-
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
日本統治時代台湾の女性史
近代台湾女性史 : 日本の植民統治と「新女性」の誕生 / 洪郁如. - 勁草書房, 2001
北大ではどこにある?
日本統治時代の台湾の女性史の研究。著者の博士論文をまとめた本。纏足解放、女子教育、女性運動、「新女性」のライフスタイルなどが丹念に検討されている。個人的には女子教育を社会階層の視点から分析しているのがとても興味深かった。
たとえば、1920年代の新女性とその夫からなる核家族において、新女性は家事労働をさほど担わなかったというところが面白い。台湾の高等女学校では、近代的知識を伝授するとともに良妻賢母的な教育(料理・礼儀作法・伝統芸能)などを伝授されていたのだが、結婚後の日常生活において家事に関する技能はさほど生かされなかったようであ... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
台湾と沖縄(特に八重山諸島)の交流を知る
知られざる南の国境 : 八重山・台湾 (DVD) / 北海道大学グローバルCOEプログラム「境界研究の拠点形成」企画. - 北海道大学グローバルCOEプログラム「境界研究の拠点形成」, 2011
北大ではどこにある?
北海道大学グローバルCOEプログラム「境界研究の拠点形成」がHBCと協同で作成したドキュメンタリー作品。
戦前、さらにはそれ以前の時代において台湾と沖縄(特に石垣・与那国などの八重山諸島)は互いに密接な交流のある地域でした。たとえば戦前では八重山諸島出身者が進学する際には内地ではなく台湾の旧制中学・旧制高校・女学校・台北帝国大学などに進学することは決して珍しくありませんでした。また漁獲物を台湾の市場で売るということも行われました。台湾から八重山諸島に移住したり、逆に八重山諸島から台湾に移住するという人もいました。本作品は比較的高齢の人々へ... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
台湾映画の名作
悲情城市 (DVD) / 侯孝賢監督 ; 呉念眞, 朱天文脚本, トニー・レオンほか出演. - Imagica, 1989
北大ではどこにある?
台湾における日本統治時代・敗戦・戦後初期の中華民国統治時代を舞台に、これらの時代を生きた一族を描いた作品。特に1947年に生じた二・二八事件の一部を描いた映画として有名です。台湾、植民地経験、弾圧、歴史的記憶などに関心のある人に特におすすめです。1989年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞グランプリ受賞作品。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
台湾の「日本語世代」「日本語人」の語り
台湾人生 (DVD) / 酒井充子. - 協映, 2008
北大ではどこにある?
戦前の日本統治時代に生まれ、日本統治時代の教育を受けたいわゆる「日本語世代」「日本語人」と言われる人々へのインタビューを収録したドキュメンタリー作品。「どのようなライフコースを歩んできたのか」「日本統治時代にどのような暮らしを送って何を考えてきたのか」「戦後どのような人生を歩んできたのか」など、興味深い話が収録されています。台湾、植民地経験に関心のある人のみならず、社会学・心理学・文化人類学などにおける質的研究・定性的研究に関心のある人にも大いに参考になる作品ではないかと思います。本作品をもとにしたルポルタージュも出版されてい... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
人びとの日常から台湾を学ぶ
暮らしがわかるアジア読本「台湾」 / 笠原政治, 植野弘子編. - 河出書房新社, 1995
北大ではどこにある?
河出書房新社のアジア地域研究シリーズの1冊。政治・経済・教育・文化・宗教・日台関係、言語など様々なトピックを紹介しています。「暮らしがわかる」とあるように日常のひとコマや具体的な人々の話を中心に説明していますので、台湾の臨場感が伝わります。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
より学術的な台湾の入門書
もっと知りたい台湾(第2版) / 若林正丈編. - 弘文堂, 1998
北大ではどこにある?
-
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
タイの僧侶についての重厚な実証研究
東北タイの開発僧─宗教と社会貢献 / 櫻井義秀. - 梓出版, 2008
北大ではどこにある?
タイにおいて教育や地域開発、福祉事業などの各種開発を行ういわゆる「開発僧」と呼ばれる僧侶たちへの丹念な聞き取り調査に基づいた実証的な宗教研究・地域研究。「宗教と社会貢献」「タイ研究の動向」「南部タイの暴力」などの大きな議論を踏まえたうえで、僧侶の実証研究が紹介される。
実証研究の最大の目玉は、東北タイの三地点、約100名を超える僧侶の比較研究である。「開発僧」として著名な僧侶のみならず「一般的」な僧侶なども検討していくことで、地域社会における僧侶の役割、「開発僧」と「一般的」な僧侶の連続性、「開発僧」が「開発僧」たる上での政治的コン... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
文化行動を理解するために
文化行動の社会心理学―文化を生きる人間のこころと行動 (シリーズ 21世紀の社会心理学3) / 金児曉嗣, 結城雅樹編集. - 北大路書房, 2005
北大ではどこにある?
1990年以降、飛躍的に発展した文化心理学の知見を特に社会心理学と関わるトピックに関連して説明したテキスト。宗教・法律・医療・歴史・神話・福祉・人間観など多面的領域の「文化」を様々な角度からとらえています。各章の参考文献も豊富で発展的学習にも最適です。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
社会心理学の重要テキスト
社会心理学 / 池田謙一 [ほか] . - 有斐閣, 2010
北大ではどこにある?
近年刊行された社会心理学のテキストの中で質量共にとても充実したテキストです。最新の研究成果と豊富な事例に基づながら社会心理学の全体像がつかめるようになっています。第1部ではミクロレベル(認知、推論、感情、自己など)、第2部ではメゾレベル(コミュニケーション、対人関係など)、第3部ではマクロレベル(心の文化差、集団間関係、組織、地域など)が扱われます。
新入生から大学院生まで長く参照できる一冊です。社会心理学に限らず、社会学・人類学・経営学に関心のある人にも目を通していただきたいです。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
幕末日本の農民運動を発生させた要因とは何か?
変革期における社会運動の研究 : 19世紀日本の農民運動を通して / 野宮大志郎. - 北海道大学, 1998
北大ではどこにある?
幕末日本の農民運動がどのような社会構造的要因によって発生したのかを統計的に検討した歴史社会学的研究。江戸時代日本の農民階級と武士階級の探索から始まり、農民運動が発生する要因に関する理論的考察、そしてその理論を検証するための実証分析を行うというスタイルになっています。実証分析では農民運動の年表から各年の運動発生件数をデータセット化し、物価変動や飢饉発生などの社会変動との関連を検討していきます。歴史学専攻の人にも是非読んでもらいたい書籍です。
(図書館注:科学研究費補助金基盤研究(C)(2)研究成果報告書 ; 平成8年度-平成9年度) -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
日本も案外、宗教的か?
宗教と社会のフロンティア―宗教社会学からみる現代日本 / 高橋典史, 塚田穂高, 岡本亮輔編著. - 勁草書房, 2012
北大ではどこにある?
若手の研究者らによる宗教社会学の入門テキスト。
いわゆる宗教社会学の古典を開設するタイプのテキストではなく、現代日本において宗教が関係する社会現象をわかりやすく解説するタイプのテキストです。トピックごとにオムニバス形式にしてあります。参考文献や宗教調査の方法なども詳しく書かれていますので、発展的な学習もできます。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
人びとの価値観や考え方に格差はあるのか?
階層化する社会意識―職業とパーソナリティの計量社会学 / 吉川徹編著. - 勁草書房, 2007
北大ではどこにある?
-
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
日本人は日本的なのか?何を以て日本的と言えるのか?
日本人論の方程式 / 杉本良夫, ロス・マオア. - 筑摩書房, 1995
北大ではどこにある?
「日本人論」というものがしばしば人口に膾炙することがあります。古くは新渡戸稲造『武士道』、最近では藤原雅彦『国家の品格』といったところでしょうか。そうした書籍では、日本国内の格言、歴史上の人物の言動録、著者の国内外での体験などをエビデンスとして「日本人は〇〇である」とされることがしばしばあります。そうしたエビデンスの使い方によって「本当に日本人は日本的である」と言っていいのか?と疑問を呈したのが本書です。
社会科学方法論としても重要な書籍ですが、日本文化や日本と海外の比較に関心がある人も一度目を通してみるといろいろ頭のトレーニン... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
計量社会学を学ぶ!
社会の見方、測り方─計量社会学への招待 / 与謝野有紀 [ほか] 編集. - 勁草書房, 2006
北大ではどこにある?
統計的な手法をもちいて社会現象を分析する(計量社会学)ためのテキスト兼ハンドブック。
紹介されている手法としては記述統計、相関分析、クロス表分析、平均値の比較、重回帰分析、パス解析、共分散構造分析、マルチレベル分析、ネットワーク分析、因子分析、主成分分析、ブール代数分析など基礎から応用まで非常に幅広い手法が紹介されています。しかも単に手法を説明するだけではなく、具体的な社会現象(自殺、都市化、階層など)をそれらの手法で分析するというスタイルで書かれています。そのため統計的手法で社会現象を分析するという計量社会学の醍醐味がいかんな... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
計量社会意識論を学ぶために
現代日本の「社会の心」―計量社会意識論 / 吉川徹. - 有斐閣 , 2014
北大ではどこにある?
同著者による『階層・教育と社会意識の形成─社会意識論の磁界』の流れを汲む著作。調査票調査データを用いて統計的に人々の心を分析するやり方やその発送法などがわかりやく書かれています。本書では特に複数時点のデータを使って「社会の心」の変遷を明らかにすることに力点がおかれています。現代的なトピックである環境意識・健康志向・消費生活なども扱われています。社会学向けの本ですが、社会心理学や哲学、文化論に関心のある人も是非手に取ってみてください。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
社会調査法の充実したテキスト
入門・社会調査法─2ステップで基礎から学ぶ(第2版) / 轟亮, 杉野勇編. - 法律文化社, 2013
北大ではどこにある?
-
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
台湾ノートパソコン企業の成長メカニズムを解き明かす!
圧縮された産業発展─台湾ノートパソコン企業の成長メカニズム / 川上桃子. - 名古屋大学出版会, 2012
北大ではどこにある?
台湾はノートパソコン生産の世界シェア90%以上といわれています。当初はいわゆる低コストの下請企業として国際的な産業内分業の中での後発のメーカーという位置づけでした。そうした台湾のノートパソコン産業が急激な成長をとげたメカニズムを、丹念なインタビュー調査や観察、史資料分析などで実証的に論じています。経済学・経営学・経済社会学・産業社会学・労働社会学などにかかわる近年の重要書です。第29回(2013年度)「大平正芳記念賞」受賞作品 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
ひとりで学ぶ計量分析
データアーカイブSRDQで学ぶ社会調査の計量分析 / 川端亮編著. - ミネルヴァ書房, 2010
北大ではどこにある?
大阪大学のSRDQシステムを用いて計量分析を学ぶためのテキストです。
本書の最大の特徴は、SRDQに寄託された本物の社会調査データの分析を行えることです。
テキストの各章ではその分析方法を用いた論文が提示されています。まずこの論文を読み、次にテキストを見ながらSRDQ(ネット環境があればどこでも使用可能)を使ってその論文の分析を再現していきます。最後に章末の練習問題を解くことでより分析のコツがのみこめるようになります。
実際の論文を読みその分析を追体験しながら分析を身に着けていくという実践的スタイルが本書の目玉と言えるでしょう。分析方法はクロス... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
エビデンスに基づく宗教の国際比較研究
Sacred and Secular :Religion and Politics Worldlwide (2nd ed) / Pippa Norris and Ronald Inglehart. - Cambridge University Press, 2011
北大ではどこにある?
中級から上級向けの本(英語)。世界最大規模の国際比較価値観調査データの1つであるWorld Values Survey(世界価値観調査)を用いた宗教の計量的国際比較研究。ジェンダー意識、経済倫理、政治行動などに対する宗教の影響力はどうなっているのか、どう変化したのか、地域によってどう異なっているのか、などが論じられています。近年の欧米(特にアメリカ)における、宗教の国際比較研究の特徴を知る上でも有益な著作です。
読むには宗教の知識や計量分析の基本知識が必要ですが、宗教学、社会学、政治学、社会心理学など幅広い専攻の人々にとって興味深い著作だと思います。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
入門から上級まで幅広く使える社会学の教科書
アンビシャス社会学 / 櫻井義秀, 飯田俊郎, 西浦功編著. - 北海道大学出版会, 2014
北大ではどこにある?
北海道大学文学研究科社会システム科学講座の関係者を中心に作成した社会学テキスト。現代日本における様々な社会的トピックについて、具体的な事例を提示しつつその分野での基本概念・用語などをしっかり身に付けられる構成になっています。
会学の入門書としてはもちろんのこと、各種試験対策(公務員、社会福祉士、大学院入試など)にも対応できるように作っています。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
報道記事の読み方、分析手順、科学的分析のロジック
データはウソをつく─科学的な社会調査の技法 / 谷岡一郎. - 筑摩書房, 2007
北大ではどこにある?
特に社会調査に基づいた報道記事を読む際のコツについて多くのページが割かれています。実際のデータ分析の段取りや科学的分析のロジックについても初学者向けにわかりやすく述べられています。社会調査に関心をもった場合は、まず本書を手に取ってみることをお勧めします。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
「日本人論」の系譜と「日本人論ブーム」の社会的背景を探る!
「日本人論」再考 / 船曳建夫. - 日本放送出版協会, 2003
北大ではどこにある?
近代以降の日本では数々の「日本人論」が刊行されてきた。『武士道』『菊と刀』『「甘え」の構造』『ジャパンアズナンバーワン』が代表的ですが、近年の藤原雅彦『国家の品格』なども「日本人論」といえましょう。
ではなぜ「日本人論」が生産され、広く人口に膾炙したのか?
ブームの背景にある日本社会の「不安」、アイデンティティの「揺らぎ」といった社会的・心理的背景を本書は探ります。また本書は「日本人的なるもの」をいわゆる「サムライ」「武士道」などに限定せず、戦時中の「国民」さらには、今日でも日常的に使われる「人間」「職人」といった概念に見られる... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
北海道夕張産炭地の生活誌・社会史の決定版!
地域産業変動と階級・階層 : 炭都・夕張/労働者の生産・労働(新装版) / 布施鉄治編著. - 御茶の水書房, 1990
北大ではどこにある?
北海道大学教育学部の故・布施鉄治教授率いる「布施グループ」による調査モノグラフ。地域は北海道の産炭地夕張であり、大学院生・学部学生総出で、炭鉱関係者の生活史を調査したモノグラフである。対象者は炭鉱職員・鉱員・その家族など、ほぼ「ローラー作戦」で聞き取り調査をしている。そこから夕張における階層・階級構造、労働者の入炭経緯、ライフスタイル、将来への展望などが浮かび上がってくる。北海道社会史としても極めて貴重な書籍である。初版は1982年。
なお「布施グループ」による調査には夕張の他にも、水島・倉敷などで行った調査がありそれらも出版されて... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
社会調査のための、極めてわかりやすい統計の入門書
このとおりやればすぐできる社会調査のための統計学-生きた実例で理解する- / 神林博史, 三輪哲. - 技術評論社, 2011
北大ではどこにある?
よく使われる社会調査の統計解析の初歩が解説されています。記述統計を中心にクロス集計や統計的検定、疑似相関と因果関係などについてわかりやすく書かれています。表や図の作り方など非常にわかりやすく、また途中ではさまれる会話がより一層わかりやすさを引き立てています。統計アレルギーの人、統計学の授業で挫折してしまった人は一度手に取ってみると良いでしょう。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
社会科学方法論の名著
創造の方法学 / 高根正昭. - 筑摩書房, 1979
北大ではどこにある?
入門~。社会科学の方法論についてわかりやすく解説した名著です。
理論とは何か、概念とは何か、モデルとは何か、理論をどのようにして具体的なデータで検証するのか、条件を統制するとはどういうことなのか、といったことが著者のアメリカでの研究生活の話を交えながら丁寧に説明されています。特に実験との対比させながら社会調査における分析のロジックを説明しているのがわかりやすいと思います。社会科学専攻の人に限らず多くの人々に是非一度手に取ってもらいたい一冊です。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
気軽に読める現代台湾の概説書
現代台湾を知るための60章(第2版) / 亜洲奈みづほ. - 明石書店, 2012
北大ではどこにある?
明石書店の地域研究シリーズの1冊。1章4~6ページの分量で、政治・経済・教育・文化・宗教・日台関係など様々なトピックを60章で紹介しています。内容も現代台湾に関する読み切り型のエッセイ・ルポルタージュ風のものが多いため、興味をもった箇所から気軽に読むことができます。現代台湾に興味をもったらまずは本書を手に取ってみると良いでしょう。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
質的社会調査のハンドブック
よくわかる質的社会調査─技法編 / 谷富夫, 芦田徹郎編著. - ミネルヴァ書房, 2009
北大ではどこにある?
社会調査の中の質的調査について、様々な技法が紹介されています。インタビュー、フィールドワーク、グランデッド・セオリー・アプローチ、ライフヒストリー法、ワークショップ、アクションリサーチ、内容分析などが扱われています。各調査の理論的背景や心構えよりも、むしろ具体的なやり方を詳しく説明しています。どうやってアポをとるのか、どうやってインタビューデータを整理するのか、どうやってワークショップを開くのかなど具体的な話が豊富ですので、手元に置いておくと便利な一冊です。
なお姉妹編として「プロセス編」もありますので合わせて読むと質的社会調査... [続きを読む] -
推薦者 : 寺沢 浩一 (医学部)
下山事件を現代の法医学で見る
死の法医学―下山事件再考― / 錫谷 徹. - 北海道大学図書刊行会、北海道大学出版会, 1983
北大ではどこにある?
1949年に国鉄総裁下山氏が失踪し、翌日、鉄道の線路上で死亡して発見された事件である。現代の法医学を紹介し、次いで轢断死体の法医学に進み、最後に下山事件を法医学的に見直している。ロジックで考えることの大事さを見せてくれる。
新入生にも読めるが、医学部で法医学を勉強し終わった人に一番向いている本である。分かりやすく書かれている本として名著に属していると私は捉えている。 -
推薦者 : 寺沢 浩一 (医学部)
法医学とは何かを知りたい人に
日常生活の法医学 / 寺沢浩一. - 岩波書店、岩波新書、新赤版687, 2000
北大ではどこにある?
14年前に上梓したものである。一般の人以外にも、刑事事件を扱う警察官になりたい方、科学捜査研究所で働きたい人、医学部で法医学を勉強したいと考えている人にお勧めします。
特に私が気に入っているのは「はじめに」、「死後経過時間の推定」、「個人識別」と「あとがき」の段である。以下に各章の題名を挙げよう。はじめに―法医学とは何か/人が死ぬとどうなるか/解剖に附すか/死因を推定する/事故死か病死か/現代の医療と法医学/法医学のこれから。登録日 : 2014-08-26
-
推薦者 : 寺沢 浩一 (医学部)
シャーロック・ホームズの観察
The complete illustrated Sherlock Holmes / Sir Arthur Conan Doyle. - Omega Books, England, 1986
北大ではどこにある?
シャーロック・ホームズ全作品がStrand Magazine に掲載された時のSydney Paget らの手になるイラストとともに英語で収録されている。この中で推薦者の特に好んでいるのは、次の3つである。A Study in Scarlet, The Problem of Thor Bridge, and The Adventure of the Lion's Mane.目の前にある問題を解決するためには、知識も有益であるが、観察により推理して結論に至る場合もある。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
家族が「家族」として語られるとき
戦略としての家族-近代日本の国民国家形成と女性- / 牟田和恵. - 新曜社, 1996
北大ではどこにある?
多くの人にとっては家族というのは気がついたら存在している(という意味で)自然な環境である。この本は、その自然なはずの家族が近代日本のジャーナリズムの中でどのように論じられ、どのようにその論じ方が転換し、どのように教育の中に取り込まれてきたかを考察し、近代日本人の意識の中に「家族」として根付く過程を明らかにしている。今日の夫婦別姓や、性別役割分担の問題、あるいは家族の「絆」ということを考えたい、あるいは、そうしたことに興味がある学生にお薦めしたい本である。 -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
戦前・戦中・戦後を駆け抜けた哲学者の生き方に迫る
戦争が遺したもの-鶴見俊輔に戦後世代が聞く- / 鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二. - 新曜社, 2004
北大ではどこにある?
後藤新平の孫、鶴見祐輔の子として生まれ、華麗な閨閥の中で一種の拗ね者として幼少期を送った鶴見が、アメリカ留学から戦後市民運動までの自身の生き方と考え方、その過程で関わった様々な人々とのつながりを余すところな語った貴重な証言である。戦争(というより戦場)の実相、市民運動のあり方、知識人と言われる人々の生態など、実体験した者でなければ語れない生々しさがある。一人物の座談的伝記としても、歴史書としても読み応えがあるのでぜひ一読を勧めたい。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
台湾における日本統治時代の経験・感情とは?
戦後台湾における〈日本〉─植民地経験の連続・変貌・利用 / 五十嵐真子・三尾裕子編. - 風響社, 2006
北大ではどこにある?
-
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
人びとの健康に影響を与える社会的要因とは何か?
健康格差社会─何が心と健康を蝕むのか / 近藤克則. - 医学書院, 2005
北大ではどこにある?
現代日本における格差と健康を論じた本。現代日本でどのように人々の心と健康に不平等が生じているのか?また人々がおかれたどのような社会的状況(職業、ライフコース、学歴、地域etc)によって健康の不平等が生じているのか?健康をエビデンスに基づいて社会科学的に考えるための基本書です。社会疫学、医療社会学、健康心理学などに興味のある人はぜひ! -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
人々のものの見方や考え方を社会学的に分析する
階層・教育と社会意識の形成─社会意識論の磁界 / 吉川徹著. - ミネルヴァ書房, 1998
北大ではどこにある?
社会意識論の重要書。人々のものの見方や考え方を社会学的に分析するとはどういうことなのかが方法論も含めて理解できると思います。統計を駆使した専門書でやや難しいですが、著者も書いている通り、家電製品のマニュアルを注意深く読むだけの力を入れれば、考え方は十分理解できると思います。 -
推薦者 : 寺沢 重法 (文学研究科)
台湾における植民地経験をフィールドワーク、史資料分析から重層的に読み解く!
台湾における<植民地>経験─日本認識の生成・変容・断絶 / 植野弘子・三尾裕子編. - 風響社, 2011
北大ではどこにある?
台日本統治時代を肯定的に評価するという意味でしばしば「親日的」という言葉で語られる台湾。本当にイメージ通りなのでしょうか?あるいは「親日的」だとすればそれはどのような意味で「親日的」なのでしょうか?本書は台湾における植民地経験、植民地時代への感情をフィールドワークや史資料を通じて多面的に論じています(姉妹編あり)。歴史社会学・文化人類学・歴史社会学・地域研究の重要書です。 -
推薦者 : 戸田 聡 (文学研究科)
日本人と全く関係のない或る昔の文明世界のお話
ビザンツ世界論 / ハンス=ゲオルク・ベック. - 知泉書館, 2014年
北大ではどこにある?
「日本人と全く関係のない或る昔の文明世界」の話だって? そんなもの読む暇ないよ! と思う人は以下を読まなくてよろしい。しかし、実益ばかりが強調される今の時代だからこそ、こういうものだってあると言ってみたくなる。
この本でとりあげられているビザンツ帝国は、かの輝かしきローマ帝国の後継国家(正確には、ローマ帝国の断絶なき継続)として、西欧史で言われる中世のほぼ全時代を通じて存在した国家・帝国であり、日本とは全く関係がない。しかも、現代人(特に現代日本人)はそもそも古典(つまり、共通の教養基盤)なるものを顧みなくなって久しいが、ビザ... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
人の振り見て我が振り直せ
カネを積まれても使いたくない日本語 / 内館牧子. - 朝日新聞出版, 2013
北大ではどこにある?
最近の出版業界は「脅迫産業」めいてきたところがあり、本の表題にやたらと「知らないと恥をかく~」だの「あなたもきっとだまされる」だの「~のウソ」だの「その○○は恥をかく」だの、これでもかとばかりに読者を不安がらせ(て買わせ)ようとするフレーズを入れるものが多い。こういった表題の本は、おおむね中身はたいしたことがないので買わないことにしているが、ここに挙げた内館氏の本は、その大仰な表題に似合わず、今使われている、あまり適切とは言えないことばづかいを丁寧に拾い上げて論評しており、まさに「人の振り見て我が振り直せ」で、自分の日本語の使... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
日本語教育に関わりたい人に
日本のことばとこころ / 山下秀雄. - 講談社, 1986
北大ではどこにある?
日本語教師として30年近く働いてきてまだ人生を回顧するのは早すぎると思うけれども、この仕事を選んだ自分にとって「恩師」と呼べる先生は3人いる。この推薦書の著者である山下秀雄先生もそのお一人で、講習会や研究会で多くのことを教えていただき、海外に教えに行っていたときにもいろいろと心配りをしていただいた。先生は、平成10年9月に交通事故で亡くなられ、その前日の夕刻に僕に宛てて出されたお手紙がこの世での最後の書簡となった。それは今も僕の手元にある。
本書は、山下先生が、日本語教師としての長年の経験と研究から、外国語としての日本語を見るための目を... [続きを読む] -
推薦者 : 中村 重穂 (国際連携機構国際教育研究センター)
西田哲学の実践としての西田評伝
西田幾多郎 / 大橋良介. - ミネルヴァ書房, 2013
北大ではどこにある?
西田哲学の難しさについてはその一端を、以前この「本は脳を育てる」に『善の研究』を推薦したときに書いておいた。この『西田幾多郎』は、現在西田幾多郎研究の世界水準を牽引する著者が、単に「伝記」=時間の流れの中である人物がなしたあれこれのことを書くだけでなく、まさに西田を一つの”出来事”とし、それに西田哲学を実践してみせることによって新たな西田像を明らかにしたものである。西田の伝記はこれまでさまざまなものがあったけれども、西田自身の歴史哲学的思索によって書かれた西田には、これまでのものにはない新鮮な人間像が見られる。「哲学」という特... [続きを読む]