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日本統治時代台湾における青年団を対象とした歴史人類学的研究。歴史資料や当時青年団員だった人々へのライフヒストリーインタビューなどから青年団の変容やメンバーの心理を丹念に探っている。青年団が当時の社会階層と複雑に結びついていたのが興味深い。
私個人としては以下の点が興味深い。もともとはどちらかといえば富裕層・地主層の師弟向けのものだった青年団(第2章~第3章)が、戦時色が濃くなる日本統治時代後期になると、幅広い層(小作・労働者の師弟など)対象のものに変容していく(第45章~第6章)。青年団自体がある種の階層上層移動のための媒体でもありそうした「下層」の青少年が上層移動を目指して青年団員になる。敗戦間近の志願兵制度開始時期になると、青年団を通じての従軍というプロセスがメインになる。青少年も軍役を通じて上層移動を目指す。青年団での教育も精神修養、日本的価値観の習得、褌を締めての体操など、より「大和魂」を身に着けるものになっていく。青年団員の中にもいわばそうした修養色の強い教育をうけることで「日本人になれる」というある種の期待を抱いていた面もあった可能性がある。非常にインパクトのあったエピソードは入団試験の話。末期にはいわゆる学科試験をなくして、面接や推薦による「人物重視」の試験に変更したとのこと。実直な人、好青年、素直な人などが求められたという。下手に頭が良いより、「良き心」をもった青少年の方が、国のために身も心も尽くすのに適正があるという判断だったのか。 |