日米両国におけるドキュメント・デリバリー・サービスの
改善に関するラウンドテーブルに参加して

                            情報システム課 星野 雅英
 
1.はじめに

 日米文化教育交流会議(CULCON)の情報アクセス・ワーキンググループでは、平成10年6月の会議で、「日米両国間の図書館、情報サービス機関のドキュメント・デリバリー・サービス(文献提供サービス)の改善」を提言した。
 それを受けて、国立大学図書館協議会、国公私立大学図書館協力委員会の共催で、日米相互の図書館の実務担当者を中心とした、標記のラウンドテーブルが、平成11年2月8−10日に東京で開催された。
 北大から原館長と星野が出席したので、その報告をしたい。
 米国はNCC(National Coordinating Commitee on Japanese Library Resources)の責任者をはじめ日本語資料を扱っている大学図書館等から7名、日本は国立大学図書館協議会・国際情報アクセス特別委員会、国公私立大学図書館協力委員会等(東大、北大、千葉大、一橋大、東工大、学芸大、都立大、慶応大、学術情報センター、文部省等)から20名参加した。
 
2.ラウンドテーブルの概要

 主な内容は次の通りであった。詳細は、国立大学図書館協議会のホームページに近く広報される予定なので、そちらをご覧いただきたい。
1)オープニングセッション
 ラウンドテーブル開催の経緯、会議の位置づけと大学図書館サービスの現状、米国における大学図書館サービスの現状について、3名から説明と報告があった。

2)第1セッション:ドキュメント・デリバリーサービスのあり方
 日本及び米国におけるドキュメント・デリバリー・サービスの現状と課題について3名から報告があり、質疑や意見交換があった。

3)第2セッション:日米における相互の学術情報アクセスへのニーズ調査分析結果
 日本の図書館・研究者の米国へのニーズ調査結果、日本語情報に対する米国研究者のニーズについて、それぞれ報告があり、質疑や意見交換があった。
 日本の調査は米国語情報のニーズ調査ではなく、米国の文献全般に対するものであり、米国の調査は日本語情報に対するニーズ調査であることに日米の大きな違いがある。
 日本の研究者に対するアンケート調査では、「米国に文献複写等を依頼した」が26%、「図書館で対応して くれれば利用したい」が23%、「必要がない」が51%であった。「必要がない」が多いのは、英国のBLDSC(文献供給センター)への依頼が国内と同様に比較的簡単にできること、外国雑誌センター館が設置され米国の雑誌の多くは国内で間に合うということ、等が大きく影響していると思われる。
 米国からの報告では、従来は特定の大学の研究者が特定の分野の資料を必要としたが、最近は、大学も分野も広がり日本語を学習する学生のニーズも高まり、もはや、「日本研究」が特殊なものでなくなってきているという興味深い指摘があった。

4)第3セッション:文献画像伝送システム
 日本、米国の現状についての報告の後、東大で開発中の文献画像伝送システムのデモンストレーションがあったその後、質疑や意見交換があった。
 技術的には細かい課題はあるものの、日米間のコピーの送付は、郵送でなく、文献画像伝送システムを使って送付できる可能性が高いことが再確認された。

5)第4セッション:日米間のドキュメント・デリバリー・システム実現のための今後の課題
 日本における相互利用規約の現状と今後の展開の予定、日本における解決すべき諸課題、日米間相互接続の拡大について、それぞれ報告と提案があり、質疑や意見交換があった。
 提案については、総括セッションで協議された。

6)第5セッション:日本語情報データベース(コンテンツ及びカタログ)に関する意見交換
 日本における日本語情報データベース構築と利用の現状、米国における日本語雑誌情報のWebでの構築と提供の試みについて、それぞれ報告があり、質疑や意見交換があった。

7)総括セッション
 日米間のドキュメント・デリバリー・サービス改善の具体的アクションプランが、日米双方で提案され、協議の結果次のことを試行的に行うことが決まった。
 a)日本の国立大学5館、米国図書館10館の間で、ILL(図書館間相互貸借)を実際に行う。
 b)試行期間は平成11年7月から12年3月とする。
 c)文献のコピーは、郵送でなく、文献画像伝送システム(/電子メールのファイル添付機能)を使って行う。
 d)経費は、試行期間は日米間は無料とする。今後、料金支払い・決済方法については日本で検討する。
 e)ILLシステムの日米間相互接続については、学術情報センターに要望する。
 
3.ニーズ調査の結果から

 北大で担当した米国へのニーズ調査では、研究者から日本の大学図書館に対し、国際的なILLに対応する図書館側の窓口をきちんと設置し広報を行うべきであるというような要望と期待が寄せられた。また、海外への料金支払いがなぜ図書館を通して簡単にできないのか、ILL手続きはもっと簡素化し迅速化できないのかというな指摘も少なくなかった。米国に対して米国の大学図書館全体のOPAC(オンライン目録)の構築と提供を求める声が多く また、日米に双方に対しILLシステムの日米間相互接続を求める声が少なくなかった。
 ニーズ調査の結果と分析の詳細については、別途「大学図書館研究」等に発表したい。
 
4.おわりに
 どのセッションも、理想的なことより現実的で具体的な内容が多く、予定時間をオーバーするほどの活発な意見交換があり、日米相互に理解を深めることもできたと思う。また、この会議が実り多いものとなったことを、会議に参加した一人としてうれしく思っている。さらに、今回のラウンドテーブルが、日米間のILLの大きな進展のきっかけとなればと願っている。



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