スラブ・ユーラシア研究センター図書室
Library, Slavic-Eurasian Research Center

library-news-2018

【2018年】

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プラウダはどこへ? [no.154(2018.9)より]

大学院の新入生を迎えたこの4 月、戦後の『プラウダ』はどこにありますかという質問をいただきました。

それは目録を見てください、と、附属図書館OPAC を見ると、わたし自身あれどこだ?見つけられません。

とりあえず学生には、附属図書館5 階の新聞バックナンバー庫にあることを案内しつつ、さらに調べると、目録上、書庫5 階にある原紙の所蔵範囲が改変され、そこにモノがあるにもかかわらず落とされた様子。『イズヴェスチヤ』も同様のことになっています。

早速附属図書館に連絡して、調査を要請しました。
現場には、もともと附属図書館が購読した原紙を製本した資料と、センターが購入・製本した資料が年代順に一体となって排架されているのですが、前者は資産登録なし、後者は資産登録済みです。どうやら、担当者が、現物の状況を確認しないまま所蔵データを大幅に書き換えてしまったと見られます。

その後、残念ながら、図書館担当者側からこのことの経緯についての連絡はありません。連絡を受けて資産登録がない部分を含めるように所蔵データを再修正したようですが、それがどこまで所蔵を正確に反映しているかには問題があります。図書館側には、今後同様のことがないように、未登録の製本新聞を資産登録することを提案しましたが、現時点では、まだ実施されていないようです。

『プラウダ』『イズヴェスチヤ』は、それぞれソ連共産党とソ連政府の機関紙であり、ソ連の政治、社会を研究する上で基本資料であることはここで言うまでもないことですが、両紙のバックナンバーをまとまって利用できる場所は、必ずしも多くありません。これは、ロシア・ソ連研究における北大の大きなアドヴァンテージです。長年国費を投じて整備できた、北大の貴重な研究資源として、よく整備された資料的環境をしっかり後世に継承できるよう努めていきたいものです。[兎内]

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最近の受入資料から [no.153(2018.6)より]

近年、資料購入予算が大幅に減少しており、なかなか高額資料の購入には踏み切れないの
が現状ですが、ときにはちょっと珍しいものが入ることもあります。そうして入手した資料から、いくつか紹介させていただきましょう。
①『大日本正教会公会議事録』明治18 年8 月[東京]正教本会, 1885 年. 73 ページ, 折り
込み1 枚。(資料番号: 1380725686)
正教会の公会は、全国の教会関係者が一堂に会して、教会の活動全般について討議する、
いわば教会の年次総会のようなものと思われ、その議事録には公会の議事内容のほか、出席者名簿、教会とその担当司祭の表、伝教規則および統計表が収録されています。
正教会の状況について調べる上での基本資料と思われ、各地の正教会には伝わっているか
もしれませんが、国会図書館が所蔵するのは1902 年と1903 年の2 年分のみで、大学図書館での所蔵例もごく限られています。
センターが最近購入した本号は、当時北海道と東北北部を担当していた小松韜蔵(ティト)司祭による色丹島教会の状況報告を含んでいます。
また、本書の表紙には「渓井保羅君」と墨書があり、宮城県北部から秋田県南部にまたがる若柳、十文字、佐沼の信徒を代表して公会に参加した渓井パヴェルが所持していたものと推察されます。
② “Военная мысль” кн. 1. Издание Революционного военного совета Туркестанского
фронта. Действующая армия. Ташкент, Сентябрь 1920. 445, II с.(資料番号: 1380708492)
トゥルケスタン戦線革命軍事評議会が刊行したこの雑誌は、1920 年9 月に刊行された本号が初号と思われ、ロシア国民図書館(ペテルブルク)の目録によると、翌年さらに1 号から3 号まで刊行されています。
内容は、科学の部、政治の部、経済の部、概観、技術の部、芸術・科学技術ニュース・航空、書評等にわたり、巻末に、出版の趣旨を説明する編集部後記が載っています。
発行部数はわかりませんが、これは単なる軍事雑誌や広報誌ではなく、赤軍に勤務する知
識層の知的要求に応えようとした啓蒙雑誌の性格が感じられます。
付録として、インドの「戦略地図」が付いています。
③『薩哈嗹州地誌』1912 年薩哈嗹州知事官房編纂、同州知事デ・グリゴリエフ監修,[1920年?], 108 丁. ガリ版(資料番号: 1380689991)
本書は、元の資料の年代が1912 年とありますが、実際には1920 年初めまでのことが記述
されています。同年、尼港事件の発生をうけて日本軍が北サハリンに進出した際、現地での活動もしくは統治の参考とするため、サハリン州当局が作成した資料を翻訳し、現地で得た新しい情報を増補したもののようです。そのための資料を提供したのは、現地にいた日露の住民か、あるいはこの時日本軍に同行して島に入ったグリゴーリエフ元知事その人なのかも知れません。
ガリ版の刷りにムラが多く読みにくいのですが、日露戦争後の北サハリンが、1917 年の革命を経て1920 年に日本軍に占領される直前までの状況を伝える資料として、利用価値がある
ように思われます。
④『尼港撤退顛末』(薩軍情第1 号)[アレクサンドロフスク?]: 薩哈嗹州派遣軍司令部,
1920 年.[27 丁](資料番号: 138068531)
このガリ版刷りの小冊子は、薩哈嗹州派遣軍が、現地で作業をおこなうための文書として
作成し、軍内担当部署等に配布したものと見られます。表紙には「大正九年十月九日」と日付があり、同年秋のニコラエフスクからの軍と邦人の一時撤収に向け、現地の状況や派遣軍
の施策、撤退の具体的な手順について述べ、巻末には「黒竜江沿岸不良村一覧図」が折り込
みで付属しています。
この冊子は、古書店から入手したものですが、「井上恒正収集文書」整理番号 --007 と書いた、
衆議院憲政記念館の事務用封筒に入っており、同氏が一時所蔵していたものとみられます。
⑤『尼港事変乃顛末(附薩哈嗹乃沿革)』1924 年.[32 丁].(資料番号: 1380686474)は、編者、
出版者とも明示されていませんが、同じく、薩哈嗹州派遣軍がその執務用に作成し、関係部
署に配布した資料と推察されます。ガリ版で略地図をいくつか含み、裏表紙には「長江蔵書」
という墨書が見られます。
軍内の尼港事件に対する認識を示す史料として貴重なものと考えます。
⑥『北海』創刊号. 札幌: 北海道水産協会, 1929 年. 56 頁.(資料番号: 1380725697)
本誌は、北海道水産協会の機関誌的なものとして創刊されたもので、巻頭には北海道庁小
石季一水産課長の「発刊の辞」、北海道帝大水産専門部佐々茂雄主事の「創刊を祝す」などの
記事が並んでいます。
「本欄」には、「千島列島の現況と其の開発」、「水産物利用振興について」など漁業政策的な文が多く見られ、後半の「本会記事」は、事業計画や会則、役員名簿など、水産協会の運営に関する情報を掲載しています。
どうしたことか本誌を所蔵する図書館は非常に少ないようで、他には北海道立図書館が、
創刊号から第3 号までを所蔵する以外、確認できていません。
センター図書室は、これと併せて雑誌『北日本』創刊号. 東京: 北日本社, 1924 年. を入手
しました。こちらは、北海道と樺太の時評を扱うもので、本学附属図書館本館の佐藤昌介文庫に1 巻1 号と2 号が所蔵されていますが、他の図書館での所蔵は、国会図書館や道立図書館を含め確認できていません。
⑦ Сергеев, М.А. Советские острова Тихого океана. Ленинград : Государственное
социально-экономическое изд-во, Ленинградское отд-ние, 1938. 280 с.(資料番号:
1380707308)
太平洋上のソ連の島としてこの本が取り上げるのは、コマンドル諸島、カラガ諸島、シャ
ンタル諸島の3 つです。前2 者はカムチャッカ半島に近く、シャンタル諸島はオホーツク海
の西端近くにあります。このようなテーマの本はこれ以前もこれ以後にも出ていないように
思われ、この本の出版は、1930 年代後半の対日関係が微妙な時期において、ソ連の太平洋上
の領土に対する関心を示したものと考えられます。
なお、国内でこの資料の他の所蔵館は確認できませんでした。[兎内]

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ロシア語児童書コーナーを開設 [no.152(2018.2)より]

センターは毎年のように外国人研究員を迎えていますが、お子さん連れで滞在される方も
います。また、外国人留学生で、お子さんがいる方もいます。こうした方から、外国語児童書について相談されることがありましたが、これまで提供できる資料は多くありませんでした。
そこでセンター図書室では、とりあえず、札幌では入手しにくいが一定の需要が見込まれ
るロシア語の児童書について、徐々に整備し、センターに滞在する教員の子女をはじめ、北海道大学内の教職員・学生の子女を対象にサービスを提供することにしましたので、お知らせします。現在、ここにある本はわずか10 冊に過ぎませんが、今後継続的に整備を進める予定です。[兎内]

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旧吉野悦雄研究室資料について [no.152(2018.2)より]

吉野悦雄氏は、北海道大学経済学部・経済学研究科で長く仕事をされた、ポーランド・リ
トアニアの農業経済の専門家であり、『ポーランドの農業と農民 : グシトエフ村の研究』(木鐸社、1993 年)、『複数民族社会の微視的制度分析:リトアニアにおけるミクロストーリア研究』(北海道大学図書刊行会、2000 年)などの著書があります。2013 年春に退職され、名誉教授となりました。
センター図書室は、吉野氏が北海道大学を退職なされるに当たって関係者からお話をいた
だき、研究室に残置されていた資料から、今後、役立ちそうなものをこちらで選び出すことになり、わずか数日の間でしたが、ポーランド、リトアニアのほか、隣接するベラルーシ、ウクライナの経済関係資料2400 冊余りを研究室から運び出しました。特に、共産主義体制が終焉した20 世紀末から21 世紀初めの統計は非常に充実したもので、ポーランド国外ではなかなか見られない水準のように思われました。
その後これらの資料について、北大の所蔵資料と照合した上でリストを作成し、附属図書
館の資料として受入れ手続きをお願いしたところ、昨年中に一部を除いて、ほぼ整理が完了しましたので、お知らせ申し上げます。また、この件についてご協力いただいた附属図書館関係者のみなさまに、お礼申し上げます。[兎内]

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雑誌記事データづくり継続中 [no.152(2018.2)より]

センターニュースNo. 146(2016.8)で、雑誌記事の目録づくりをしていることをお伝えしましたが、その後、以下の雑誌について作業をおこないましたのでお知らせします。
『ソ連問題研究』1 ~ 5 号(1952 年)
『ソ連研究』6 号~ 9 号、2 巻1 号~ 11 巻8 号(1952 ~ 1962 年)
『満蒙経済事情』1 ~ 24 号(1916 ~ 1920 年)
『満蒙之文化』1 巻1 号~第4 年32 号(1920 ~ 1923 年)
『哈爾賓商品陳列館館報』1 ~ 8 号(1919 ~ 1920 年)
『露亞時報』9 ~ 158 号(1920 ~ 1932 年)
『亜細亜時論』1 巻1 号~ 5 巻8 号(1917 ~ 1921 年)

これらの目次データは、皓星社のデータベース『ざっさくプラス』に収録されるほか、ご
希望の方には別途提供させていただきます。[兎内]

 


 

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