推薦者: 小泉 格
所属: 総合博物館

タイトル(書名):
新しい気候の科学
著者:
トマス・レヴェンソン著 ; 原田朗訳
出版者:
晶文社
出版年:
1995.8
ISBN:
4794962177
北大所蔵:
北大所蔵 1 
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推薦コメント

この本は、[Ice Time- Climate, Science, and Life on Earth] Harper & Row 1989 (「氷の時代ー気候、科学そして地球の生命」)の全訳である。

私たちは,間氷期にあっても高緯度域が氷河に覆われている,氷の時代に生きているのだという環境設定から始って,気候科学とはどんな科学か,私たちの社会とどうかかわっているか,気候科学が担っている使命とはなにかなどについて述べている。

この本では,気候を非常の長い時間スケ−ルでとらえ,それから次第に近くに焦点をあわせ,現在の天気が,地球という星の形成や大昔から続いてきた天候という仕組みの機能(システム)とどのように関連しているのかを明らかにしようとしている。この種の本によくある大気の話だけでなく,陸地,海,生物,地球内部,地球全体にまで話がおよんでいる。また,気候を手がかりとして,地球全体におよぶエネルギ−や物質運搬のシステム(気候システム)がどのように機能しているかを明らかにしようとしている。

「人類に繁栄をもたらしたのは気候である。」という立場から,天気はどのようにして作り出され,私たちがいま生活している環境がど のようにして生み出されてきたのか,近未来の地球環境はどう変わるのか,という科学的な考え方・見方がこの本の主題となっている。

 第1部「氷に覆われて」では,大気圏が形成されて太古の気候が出現し,それが変化して最終的に現在のような気候に変わってきた過程 をたどっている。たどり着いた現在では,人類自身が天気や天候を変えつつあり,その結果,生活様式も変わりつつある。ラブロックら が提唱した「ガイア仮説」をひもときつつ、人類と気候の関係を考察している。

 第2部「計算機のなかの地球」では,スーパーコンピュータや気象衛星などを駆使した最先端の気候研究を研究現場における最新の研究 成果によって紹介している。未来の気候を予測することができる気候モデルは,私たちの行動を見張るモニタ−のような役割を演じている。

 第3部「気候がかわるとき」では、人類が直面している地球環境の問題が取り上げられている。ここでは私たちが営む日常生活の活動によって環境や気候が変わってしまう最近の状況を、私たちがどう判断するかによって、私たちの価値が決まってしまうと警戒している。

※推薦者のプロフィールは当時のものです。