北分館が情報環境図書館へとリニューアル
 
                           附属図書館北分館長 吉野悦雄
 
 平成11年度に北分館がおおきく変わります。インターネット環境に対応し,映像・音声情報の閲覧設備が大幅に改善します。附属図書館本館や学部図書室の将来のありかたについても参考になろう点が多いかと考えますので,少し詳しくご紹介したいと思います。
 
インターネット環境と学習図書館

 低学年次対象の学習図書館にインターネット環境は必要ない,どうせサーフィン(さまざまなホームページを波乗りのように数秒ごとに流し読みで移っていくこと)をするぐらいだろうとお考えの方もおられるのではないでしょうか。また文系の研究や学習には本と雑誌で十分ではないかと思っておられる方も多いのではないでしょうか。
 そのような方のために,二つだけ例を挙げましょう。農林水産省はそのホームページで,各種審議会の議事録や地方公聴会の記録を公開しています (注1)。農業政策の決定過程が国民に対して公表されています。岩見沢で農業を営むAさんや北海道大学教授のBさんがどのような発言をされたかが確認できます。このような情報は,以前から活字にはなっておりましたが,関係者のみに配布されるものであり一般には公開されていませんでした。ましてや大学図書館はこれら資料を収集することはできませんでした。農業政策や日本農業論を学ぶ学生にとって,レポートや卒業論文を作成する際に,このホームページは必見のものとなっています。インターネットは,あれば便利という段階を越えて,なければ研究できないという段階になっています。文系の研究者や院生・学生にとっても理系と同様にインターネットはライフラインとなっています。
 この記事がみなさんのお手元に届くころには,新聞紙上で,1月1日時点での公示地価が公表されているでしょう。札幌市北区北○条西○丁目が何万円と公表されます。国土庁のホームページ(注2)は,これら調査地点のすべてについて,例えば札幌市の場合ならば575地点のすべてについて情報を公開しています。直面する道路の幅など詳細な情報が物件ごとに得られ,現場見取り図まで画面上に現れます。地価動向を研究する学生にとっては必需品でしょう。研究は別としてご自宅周辺の土地価格に興味のある方もぜひ覗いて下さい。
 
情報環境個人閲覧ブースの設置

 このように学生にとって,インターネット環境は本や雑誌と並んで不可欠の情報ソースとなっています。北分館では平成10年度から三階開架閲覧室にインターネット端末を設置し,学生の学習をサポートしてきましたが,平成11年4月からは,さらに四階に16台の情報環境個人閲覧ブースを設置します。これは肩ほどの高さのパネルで仕切られた個人ブースです。持ち込みパソコンを置いたまま書架に本を探しに行けるようにドアに鍵がかかります。もちろんAC電源とインターネット接続コンセントを用意します。先日の学生実態調査でも,「学生にも個人閲覧室を使わせてほしい」という希望が寄せられていました。静粛なスペースで,情報環境のもとで集中して勉強したいという学生の気持ちは良く分かります。このような勉学熱心な北キャンパス学生・院生の学習を北分館は全面的に支援したいと考えています。
 北分館四階の現状のスペースでは,情報環境個人閲覧ブースは16台の設置が限界ですが,平成12年度以降において四階の改築にかかわる概算要求が実現されれば,情報環境個人閲覧ブースを70台程度まで拡充したいと考えています。このような試みは,全国の国立大学図書館のさきがけとなるでしょう。
 
映像・音声情報と学習図書館

 『北大時報』2月号の記事にもありますが,平成10年度に『ビデオで学ぼう理科科目』というプロジェクト(総長裁量経費)が北分館で実施されました。これは入試で選択しなかった理科科目を大学で履修するに際して,その知識の補習をビデオ教材を利用して自学自習で行ってもらおうというプロジェクトです。映像・音声資料は,著作権法上の制約から,実質的には図書館内部でしか閲覧できません。ここにおいて大学図書館が学習支援に寄与することが求められています。
 北分館では100本以上のビデオ教材を新たに購入しましたが,閲覧数が飛躍的に伸びるなど,大きな効果を挙げたと自負しています。近年の学生にとって,まず目で見る,耳で聞くということが魅力的なイントロダクションになっているようです。
 さらに,最近では,CD−ROMによるバーチャル実験ソフトも開発されています。これは質量や温度などの定数をパソコン上で入力すると,その実験映像が画面上に現れるというもので,理科教育における自学自習には極めて有効なものと思われます。北分館でもこれを備えました。
 
マルチメディア端末公開利用室の設置

 平成11年度の年度末には,北分館の隣に,放送大学学園との合築建物として建設される総合メディア交流棟がオープンします。その二階のかなりの部分が北分館二階と渡り廊下で連結され,北分館と一体として利用に供せられます。そこではコンピュータ自習コーナーを含むマルチメディア端末公開利用室が新たに設置され,合計で100台近いコンピュータ機器とビデオ機器が設置される予定です。
 学生は,北分館所蔵のパソコン・ソフト解説書やCD−ROM,ビデオ資料・LL資料を用いてこのフロアーで学習することができます。既に述べた著作権法の制約を,図書館がこのようにスタンドアロン環境を整備することにより,乗り越えることができました。
 
印刷活字情報の重要性と電子図書館環境

 今まで述べたように新しい時代に対応した情報環境が重要であることはいうまでもありませんが,しかし,本や雑誌など従来型の文字情報が大学図書館の利用の主体であることは今後とも変わりがないでしょう。豊富な教科書や参考書が簡単に利用できる環境を整備する必要があります。
 そこで,北分館は平成11年4月より,二階の開架閲覧室と三階の閲覧室を統合します。三階閲覧室は今までは書籍が置かれていませんでした。学生は二階から本を探して三階に昇って閲覧していました。これからは三階にも約半分の開架書庫を設置して,学生がみぢかに本を探せるようになります。開架の書籍数も増加しました。
 また平成10年度から既に実現していることですが,二階と三階の開架閲覧室には,従来からの図書検索専用パソコン端末(OPAC)のほかに,インターネットに接続したパソコン端末18台と,持ち込みパソコン用インターネット接続コンセント6個が設置されます。これらにより,北分館の二階から四階までの3つのフロアーと総合メディア交流棟の2階のフロアーが情報環境対応フロアーとなります。
 
図書館業務の効率化と利用環境の改善

 本学では従来から,利用者サービスの向上と業務の効率化のため,図書館本分館に限らず図書業務の機械化への取り組みを行ってまいりました。
 北分館では平成11年4月より,自動貸出装置を導入します。これはスキャナー装置のようなもので,利用者が借りたい本を装置に置き,磁気カード型の図書館利用証を差し込むと機械が自動的に貸出処理を行ってくれます。最近の学生は,他人と対面することを避ける傾向がありますが,図書館職員の手をわずらわせることなく利用者はより気軽に本を借りることができます。さらにこのシステムの導入により業務が効率化され,図書館利用者案内などのサービスの一層の向上にもつながります。
 
社会に開かれた図書館の実現

 高度情報化社会とせまりくる高齢化社会の中で生涯学習の重要性はいよいよ高まります。これからの大学図書館は社会に対しても開放されることをより強くもとめられていくことでしょう。
 既に述べましたが,北分館の隣に放送大学学園が移築されます。多くの社会人が総合メディア交流棟と北分館を訪れることになるでしょう。
 北分館では平成11年4月より自動入退館装置を導入します。これは地下鉄の自動改札機のようなものと考えてください。これからは学外利用者に対して,図書館職員が身分証明書や紹介状を逐一チェックすることなく,磁気カード(図書館利用証)を発行して気軽に利用していただきたいと考えています。また学内利用者にあっても入退館がよりスムースに行われるようになります。
 
おわりに
 このように北分館は,学内外のご支援を得て,大きく変わりつつあります。情報環境図書館や開放型図書館などの新しい機能がさらに充実されます。従来どおり全学教育対象の低学年次学生への学習支援を中心に置きながら,北キャンパスの学内利用者,放送大学学生へとサービスの対象を広げていきたいと考えています。
                   (よしの えつお)
注1)農林水産省のホームページ・アドレスは
   http://www.maff.go.jp
注2)国土庁のホームページ・アドレスは
   http://www.nla.go.jp
 

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