18世紀ロシア研究叢書

18世紀ロシア研究叢書

18th-Century Russian Studies

[1978年度 大型コレクション]
A.G.Cross博士編、IDC社製作の18世紀以降のロシアで出版された今日ではいずれも入手困難な一次・二次資料464点のマイクロフィッシュによるコレクション。

形態 マイクロフィッシュ
数量 19,245枚
言語 ロシア語
購入年度 1978
貸出
複写

資料一覧


*資料紹介(『楡蔭』No.50,p.7-8より)

18th-Century Russian Studies(Microfiche)
(18世紀ロシア研究叢書)
文学部助教授 灰谷慶三

 この度,53年度の文部省特別予算によって,「18世紀ロシア研究叢書」(18th-Century Russian Studies, Editor: Dr.A.G.Cross, Microfiche edition,Inter Documentation Company, Switzerlandが購入されることになった。18世紀ロシア研究は,1968年にイギリスでBritish Universities Study group on 18th-Century Russiaが創設されるなど,ここ10年ほどの間に欧米ではかなり進んできたとはいえ,19・20世紀ロシア研究に較べるならば非常に立ち遅れていることはいなめない。そして,日本においては欧米よりもさらに遅れているのが現状である。その大きな理由のひとつが 18世紀以降ロシアで出版された一次・二次資料の入手が極めて困難であったことである。今回購入される叢書は,もちろん,これによってすべてが解決されるものではないが,18世紀のオリジナル版,および19・20世紀版による18世紀作家の著作集や重要な雑誌類,諸種の法令集,会議録,書簡回想記,研究文献等,文学.思想・歴史・政治・経済・法律・地理,さらには広く文化一般にまで及ぶ広範囲の資料・研究を網羅して,総数464点から成り,その大部分はわが国の図書館に現存しないものである。従って今後本叢書は各方面から利用され,研究の発展に大きな役割を果すものと期待される。以下,その内容についてごく簡単に紹介してみたい。

 まず,大まかに分類すると,総数464点のうち,①文学・思想・文化一般にわたるもの約210点,②歴史・政治・経済に関するもの約170点,③書誌類(上の両者に関するものも含む)約80点である。これを刊行年次別にみると,①では,18世紀20点,19世紀98点,②では,18世紀11点,19世紀85 点,③では18世紀2点,19世紀61点である。残りは①②③ともに20世紀の刊行であるが,その半数以上は革命以前のものである。以上の他に,ごくわずかではあるが17世紀の出版物もある。

コレクションのマイクロフィッシュの一部

 以上のうちから主要なものをいくつかあげてみよう(カッコ内は刊行年)。作家個人の著作集・全集としては,カンテミール(1867~68),トレジアコーフスキイ(1752),スマローコフ(1787),デルジャーヴィン(1864~83),カラムジーン(1848)等の主要作家の他に,ワシーリイ・マイコフ(1867),クニャジニーン(1847),アブレーシモフ(1849),バルコーフ(1872)等の作家の作品集も含まれている。ことに,ロシア古典主義の代表者スマローコフの全集は,ノヴィコーフの編纂になるもので,今日に至るまで全集として唯一の存在である。同じノヴイコーフ編纂の「ロシア古典全集10巻」(1773~75)や,「ロシア劇作全集vol.1~43」(1786~94)など,古典主義研究にとって欠かすことのできない資料である。またプィピン編纂の「エカテリーナニ世著作集12巻」(1901~07)や,そのエカテリーナニ世の文化面での補佐役であったダシュコーワ夫人のメモアール(1907)なども眼を惹く。歴史・政治関係では,「ピョートル大帝書簡・文書集7巻」(1887~1918)「エカテリーナ二世訓示集」(1893),「ロシア帝国法典全集1649~1916」(1830~1916),「ロシア貴族家系図2巻」(1787),「帝室科学アカデミー総会議事録1725~1803」(1897~1911)等がある。

 また,①②を問わず雑誌をあげれば,ノヴィコーフ編集の「Koselek」,「Truten」,「Zivo-pisec」(いずれも19世紀の復刻版),ダシュコーワ夫人編集の「Sobesednik Ijubitelej ros-siskogo slova」(1783~84),カラムジーン編集の「Moskovskij zurnal」第2版(1801~03),また「Politiceskij zurnal」(1790~1802)等がある。

 これらの他にも,フリーメーソン関係の文書・研究3点,分離派教徒に関する文書・研究5点等があり興味をそそる。さらに,前述した数多くの書誌類にも18世紀の人物事典,地理事典等貴重なものが少なくない。

 以上,紙数の関係でほんの一部を紹介するにとどめたが,その全容は実現してみなければわからないわけで,一日も早い公開が待たれるのである。