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1945年から1946年にかけ敗戦国ドイツで行われた国際軍事法廷の記録映像。被告のナチス戦犯には四つの罪が帰せられた。そのうち刮目すべきは、「人道に対する罪」。主として、ナチスがヨーロッパ・ユダヤ人に対し犯した凶悪な犯罪行為が念頭に置かれていた。本ドキュメンタリーは取分け、この罪が裁かれる模様を伝えている。
史上類を見ないナチズムの悪行が見過ごされ、繰り返されるようなことになれば文明は滅ぶ。米主席検察官による冒頭の論告には、説得力がある。ニュルンベルク裁判では勝者が敗者を裁いた。「人道に対する罪」にしても、新たに案出されたものである。法の基本的な前提が揺らいでいた。しかし、それでもなお糾弾されねばならない罪があったのである。ニュルンベルク裁判の精神が追認される場であった東京裁判でも事情は変わらなかった、と考えるべきであろう。
ある時点で検察側は視覚的な戦略をとった。ナチスの戦争犯罪を暴き立てる4時間にも及ぶ記録映画が、特設のスクリーンで上映された。この映画の証拠能力は極めて高い。というのも、全編、戦時中ナチス党員が撮影していた記録フィルムから構成されているからである。それらは天の配剤か、廃棄を免れた。映画の上映は奏功した。
ホロコーストの生還者や元ナチス党員の証言から成る記録映画『ショアー』(Shoah, 1985年フランス;題名はヘブライ語で「破局」の意)を併せて見るのもいいであろう。幸い、北分館にDVDがある。『ニュルンベルク裁判』は90分と比較的短い。対照的に、こちらは9時間の長大な作品。私は映画館で一気に見たが、意外と長さは苦にならなかった。因みに、『ショアー』記念委員会が本企画の協賛者として名を連ねている。
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