推薦者: 石橋 道大
所属: メディア・コミュニケーション研究院

「米軍基地の島」沖縄? 真実をまっすぐに見つめる

タイトル(書名):
沖縄の不都合な真実 (新潮新書601)
著者:
大久保 潤 / 篠原 章
出版者:
新潮社
出版年:
2015
ISBN:
4106106019
北大所蔵:
北大所蔵 1 
北大にある資料をOPAC(蔵書検索)で表示します。

推薦コメント

沖縄の米軍基地は長年住民を苦しめてきたといわれる。おどろおどろしい姿の軍用機が轟音をたてて飛び交う様がテレビで報道されている。しかし実際には基地周辺以外の地域や島では、軍用機の轟音を耳にすることは意外と少ない。市街地に近いため危険な普天間基地を辺野古という田舎に移転する政府の計画に対して、拳を天に突き上げて反対を絶叫する人々の姿がテレビで放送されている。ところが辺野古の住民の8割は移転を受け入れている。では反対を叫ぶ人々は、どこの人たちなのだろうか。テレビは反対を叫ぶ人々の姿は報道するが、辺野古の人々のことは報道しない。日本にある米軍専用基地の74%が沖縄に集中し、過度の負担にあえいでいるとも言われる。しかし実は「専用」というのが問題で、共用基地も含めると米軍基地の77%は本土にある。多くの人は「74%」に注意が行ってしまい、「専用」に注意を向けない。以上のいくつかの点を見ると、私たちが従来なんとなく抱いてきた「基地負担にあえぐ沖縄」のイメージは、間違いではないにしても、メディアが強調する一面だけを素直に信じすぎたのではないかという疑念が生まれてくるかもしれない。

 そんな時に、この書は「米軍基地の島」沖縄の真実を冷静に、しかし暖かくまっすぐに見つめることを教えてくれるように思う。沖縄の多くの人々にとって最大の問題は、基地ではないと著者は言う。では何なのか。それは直接本書を読んでほしい。固まった一面的な見方を排し、全体を理解しようとする著者たちの広く自由な視野は、沖縄問題を越えて、私たちが物事を見る際の大事な姿勢を教えてくれる。

※推薦者のプロフィールは当時のものです。