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推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
日本語研究の面白さに触れる
ヴァーチャル日本語役割語の謎 / 金水敏. - 岩波書店, 2003
北大ではどこにある?
最近は学問研究、あるいは学術研究の対象化のペースが極度に速くなっていて、ついこの間「オネエ言葉」という表現が使われ出したと思ったらもうオネエ言葉の研究書が出ている、といった具合である。この本は、様々な職業・性別・時代等々に応じて現れる固有の(と見える)表現を「役割語」という概念によって分析することで見えてくる日本語の姿を明らかにしたものであるが、古今東西の文学作品からマンガ、はては『スター・ウォーズ』から『ハリー・ポッター』まで題材にしてまさに縦横無尽に切りまくる、読み応えのある一冊となっている。日本語に興味はあるが難しそうで... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
よりよい働き方をどう実現するか
個人を幸福にしない日本の組織 / 太田肇. - 新潮社, 2016
北大ではどこにある?
この本は、標題だけを見るとかつてのカレル・ヴァン・ウォルフレンの『人間を幸福にしない日本というシステム』の二番煎じのように見えてしまうが、内容は組織論あるいは経営制度論の観点から見た日本人の働き方/働かせ方の批判的考察である。これを読むと、企業も学校も芸能界も自治体も町内会も、およそ人が集まって作られる目的集団がいかに機能不全を起こしやすいかがよく分かる。筆者はその点について、かなり大胆な処方箋を提示してくれているが、欲を言えばもう少し突っ込んで対策を書いてくれるとより面白くなったと思う。自分の将来の仕事のあり方として会社勤め... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
多文化社会とは?
多文化教育の研究ーひと、ことば、つながりー / 朝倉征夫. - 学文社, 2003
北大ではどこにある?
「多文化社会」や「異文化(間)コミュニケーション」というのは今や大学教育に於ける”流行語”と言ってもいいと思うのだが、他でもないこの北大で「多文化交流科目」を担当していると、学生の殆どが(場合によっては教員も)「多文化」あるいは「異文化」ということを”外国人(非日本人)との交流”だと思い込んでいる実情が見られ、そのたびになんとかしなければ、と思ってしまう。
この本は三部から成るが、第一部の総論を除くと、半分を占める第二部は外国(人)に関する「多文化」状況ではなく、この日本国内に於いて文化的背景を異にする人々に関する考察である... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
西洋哲学の基本の「き」
方法序説 / ルネ・デカルト. - 岩波書店, 1997
北大ではどこにある?
「われ考える、ゆえにわれあり」や「明晰判明」、あるいは”方法的懐疑”といったことばであまりにも有名な、西洋(近世)哲学の始まりを飾る書である。哲学書というと初めから難しいものと考えて敬遠してしまう向きもあるかもしれない-そのような書物があることを否定はしない-が、この本は、きちんと読んでいけばそれなりに分かるように書かれているものである、同時にまた、西洋近世~近現代の哲学が多くの考えるべき課題をそこからくみ取っていった、西洋の知の基本をなす書物でもある。そのようなものを読んでおくことは、洋の東西を問わず学問を研究しようとするも... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
ことばはどのように情報を伝えるのか?
文法と談話の接点-日本語の談話における主題展開機能の研究- / 砂川有里子. - くろしお出版, 2005
北大ではどこにある?
この本は、本格的な専門書であるが、丹念に読んでいけばきちんと分かるように書かれた本であり、日本語の働き方について新しい知見を与えてくれるものである。専門的に言えば、談話文法を機能言語学的に考察したものであるが、その内容を噛み砕いて言うならば、日本語の中でどのように情報が情報として現れそれが伝えられていくか、そのメカニズムを明らかにしたものである。将来日本語について研究してみたいと考えている人や、既に談話文法に関心のある人に広く一読を勧めたい。 -
推薦者 : 河合 剛 (メディア・コミュニケーション研究院)
敵を知り己を知れば、のうち後者
The Inner Game of Tennis: The Classic Guide to the Mental Side of Peak Performance / W. Timothy Gallwey. - Random House Trade Paperbacks, 1997
北大ではどこにある?
題名の「テニス」を無視していただきたい。
いまふうに言えば「メンタルを鍛える」のが本書の目的。
己を知り、己を信ずる。運動はもとより、楽器演奏、学会発表、そのほか、練習を重ねて、いざ本番、力を出し切るための精神一到。その手段が、ときに神秘的に、ときに論理的に記されている。
一般に、日本のコーチングは禁止命令が多い。「やめたら負けだ」「そんな態度じゃダメだ」「また間違えた」「何度いったらわかるんだ」
アメリカも臭い精神論がちゃんとあるのだが、一般に見かけはポジティブ。「あそこが理想だ。ここが現在地だ。勝つまで続けるぞ」
本書から、ア... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
「分からなさ」を味わい、楽しむ
哲学とは何か / ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ. - 河出書房新社, 1997
北大ではどこにある?
この推薦文は、「本は脳を育てる」の趣旨には反するが、たまにはこういった推薦もあっていいのではないかと思い、ここに挙げることにした。
哲学の本を数多く読んできたが、これほど分からない本を読んだことはない。普通は分からなければなんとか分かろうと努力し、それなりに考えながら読むものであるが、この本は読んでも読んでも分からず、そのうちにその「分からなさ」が心地よく思えてきさえする。読んでいる自分が「分からなさ」という感覚に身をゆだね、それを楽しむ境地(?)に至った気分になってくるのである。それは著者両名の巧妙な仕掛けにあり、著者たちはお... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
留学したい人は必読!
バイカルチャルになれる人・なれない人-アメリカで変わる日本人- / 本田正文. - 丸善, 1999
北大ではどこにある?
この本は、大きく分けると著者である本田氏がアメリカ留学の中で体験した異文化適応の過程の紹介と、専門とする第二言語習得理論(から見たバイリンガリズム)の概説をバイカルチャルという観点で融合させていこうとしたものである。こう書くとなにやら難しそうな本のようであるが、そのようなことはない。むしろ、本田氏が実際にアメリカで何に苦労しそこからどのような「智慧」を見いだして異文化での生活を成り立たせていったかが、時にユーモアを交えながら成長段階を追って書かれている。
これから海外留学を目指す人には色々な希望と不安があると思うが、留学生活... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
世界の見方を深めるために
現象学という思考-<自明なもの>の知へ- / 田口茂. - 筑摩書房, 2014
北大ではどこにある?
一昨年度から「多文化交流科目」という授業を始め、一貫して異文化理解、あるいは異文化交流の問題を扱ってきた。難しいのは、異文化理解に関わる理論と異文化交流の実践を教室の内外でどうつなぐかということであり、このことにずっと悩んできた。今年になってからふと「現象学」の考え方からこの問題にアプローチしてはどうだろうかと思ってこの本を読んでみたら、まさに第四章・第五章を中心として示唆に富む記述が満ちていてありがたい思いがした。こうしたアプローチは、僕の曖昧な記憶では確かクラウス・ヘルトが手をつけ、日本では小川侃先生(元京都大学)が触れて... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
「思想劇」としての般若心経
真釈般若心経 / 宮坂宥洪. - 角川書店, 2004
北大ではどこにある?
この本の表題は書き間違いではない。「新釈」ではなく「真釈」、つまり著者は「俺の解釈こそ本物だ!」と宣言しているわけである。もの凄い自信である。仏教学が専門ではない僕には、その「真」の度合いは測れないが、内容は確かに説得力に富む。それはひとえに、サンスクリット原典を文法的に厳密にたどりながら漢訳般若心経の問題点を的確に指摘し「四階の建物の比喩」という説明の枠組みを駆使して読み解いていく著者の態度からもたらされるものである。それだけに「あとがき」に書かれた、従来の般若心経解説書やそれらの執筆者に対する批判は秋霜烈日を極める。著者は... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
日本語教育史研究の金字塔、ついに成る!
戦時期における日本語・日本語教育論の諸相-日本言語文化政策論序説- / 田中寛. - ひつじ書房, 2015
北大ではどこにある?
長年にわたって、日本語教育史、日本語教育政策の研究に携わってこられた著者の業績の集大成とも言える大著である。副題に「序説」とあるが、決して「序説」ではなく、日本語教育の過去の歴史を批判的に受け止め、これと対決しながら日本語教育のあるべき姿を真摯に問うたその解答と言うべき著作である。今後の日本語教育史研究、日本語教育政策研究は、本書と、これに先行した関正昭『日本語教育史研究序説』(スリーエーネットワーク)を不可欠の必読書として出発しなければならない。まさに今、日本語教育史研究の“新しい”歴史が始まる。本書はその幕開けとなるものと... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
「まとも」な議論をするために
反論の技術-その意義と訓練方法- / 香西秀信. - 明治書院, 1995
北大ではどこにある?
この本は実は一時期僕の日本語の授業のタネ本であった。どのようにしたら留学生に、与えた課題とかみ合う文章(議論)を書けるように指導できるのか困っていたときにこの本に出会って、その説得力ある書きぶりと豊富な実例に蒙を啓かれる思いがしたものである。(ただ、正直、この本の助けを借りて行った授業実践に対する留学生の反応は賛否真っ二つであった。)
書名に「技術」と書いてあるが、所謂ハウツー本の域を超えて「反論する」ということが学問にとっていかに重要な知的営為かを詳しく説いており、読み物としてもおもしろい。この本に書いてある「訓練方法」を実践... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
ちょっと残念な、しかし面白い対談
対論 言語学が輝いていた時代 / 鈴木孝夫・田中克彦. - 岩波書店, 2008
北大ではどこにある?
鈴木孝夫と田中克彦のお二人は、特に日本語に於ける漢字の使用を巡ってそれぞれの著書の中でまったく反対の立場を表明してきた。この本ではそのあたりを巡って激論が交わされるのかと思いきや、お二人とも妙におとなしくなってしまっていて(よく言えば紳士的なのかもしれないが)日頃の舌鋒の鋭さはどこへやら、落としどころをうまく見つけて話が進んでしまっている。これはちょっと読者の期待を裏切りすぎるんじゃないのかなぁ、と思う。日本語教師の僕としては、日本語教育に好意的な鈴木氏と、(今の)日本語教育に批判的な田中氏の論争も期待したのだが、それはタイトルが... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
日本の未来を考える視点はどこにあるのか
日本 / 姜尚中・中島岳志. - 河出書房新社, 2011
北大ではどこにある?
著者二人の対談であるこの本は、僕なりの理解でまとめると「国家権力に絡め取られない自分のあり方をどう構築するか」という問題意識で貫かれており、それを、過去の歴史的文脈も振り返りながら徹底して論じようとしたものである。その基盤をなす発想は「パトリ」(故郷、郷土、あるいは根拠地といったもの)であり、熊本出身の在日韓国人二世である姜氏と大阪出身の中島先生がそれぞれの「パトリ」を意識しつつ、国家権力、あるいはその表象としての「東京」を挟撃するといった展開となっている。読者はそれぞれの「パトリ」に応じてこの対談にさまざまな共感や反発を感じ... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
サンデルとの対話は成功したのか?
日本生まれの「正義論」-サンデル「正義論」に欠けているもの- / 川本兼. - 明石書店, 2011
北大ではどこにある?
著者は、サンデルの正義論が結局はアメリカの「力」の論理によるものではないかという疑問を呈するところから始めて、サンデルの正義論に対する対抗思想としての正義論を生み出そうとした。その懸命な思索の成果がこの本である。著者の思想的格闘が成功したかどうかは、読者それぞれが判定されたい。その中で読者自身が自分なりに正義について考えることをきっと始めているだろう。
ネタバレになるかもしれないが、僕の読後感としては著者は正面からサンデルの思想に切り込もうとしているがところどころで自分に不都合な証拠を-忘れているのか意図的にかは分からないが-出... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
日本人の幸福感・運命主義・根性主義
日本人の心理 / 南博. - 岩波書店, 1956
北大ではどこにある?
社会心理学者・南博先生による日本人の心理的特性を扱った本。初版は1953年と結構昔のものであるが、個人的には今でも十分読み応えのあるものだと感じた。江戸時代の各種養生書・処世書などをベースとしつつ、出版の処世書(今でいう自己啓発本か?)などからも引用をし、日本人の心理を整理している。日本人論の初期作品と言っていいかもしれない。もっとも日本人論と言っても、出版された当時の社会状況を反映してか、多くの日本人論に見られるような日本の素晴らしさを唱導する論調は見られない。むしろ軍隊や戦争、日本の権威主義的人間関係などを鋭く批判するというスタン... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
倫理観を高めれば世の中は良くなるのか?
心でっかちな日本人 / 山岸俊男. - ちくま書房, 2010
北大ではどこにある?
著名な社会学者・社会心理学者の山岸俊男先生の著作。
「いじめが起こるのは、子供たちの心が荒んでいるからだ。だから道徳心や倫理観を育むのが大切だ」といったタイプの、社会問題の発生要因を人びとの心理に同定し、その心理を変容させることが社会問題の抑止につながるのは、本当なのか?という問題設定から始まる。おおよその結論をまとめてしまうと、「人々はそうしたいからそうしているのではなく、そうせざるを得ない状況があるからそうしているのである。そうせざるを得ない状況を変えれば人々の行動は変わるのではないか?」というところである。このような著者の... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
人は「自分の力で考えること」はできるか?人は「意識して行動」できるのか?
「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤 / 下條信輔. - 講談社, 1999
北大ではどこにある?
認知心理学者・神経心理学者の下條信輔先生による概説書。非常に高度な内容であるが、分かりやすく説明されていると思われる。
本書のツボを私なりに一言でまとめてしまうと、「人は、自らの意識によって主体的に行動していると実感するが、必ずしも主体的に行っているわけではない。意識して行っていると思った行動が実は無意識のうちに始まっていたり、いろいろな錯誤や認知エラーが含まれていたりする」といったとこになるだろうか。こうしたことが、様々な生理学的・脳科学的実験の知見を踏まえながら説明されている。「主体性」「自由意思」「自分の考えで」といった実... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
「近代」は人をいかに突き動かしたか
日本近代思想の相貌-近代的「知」を問いただす- / 綱澤満昭. - 晃洋書房, 2001
北大ではどこにある?
この本の表題には「日本近代思想」とあるけれども、おなじみの人々、例えば福沢諭吉や内村鑑三、新渡戸稲造、そして西田幾多郎や田邊元や和辻哲郎などはまったく主題化されていない(叙述の一部に僅かながら登場することはあるが)。著者は9人の人物を取り上げ、それらの人々の姿を描き出すことで「近代」という時代を捉え返しさらにそれらの捉え返しが「現代」、あるいは戦後日本に何をもたらし得るか、ということを問題にする。9人の人物は、宮沢賢治と長谷川如是閑を除けば今日のアカデミックな思想史研究では殆ど顧みられることがない人々ではあるが、それだけに日本の「... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
異質な他者との共存は可能か
地球(テラ)へ… (全3巻) / 竹宮惠子. - 中央公論新社, 1995
北大ではどこにある?
この作品は日本のSF漫画史上に語り継がれるべき大傑作である。それがこの北海道大学附属図書館に置いてあることについて、北大附属図書館スタッフの見識を僕は高く評価したい。単に傑作漫画を置いているからということではなく、この漫画が突きつけてくるあまりにも重い問いが、今日の我々にとって何よりも考え抜かれ、かつ実践されねばならない問いだからである。
グローバル化した社会で異文化としての他者と向き合ってそこで、関わりを深めていこうとするか相手を拒絶するかの選択に迫られることは現代では以前よりも遙かに頻繁にかつ容易に起こりえる。この漫画は、コン... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
図書館の達人になる!
図書館のプロが教える「調べるコツ」 : 誰でも使えるレファレンス・サービス事例集 / 浅野高史とかながわレファレンス探検隊. - 柏書房, 2006
北大ではどこにある?
図書館を、「本を借りる」ところ、「勉強する」ところだと思っている学生はおそらく今では少ないと思うけれども、では、図書館を有効に使えている学生(教員も)がいるかというと、どのように自分たちの勉強やそれ以外の活動に役立つのかまだぼんやりとしたイメージしか抱けない学生も多いと思う。そんなときこの本は役に立つ。図書館が、”お勉強”のためだけの建物ではなくわくわくするような=知的に興奮できる世界だ、ということがわかるだろう。読んだらきっとあなたも図書館に行きたくなる! -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
インタビュー調査に必読の一冊
聞きとりの作法 / 小池和男. - 東洋経済新報社, 2000
北大ではどこにある?
研究の必要からインタビュー調査をすることになって、そのためのノウハウが書いてある本を数冊読んだが、その中で最も役に立ったのがこの本である。
内容は著者の小池氏が専門とする経済学の、主として職場の技術移転を例にとって書かれているが、その分インタビューの実際に関する記述が非常に豊富でわかりやすい。また、インタビューデータからどのように読み取りを行ったらいいかの例やインタビューの前後に行っておくべきことなども書かれていて、将来、聞きとり調査が必要となる分野で研究しようと考えている学生にとっては必読の一冊である。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
ブームが沈静化した今こそ冷静に読んでみよう
これからの「正義」の話をしよう-いまを生き延びるための哲学- / マイケル・サンデル. - 早川書房, 2010
北大ではどこにある?
言わずと知れた、「NHK白熱教室」のネタもととなった本である。テレビでのサンデルの講義に独特のスタイルがあったこともあって売れに売れたらしい(僕の持っているのは第78版!)が、こうした本はブームが去った今こそ落ち着いて読んでその内実を判断する必要があるだろう。
サンデルは、現代世界のアクチュアルな問題を古典から現代までの政治思想と結びつけて論じながら彼なりの(=コミュニタリアンとしての)哲学を開陳していくが、その解決が妥当であるかどうかは読者が今一度批判の目をもって考えるに値するものである。
今は文庫版も出て読みやすくなっているので、... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
哲学書を読み解く技術とは
『純粋理性批判』を噛み砕く / 中島義道. - 講談社, 2010
北大ではどこにある?
中島義道氏は、いろいろなところで一人っきりで哲学書を読むことの危うさを論じ、ご自身の「哲学塾カント」のホームページでも「哲学書を正確に読み解くには独特の技術が必要で、いい加減なわかり方ほど危険なことはありません。」と書いている。その中島氏がカント『純粋理性批判』の「アンチノミー論」を中心に据えてカントの-そしておそらくは中島氏の考える、「哲学書」の-読み方を実践したのが本書である。
この本は、難解な哲学書である(と思われている)『純粋理性批判』について意外にわかりやすいことを書いているのだ、というスタンスからカントの行論を追いつ... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
台湾の「日本語世代」「日本語人」の語り
台湾人生 (DVD) / 酒井充子. - 協映, 2008
北大ではどこにある?
戦前の日本統治時代に生まれ、日本統治時代の教育を受けたいわゆる「日本語世代」「日本語人」と言われる人々へのインタビューを収録したドキュメンタリー作品。「どのようなライフコースを歩んできたのか」「日本統治時代にどのような暮らしを送って何を考えてきたのか」「戦後どのような人生を歩んできたのか」など、興味深い話が収録されています。台湾、植民地経験に関心のある人のみならず、社会学・心理学・文化人類学などにおける質的研究・定性的研究に関心のある人にも大いに参考になる作品ではないかと思います。本作品をもとにしたルポルタージュも出版されてい... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
より学術的な台湾の入門書
もっと知りたい台湾(第2版) / 若林正丈編. - 弘文堂, 1998
北大ではどこにある?
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推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
人びとの日常から台湾を学ぶ
暮らしがわかるアジア読本「台湾」 / 笠原政治, 植野弘子編. - 河出書房新社, 1995
北大ではどこにある?
河出書房新社のアジア地域研究シリーズの1冊。政治・経済・教育・文化・宗教・日台関係、言語など様々なトピックを紹介しています。「暮らしがわかる」とあるように日常のひとコマや具体的な人々の話を中心に説明していますので、台湾の臨場感が伝わります。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
文化行動を理解するために
文化行動の社会心理学―文化を生きる人間のこころと行動 (シリーズ 21世紀の社会心理学3) / 金児曉嗣, 結城雅樹編集. - 北大路書房, 2005
北大ではどこにある?
1990年以降、飛躍的に発展した文化心理学の知見を特に社会心理学と関わるトピックに関連して説明したテキスト。宗教・法律・医療・歴史・神話・福祉・人間観など多面的領域の「文化」を様々な角度からとらえています。各章の参考文献も豊富で発展的学習にも最適です。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
タイの僧侶についての重厚な実証研究
東北タイの開発僧─宗教と社会貢献 / 櫻井義秀. - 梓出版, 2008
北大ではどこにある?
タイにおいて教育や地域開発、福祉事業などの各種開発を行ういわゆる「開発僧」と呼ばれる僧侶たちへの丹念な聞き取り調査に基づいた実証的な宗教研究・地域研究。「宗教と社会貢献」「タイ研究の動向」「南部タイの暴力」などの大きな議論を踏まえたうえで、僧侶の実証研究が紹介される。
実証研究の最大の目玉は、東北タイの三地点、約100名を超える僧侶の比較研究である。「開発僧」として著名な僧侶のみならず「一般的」な僧侶なども検討していくことで、地域社会における僧侶の役割、「開発僧」と「一般的」な僧侶の連続性、「開発僧」が「開発僧」たる上での政治的コン... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
社会心理学の重要テキスト
社会心理学 / 池田謙一 [ほか] . - 有斐閣, 2010
北大ではどこにある?
近年刊行された社会心理学のテキストの中で質量共にとても充実したテキストです。最新の研究成果と豊富な事例に基づながら社会心理学の全体像がつかめるようになっています。第1部ではミクロレベル(認知、推論、感情、自己など)、第2部ではメゾレベル(コミュニケーション、対人関係など)、第3部ではマクロレベル(心の文化差、集団間関係、組織、地域など)が扱われます。
新入生から大学院生まで長く参照できる一冊です。社会心理学に限らず、社会学・人類学・経営学に関心のある人にも目を通していただきたいです。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
日本も案外、宗教的か?
宗教と社会のフロンティア―宗教社会学からみる現代日本 / 高橋典史, 塚田穂高, 岡本亮輔編著. - 勁草書房, 2012
北大ではどこにある?
若手の研究者らによる宗教社会学の入門テキスト。
いわゆる宗教社会学の古典を開設するタイプのテキストではなく、現代日本において宗教が関係する社会現象をわかりやすく解説するタイプのテキストです。トピックごとにオムニバス形式にしてあります。参考文献や宗教調査の方法なども詳しく書かれていますので、発展的な学習もできます。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
日本人は日本的なのか?何を以て日本的と言えるのか?
日本人論の方程式 / 杉本良夫, ロス・マオア. - 筑摩書房, 1995
北大ではどこにある?
「日本人論」というものがしばしば人口に膾炙することがあります。古くは新渡戸稲造『武士道』、最近では藤原雅彦『国家の品格』といったところでしょうか。そうした書籍では、日本国内の格言、歴史上の人物の言動録、著者の国内外での体験などをエビデンスとして「日本人は〇〇である」とされることがしばしばあります。そうしたエビデンスの使い方によって「本当に日本人は日本的である」と言っていいのか?と疑問を呈したのが本書です。
社会科学方法論としても重要な書籍ですが、日本文化や日本と海外の比較に関心がある人も一度目を通してみるといろいろ頭のトレーニン... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
計量社会学を学ぶ!
社会の見方、測り方─計量社会学への招待 / 与謝野有紀 [ほか] 編集. - 勁草書房, 2006
北大ではどこにある?
統計的な手法をもちいて社会現象を分析する(計量社会学)ためのテキスト兼ハンドブック。
紹介されている手法としては記述統計、相関分析、クロス表分析、平均値の比較、重回帰分析、パス解析、共分散構造分析、マルチレベル分析、ネットワーク分析、因子分析、主成分分析、ブール代数分析など基礎から応用まで非常に幅広い手法が紹介されています。しかも単に手法を説明するだけではなく、具体的な社会現象(自殺、都市化、階層など)をそれらの手法で分析するというスタイルで書かれています。そのため統計的手法で社会現象を分析するという計量社会学の醍醐味がいかんな... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
計量社会意識論を学ぶために
現代日本の「社会の心」―計量社会意識論 / 吉川徹. - 有斐閣 , 2014
北大ではどこにある?
同著者による『階層・教育と社会意識の形成─社会意識論の磁界』の流れを汲む著作。調査票調査データを用いて統計的に人々の心を分析するやり方やその発送法などがわかりやく書かれています。本書では特に複数時点のデータを使って「社会の心」の変遷を明らかにすることに力点がおかれています。現代的なトピックである環境意識・健康志向・消費生活なども扱われています。社会学向けの本ですが、社会心理学や哲学、文化論に関心のある人も是非手に取ってみてください。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
気軽に読める現代台湾の概説書
現代台湾を知るための60章(第2版) / 亜洲奈みづほ. - 明石書店, 2012
北大ではどこにある?
明石書店の地域研究シリーズの1冊。1章4~6ページの分量で、政治・経済・教育・文化・宗教・日台関係など様々なトピックを60章で紹介しています。内容も現代台湾に関する読み切り型のエッセイ・ルポルタージュ風のものが多いため、興味をもった箇所から気軽に読むことができます。現代台湾に興味をもったらまずは本書を手に取ってみると良いでしょう。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
人びとの価値観や考え方に格差はあるのか?
階層化する社会意識―職業とパーソナリティの計量社会学 / 吉川徹編著. - 勁草書房, 2007
北大ではどこにある?
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推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
エビデンスに基づく宗教の国際比較研究
Sacred and Secular :Religion and Politics Worldlwide (2nd ed) / Pippa Norris and Ronald Inglehart. - Cambridge University Press, 2011
北大ではどこにある?
中級から上級向けの本(英語)。世界最大規模の国際比較価値観調査データの1つであるWorld Values Survey(世界価値観調査)を用いた宗教の計量的国際比較研究。ジェンダー意識、経済倫理、政治行動などに対する宗教の影響力はどうなっているのか、どう変化したのか、地域によってどう異なっているのか、などが論じられています。近年の欧米(特にアメリカ)における、宗教の国際比較研究の特徴を知る上でも有益な著作です。
読むには宗教の知識や計量分析の基本知識が必要ですが、宗教学、社会学、政治学、社会心理学など幅広い専攻の人々にとって興味深い著作だと思います。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
人びとの健康に影響を与える社会的要因とは何か?
健康格差社会─何が心と健康を蝕むのか / 近藤克則. - 医学書院, 2005
北大ではどこにある?
現代日本における格差と健康を論じた本。現代日本でどのように人々の心と健康に不平等が生じているのか?また人々がおかれたどのような社会的状況(職業、ライフコース、学歴、地域etc)によって健康の不平等が生じているのか?健康をエビデンスに基づいて社会科学的に考えるための基本書です。社会疫学、医療社会学、健康心理学などに興味のある人はぜひ! -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
人々のものの見方や考え方を社会学的に分析する
階層・教育と社会意識の形成─社会意識論の磁界 / 吉川徹著. - ミネルヴァ書房, 1998
北大ではどこにある?
社会意識論の重要書。人々のものの見方や考え方を社会学的に分析するとはどういうことなのかが方法論も含めて理解できると思います。統計を駆使した専門書でやや難しいですが、著者も書いている通り、家電製品のマニュアルを注意深く読むだけの力を入れれば、考え方は十分理解できると思います。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
日本語教育に関わりたい人に
日本のことばとこころ / 山下秀雄. - 講談社, 1986
北大ではどこにある?
日本語教師として30年近く働いてきてまだ人生を回顧するのは早すぎると思うけれども、この仕事を選んだ自分にとって「恩師」と呼べる先生は3人いる。この推薦書の著者である山下秀雄先生もそのお一人で、講習会や研究会で多くのことを教えていただき、海外に教えに行っていたときにもいろいろと心配りをしていただいた。先生は、平成10年9月に交通事故で亡くなられ、その前日の夕刻に僕に宛てて出されたお手紙がこの世での最後の書簡となった。それは今も僕の手元にある。
本書は、山下先生が、日本語教師としての長年の経験と研究から、外国語としての日本語を見るための目を... [続きを読む]