推薦者: 西 昌樹
所属: メディア・コミュニケーション研究院

少年一人大地を行く

タイトル(書名):
たった独りの引き揚げ隊
著者:
石村博子
出版者:
角川書店
出版年:
2009
ISBN:
4048850423
北大所蔵:
北大所蔵 1 
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推薦コメント

第2次大戦が終わった翌年、満州に残った民間の日本人はやっと引き揚げることになった。日本人とロシア人の混血の少年(日本国籍)は一人で日本に渡ろうとする。ところが彼はロシア人だと大人の引揚者に荷物を奪われ、引揚げ列車から叩き出され、置き去りにされる。まだ10歳の少年は荷物もなくただ一人満州の荒野を縦断して1000キロ彼方の集合地へと歩き始める。ナイフ1本で彼は2カ月の旅を生き抜く。彼は母方のコサックの血を引いており、生き抜く意志を捨てない。彼は後に格闘技サンボのチャンピオンになり、世界に有名なサンボマスターとなる。この勇者の物語の裏に、他の民族に対しての日本人の態度がいかなるものかも分かる。「友愛」とは言わぬが、アジアの民族に対する「友情」(特にロシア、中国、北朝鮮、韓国、台湾)を考えたい。国家、政府でなく民衆に対してである。日本人はいまだに何の理由もない優越感を持っていないだろうか。同じ著者による『ハルビン新宿物語』も勧める。これも満州に関するもので歌手加藤登紀子の母が主人公である。

※推薦者のプロフィールは当時のものです。