本は脳を育てる ~北大教職員による新入生への推薦図書~ 

推薦者 :  佐伯宏樹      所属 :  水産科学院・水産科学研究院      身分 :       研究分野 : 
科学を志す人にとって座右の一冊!
タイトル(書名) 理科系の作文技術
著者 木下是雄著
出版者 中央公論社
出版年 1981.9
ISBN 4121006240
北大所蔵 北大所蔵1 
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推薦コメント

「私の文章のどこがいけないのかわからない?」
「考察がなっていないって指摘されたけど,いったいどこが悪いのだろう?」
レポートを返却されてこんな悩みを持った人に一読をお薦めします!
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皆さんはこれから,さまざまな実験・実習を体験し,続いて卒業研究,さらには大学院での本格的な研究活動を経て社会に巣立つことになります。この過程で学ぶべきレベルは,日を追うごとに高くなりますが,一方で,学部,修士課程,博士課程のいずれの場合にも実験結果を文章で表現するという作業が求められ続けます。
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 科学の分野で「ものを書く」ということは,研究を通して得られた事実を検証し,それをもとに普遍的主張を確立する作業です。これは情緒豊かに人の心を打つことによって価値が高まる文学とは異質のもので,小説や詩をいくら書いても科学的な文章表現力を養うことはできません。日本語を使って生活しているということと科学論文を書くことは全く別物で,きちんとしたトレーニングが必要です。
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 ここに紹介する「理科系の作文技術」は,科学分野での日本語文章力を磨きたい理系学生・研究者を対象とした指南書です。1981年の初版から既に30刷を越え,多くの院生や研究者に読まれてきたロングセラーです。学年始めの北大生協書籍ランキングで常に上位に入るこの本を「科学の入口」に立っている皆さんに推薦します。
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 本書は,第2次世界大戦下のイギリスでチャーチルが官僚に対して要求した<簡潔な報告書を求める通達>の紹介から始まります。そして「簡潔な文章とはどのようなものか」「意味の取り違いを許さない正確な文章をどのように書くか」といった内容を,具体例を交えながら解りやすく説明していきます。さらに,「事実と意見を混同しない姿勢の必要性」や「論文は著者の思いを満たすために書く文章ではない」といった「科学の分野でものを書く際の心構え」についても解説しています。必ずしも第1章から読む必要はなく,どの章から読みだしてもきっと有益な提言にであうことができるでしょう。
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 卒業研究で初めて論文を書く学生が原稿を提出すると,多くの場合,原形が分からなくなるくらい真っ赤に添削がされて戻ってくるものです。実験レポートの頃から「論理的文章」や「正確な日本語」を意識し,科学的な文章表現力を磨いてほしいと思います。充分な文章表現ができないためにせっかくの研究成果に正当な評価が得られないというのでは,いただけません。
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これまで返却レポートで「考察ができていない」という評価をもらったことのある人は,ぜひとも第7章「事実と意見」を読んでみてください。20年前に初めてこの本を手にしたとき,わずか18ページのこの章を何度も読み返した覚えがあります。

※推薦者のプロフィールは当時のものです。

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