ロシア亡命文学コレクション

ロシア亡命文学コレクション

Collection of Russian Emigre Fiction

[1983年度 大型コレクション]
ロシア文学はもとより広くソ連の文化、社会政治史を研究する上にも貴重な文献が揃っているコレクション。ロシア亡命文学史の背景を成す19世紀末から20世紀初頭にかけて出版されたものだけではなく、最近に至って注目されだした作家の作品も収集されている。

形態 オリジナル
数量 636冊
言語 ロシア語
購入年度 1983
貸出
複写 可(一部不可)

資料一覧


*資料紹介(『楡蔭』No.62,p.6より)

ロシア亡命文学コレクション

 1917年革命以来,ロシア文学はソビエト文学と亡命文学に分割して考察されるのが常であった。近年に至るまで両者の相互的影響については殆んど注意が払われることがなかった。また,この分野の研究者は資料不足と所在追跡の困難に苦しめられてきた。無名作家については言うまでもないが,著名作家の作品ですら事情は余り変わらない。

 本コレクションはこのような事情を抜本的に改善する目的を以って多年にわたり系統的に収集されたものであり,わが国のみならず欧米諸国の大学図書館,国立図書館に欠けている作品を数多く含んでいる。著名な作家だけでなく,ここ10年間に注目されるに至った作家の著作を収集している点も本コレクションの一大特色となっている。さらに,ロシア亡命文学史の背景を示す意味で19世紀末から20世紀初頭にかけて国外で出版された数人の作品も収集した。その大部分は原本刊行後,リプリントされたことがない。なかでも,アーノルディとベルビ=フレロフスキーは特筆に価する。

 本コレクションの少なからぬ書物は,A.N.ベヌア,M.E.ゼルノフ,P.ミリューコフ,S.エルンスト,L.A.グリーンベルグ,A.ポポフ,A.P.ストルーヴェ,N.バリエフなど著名な愛書家,出版人,文学・芸術批評家の私文庫に由来する。第二次世界大戦においても,また,戦後においてもソビエト文学に多大な影響を与えた作家とその作品は枚挙に暇がない程であるが,1917年以降ソ連で出版された書誌には研究に役立つ適当な文献は全く ないといって過言ではない。その意味でも,本コレクションに収集された作品は貴重であり,例えば,B.サビンコフ,A.A.ディグコフ=デレンタル M.P.アルツィバーシェフ,A.ケメンスキーなどのいくつかの作品を挙げるだけでもその重要性を知ることが出来よう。

 さらに,同一作家の同一作品についてソ連版と西欧版を比較研究することにより両者の間に極めてドラマチックな相異点が明らかとなる。アレクセイ・トルストイやイリヤ・エレンブルクらのいくつかの作品はソ連版には含まれていない。ソ連版で刊行された作品の中には検閲され,縮少されているものが少なくない。パリ版やベルリン版の3分の1もが削除されたものもある。

 本コレクションの少なからぬ書物には,かつての所有者による書き込みがあり,関心を惹く。

 以上に見るごとく,本コレクションは全体としてのロシア文学を研究する上で極めて重要な資料であることは言うまでもないが,広くは,ソ連の文化,社会・政治史を研究する上でも,ソ連資料によって代えることの出来ない貴重な文献ということが出来よう。