スラブ・ユーラシア研究センター図書室
Library, Slavic-Eurasian Research Center

library-news-2013

【2013年】

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北樺太写真帖の由来判明する[no.135(2013.12)より]

『北樺太生写真帖』という 仮題のもと、センター図書室が2011 年3 月に古書市場から購入した写真アルバ ム3 冊は、1919 年、および 1921 年の北樺太における石油資源調査を記録したものですが、どういう由来のものかは明らかでありませんでした。今年度、京都大学地域研究統合情報センターの共同研究プログラムに「20 世紀 前半のサハリン島に関する歴史的記憶」という研究課題を採択いただいたことを機会に、これを調べてみたところ、3 冊とも すべて、農商工省の地質調査所が海軍省から受託した調査に参加した、植村癸巳男技師のものであることが判明しました。植村技師は、1919 年5-9 月の油田調査では、第4 班を指揮して東海岸北部のオハとエハビ を調査、1921 年6-9 月の第2 回調査では、西海岸に赴いた2 班のうちのひとつを指揮して、 ランガリーの油田、マガチ(写真帖では「マーチ」と表記)の炭田の調査にあたりました。 海軍省委託調査の結果は、『北樺太東海岸産油地調査報告』として、第1 回は1921 年、第 2 回は1926 年に海軍省により出版されましたが、写真帖1 冊目(1919 年)の内容は、第1 回 の第4 班の活動と符合します。また、2 冊目と3 冊目(1921 年)も、同じく地質調査所の実施した第2 回調査の植村班の活動と符合します。ただし、西海岸を調査した植村班の調査結 果は、残念ながら報告書に含まれていません。 後年『地質ニュース』(166 号、1968 年)に植村が寄せた記事に付録の略歴によれば、氏は 1893 年東京市麹町区生まれ、1918 年に東京帝大理科大学地質学科を卒業、翌年4 月に地質調 査所技師となったとあり、この仕事は、氏が就職まもないころのものだったということにな ります。 植村は、その後、1938 年に学術振興会物理探鉱試験所常議員・研究員となり、翌1939 年 に華中鉱業股份有限公司取締役、1948 年天然瓦斯技術協会専務理事等を経て、1967 年には勲 四等旭日章を授章したとのこと。その後のことは、まだ判明していません。 本写真帖は、日本と北樺太との関係を伝える貴重な記録として、活用を期待しております。[兎内]

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『党建設』、『党生活』、『社会主義経済』のマイクロフィルム購入[no. 134 (2013.8)より]

センター図書室は、昨年末、上記3タイトルの雑誌のマイクロフィルムを購入しました。いずれも、ソ連政治もしくは経済に関する基本的な文献と目されるものですが、どうしたわけか、本学では未収だったものです。 『党建設Партийное строительство』は、『全連邦共産党(ボ)中央委員会通報Известия ЦК ВКП(б)』の後継誌として1929年11月に創刊。月2回刊とされましたが、当初は安定しなかった模様です。ソ連共産党の公式文書や、党の活動、運営に関する論文を掲載し、1946年の終刊時の発行部数は15万部だったとされます。今回、購入したフィルムは、1929年の創刊時から1941年までを収録します。 『党生活Партийная жизнь』は、『党建設』の後継誌として、1946年に創刊されましたが、1948年4月から休刊。スターリン没後の1954年4月に再刊され、月2回の頻度で1991年秋まで刊行されました。ソビエト大百科(3版)によれば、1975年の発行部数は100万部とのことです。北海道大学附属図書館は、1973年以降の分をすでに所蔵しますが、今回、マイクロフィルムにより、1954~1967年分を補充することができました。 最後に『社会主義経済Социалистическое хозяйство』ですが、この雑誌は、国民経済博覧会の雑誌『国民経済Народное хозяйство』および財務人民委員部の雑誌『財政と経済Финансы и экономика』が合併することにより、1923年3月に創刊されたものです。1923年には10号が出ましたが、以後は年に5、6回の刊行となり、1930年の3号を出した後、『経済の諸問題Проблемы экономики』誌に吸収されました。 センターの購入したフィルムは、その発行全期間を収録しています。 なお、この雑誌については、かつて一橋大学経済研究所が、『特殊文献目録シリーズ; no. 17』として、その総目次を出版したことがあります。[兎内]


附属図書館本館への資料の移動について [no.134 (2013.8)より]

センターニュース133号(2013年5月)でお知らせした資料の移動に続いて、本年6月より、所在が「スラブ研・事務室(欧文)」および「スラブ研・百済氏」および「スラブ研・工藤氏」の資料の大部分、あわせて13,000冊余を、附属図書館本館4階の洋書書庫などに移動する作業を進めています。そのため、7月16日以降、対象資料の利用を一時停止させていただきました。作業は、8月下旬に終了し、本館書庫資料として、同月30日に利用を再開する予定です。 これとは別に、21世紀COEプログラムで収集したロシアの学校教科書218冊について、この6月に附属図書館本館書庫1Fの教科書コーナーに移動しましたことを、併せてお知らせします。[兎内]

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デジタル版『シベリア革命・内戦期新聞集成』の購入[no. 133 (2013.5)より]

センター図書室は、昨年末、ロシア革命・内戦期のシベリア各地で発行された新聞のデジタル画像を蒐集した上記資料を購入しました。 全部で121紙、31,000コマ余りの紙面を収録する本集成は、①政府公式紙(10紙、5,222コマ)、②政府地方機関公式紙(18紙、1,827コマ)、③地方自治機関紙(4紙、243コマ)、④政党機関紙(29紙、4,330コマ)、⑤社会団体紙(60紙、19,616コマ)から成り、ロシア各地の図書館・文書館から集められたものです。 特に力が入っているように思われるのが、白系諸政権の機関紙で、全ロシア憲法制定会議員通報(サマーラ、1918年7~10月)、全ロシア臨時政府通報(オムスク、1918年11月)、その後、クーデターによって成立したコルチャーク政権の政府通報(オムスク、1918年11月~1920年1月)が、ほぼ揃っています。 コレクションの中で最大の部分を占めるのは、『シベリア生活』(トムスク、1913年1月~1919年12月)で、このタイトルだけは、革命前の分を含んでいます。この他、分量は少ないのですが、イルクーツクで出ていたチェコ軍団部隊紙(1918年7~8月)などを収録しています。センター図書室には、コロンビア大学ハーバード・レーマン文庫の資料をもとにしたマイクロフィルム『ロシア革命期新聞コレクション』および、ロシア国立図書館(ペテルブルク)の所蔵資料によるマイクロフィルム『反ソヴィエト系新聞コレクション』(センターニュース102号、2005年8月に紹介)がありますが、これによってさらに、ロシア革命期の地方の状況を伝える史料を充実させることができました。本資料は、センター図書室で、利用可能となっています。[兎内]


付属図書館本館への一部資料の移動について[no. 133 (2013.5)より]

センターニュース126号(2011年8月)でお知らせした資料再配置の一環として、昨年12月から本年1月にかけて、所在が「スラブ研・事務室(露文)」および「スラブ研・学位論文(未管理換え)」資料の大部分、あわせて約22,000冊を、附属図書館本館東書庫1Fに移動しましたので、お知らせします。 なお、今年度は、これに続いて、所在が、「スラブ研・事務室(欧文)」の資料などを、附属図書館に移動する計画です。[兎内]


利用規則の一部改正[no. 133 (2013.5)より]

センター図書室では、これまで、資料貸出サービスの対象を、北大学部学生、大学院生、研究生、および教職員に限っていましたが、この4月より、北海道大学卒業生および大学院修了者のみなさまにも、貸出を行うこととしました。同時に借り出せるのは3冊まで。期限は1ヵ月です。また、これまで学部生の貸出期間は1週間でしたが、これにあわせて1ヵ月に変更しましたので、お知らせします。[兎内]

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『東洋学院紀要Известия Восточного института』のマイクロフィッシュ購入[no. 132 (2013.2)より]

 帝政ロシアが1899 年にウラジオストクに設置した東洋学院Восточный институт は、当時の極東ロシアにおいて唯一の高等教育機関であり、中国学、日本学、朝鮮学、モンゴル学等、東洋学研究の振興と研究者・実務家の養成に大きな貢献をしました。その後、1920年に極東総合大学Дальневосточный государственный университет に改組、1939 年には 一旦閉鎖されましたが、1956 年に再興され、2010 年には極東連邦大学Дальневосточный федеральный университет に改組されて現在に至っています。ロシア極東部では、最大かつ最高レベルの高等教育機関です。  東洋学院は、創立当初の1899 年に紀要の刊行を開始し、1922 年までに66 巻が刊行されました。ここには、東洋学院の教授陣や学生の著作および東洋学院の活動報告が収められ、ロシアのアジア研究を見るうえで欠かすことのできない資料と言えます。
北海道大学には、この紀要の現物の一部、および米国議会図書館資料から作成したマイクロフィルムがありましたが、欠けている部分が多く、全体の把握は容易でありませんでした。 昨年度の末近くに購入したIDC 社製作のマイクロフィッシュは、一部に欠があるものの、創刊から61 巻(1916 年刊) までがほぼ揃っていて、北大にはいまさらという感もありますが、 今後の極東ロシア史研究の発展に貢献してくれるものと期待しています。  なお、国内では、阪大外国語学図書館と東洋文庫にある程度まとまった量の原本があるほか、同じく阪大総合図書館、早大戸山図書館に、マイクロフィルムまたはマイクロフィッシュがあり、それぞれ1 巻から66 巻までをカバーしているもようです。

[兎内]

『歴史評論Историческое обозрение』 のマイクロフィッシュ購入[no. 132 (2013.2)より]

 『歴史評論Историческое обозрение』誌は、ペテルブルク大学歴史協会の会誌として、1890 年から1916 年まで不定期で21 巻までが刊行された歴史学論集です。フランス革命史の 研究者として著名であり、前年の1889 年に設立されたペテルブルク大学歴史協会の会長だったニコライ・カレーエフ(1850-1931) が、創刊から終刊まで編集長を務めました。協会の性格 を反映してか、西欧史や歴史理論に関する論文の比重が大きいように思われます。   なお、この資料を所蔵する機関は、国内には他に確認できません。

[兎内]

『帝室正教パレスチナ協会会報 Сообщения Императорского православного палестинского общества』 のマイクロフィッシュ購入[no. 132 (2013.2)より]

  帝室正教パレスチナ協会Императорское православное палестинское общество は、 1882 年に設立されました。その活動の中心は、ロシアからの聖地巡礼者を援助するとともに、現地の学術研究をおこなうことですが、その初代総裁にはセルゲイ・アレクサンドロヴィチ大公(1857-1905)が就き、会の規約は、皇帝アレクサンドル三世に裁可されたことが示すよ うに、ロシア革命で帝政が倒れるまでは少なくとも、ロシア政府の後援を得て、パレスチナにロシアのプレゼンスを示す組織でもありました(ロシア革命後は、政府の後ろ盾を失い、 分裂するなどのことがありましたが、それについては割愛いたします)。   帝政ロシア時代の正教パレスチナ協会の出版する定期刊行物としては、『正教パレスチナ論 集Православный палестинский сборник』と、『帝室正教パレスチナ協会会報Сообщения Императорского православного палестинского общества』を挙げることができます。北 海道大学は、前者の多くの部分を現物で所蔵する他、別途マイクロフィッシュも購入してお り、1881 年の創刊から1914 年の第61 巻までが利用可能となっていますが、後者については 所蔵がなく、昨年になってようやく、1886 年の創刊から1926 年刊の第29 巻までのマイクロ フィッシュを購入することができました。これによって、19 世紀後半から20 世紀初頭にか けて、ロシアと中近東地域との関係について研究するさまざまな手掛かりが得られるものと 期待しています。この資料の、国内他機関の所蔵は、確認できていません。  なお、この協会の活動については、А.А. ドミトリエフスキーが書いたその25 年史 Императорское Православное Палестинское общество и его деятельность за истекшую четверть века, 1882-1907 (СПб., 1907 年)があり、2008 年に再刊されている他、最近では、 昨年刊行された『正教パレスチナ論集』第108 号が、協会創立130 周年記念号として、協会の歴史を振り返る内容であることを付記します。
なお、今回紹介した3 点の資料は、いずれも、現在、附属図書館で整理待ちの状態ですが、必 要な場合には利用できるようにいたしますので、お手数ながら図書室までご連絡ください。

[兎内]

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