留学体験記 vol.2-2

――留学中の話を伺います。岸田さんが留学していたアルバータ大は学生数は37,000人を超え、世界約133カ国から2,500人の留学生を受け入れているということで、かなり大規模でまた名門の大学なんですね。授業の様子はどうでしたか?

授業は学年によって違っていて。4年生用の授業は10~20人以下の単位でのディスカッション形式。300番台と呼ばれる3年生用は30人くらいの小規模なレクチャー形式。下に行くほど大きくなるイメージがあって、1年生用の授業は400人くらい入る大講堂での講義形式でした。また、他にもラボと呼ばれる実験の授業もたくさんありました。わたしは3年生用の授業をメインでとっていました。

Astronomyについては、自分の専門ということもあり、数式を追えればいいという部分も多かったのでそこまで苦労はしなかったです。苦労したのは興味があってとっていた文系の授業で、80分授業でスライドは4~5枚しか使わなくて、ずっと先生のトーク。そして録音禁止。わたしはパソコンでノートを取っていたのですが、大変でしたね。それのおかげでリスニングが上がったかもしれません。

――授業のレベルとしては日本とそこまで違わない?

文系の授業は日本ではそもそも取っていなくて、また宇宙物理は学部生用の授業が北大にはないので比較が難しいんですけど、そこまで高度なことをやっているという印象はなかったです。

――周りの学生は?

すごく勉強しています。親ではなく自分がお金を出してとっている授業だということもあるし、成績やとった学位がそのまま職につながるんです。そこのパイプが日本よりもすごく太くて。だからすごく勉強していますね。

――アルバータ大は図書館の評価も高いらしいのですが、図書館は利用しましたか?

はい。キャンパスの中に文系用、理系用、学部の図書館が点在していて、みんな図書館は使っています。私も理系用の図書館を使っていて、1階はおしゃべりできて食べてもいいスペースで、2階からはサイレントルームだとか、グループ学習室があったりなど、たくさん勉強できるスペースがありましたね。参考資料もものすごい数が揃っていました。

――エドモントンでの暮らしはどうでしたか?

寮に入れなかったので、シェアハウスで暮らしていました。シェアハウスやルームメイトを探すウェブサイトがあるんですよね。向こうでは学生がシェアハウスに住む、ルームシェアをするのは基本となっているんです。

始め寮に住むつもりで日本から申し込んでいたんですが返事がなくて。何度かメールしたんですが、まだ選考中だという返信しかこなくて。結局住む場所が決まらないまま日本を出発したんです。

8月中は留学生用の事前集中講義が2週間あったので、その期間はホステルをとっていたんですけど、9月からの家はなく。事務室に直接行ってもまだ選考中だからと言われて。ギリギリになって、留学センターに行って相談したら、担当の人が電話してくれて。そしたら「あなた落ちてるわよー」って(笑)。そこから焦って探しました。

普通のシェアハウスとはちょっと違って、大家さんと一緒に住んでいるんです。3人のルームメイトのほか、地下にカップルが住んでいてけっこう大所帯。大家さんがすごく優しい人だったので、寮よりもよかったかもしれません。エッセイの英語のチェックをお願いしたり、たくさん助けてもらいました。

――お友達はすぐにできましたか?

はい、すぐに。事前集中講義はノートテイキングや論文の書き方などを教えてくれてすごくためになったんですけど、「友達をつくろう」という時間もあって。そこで出会った子たちとは最後まで仲良くしていましたね。

ただ交換留学生ってあまりいないんですよね、日本人では語学留学の人が多くて。だから教室には日本人一人ということもあり、最初から、前一緒の授業をとっていた子達同士で固まって座っていることも多く、授業では友達は作りづらかったかもしれないです。隣に座った一人二人と仲良くなって、その子と常に授業を受けるという感じでしたね。
後はいろいろなレクリエーションとかイベントに参加して友達を作ろうとしていましたね。スポーツって言葉が拙くてもできるので。


学内のバレーボール大会にて(岸田さん提供)

これはカナダ料理のプーティンです。

プーティンの量の多さにびっくり(岸田さん提供)

ポテトにグレイビーソースとチーズと、これは豚肉を追加したやつですね。これで一人分で量多いよって驚いている写真です。おいしいですけど、飽きます(笑)。
ほかにカナダの食べ物にはアルバータ牛というブランド牛があります。あと東の方、ケベックだとウサギ料理というのもあります。ラビットパイというパイ生地にお肉とか野菜が包まれているものを私は食べました。案外ツナみたいで、臭みもなくあっさりしています。

これはバンフっていうロッキー山脈の入り口の国立公園です。

バンフ国立公園でのハイキング(岸田さん提供)

大学のビジネス学部に交換留学生用のスチューデントアソシエーションがあるんですね。そこでは交換留学生用のイベントをしていて、そこに飛び込みで参加してきました。ジョンストンキャニオンっていう渓谷で、みんなでハイキングをしたときの写真です。一人で参加したのでその場で友達を作らなきゃならなかったんですが、このときできた友達と今でも続いている感じです。行ってよかったなと思いますね。

――前に話を伺った方も、英語よりも度胸が大事と仰っていました。

本当にその通りだと思います。日本人は英語はできないから話に入れないんじゃないか、イベントに行っても仲間に入れんじゃないかという考えになりがちだと思います。勇気を出して行くというのは、わたしたちにとって難しいと思うんですけど、向こうでは喋りさえすれば聞いてくれるし、ちょっと入れてといえば仲間外れにはされない。初対面だからということにこだわりはなく受け入れてくれるので。

カナダのお国柄なのかわからないんですけど、私たちが拙い英語で話しても、気を使ってそれを拾って膨らませてくれるんです。英語に不安があっても、まず喋ってみる、とにかく喋ってみるのが大事だと思いますね。

日本人だからという差別もなかったですね。カナダだからなのか、いろいろな宗教・人種の方がいるのが当たり前でした。一回だけ「Chinese!」って言われたことはありますけど(笑)。

冬学期にボランティアをやったんです。理学部の屋上に天文台というか望遠鏡があるんですが、そこで週に一回Public Observingというイベントをやっていて、そのボランティアを募集していたのでやってみました。週に1回、1時間だけなんですけど、けっこう人気の イベントで家族連れとかお年寄りのご夫婦とか学生やスタッフも来て、月や木星などの季節の天体を観るイベントでした。望遠鏡を設置して、質問されたら答えて、これがすごく勉強になりましたね。ボランティア同士で他の国の天文をやっている学生との交流もあったのも勉強になりました。

アルバータ大理学部の望遠鏡(岸田さん提供)

――「飛び込んでみる」ということをたくさんやってきたんですね。

わたしすごく人見知りで。留学に行ってちょっと変わったかもしれませんが、留学前はかなり人見知りで仲良くなるのに時間がかかるタイプだったんです。初めてサークルに行くとか、できあがっている団体に飛び込むとかそうのがすごく嫌いで。でも、飛び込んで、もし嫌な思いをしてもそれも勉強になるし、実際はしなかったですけど。しなければそれはそれですごく楽しいということがわかって。知らない人だからとか、出来上がっているグループだからということを気にせずに、飛び込もうと留学中は思っていました。それで得たものは多かったですね。