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高校や大学の多くの学生の諸君は数学(数学現象)の世界は,実際に宇宙で起こる自然現象たちに較べて,非常に整備されていて,整然としているという印象をもっているのではないであろうか。
期末試験や大学入試の数学の問題はきちんときれいな正解が用意されていて,いつも何事もちゃんとできているので,このような硬質で 無機質なイメージをもつのだと思う。また,そもそも数学の扱う対象は自然現象とはあまり関係ないとさえ思っている人も多いようです。しかし,実際は,それらはいろいろな局面において密接に関連していて,宇宙の現象が複雑であると同様に数学にも魔訶不思議な現象が多くある。
現代の数学者が無限とか連続とかということを本質的に内在している現象を真正面から相手にしようとすると限りなくドロドロとして始末にわるいものを処理しなくてはならなくなる。現代の様々な解析学はそういったやっかいなものをうまくを扱うために頑張っている。カオスはそのような自然現象にも数学現象にも登場する摩訶不思議な現象の1つである。
本書で扱われるのは,離散力学系ともよばれる数列の漸化式で作られるシステムにあらわれるものですが,実に身近な単純な関数の合成からきわめて複雑で,一見にしては直感的に理解しがたいことがおこる。これが李とヨークによって初めて(1975年)に数学的に捕らえられたカオスである。本書では,李・ヨークの定理が大変わかりやすく説明されている。
自然科学の様々な分野に進む学生にこの本を推薦したいとおもいます。
注:微分方程式の基礎を学んでいると,より理解しやすい。 |