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英国の主要なメディアBBCはシェイクスピア劇全37作をテレビ映画として制作した。着手は1978年。完結したのは1985年。文化的に意義深い試みとして、好意的に評価されたように記憶している。わが国では、NHKで放送され、ビデオが市販されもした。ただ、ビデオはもはやあまりに古く、映像の劣化が甚だしい。ほぼすべてのタイトルが閲覧に堪えない、というのが現実である。死に体同然と言って過言でない。
そのような中、DVD化を通し本企画が蘇生したのは朗報である。
BBCシェイクスピア、全タイトル粒ぞろいの逸品とは、言い難い。困ったことに、主要なシェイクスピア劇で完成度に疑問が残るケースが目につく。反面、あまり知られていない芝居で会心の出来栄えを誇っている。例えば、『ペリクリーズ』。比類ないストーリー・テラーであった作者シェイクスピアの真髄が伝わって来る。
強調すべきは、ある種のシーンの絵画的美しさ。ネーデルランドの名画を彷彿させるとの評さえある。視覚の快楽に浸るのも、鑑賞のあり方としてあながち邪道ではないであろう。
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