知識・学問 一つ上のジャンルへ
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- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
大学の「勉強」は大変なのである!
「知」の方法論-論文トレーニング- / 岩崎美紀子. - 岩波書店 , 2008
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この本を推薦するに当たっては苦い思い出から始めたい。高校時代の「倫理・社会」の授業で、「大学に行く目的は何か?」というテーマでグループ・ディスカッションをしたことがあった。僕のグループ5人の中で、「大学へは勉強しに行く」という意見を出したのは僕だけで、他の同級生は全員「大学へは遊びに行く」と答えたのである。グループ代表として結論を報告した同級生の、僕を小馬鹿にしたような目つきはいまだに目に浮かぶ。そんな高校だったから、卒業時、男子生徒20名中現役で大学に進学したのは2名だけだった(僕も浪人組)。
北大に進学してきた学生諸君の... [続きを読む] |
登録日 : 2016-05-15
学習に最適
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
「教養」は実践するものである。
人生を面白くする本物の教養 / 出口治明. - 幻冬舎 , 2015
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この本の推薦文は、僕の体験したエピソードの紹介を以てこれに替えたいと思う。
大学時代に読んだ本の中に、イギリス人は初対面の相手にまず政治の話題を振って、相手がその話題についてこられなかったら「こいつは付き合う価値のない奴だ」と見切りをつける、という趣旨のことが書いてあった。いくら何でもそれは決めつけすぎだろうと思ったものの、そのことを忘れて十年ほどが経過し、機会を得てエジプトに赴任することになった。そして、彼の地でイギリス人のカップルと知り合い、ある日彼らの家に夕食に招待された。席についてまずワインで乾杯となったのだが、... [続きを読む] |
登録日 : 2016-05-02
ぜひ読んでみてほしい
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
西洋哲学の基本の「き」
方法序説 / ルネ・デカルト. - 岩波書店 , 1997
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「われ考える、ゆえにわれあり」や「明晰判明」、あるいは”方法的懐疑”といったことばであまりにも有名な、西洋(近世)哲学の始まりを飾る書である。哲学書というと初めから難しいものと考えて敬遠してしまう向きもあるかもしれない-そのような書物があることを否定はしない-が、この本は、きちんと読んでいけばそれなりに分かるように書かれているものである、同時にまた、西洋近世~近現代の哲学が多くの考えるべき課題をそこからくみ取っていった、西洋の知の基本をなす書物でもある。そのようなものを読んでおくことは、洋の東西を問わず学問を研究しようとするも... [続きを読む] |
登録日 : 2016-03-12
基本書
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
もう一つの日本の理論物理学形成史
科学ジャーナリズムの先駆者 評伝 石原純 / 西尾成子. - 岩波書店 , 2011
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石原純という名前を初めて見たのは、大学時代に西田幾多郎の哲学を勉強していたときであった。西田の弟子であった下村寅太郎の文章中に、日本に於ける相対性理論の紹介者といった形で名前が出ていたのを覚えている。この本では、物理学者、相対性理論の研究者・紹介者という面だけでなく、科学ジャーナリストとしての石原に光を当てて多くのページを割いている。昨今、自然科学研究の世界では研究の確実性やその情報の透明性を揺るがすような事案がいくつか起こった。(勿論、人文社会科学でも同様のことはあったし、今後もあり得る。) このような時代に、科学研究の内実... [続きを読む] |
登録日 : 2016-03-12
ぜひ読んでみてほしい
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
「思想劇」としての般若心経
真釈般若心経 / 宮坂宥洪. - 角川書店 , 2004
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この本の表題は書き間違いではない。「新釈」ではなく「真釈」、つまり著者は「俺の解釈こそ本物だ!」と宣言しているわけである。もの凄い自信である。仏教学が専門ではない僕には、その「真」の度合いは測れないが、内容は確かに説得力に富む。それはひとえに、サンスクリット原典を文法的に厳密にたどりながら漢訳般若心経の問題点を的確に指摘し「四階の建物の比喩」という説明の枠組みを駆使して読み解いていく著者の態度からもたらされるものである。それだけに「あとがき」に書かれた、従来の般若心経解説書やそれらの執筆者に対する批判は秋霜烈日を極める。著者は... [続きを読む] |
登録日 : 2015-07-18
基本書
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
「まとも」な議論をするために
反論の技術-その意義と訓練方法- / 香西秀信. - 明治書院 , 1995
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この本は実は一時期僕の日本語の授業のタネ本であった。どのようにしたら留学生に、与えた課題とかみ合う文章(議論)を書けるように指導できるのか困っていたときにこの本に出会って、その説得力ある書きぶりと豊富な実例に蒙を啓かれる思いがしたものである。(ただ、正直、この本の助けを借りて行った授業実践に対する留学生の反応は賛否真っ二つであった。)
書名に「技術」と書いてあるが、所謂ハウツー本の域を超えて「反論する」ということが学問にとっていかに重要な知的営為かを詳しく説いており、読み物としてもおもしろい。この本に書いてある「訓練方法」を... [続きを読む] |
登録日 : 2015-02-20
学習に最適
- 推薦者 : 寺沢重法 所属 : 文学研究科 身分 :
日本人の幸福感・運命主義・根性主義
日本人の心理 / 南博. - 岩波書店 , 1956
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社会心理学者・南博先生による日本人の心理的特性を扱った本。初版は1953年と結構昔のものであるが、個人的には今でも十分読み応えのあるものだと感じた。江戸時代の各種養生書・処世書などをベースとしつつ、出版の処世書(今でいう自己啓発本か?)などからも引用をし、日本人の心理を整理している。日本人論の初期作品と言っていいかもしれない。もっとも日本人論と言っても、出版された当時の社会状況を反映してか、多くの日本人論に見られるような日本の素晴らしさを唱導する論調は見られない。むしろ軍隊や戦争、日本の権威主義的人間関係などを鋭く批判するというスタン... [続きを読む] |
登録日 : 2014-12-26
名著
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
サンデルとの対話は成功したのか?
日本生まれの「正義論」-サンデル「正義論」に欠けているもの- / 川本兼. - 明石書店 , 2011
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著者は、サンデルの正義論が結局はアメリカの「力」の論理によるものではないかという疑問を呈するところから始めて、サンデルの正義論に対する対抗思想としての正義論を生み出そうとした。その懸命な思索の成果がこの本である。著者の思想的格闘が成功したかどうかは、読者それぞれが判定されたい。その中で読者自身が自分なりに正義について考えることをきっと始めているだろう。
ネタバレになるかもしれないが、僕の読後感としては著者は正面からサンデルの思想に切り込もうとしているがところどころで自分に不都合な証拠を-忘れているのか意図的にかは分からないが... [続きを読む] |
登録日 : 2014-12-26
学習に最適
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
「近代」は人をいかに突き動かしたか
日本近代思想の相貌-近代的「知」を問いただす- / 綱澤満昭. - 晃洋書房 , 2001
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この本の表題には「日本近代思想」とあるけれども、おなじみの人々、例えば福沢諭吉や内村鑑三、新渡戸稲造、そして西田幾多郎や田邊元や和辻哲郎などはまったく主題化されていない(叙述の一部に僅かながら登場することはあるが)。著者は9人の人物を取り上げ、それらの人々の姿を描き出すことで「近代」という時代を捉え返しさらにそれらの捉え返しが「現代」、あるいは戦後日本に何をもたらし得るか、ということを問題にする。9人の人物は、宮沢賢治と長谷川如是閑を除けば今日のアカデミックな思想史研究では殆ど顧みられることがない人々ではあるが、それだけに日本の「... [続きを読む] |
登録日 : 2014-12-12
ぜひ読んでみてほしい
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
異質な他者との共存は可能か
地球(テラ)へ… (全3巻) / 竹宮惠子. - 中央公論新社 , 1995
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この作品は日本のSF漫画史上に語り継がれるべき大傑作である。それがこの北海道大学附属図書館に置いてあることについて、北大附属図書館スタッフの見識を僕は高く評価したい。単に傑作漫画を置いているからということではなく、この漫画が突きつけてくるあまりにも重い問いが、今日の我々にとって何よりも考え抜かれ、かつ実践されねばならない問いだからである。
グローバル化した社会で異文化としての他者と向き合ってそこで、関わりを深めていこうとするか相手を拒絶するかの選択に迫られることは現代では以前よりも遙かに頻繁にかつ容易に起こりえる。この漫画は、... [続きを読む] |
登録日 : 2014-12-04
名著
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
哲学書を読み解く技術とは
『純粋理性批判』を噛み砕く / 中島義道. - 講談社 , 2010
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中島義道氏は、いろいろなところで一人っきりで哲学書を読むことの危うさを論じ、ご自身の「哲学塾カント」のホームページでも「哲学書を正確に読み解くには独特の技術が必要で、いい加減なわかり方ほど危険なことはありません。」と書いている。その中島氏がカント『純粋理性批判』の「アンチノミー論」を中心に据えてカントの-そしておそらくは中島氏の考える、「哲学書」の-読み方を実践したのが本書である。
この本は、難解な哲学書である(と思われている)『純粋理性批判』について意外にわかりやすいことを書いているのだ、というスタンスからカントの行論を追... [続きを読む] |
登録日 : 2014-12-04
ぜひ読んでみてほしい
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
ブームが沈静化した今こそ冷静に読んでみよう
これからの「正義」の話をしよう-いまを生き延びるための哲学- / マイケル・サンデル. - 早川書房 , 2010
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言わずと知れた、「NHK白熱教室」のネタもととなった本である。テレビでのサンデルの講義に独特のスタイルがあったこともあって売れに売れたらしい(僕の持っているのは第78版!)が、こうした本はブームが去った今こそ落ち着いて読んでその内実を判断する必要があるだろう。
サンデルは、現代世界のアクチュアルな問題を古典から現代までの政治思想と結びつけて論じながら彼なりの(=コミュニタリアンとしての)哲学を開陳していくが、その解決が妥当であるかどうかは読者が今一度批判の目をもって考えるに値するものである。
今は文庫版も出て読みやすくなってい... [続きを読む] |
登録日 : 2014-12-04
基本書
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
インタビュー調査に必読の一冊
聞きとりの作法 / 小池和男. - 東洋経済新報社 , 2000
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研究の必要からインタビュー調査をすることになって、そのためのノウハウが書いてある本を数冊読んだが、その中で最も役に立ったのがこの本である。
内容は著者の小池氏が専門とする経済学の、主として職場の技術移転を例にとって書かれているが、その分インタビューの実際に関する記述が非常に豊富でわかりやすい。また、インタビューデータからどのように読み取りを行ったらいいかの例やインタビューの前後に行っておくべきことなども書かれていて、将来、聞きとり調査が必要となる分野で研究しようと考えている学生にとっては必読の一冊である。 |
登録日 : 2014-12-04
基本書
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
図書館の達人になる!
登録日 : 2014-12-04
学習に最適
- 推薦者 : 寺沢重法 所属 : 文学研究科 身分 :
日本人は日本的なのか?何を以て日本的と言えるのか?
日本人論の方程式 / 杉本良夫, ロス・マオア. - 筑摩書房 , 1995
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「日本人論」というものがしばしば人口に膾炙することがあります。古くは新渡戸稲造『武士道』、最近では藤原雅彦『国家の品格』といったところでしょうか。そうした書籍では、日本国内の格言、歴史上の人物の言動録、著者の国内外での体験などをエビデンスとして「日本人は〇〇である」とされることがしばしばあります。そうしたエビデンスの使い方によって「本当に日本人は日本的である」と言っていいのか?と疑問を呈したのが本書です。
社会科学方法論としても重要な書籍ですが、日本文化や日本と海外の比較に関心がある人も一度目を通してみるといろいろ頭のトレー... [続きを読む] |
登録日 : 2014-08-27
名著
- 推薦者 : 寺沢重法 所属 : 文学研究科 身分 :
人々のものの見方や考え方を社会学的に分析する
階層・教育と社会意識の形成─社会意識論の磁界 / 吉川徹著. - ミネルヴァ書房 , 1998
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社会意識論の重要書。人々のものの見方や考え方を社会学的に分析するとはどういうことなのかが方法論も含めて理解できると思います。統計を駆使した専門書でやや難しいですが、著者も書いている通り、家電製品のマニュアルを注意深く読むだけの力を入れれば、考え方は十分理解できると思います。 |
登録日 : 2014-08-17
名著
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
西田哲学の実践としての西田評伝
西田幾多郎 / 大橋良介. - ミネルヴァ書房 , 2013
北大ではどこにある? |
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西田哲学の難しさについてはその一端を、以前この「本は脳を育てる」に『善の研究』を推薦したときに書いておいた。この『西田幾多郎』は、現在西田幾多郎研究の世界水準を牽引する著者が、単に「伝記」=時間の流れの中である人物がなしたあれこれのことを書くだけでなく、まさに西田を一つの”出来事”とし、それに西田哲学を実践してみせることによって新たな西田像を明らかにしたものである。西田の伝記はこれまでさまざまなものがあったけれども、西田自身の歴史哲学的思索によって書かれた西田には、これまでのものにはない新鮮な人間像が見られる。「哲学」という特... [続きを読む] |
登録日 : 2014-06-22
ぜひ読んでみてほしい
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
読み物として面白い文章読本
思考のための文章読本 / 長沼行太郎. - 筑摩書房 , 1998
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ここ何年か、「一般教育演習(フレッシュマンセミナー)」で日本語文章表現関係の授業を開講しており、その参考とするためにあれこれの文章読本を45冊ほど読んで、今46冊目を読んでいる。率直に言って授業の素材として役に立ったものはほとんどなく、推奨できるものは4、5冊程度である。そして、これらの推奨できる数少ない本も、どう言ってみても結局はハウツー本であり、面白さという点ではほとんど期待できない。その中にあって、長沼氏のこの本は唯一と言っていいほど読み物としての面白さがある文章読本である。この本を通して読者は、文章作成の根本にある「問い」を立てる... [続きを読む] |
登録日 : 2014-06-20
学習に最適
- 推薦者 : 森川正章 所属 : 地球環境科学研究院 身分 :
柔軟な思考能力を鍛えるのに最適な書
登録日 : 2014-04-10
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター 身分 :
もう一つの「本は脳を育てる」
古典力 / 斎藤 孝. - 岩波書店 , 2012
北大ではどこにある? |
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以前森鴎外の『舞姫』を推薦した時に、「古典」を読むということについて少しだけ書いたことがある。では「古典」とは何か、と言うことになると答えはそれほど簡単ではない。そのわかりやすい見取り図の一つがこの『古典力』である。これを読むと、読んだことがある本に再会したり、名前は知っていても(案外それで分かった気になって)読んでいない本に出遭ったりするだろう。そこで興味が湧いた本があればためらうことなく手にとって欲しい。なぜそれが「古典」になっているかは、斉藤氏の解説を手がかりに読めば自分なりの理解を獲得することができると思う。
ちなみ... [続きを読む] |
登録日 : 2014-03-08
ぜひ読んでみてほしい
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