中村 重穂 推薦リスト
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  1. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    本は脳を鍛える!

    クアトロ・ラガッツィ-天正少年使節と世界帝国- / 若桑みどり. - 集英社, 2003   北大ではどこにある?

    天正少年使節と言えば、高校の日本史や世界史で習った記憶があるだろう。これは、博覧強記の著者が、西欧の図書館や文書館に収蔵されている第一次史料を丹念に読み解いて、天正少年使節をとりまく権力者たちとキリスト教信者たち、そしてキリスト教会内の様々な駆け引きを世界史の大きな変動の中に於いて捉えようとした大著である。
    ただ、表題に惹かれて読んでみたものの羊頭狗肉の感は否めない。550ページにのぼるこの本を230ページくらいまで読まないとそもそも天正少年使節が出てこないし、彼らのヨーロッパでの体験もむしろ彼ら少年使節よりはキリスト教会と教皇庁、そし...   [続きを読む]

    登録日 : 2012-05-01

  2. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    誤解の連続は新たな思想を生むか

    仏教、本当の教え-インド、中国、日本の理解と誤解- / 植木雅俊. - 中央公論新社, 2011   北大ではどこにある?

    大学で哲学を学んでいた時、先輩から「結局ドイツ観念論哲学というのは、フィヒテとシェリングとヘーゲルがカントをどのように“誤読”したかの歴史だ」と言われて、へえぇ、そんなもんなの、と思ったことがある。この本は、帯に書かれた「壮大な伝言ゲームの果てに。」という一句に惹かれて買ってしまったのだが、読んでみると結構面白かった。その面白さというのは、-著者には申し訳ないけれど-謂わば底意地の悪い面白さで、これまでの翻訳者(=謂わばその学問の世界ではお偉いさん)や、さらには道元や親鸞などの宗祖までもがどのように仏典を誤読してきたかが、宗教...   [続きを読む]

    登録日 : 2012-05-01

  3. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    文章を書くことが苦手な人に安心を与えてくれる本

    「書くのが苦手」をみきわめる / 渡辺哲司. - 学術出版会, 2010   北大ではどこにある?

    今学期(2011年度第2学期)から、文章表現が苦手な人を対象にした「一般教育演習」を開講したので、その準備のため過去1年かけて、いわゆる「文章読本」的な本を36冊ほど読んでみた。(実は、こういうことはすでに小説家の斎藤美奈子さんがやっていて、その成果は『文章読本さん江』(筑摩書房)で公にされている。) この本は、その中でも「苦手」という心理がどうして生じているのかを明らかにして、具体的にどのような対策を採ればそれが克服できるのかを書いている点でもっとも参考になったものである。
    ...   [続きを読む]

    登録日 : 2011-11-14

  4. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    「田辺元ルネサンス」のために

    田辺元哲学選I~IV(全4冊) / 田辺元. - 岩波書店, 2010   北大ではどこにある?

    前にこの「本は脳を育てる」に西田幾多郎の『善の研究』を推薦したことがある。ところが、日本のアカデミックな哲学界では、西田は何かと話題にもなり研究対象にもなるのに、その謂わば批判者であった田辺元については(同じく批判者であった戸坂潤と比べても)圧倒的に研究(あるいは言及)が少なかったし、むしろ色々な意味で批判的に見られすぎたり西田との対比(それもマイナスの)で捉えられすぎたりしてきたように思われる。私事で恐縮だけれども、僕も院生時代に西田哲学と田辺哲学の対立点について研究発表を...   [続きを読む]

    登録日 : 2011-01-04

  5. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    『聖書』成立のドラマに迫る

    聖書の起源 / 山形孝夫. - 筑摩書房, 2010   北大ではどこにある?

    山形孝夫氏の本の中では、過去に『砂漠の修道院』をこの「本は脳を育てる」に推薦したことがある。あの本が砂漠の修道院に生きる修道士達の人間ドラマとして読めるとすれば、今回推薦する『聖書の起源』は、『聖書』という信仰の書が現実の一つの書物として成立していく過程に込められた(ナザレのイエスや福音書記者達の活動を含めた)様々な事象の展開としてのドラマと読めるだろう。要となるのは『聖書』を古代オリエント世界の神々との関係-ある意味ではパワーゲームと言い換えても良い-の中で形成されたものと...   [続きを読む]

    登録日 : 2011-01-04

  6. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    類まれな人間観察の鋭さ

    君主論 / マキアヴェッリ. - 岩波書店, 1959   北大ではどこにある?

     マキアヴェッリあるいは『君主論』というと、後世に染みついた「権謀術数を弄する奴」というイメージが浮かぶが、実際の彼はそういうことを中心的な思想として言いたかったわけではない、というのが今日では一般的な理解となっている。この本は時として“政治思想の古典”などと言われるが、そういう読み方を一旦脇に置いて、彼がこの本の中でどのように人間を描き出しているかを読み取っていくと意外に面白い。それも、表だって書かれている様々の君主ではなく、名前すらも分からないような一般人や兵士たちを、国や君主にとってどのような存在と見ていたかに焦点を当て...   [続きを読む]

    登録日 : 2010-09-13

  7. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    「哲学」のススメ

    善の研究 / 西田幾多郎. - 岩波書店, 1979   北大ではどこにある?

     『善の研究』については、これまで嫌になるくらい論文や研究書があり、僕もかつてその手のものを書いたことがある。それだけいろいろな読み方・解釈が可能だという点では紛れもなく「古典」であるが、同時に何回読んでもすっきりと分かった感じになれないところもある。そういうところから、「西田哲学を理解するためにも実際に参禅をしなければならない」(久松真一)といった言説が出てくるのだろう。
     『善の研究』は、すぐ分かるようでありながら実は分かりにくいし、まさにその「分かる=理解」という営みそのものを問題にしているところがあるので、どこまで行って...   [続きを読む]

    登録日 : 2010-08-17

  8. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    高校で読まされてウンザリした人に敢えて今勧める

    舞姫 / 森鴎外. - 筑摩書房, 1995   北大ではどこにある?

    今回、この「本は脳を育てる」に推薦された本を全部見てみた。(僕は別として)北大の優秀な先生方が思い入れ充分に推薦しておられるのだからそれなりに読む価値があるのだとは思うけれども、なぜか古典と言われる作品が洋の東西を問わず少ない。僕も書いたことがあるから他人のことをあげつらってはいけないのだが、何となく新刊書の紹介のようになっている観がある。古典は高校までの間に読んでいるはずだから、今更勧める必要もないという考え方もあるかもしれないが、古典が古典と言われるほどまで時代を超えて生き続けるのは、人間の成長とともに様々な新しい読み方を...   [続きを読む]

    登録日 : 2010-07-28

  9. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    映像芸術の極致!

    オルフェ(DVD,VHS) / ジャン・コクトー. - アイ・ヴィー・シー,    北大ではどこにある?

    フランスが生んだ万能の芸術家-その活動は詩、小説、音楽、絵画、舞台演出、映画に及ぶ拡がりを持つ-ジャン・コクトーの、まさに幻想・幻視芸術の粋を極めた作品である。この映画を高校生の時に初めてテレビで見たのだけれども、見終わって恥ずかしげもなく「ジャン・コクトーは天才だ!」と叫んでしまったことを覚えている。その後何回もこの映画を見てきたが、見るたびに上の感想は間違いなかったと感じている。
    物語は、ギリシャ神話のオルフェウスとエウリュディケーの悲劇を下敷きにしているが、コクトーの奔放不羈な想像力によって、生と死、詩人(芸術家)の運命、...   [続きを読む]

    登録日 : 2010-03-22

  10. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    一つの国を知るということ

    オーストラリアの言語教育政策 / 青木麻衣子. - 東信堂, 2008   北大ではどこにある?

    オーストラリアという国は、私が小学生の頃(!)は「白豪主義」というキーワードとともに社会科で教えられていた。しかし、その後この国は「白豪主義」から「多文化主義」へと大きな方針転換を遂げることになる。本書は、オーストラリアの言語教育政策に焦点を絞って、上記の方針転換過程でそこに浮かび上がる「国家統合」と「多文化主義」の緊張関係を明らかにした労作である。しかし、ただ言語教育政策の検討だけでなく、(比較)教育研究や地域研究、マイノリティ研究に関してもこの本が提供してくれる知見は多い。広い意味での社会科学研究とは何かを、そしてまた、その方法...   [続きを読む]

    登録日 : 2010-01-14

  11. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    「倫理」は可能か?

    支配と服従の倫理学 / 羽入辰郎. - ミネルヴァ書房, 2009   北大ではどこにある?

    羽入辰郎は、過去、『学問とは何か』で些か刺激的な言説を思想界に投げかけてきた研究者である。本学経済学研究科の橋本努教授が、そのホームページで「羽入-折原論争の展開」を企図され、そこに羽入の著作に対する見解が数多く寄せられたが、残念ながらこの「論争」は、生産的な方向に向かう前に羽入によって『学問とは何か』の中で終結を宣言されてしまった。
    本書は、羽入の講義録を基にまとめられたものであるが、「倫理」をもし「よく生きること」と解釈するなら、「支配と服従の倫理」というの...   [続きを読む]

    登録日 : 2010-01-04

  12. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    老いと社会のつながりを考える

    暴走老人! / 藤原智美. - 文藝春秋, 2007   北大ではどこにある?

    最近、老人(高齢者)の犯罪がメディアで報道されることが多くなったように思う。老人が犯罪をするからメディアがニュースネタとして飛びつくのか、本当に老人の犯罪が増えているのかは慎重に考える必要があるだろう。しかし、少なくともこれまでの社会の(あるいはメディアの)あり方として、若者の犯罪や不作法には寛容ではなかった一方で老人の犯罪や不作法(特に後者)が大目に見られてきた面はある。このページを読んでいる人の中にも、町中での老人の振る舞いに「年寄りだから何でも許されるってわけじゃねーよ!」と思ったことがある人がそこそこいるに違いない(実は、...   [続きを読む]

    登録日 : 2009-12-03

  13. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    「大学」の行く末を考えたい人に

    学問の下流化 / 竹内洋. - 中央公論新社, 2008   北大ではどこにある?

    竹内洋の著書を既に何冊か読んでいる人が、その社会学的分析によって表題の「学問の下流化」という現象を理論的に解明し、その処方箋を論じたものであると期待して読むとやや肩すかしを喰います。これは別段否定的に評価しようというわけではなく、書評や短い評論の集成という書き方のスタイルに起因するもので、内容は広い意味での学問論や大学論を幅広く取り上げ、そのある種の病理的状況を竹内氏独特の切り口と語り口で捌いていくものになっています。「学問の下流化」そのものが全体的な主題とは言い難い面があるので、読み方によっては不満が残る面もあるかもしれませ...   [続きを読む]

    登録日 : 2009-06-23

  14. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    芸術は人生を救済するか

    虚空遍歴 / 山本周五郎. - 新潮社, 1966   北大ではどこにある?

    山本周五郎というと『樅ノ木は残った』や『赤ひげ診療譚』などが思い出されますが、この『虚空遍歴』は、それらとはまた違った人間像を描いています。行きつけの古書店のご主人とこの本の話になったとき、「暗い話ですよね」と言われましたが、確かにハッピーエンドは全くありません。しかし、自分の追い求めるもののために、周りの人間たち-「世間」と言い...   [続きを読む]

    登録日 : 2009-06-08

  15. 推薦者 : 中村 重穂   (国際連携機構国際教育研究センター)

    「自分」の深奥をのぞく

    砂漠の修道院 / 山形孝夫. - 平凡社, 1998   北大ではどこにある?

    ややもすれば抹香臭い表題ですが、エジプトの砂漠の修道院に引きつけられてきた人々の心の遍歴と葛藤、そのような心性を生み出すエジプトの社会と歴史が生き生きと描かれている、読み応えのある本です。特に修道士一人一人の聞き取り調査に基づくストーリーは、普段うかがい知ることが難しい「修道院」の生活と、そこに何かを求める魂のありようをキリスト教という枠組みを超えて明らかにしてくれます。キリスト者であってもなくてもここに描かれた修道士の誰かに、読者が共感できる人物を見つけることができると思います。「世間」と「自分」との葛藤をどう受け止めるかと...   [続きを読む]

    登録日 : 2009-06-08

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