本は脳を育てる ~北大教職員による新入生への推薦図書~ 

推薦者 :  高井潔司      所属 :  メディア・コミュニケーション研究院      身分 :       研究分野 : 
情報化社会を読み解く書
タイトル(書名) 世論
著者 W.リップマン著 ; 掛川トミ子訳
出版者 岩波書店
出版年 1987.7
ISBN 400342221X
北大所蔵 北大所蔵1 
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推薦コメント

 情報伝達手段の急速な発展で、私たちはいやおうなく情報に取り囲まれ、ともすれば、実生活よりも情報との関わりの中で、生きていることに気づく。そして、一歩引き下がって考えてみると、情報化社会によってどれほど悲劇も生じているかが見えてくる。
 情報化社会を生き抜いていくには、そもそも情報とはどのようにして作られるのか、どのような性質を持っているのか、マスメディアが伝える情報とどう向き合うべきなのか。インターネットは本当にマスメディアよりも信頼できるメディアなのかーーなどの問題をきちんと考えていく必要があるだろう。
 こうした問題を考えていく上で、紹介した「世論」は格好の書である。
 本書が刊行されたのは、第1次世界大戦後の1922年であり、まだテレビやインターネットのない時代である。しかし、新聞が伝える情報の問題点を、新聞の編集現場の問題から、戦時における情報の使われ方、そしてそもそも情報というものが「現実環境」つまり現実そのものを伝えるものではなく、現実に似せた文字や画像にシンボル化された「擬似環境」に過ぎず、その「擬似環境」がもたらす情報の社会的機能の問題点を徹底的に解明している。
 1世紀近い前の本とはいえ、この情報化社会を考え直す上で極めて有用な書である。

※推薦者のプロフィールは当時のものです。

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