本は脳を育てる ~北大教職員による新入生への推薦図書~ 

推薦者 :  佐藤淳二      所属 :  文学研究科      身分 :       研究分野 : 
21世紀の人間は、ポスト・マラルメ主義者とならねばならない!
タイトル(書名) 詩・イジチュール
著者 マラルメ
出版者 筑摩書房
出版年 2010
ISBN 4480790012
北大所蔵 北大所蔵1 
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推薦コメント

ポスト・マラルメ主義とは何か? それは「従って」を切断する戦いの行動原則であり、革命理論である。しかし、その理論はまだその全容を現してはいない。若い世代がそれを実現していくことを期待されているのだ。
その来るべき理論は、原因理由を表す接続詞で繋がる連鎖を革命的に断ち切り、世界を原因結果の連鎖、必然性の連関から解放する文化的政治的運動原理とならねばならない。それがポスト・マラルメ主義の根幹でなくてはならない!
「従って」は、われわれのあらゆる認識、文化、ひいては科学を形成する根幹の装置であるが、ここに爆薬を仕掛けた危険きわまりない詩人がマラルメであった。「従って」をラテン語ではIGITURという。フランス語読みすれば「イジチュール」となる。この主人公イジチュール「従って」君は、世界が理由と根拠によって隈無く組織化されたことを感じ、それに閉塞している。偶然はどこにあるのか? 現実界(le REEL) は、ついにわれわれに偶然の出来事を通じて援助の手をさしのべてくれるのか? 今夜、深夜ゼロ時の時間を告げる鐘とともにその真実が明かされよう・・・ 

かつて、マラルメを読むことは秘儀伝授に等しい困難さを伴っていた。注釈書から注釈書へとわたりあるき、たった一行を読むために数週間呻吟し、その果てにゼミの準備をしても菅野昭正先生(『ステファヌ・マラルメ』は世界最高水準の研究書である)が演習で示された読みにはただ驚くばかり、ひたすら打ちのめされるということの連続であった。しかし、それも過去のこと、昔の物語だ。今の学生たちには整備された書物が身近となり、しかも日本語で読めるのである! この書物の深い迷宮に入るとき、脳は自然に宇宙の逆巻く波と巨大な渦巻きに直接に接続する・・・かもしれない。
ともあれ大脳=詩、大脳と詩が一体となる作品、そのような作品が、マラルメと共にこの世に姿を現したのは事実である。そして21世紀のわれわれはマラルメ後の世界を生きる必要がある。マラルメの後に生まれただけではマラルメ後を生きることはできないのだ。ポスト・マラルメであるために、マラルメを通過すること、それが求められているαでありωである。全世界のポスト・マラルメ主義者よ、団結せよ!



※推薦者のプロフィールは当時のものです。

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