現地の人たちと対等に成績を競わなければならない。努力をしないと落ちてしまう。単位は4年生で行ったので必要はなかったのですが、やっぱり落ちるのってちょっと嫌ですよね。それ相応の努力はしなくてはならない。単位は全部取れました。文系の授業もギリギリで(笑)。

自分でもよくやったなとは思いますね。宿題の量が多くて、リーティングの量も多くて。「明後日までに40ページ読んできて~」とか、課題がものすごく多くて、それをこなすのが大変でした。

秋学期にとっていた1年生用の社会学の授業で、日本では社会学の授業を取ったことがなくて大変でした。最後に社会問題について論じるエッセイを書かなくてはならなかったのですが、何から書いてよいのかわからなくて。TAにアポとって時間をとってもらって、週に1回とか2回行って、相談しながら何とか書き上げることができました。

――自分の専攻以外の文系の授業にもチャレンジするのはすごいですね。

元々、文系の授業にも興味があったので。将来のことも考えてとっておこうかなと。

――遊ぶ時間はあまりなかったですか?

前期はすごく遊びました。バンフで友達になった子が12月で帰ってしまうので遊んでおかなきゃ!と。ロデオを観に行ったり、アルバータ大の部活のバスケやホッケーの試合を観に行ったり。友達が住んでいる寮のパーティーに行ったり、感謝祭にターキーを食べたり、ハロウィンにパブクルーズというパブを3件渡り歩くというのに行ったり、友達とクラブに行ったりとか。後期は逆に勉強に集中してメリハリがあってよかったかもしれません。


――帰国後の学生生活はどういったものですか?

今は院試の勉強をしています。元々学部卒のつもりはなくて、どこの大学院に進むかは決めない状態で留学に行っていまして。将来進みたい道が宇宙物理の研究ではなかったので、宇宙物理の院に進むか、別の院に進むかを悩んでいました。留学中にいろいろ経験したり、自分のつきたい職業についている人とコンタクトをとってみたりして、結論的には宇宙物理の大学院に進もうと思っています。

わたしが今思い描いているのは、理系、できれば宇宙系の研究者と一般の方々の間に立てるような仕事です。記者ですとか、編集ですとか、NHKのサイエンス番組に取り上げてもらえるように活動する研究機関の広報担当、サイエンス紙の編集、記者など。科学の最新の研究を、研究者ではないけれど興味を持っている方々に伝えるような仕事のできる職に就きたいなと思っています。

宇宙やっていると言うと、みんなすごく興味はあるんですよ。身近といえば身近だし、ロマンもあるし。興味のある人はすごくたくさんいるのに、研究者人口はものすごく少ない。知りたいと思っている人は多いのに、知れる手段がないのを感じていて。いろいろなことを人に伝えるのも元々好きなので、そういう立場になれたらいいなと。

――留学の経験は今の自分にどう生きていますか?

いろいろな小さな部分で変わったかなというところはあって。例えば、臆せずに人に話しかけるとか。それとか向こうで会った人たちがニコニコしている人だったんですよね。だから笑顔でいられる自分でありたいなという内面の変化もあります。

英語力が伸びたのはもちろん、英語の重要性も改めて感じました。今まで喋れなかった人、意見を聞けなかった人の意見を直接聞くことができて、議論することができる。それは自分の世界を拡げてくれる経験だと思うし、すごく楽しいんですよね。今まで喋れなかった人と喋ることで、新たなことを知ることができる。

理系留学ってまだまだ少ないんですよ。でも理系こそ必要なんじゃないかなって思うようになって。研究者は世界中にいるわけで、論文も英語だし、教科書も英語のものが多いし。英語と関わっていかなければならないし、英語ができることで、先ほどと同様、新しい人と関わることができる。英語の大切さを学びましたね。

あとは、先ほどもお話ししたような度胸と、自分の言いたいことが上手く伝えられなくてもへこたれない根性ですかね(笑)。度胸を出して話しかけると、会話力もアップしますし、いいことがつながっていく。

――留学して英語力はアップしました? 好きな英語のフレーズってありますか?

リスニング力はかなり上がったと思います。スピーキングはわからないです。ネイティブ位のスピードではまだまだ話せないですけど、意思を伝えるくらいはできるようになりました。

一番上がったと思うのはリスニングですね。いつだかのアカデミー賞をやっていたとき、ちょうど飛行機に乗って最初から最後まで観ていたんです。字幕がなくてもだいたい全部わかったので、リスニング上がってる!と思いました。

帰国後はラジオを聴いてるのと、9月くらいから国際支援課で留学生の受入ボランティアをやる予定です。自分が留学したときすごく助けられたので。

英語お決まりのフレーズ、という訳ではないのですが、”See you someday, somewhere in the world.”というすてきなお別れの言葉がありました。カナダで出会った友人たちは世界各国から来ている人たちで、次に会うのはいつなのか、はたまた会えるのかすら分かりませんが、かならずこう言ってお別れをしました。いつか、世界のどこかでまた会おう、と言った言葉が、近い将来現実になるといいなと思っています。